トリコ 一夏がトリコの世界に行って料理人になって帰ってきたお話 作:ZUNEZUNE
「な、なんてデカサだ…!」
箒、鈴、ラウラたち3人の目の前に突如として現れたのは巨大な鯨。太陽の光を反射するその純白の体はとても美しく、まるで異世界の動物のように一段と存在感を現していた。
カミノクニクジラ、普通の鯨より数倍ものサイズを誇るそれは、3人に圧倒的な驚きを与えていた。まず自分の世界でも鯨なんて見たことが無いというのに始めて見る鯨がこのサイズじゃそれは驚くに決まっている。
「…本当にデカい…まるで豪華客船のようだ」
「これ、どうしたらいいの?」
そう、一見すれば無害のように見えるが、実は危険な鯨かもしれない。事によっては箒たちは戦わないといけない場合でもあった。
しかし鯨は空を飛ぶ3人に目もくれずただ優雅にヘブンオーシャンを泳ぐだけ、一体何を考えているのか見当もつかなかった。
するとそこから数分、カミノクニクジラに動きがある。急に前に進むのを止め、プルプルと震え始める。
「な、なんだ――!?」
次の瞬間、カミノクニクジラは大きな潮吹きをした。まるで天にも昇る勢いで潮は上がり、辺りに潮の雨を降らしていく。それもまるで火山の噴火のような勢いで上がり、本当に何かが爆発したのかと思ってしまう程だった。
その時潮の一滴が鈴の口の中に入る。
「何これ美味しっ!たった一滴が入っただけなのに口の中が一気に潤ったわよ!」
鈴たちの反応を見た箒とラウラも続いて潮を飲んでみると、3人そろって夢心地の顔を浮かべてその味を楽しむ。
「本当だ!こんな美味しい水飲んだことないぞ!」
「ああ、まさしく天にも昇る気持ちだ…!」
すっかり目先の鯨の恐怖など忘れ、降り注いでくる潮を夢中になりながら飲んでいく。途中箒は持ってきたペットボトルにそれを蓄え始める。
すると遠くの方から何かが飛んでこちらに向かってきていた。
「ジェットボイス!」
それは音速に乗って凄まじい速さで空を飛ぶゼブラの娘であるポニーであった。いきなり来たため最初は空を飛ぶ猛獣かと警戒した3人だがポニーの顔を見てホッとする。
それに続きリンカもコテで自分を飛ばしこの場へとやってきた。ポニーはまだ飛び続け、リンカはコテの上に乗っている。
「これはまた…馬鹿にデカい鯨だな」
箒たちとは違ってこういう巨大生物には慣れているのかポニーとリンカはたいして驚いた素振りも見せず普通のリアクションをするだけだった。そして2人もその潮水を飲んでその美味しさに表情を崩した。
「…中々美味いじゃないか」
ポニーはそれを飲んだ瞬間、卑しい顔になり口角をまげて舌を舐めずる。瞬間彼女はジェットボイスで一気に加速したのち真っ直ぐカミノクニクジラへと飛んで行った。
「ちょっとポニー!?何する気よ!?」
「潮がこんなに美味いんだ!そのデケェ腹にたっぷり貯めこんでいるだろうよ!!」
何とポニーはあの鯨を仕留めようとしている。いくら向こう側から攻めてこないからと言ってそれは些か無謀すぎる。そう判断したリンカはコテで彼女の動きを止めようとした瞬間…
「ストップストーーーーーーップ!!!ポニーステイ!!」
横から一夏の叫び声が聞こえた瞬間、ポニーは急ブレーキ。そして一夏がマロボシを抱えてこの場へと飛んで来た。いきなりおっさんが増えたため皆は少し困惑する。
「一夏、誰だその人…」
「もしかしてその人マロボシシェフ!?ランキング19位の!どうしてこんなところに…」
「話は後だ!マロボシさんによればミカエルフィッシュはこの鯨の中にいるらしい!」
「「「――えっ!?」」」
とにかく一同はマロボシから詳しい話を聞くべく一旦島に降り、未だ浮上しているカミノクニクジラを横目に話し合いを始める。
「あの鯨は『カミノクニクジラ』、この海にしか生息しない固有種だ。元はただの鯨だったがあの『天国の門』ができる前にこの海に迷い込み、その時に渦巻きができてこの海域に閉じ込められた形になったんだ」
「それにしても…なんであんなに大きいんですか?」
