トリコ 一夏がトリコの世界に行って料理人になって帰ってきたお話 作:ZUNEZUNE
アリーナの中で、鵺コッコが巨体を揺らす。
足踏みで地面を揺らし、鳴き声で空気を振動させる。
観客席がパニック状態だ。
「こないだの奴の仲間か…?」
春十は前に来たゴーレ餅やウニUFOと同格の存在と確信する。
しかし今回の猛獣はその比較にはならない。
鵺コッコの赤い瞳が春十を捉える。
そしてその足で蹴り飛ばした。
「ぐあっ!?」
バリアにぶつかる春十。攻撃力もその見た目に負けていない。
鵺コッコは興奮状態になっており、目に映る全てに攻撃をしていた。
「くっ…例の未確認生物か…」
ラウラは遠くから鵺コッコを見ている。そしてプラズマ手刀で斬りかかる。
「邪魔を——するな!」
その広い翼を切り落とそうとしたがハエでも叩くかの如く地面に叩きつけられた。
そして地面に這いつくばるラウラを鵺コッコは踏みつける。
「ぐああああああああ!!!」
何度も踏み、擦り、そして蹴り飛ばした。
蹴られた空を舞うラウラを大きな両手で掴み強く握る。
「ぐがっつ!?」
そして端まで移動すると、アリーナのバリアに自分の拳ごと何度も打ち付けた。
「やめろおおおおおおおおお!!!」
見るに堪えなくなったのか、春十が雪片弐型を振ろうとするが、尾の蛇がそれを妨害した。
鵺コッコは尾の蛇を鞭のように操り、春十を吹っ飛ばす。
「うぎゃあ!?」
やがてラウラを虐めるのは飽きたのか、彼女をゴミのように放り投げる。
ここでシャルがマシンガン射撃を鵺コッコに撃つ。
すると鵺コッコは両翼で空を飛び、弾丸を避けた。
「速い!?」
その体格には似合わないスピードでシャルの周囲を飛びかう。まるで分身しているかのように残像が残っている。
そして嘴で突き、地面に落とす。
シャルとの戦闘後なので上手く動けない箒、そんな彼女を鵺コッコは狙う。
「逃げろ!箒!」
ダメージを負っていたので逃げることが出来ず、鵺コッコの攻撃を受ける…その時だった。
何者かがバリアを破壊して箒を救出する。
お姫様だっこをして、そのまま鵺コッコから距離を取ったのは…
「あれは…!」
「『血まみれ』!」
仮面を付けてISを起動した一夏であった。
一夏はそっと箒を降ろし、鵺コッコに立ち向かう。
(鵺コッコ…また捕獲レベルが高いのが…)
黒星と白海の二刀を構えて、お互いに睨み合う。
どちらも一歩も引かずに、ただ時が流れる。
(どれどれ…これならどうだ!)
ここで一夏は力を込め、怒号を上げる。
すると背後にはグルメ細胞の悪魔のビジョンが現れるが、鵺コッコの様子は変わらない。それどころか悪魔にも鋭い目を向けていた。
(俺の威嚇に怯えず…か!)
そして包丁を握りしめ、食材に向かった。
まずは胴体を斬ろうとするが、さっきシャルに見せたスピードで後ろに回られた。
鵺コッコの拳を受け流す。そして首元目掛けて加速した。
そのまま首を切断しようと思ったが、鵺コッコの嘴内が光っているのを見て急旋回して距離を取った。
鵺コッコは口から光線を吐き出し、前方を焼き払う。
「
一夏は遠くで2本の包丁を回転させ、竜巻のような斬撃を鵺コッコに沢山放つ。
しかし全て飛んで避けられてしまった。
(図体のわりに馬鹿みたいに速く動きやがって…!)
ここで一夏は考える。このまま近接武器で挑んでも相手の攻撃範囲内に潜るだけ。むしろ危険ということに気付いた。
(ここは、束さんが作ってくれた新しい武器を使うか!)
一夏は新しい武装を展開する。それはスナイパーライフル型の遠距離武器。
名付けて
すると懐から透明なカプセルを取り出す。中には赤い粉末が入っており、そのカプセルを銃に取り付けた。
(閻魔七味——!)
そしてレーザーを放つ。最初こそ当たりもしなかったが、数発目で鵺コッコの右翼に命中する。
「コケコッ!?」
被弾した部分から煙と熱が吹き出す。翼は先程の銃で貫通されていた。
まるで火が通ったかの如く、散った羽は溶けている。
(この銃はカプセル内の調味料をビームの特徴として出す物…流石は束さんだ!)
元々一夏も断られる覚悟で頼んだが、見事用意してくれた。あの天才の頭脳が恐ろしい。
先程一夏が使ったのは閻魔七味という世界でも指折りの辛さを持つ七味。ハバネロの数倍の刺激と危険性を持つこの七味は、正しく処置をしないと食した者を死に至らせる「超特殊調理食材」であった。
一夏は敢えてこれを処置せずに所持。そしてそれを武器として使った。あまりの辛さによる高温で対象を溶かすレーザー砲だ。
翼を撃ち抜かれた為、上手く飛べなくなる鵺コッコ。
(よし、動きが鈍くなった)
再び包丁を構え、鵺コッコに向かったが…
「はああああああ!!!」ザンッ!!
