トリコ 一夏がトリコの世界に行って料理人になって帰ってきたお話 作:ZUNEZUNE
「……あっつぅ~~」
そう鈴は言い零したが、一体何度目の暑さへの訴えだろうか。しかしそれは鈴だけの話ではなく、この場にいる殆どの人間が言っている言葉であった。
ドーイド火山の山頂には大分近づいており、その分気温も高まっているわけだ。汗が滝のように流れ犬のように舌を出している。それを見た一夏はリュックから食材を取り出す。
「ちょっと待ってろ……」
そう言って出したのは水のように透き通ったキノコ、傘まで波紋が動いておりまるで水そのものがキノコの形になっているようであった。
もう1つは小瓶に入った塩。一夏はそのキノコに塩をふりかける。
「この間のキノコ狩りで手に入れた『ミネラルキノコ』にオーシャンヘブンの海水を煮詰めて作った塩を振りかける……これで水分と塩分は確保できるはずだ」
「うぉサンキュー!噛めば一気に水が噴き出してくる。それにこの塩の風味が絶妙だ!」
「ミネラルキノコ……美しい!」
「ミネラルキノコは殆どが水でできているキノコだ。砂漠の遭難者とかにも食わせられる」
こうして一行は間食で何とか暑さに対抗しどんどん山を登っていく。するとその道中で洞穴のような場所を見つけた。足あとも沢山ある。
「この匂いは……さっきのピッグクライミングの巣よ」
「へぇ……ここがあいつらの巣かぁ」
「……妙だな」
「え?」
リンカの嗅覚でそこが先ほど一夏たちに襲い掛かったピッグクライミングの巣穴というのは分かった。しかし一夏は納得がいがないような顔をしている。勿論リンカを信用してない訳じゃない。
「さっき襲われた場所と離れすぎだ、いくらなんでも巣穴から離れすぎだろ」
「引っ越しの途中だったとか?」
すると一夏が豚の足あと以外にも他の足あとを見つける。それはとても大きい獣の足であった。すっぽり一夏が入る程の広さだ。
「それとも――
すると目が慣れたのか洞穴の中が少しだけ見え始める。するとそこには、数えきれない程の骸の山が形成されている。全て同じ種類の骨であり、それがピッグクライミングのものに気づくのはそう遅くはなかった。あまりの無残さに簪は思わず口を抑える。
「何だあれ……!?」
「ピッグクライミングの捕獲レベルはそう高くないが圧倒的な数の群れで一斉に攻めてくるのが厄介、加えてあの突進力は簡単には止められない。だからいくらプロの美食屋でもこいつにやられるケースも珍しくは無い」
「そんな猛獣を追放できる程の実力者……そんな生態系を狂わしそうなやつここにいたっけ?」
「いたぜリンカ、
あれは俺とリンカが数年前にこのドーイド火山の近くにやってきた時だ。あの時はマグマカレーじゃなくて他の食材を取ろうとして冒険していた。しかしそんな時にあのクリーム白虎が襲ってきた。
「これは野菜仙人のタマギから聞いた話だが……この人間界には四獣侵攻時にグルメ界から四神獣がやって来た。野菜仙境には朱雀、この間のヘブンオーシャンには玄武」
「そしてここにはその……クリーム白虎ってことか?」
「ああ。クリーム白虎の親が山頂深くに住み着いていてな、時々子供を教育の為に付き落とすんだ。俺たちが遭遇したのはそのうちの1匹である子供」
「それでもかなりの強さだったわ。何とか倒してフルコースのスープにできたんだけど……まさかその親が襲ったとでも言うの?一夏」
「四神獣は優しいと聞く。いくら食事の為とは言えここまで生態系を荒らすような真似はしないと思うが……まぁ今までのように紛れ込んだグルメ界の猛獣がやったのかもしれない。だとしたら放っておけないな」
そう言って一行は壊滅状態の巣穴を素通りし、やがて険しい山々を上っているとようやく山頂へとたどり着いた。そこからは火口が見え、茶色のマグマがグツグツと煮えたぎっている。間違いない、あれがマグマカレーだ。
「……あれ、どうやって手に入れるんだ?危ないだろ!」
「大丈夫ちゃんと命綱も用意してある。じゃあ早速行くか!」
「――待って一夏様!!」
すると火口の中に降りようとする一夏をコロナが制止する。瞬間、一夏たちのいる場所に突如として亀裂が走り、そのまま崩れて火口の中に入っていく。危うく落ちそうになった一夏たちは、斬撃が飛んで来た方を見る。
そこには明らかに他の猛獣とは毛並みと雰囲気が違う1匹の獅子、赤黒い肌を持ち黄色く輝く目でこちらを凝視していた。敵意を持っているのは見てわかる。
ブラッドレオン〈哺乳獣類〉捕獲レベル130
「こいつが犯人か……どうやら縄張りに侵入した様だ!!」
するとブラッドレオンは跳びかかり、一夏たちに襲い掛かった!
もうすぐ誕生日、だけど年を取るにつれて実感が湧かなくなるなぁ