トリコ 一夏がトリコの世界に行って料理人になって帰ってきたお話 作:ZUNEZUNE
「見えたぞ…あれが『天国の門』だ」
迫りくる猛獣たちを倒していきながら、一行がたどり着いたのは水平線の先にまで広がる超巨大な渦巻き「天国の門」。その広さに全員が圧倒されていた。
「これが天国の門…なんて広さなの」
「あ、あれを見ろ!」
すると箒が指した方向を見てみると、そこには鯨の数倍の大きさはあるであろう巨大魚が渦巻きの中でうまく泳げず、そのまま溺れ死んでいく光景だった。
改まって周りを見ていると沢山の海獣の死骸が散らばっている。皆渦巻きに呑み込まれて命を落としたのだろうか?
(それにしては変な外傷を持ってる死骸もあるな…)
「ほ、本当にこの中を進んでいくのか…?」
ラウラは不安そうな顔をして一夏に聞く。軍人といってもこのサイズの渦巻きは誰もが恐ろしく思うはずだ。
現にこの世界の異常気象慣れしている一夏とリンカもこれには冷や汗を流している。
「安心しろ嬢ちゃん!俺とこのグルメアクアマスターを信じて言葉の通り大船に乗ったつもりでいてくれ!」
そう言って千夢が操縦席のボタンを押すと、船が変形していき船上を囲むように天井ができていく。そして頑丈そうなシートベルトが付いている椅子も中から跳び出してきた。
「一応聞くが船弱い奴とかいないよな!?あとあんまり喋るなよ舌噛むから!」
「ああ…本当に行くのね」
箒と鈴、そしてラウラたちは諦めと覚悟の顔で座席に付く。一方一夏とリンカは文句の1つも言わずに座った。
「じゃあ行くぞ!しっかり掴まれ!!」
そうして一行を乗せたグルメアクアマスターは天国の門の手前で潜水、完全に水に浸かった時点でいざ巨大渦巻きへと侵入していった。
「きゃあああああ!!??」
すると凄まじい衝撃と轟音がアクアマスターを四方八方から襲い、まるで台風の中にでもいるような感覚に陥る。振動も凄まじく、もし座席にちゃんと座っていなかったらスーパーボールのように船内を飛び回っていただろう。
それと同時にこみ上げてくる嘔吐感にまるで脳みそが頭の中でシェイクされるような気持ち悪さが全身を包み込むように襲ってきた。
吐けば楽になるかもしれない。しかし箒たちは立派な女性、そんなことは許されない。
(耐えるのよ…!!ここで負けたら一生の不覚!)
「と、ところで義弟!これはあとどれぐらい続くんだぁー!?」
「そ、そうだなぁ!この船の速さからして…後1時間ぐらいはかかるんじゃない!?」
「「「う、嘘ぉ!?」」」
すると突然何か大きな音が響いた。何かが船に当たった音だ。
『何だぁ!?映像出すぜ!』
そう言って千夢の操作によって船内にスクリーン画面が映し出される。そんなものを見ている余裕はあるのかと思うがもしかしたら何かあったのかもしれない。
そして見えたのは凄まじい勢いでカメラを横切ったりぶつかったりする水流…そしてそれに流されている肉塊や岩であった。
「な、何だあれは!?」
「渦巻きの水流でミンチになった海獣の死骸だ!水流が強すぎてミキサーみたいに引き裂かれたのが船に当たっているんだ!それに削られた岩とかもきてる!」
そこからどんどん肉塊が当たっていき、まるで大砲を撃たれたような轟音も鳴り響く。
「あの水流に流されているせいで本当に大砲並みの衝撃でぶつかってくるのか!!何とか避けられないか千夢!?」
『無理だ真っ直ぐ進むだけで精一杯!!それに大砲如きでこの装甲は壊れないから安心しろ!』
「だー!これ耳栓必要だ!持ってきてよかった、皆つけろ!!」
こうして一行たちは襲い掛かる障害を越え、もう少しで天国の門を抜ける所まで来た。あともう少しでこの地獄から解放されるその時、今度は何かが船に巻き付いてきた。
『…触手だ!!巨大な生きた触手が巻き付いてきた!!太いぞ!直径10mはありそうだ!』
「触手!?馬鹿な…この渦巻きの中悠々と泳げる生き物なんかいるのかよ!?」
一同はカメラで確認すると、海中の様子は見えず代わりに何か白いものがカメラを覆っていることが分かる。その触手が何ものか判断するのに時間はかからなかった。
「
「じゃあこれは吸盤か!?」
箒の言う通りこれは明らかに吸盤だろう。しかし吸盤と触手だけでこのサイズとは本体はどれぐらい大きいのだろうか。
いや、驚くべきことはそこではなく、この渦巻きの中で自由に触手が動かせていることについてだ。見えないので一体どんなタコか分からない。
『と、とにかく魚雷連発で牽制してやるぅ!!』
そう言うと外から魚雷が発射された音が響き、その後に爆発音も聞こえたが、触手は依然と健在、こちらを海深くまで引き寄せていく。
『まずいぞ!いくらグルメアクアマスターでも渦巻きの中心、つまり最も水流が激しいところに引き寄せられたら耐えられるかどうか分からん!何とかしろ!』
「何とかしろって…仕方ないリンカ!2人掛かりで威嚇するぞ!」
「ええ!」
そう言って一夏とリンカはシートベルトを外し、凄まじく揺れる船内の中バランスを崩すことなく並んで立つ。そして一斉にグルメ細胞の悪魔の顔を出そうとしたその時…
「なんだぁ!?」
突如として甲高い音が海水を伝わり、まるで刃物のような形状になって触手に直撃、切断されることはなかったが大きな切り傷はできた。
『今だ!!一気にゴールまで進むぜ!!』
そう言って船は全速力で前に進んでいく。
(今の音波攻撃は…まさか!)
そうしてようやく一行は天国の門を通過、船は海上に浮上し天井を開けた。一行が疲れ果てた様子で立ち始めるが、バランス感覚などとうに壊れ、転びそうになる。
「はぁ…はぁ…死ぬかと思ったわ」
「だけど…見てみろ!」
そう言って目の前に広がるのは先ほどまでの地獄の光景が嘘のように見えてくる海、優しい青色の海水に、雲1つ無い快晴。
ここが天国の海、「ヘブンオーシャン」だ。
「凄い…本当に天国のようだ」
皆がその美しさに圧倒されている最中、ボートが横に並んでくる。一夏とリンカはボートで天国の門を突破できたことよりもそれに乗っている女に驚く。
「お前は…!」
「久しぶりだな一夏、
「ポニー!」
それはゼブラの娘である「ポニー」という美食屋であった。
最近涼しくなってきて過ごしやすい日々になってきましたね。