トリコ 一夏がトリコの世界に行って料理人になって帰ってきたお話 作:ZUNEZUNE
「ふぅ……何とか予選は通過できたな」
「トライアスロンクッキング」の50人に見事入り込んだ一夏、ギリギリだったため冷や汗を掻いて息を整える。
しかし本当の予選はこれから、後2つの予選を行い更に勝ち残った32名による決勝トーナメント、それでスーパーコックは決まるのだ。
小松の弟子にて初出場の一夏が予選に残ったことになり一夏ファン、そして会場は大盛り上がり。スタジアムの中心に君臨している50人の猛者たちに声援を送り続けた。
そして間髪入れず予選第2回戦に入った。
『続いての競技はハヤワザクッキングレースです!!こちらをご覧ください!』
視界のムナゲがそう言うとスタジアムの中心の一部の床が下がり、何かを乗せて再び上がってきた。それは食材の山、そしてそれを取り囲むように50人分のキッチンも用意されていく。
「あれは……フグ鯨にロイヤルマンボウ!どれも調理が難しい食材ばかりだ!」
『その通り!こちらの食材は
その食材は司会の言う通りどれも調理に相当な技術が必要で有名なものだけしかなかった。そして今回の予選に使うのがこの特殊調理食材だという。
『ルールを解説いたします!今から1時間、この食材を使ってできるだけ多くの料理を作ってください!ここで評価されるのは料理の数、食材の調理難易度、調理完了の早さです!』
「成る程……つまり食材選びの目も必要なのか」
『ちなみに料理数の最低合格ラインは30!できるだけ簡単な食材を選んで数と速さで勝つか!時間をかけても最低数は超え食材の難易度で勝つか!その判断も必要になります!』
1時間でどれだけの料理ができるか、そう考えれば某バラエティー番組でやってそうなコーナーであるがこの場合一番の問題はその全てが特殊調理食材であることだ。簡単と言っても本当に調理が容易なものなどあの山の中には無い。
(1時間で特殊調理食材を30……こりゃ大忙しだな)
『では早速始めましょう!ハヤワザクッキングレース……スタート!!!』
「「「うおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」
ムナゲの掛け声と共に開始されるハヤワザクッキングレース、料理人たちは一目散にその食材の山へと走り出した。
ようするにこの予選もトライアスロンクッキングの食材選びとそう変わりはない、いち早く自分が調理できる食材を選びどんどん料理していく。
「早いところ食材を選ばねぇと……!」
与えられた1時間というのは確かに余裕があるかもしれない、ただしそれは食材が特殊調理の物じゃなければの話だ。あの食材の中には調理に免許が必要なものまである、どれを選んでどんな料理を作るのかという食材選びの時点で油断はできなかった。
「正しい順番で剥かないと爆発する『ジゲンレタス』、解毒作業に手間がかかる『ウツボヤモリ』、1gのズレがあると味が劣化する『繊細塩』、調味料まで特殊調理かよ……!」
使う調味料まで調理が難しいことに気づき一夏は絶句した。塩まで自由に使えないとなると料理ができるかどうかも怪しいからだ。
そしてこんな悩んでいる時間も惜しい、早いところ食材を選ばないと出遅れてしまう。
(いや……まだ大丈夫か)
『おっーとここで小松シェフ!もう2品目に突入だぁー!!!』
「嘘ぉ!?」
まだまだ余裕はあると見て油断する一夏、しかしその余裕は司会の内容によって打ち砕かれた。
向こうのキッチンを見れば自分の師匠である小松が目にも止まらぬ包丁さばきを繰り出している。最早乱舞のようなそれは食材を捌き、焼き、盛り付けを次々とこなしている。
『小松シェフは今使っているのは『ハートパン生地』、心臓マッサージのように1秒のズレも無く同じ力で捏ねる必要がありますがいとも簡単に調理していくぅ!!そしてその生地を焼いている間手に取ったのは「水晶トマト」に「硝子キャベツ」!どれも取り扱いを誤れば粉々に砕け散る食材ばかりだぁあ!!』
「師匠……まさか特殊調理食材だけでサンドイッチを作る気なのか?」
小松が選んだ食材はどれもミスれば見た目も味も劣化するものばかり、それでサンドイッチを作るなど無謀にも等しいだろう。しかし彼は難なくそれを完成して見せた。
「できました!ハートパン生地の特製サンドイッチです!」
『あっという間に3品目完成ッ――!!流石は薬膳餅の調理簡略化を成し遂げた小松シェフ、これくらいおちゃのこさいさいなのかぁー!?」
「すげぇ……流石は小松シェフだ。ハートパン生地の捏ね方だけじゃない、短時間で焼きあげる方法も使っている……」
『更に更に!スタージュンシェフやののシェフも既に1品目を完成させています!まだ2分しか経っていないのにこの早さ!驚くしかありません!』
その他にもスタージュン、のの、大竹、中梅のランキング上位組は続々と料理を作っている。それにより他の料理人たちは急かされたような気分になり慌てて調理速度を速めていく。
ただし一夏や他のメンバーは違った。あの到底敵わなさそうなプロたちに憧れとライバル心を抱いていた。いつか自分もあのステージへ行くのか……そんな夢にも近い希望を胸に強く包丁を握りしめる。
「俺も……負けてられない!」
そして対抗心を燃やし、目の前の食材たちと対面するのであった。