「なっ!?」ガキンッ!!
急にラウラが一夏に斬りかかってきたのだ。
「話は聞いているぞ『血まみれ』…先日の猛獣も貴様が呼んだのではないかと疑っている!」
「…だとしても俺が倒してるぞ。自分で呼んでおいてそんな事しない」
「どうだかな…自作自演で英雄気取りかもしれん!」
ラウラの斬撃はより激しくなる。しかし一夏はそれを全て包丁で受け流している。
力も性能も差がある。その事を認めたくないのかラウラの攻撃はどんどん荒れている。
「貴様!何者だ!」
「ただの料理人だよ」
「ふざけるなあああああああああああ!!!」
いつまでも相手をしていられない。そう思い新しいカプセルを取り出す。
(砂海の胡椒——!)
そしてそれを銃にセットした。
至近距離でレーザーを放つ一夏。ラウラはそれに直撃し、地面に墜落する。
「貴様…舐めた真似を…くしゅん!何をした…くしゅん!」
急にクシャミが嵐のように出るラウラ。
先程一夏が銃撃に使ったのは「砂海の胡椒」、とある砂漠にあるその天然胡椒は、一度体内に入るとクシャミが止まらなくなる厄介な代物。
「すまんな、今お前の相手をしている暇は無い」
そう言って一夏はラウラを視線から外す。
屈辱だ。相手にならない、されない。
今まで自分が信じていた力が泡のように消えていくのを感じるしか無かった。
(力が…欲しい!)
願うか…汝、より強い力を…
(寄越せ力を…比類なき最強を!!)
ここでラウラに異変が起きる。プラズマを放ち、蒼く光り始めた。
「なっ…!?」
「あああああああああああああああああああああ!!!???」
そしてシュヴァルツェア・レーゲンの装甲がヘドロのような状態になり、ラウラを包み込む。
粘土のように形作り、やがて大きな人型になった。
手先には、同様に刀が作られていく。その形状に対し周りは何も思わなかったが一夏と春十はいち早く気付く。
(あれは…雪片か!?)
(何だあいつ…千冬姉とまったく同じ!?)
ついには巨人のようになったラウラは、辺りを見渡す。
「次から次へと…嫌になっちゃうね!」
ここでシャルがラウラに銃を向けるが…
「俺がやる」
「えっ?」
怒りの表情をした春十が刀を向ける。それに答えるようにラウラが跳びかかった。
春十は相手の刀をこちらの刀で受け止める。しかし圧倒的力で弾かれてしまった。
「なっ…!?」
そしてラウラの雪片が春十に振り下ろされるその瞬間…
「春十兄!!!」
咄嗟に一夏が春十を押し出し、代わりにラウラの一撃を受けた。
その衝撃で吹っ飛ばされ、壁に激突する一夏。シールドエネルギーが尽き、ISが解除された。
「血まみれ!?」
春十は自分を庇ってくれた事を驚く。
「大丈夫春十!?」
「あ、ああ」
そしてシャルが春十を保護した。
「…」
一夏は頭から血を流し、生身の状態で気絶している。
その意識は、暗黒の中にいた。
「ここは…」
そうだ。ここがどこだか思い出した。
今までだって来たことがある。この空間は——
「…!?」
汚い咀嚼音が耳に入る。出所は分かっていた。
目の前にいる「悪魔」…悪魔が
皮膚を食い破り、内蔵を味わって、一滴も溢さず血を啜っている。
一夏は、ただ
「
悪魔が、返り血だらけの顔を見せてそう言った。
「急いであの鳥を食え。でなきゃあ…」
「あいつ…千冬姉を真似やがって…!!」
「落ち着け春十!今のお前じゃ勝てん!」
春十は暴走しているラウラと戦おうとするが、箒に押さえられていた。
「お前がやらなくても良いだろう!今はあの怪物もいるんだぞ!」
「…だけど!俺がやりてぇんだ!やらせてくれ!」
無理にでもラウラに向かう春十。そこに来たのは…
「なら、鶏は俺に任せろ」
「なっ!?血まみれ!?」
さっきまで気絶していたのが嘘のような一夏であった。
「貴様…もうシールドエネルギーが無いのだろう!?何故ISを起動できている!?」
箒の言う通り、一夏は一度解除された「
「俺が鶏を倒す。だからお前はその隙にあの千冬ね…織斑千冬擬きを倒してくれ」
「……何故そんな事を頼む」
「早くあいつを倒さないといけないんだ。あのラウラって奴まで相手にする時間は無い!」
「………分かった」
「春十!?何を考えているんだ!?」
「確かにこいつのことは信用できない。だけど今はそれしか無いんだ!」
春十に押される箒。ここでシャルが入ってきた。
「やらせてあげよう篠ノ之さん、僕も賛成だよ」
「…仕方ない!その代わり…死ぬなよ!絶対にだ!」
「ははっ…当たり前だ!」
(俺の
一夏は再び鵺コッコと対峙する。撃ち抜かれた翼はもう再生されていた。
(一気に…終わらせる!)
一夏に武器追加。料理人らしく調味料を武器として使います。