ここで鈴が質問する。確かにあのカミノクニクジラのサイズは普通の鯨から進化するというのは考えにくい。
「それはね、
「…プランクトン?」
「このヘブンオーシャンのプランクトンは他の海と比べて数百倍の栄養を持っている。だからこの海の生き物はどれも絶品だ。昔はもっと少なかったみたいだけど天国の門でそのプランクトンが他の海域に流れなくなってこの海で充満してるってわけ」
「それと鯨が何の関係が…?」
「鯨ってのは1日に300万匹のプランクトンを食べるらしい。それは自身の体重の4%ぐらい、この海のプランクトンをそんなペースで食べていると次第に大きくなっていったんだ。今も食べる量を増やし続けている、いわば美味しくなり続ける鯨なんだ」
「…美味しくなり続ける」
「そしてカミノクニクジラは食べたプランクトンの旨味と栄養素を潮として噴き出している、それがさっき君たちが飲んだやつ、カミノクニクジラの体内ではそんなプランクトンの旨味が凝縮された潮が溜まっている部分があって、そこにミカエルフィッシュが住んでいる」
「でも…何で鯨の中なんかに」
そんな潮の中になんでミカエルフィッシュが住んでいるかが問題だった。
「ミカエルフィッシュは元々グルメ界の生き物なんだ。本当はヘブンオーシャンよりも豊かな海域に住んでいるけど…その稚魚が偶然この海に紛れ込んだんだけど…本来の住処と比べてあまりにも栄養が足りない海、だからその海の栄養が全て集まっているといっても過言じゃないあのカミノクニクジラの中に住み始めたんだ」
「成る程…生きるためには仕方ないというわけか…」
「で、そのミカエルフィッシュってやつはどうやってとるんだ?」
ポニーがそう荒々しく聞いてくる。そう、本来の目的であるミカエルフィッシュ、そいつをどう捕まえるのかが一番の疑問だった。
「カミノクニクジラは温厚な性格、ストレスが無ければ無い程その潮の勢いは増していく。つまりあいつを一番安らかに和ませれば潮と一緒にミカエルフィッシュも出てくるんだ」
「…じゃあポニーがしようとしてたのは最悪の行動というわけね」
「…ふん」
「和ませるにはどうしたらいいんですか?」
「…別にこっちが何もしなくてもカミノクニクジラは勝手に安心するはずなんだが…何か妙だな」
ここでマロボシは海にいるカミノクニクジラを見て顔をしかめる。
「いくらなんでも潮の出が悪すぎる。あの調子だと1か月は思い切り出せてないな…
「…大事って何が?」
「…美食屋トリコとゼブラの娘である2人なら、分かるんじゃないか?」
そうやってマロボシは挑発じみた言い草で聞いてきた。最初こそ2人は何のことやらと考えていたが、しばらくするとハッとした表情になる。
「…まさか」
するとポニーは再びジェットボイスで空を飛び、さっきとは違く敵意は無い状態で鯨に近づき、ソッと優しく触れた。
――メディカルソナー――
そしてあることが分かった瞬間、急いで皆の所へ戻り、その結果を言った。
「…
「「「えっ!?」」」
「そう、カミノクニクジラは哺乳類なのに単為生殖が可能な生き物。出産時に最大限の潮を噴き出すことによってそのストレスを和らげるんだが…それができなくて産めないんだな」
「…私の鼻もそれを捉えたわ、どうやらいつになっても産めなくてそれが逆にストレスになってるみたいだけど…本当に原因は他にあるわね」
「…一体どうしたんだ…って!!」
ここで一夏とリンカとポニー、そしてマロボシが急に立ち上がり警戒状態に入る。その眼差しは戦う寸前の色だった。
「成る程…渦巻きの中で何か
「一夏、これってさっきの渦巻きの時に襲ってきた…」
「…ああ、かなり強いぞ!」
すると突然カミノクニクジラの近くで水飛沫が上がり、そこから数本の触手が飛び出してきた。
そう、その正体は天国の門の中で一夏に襲い掛かってきた超巨大タコ、カミノクニクジラとほぼ同じ大きさであった。
ポセイドンオクトパス〈軟体動物〉捕獲レベル120
「どうやら…今回の依頼も簡単にいきそうにないな…!!」
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