トリコ 一夏がトリコの世界に行って料理人になって帰ってきたお話   作:ZUNEZUNE

74 / 90
バイト面倒すぎて憂鬱


グルメ73 敵は悪天候!

「へぇ……思ったより狭いんだなぁ」

 

決勝トーナメント第1回戦、一夏は早速リングともいえる「K・T」の中に入り、そこから周りを見渡す。大きな球体の外見とは逆に、内部は意外と狭かった。しかしそれでも十分動けるスペースは存在しており、調理器具や冷蔵庫、他にもグルメケースなど豊富な道具が揃っている。

これなら普通に調理ができるだろう――()()()()()()()()()()()だが。

 

『両選手共に中に入りましたー!制限時間は30分、そして中の天候は3分ごとに変化していきます!調理途中の食材、また完成した料理はそのグルメケースで保存できるようになっていますので是非お使いください!』

 

そしてガルベルトも隣のK・Tに入り待機、いつでも始められる状態で一夏も彼も奮闘する気満々であった。窓も無いこの閉鎖的空間は緊張感を更に加速させ、自分の内面と強制的に向かい合わせる形となっている。

一体何が始まるというのやら、そこで第1回戦のホイッスルが鳴った。

 

『では早速始めましょう!第1回戦――スタート!!』

 

「よっしゃ行くぜ――ってのわぁー!?」

 

そうして始まる決勝トーナメント、これに勝ち続ければ見事「スーパーコック」の称号を得られる。一夏が奮起し包丁を握ろうとした瞬間、突如として顔面に恐ろしいほど寒い感覚が襲ってきた。

思わず顔を抑え、蹲り襲い掛かる突風から避難する一夏。これは強風か?そんな生易しいものじゃない、極寒地獄も驚きの()()であった。

 

「さ、寒ッ!本当にアイスヘルなんて目じゃない!」

 

一夏が以前トリコたちに連れてってもらった極寒の地「アイスヘル」、零下50度を下回るあの大地にも引けを取らない寒さとなっていた。そして問題なのはこの吹雪、凍える風がどんどん押し寄せてきた。

そんなことをしている暇は無い、取り敢えず冷蔵庫から食材を取り出そうとする。

 

「そ、外の気温が冷蔵庫より低いってどういうことだよ……!」

 

開いてみれば中から()()()()()が流れてきた。別に冷蔵庫が壊れたわけではない、外があまりにも寒すぎて冷蔵庫の冷気すらものともしないようになっているのだ。

兎に角一夏は震える手でそこから食材を出す。「氷河キャベツ」――まるで氷のように冷たくシャキシャキの触感を持つキャベツ、これならこの寒さの中でも大丈夫だろう、後は自分の体を盾にし、吹雪に飛ばされないように食材を守る。

 

震える手で包丁を握る。この氷河キャベツは千切りにした方が一番美味しい。みずみずしいキャベツの身が舌の上で氷のように溶ける。そんな味わいだった。

しかしこのかじかむ両手では千切りすら難しい、かといって適当に切るわけにもいかない。まずはこの寒さに耐えられない手をどうにかしなければならなかった。

 

「――閻魔七味!」

 

そこで一夏は自分の両手に圧倒的辛さを持つ閻魔七味をまぶす。勿論料理の味に影響が出ないぐらいの量だ、しかし超激辛ともいえるそれはその両手に体温を取り戻してくれた。

これなら包丁が持てる、ニヤリと笑った一夏はそのまま千切りを始める。

 

そのスピードはいつもと比べて鈍いの一言にしかつかないだろう、だがそれでも常人からしてみれば目にも止まらぬ早業に違いない。ものの数秒で氷河キャベツは全て切られた。

じゃあ次はトマトを切ろう、そのまま一夏は急ぎ千切りキャベツを頑丈なグルメケースに保管し次の食材を取り出す。「泡トマト」――少しでも強い衝撃を与えたら散ってしまう繊細な食材だ。

しかし今の一夏は、そんな特殊調理食材も思うがまま。何故なら、食材の声を聞くのだから――

 

(よし……次はお前を……()()?)

 

いつも通りにその声を聞こうとすると、泡トマトは自分をどんな風に調理してほしいのかという願望ではなく、一夏に対し明確な警告、もしくは注意を促してきた。

そしてその瞬間、そのキッチンは大きく揺れる。

 

「なッ――()()!?」

 

突如として一夏のいるK・T全体に地震が起きる。勿論このネオクッキングスタジアム全体が揺れているわけではなく、この揺れも機能の1つであった。

あまりの揺れに立つことも困難で、人間である一夏が立たなくなるほどなので当然その影響は泡トマトにも及ぼす。

 

「パリン!」という鋭い音が鳴り、全て砕け散ってしまった。

 

「しまった……さっきの警告はこれか!」

 

切ろうとした泡トマトが跡形も無くなってしまう。しかし一夏は時間をロスしたことよりその食材たちを無駄にしてしまったことが何よりの心残りだった。

しかしそんな懺悔もこの地震は許さず、一夏はまな板や包丁が落ちないよう抑えるので必死になる。これじゃあ例え普通のトマトだろうが調理するのは難しいだろう。

 

「よ、ようやく収まった……って今度は雨!?」

 

揺れが無くなり喜ぶ一夏、しかし間髪入れずに次の災害が襲ってきた。

今度は大豪雨、雨というよりかは水の爆弾は次々と天井から降り注いできた。まるで滝に打たれているような衝撃で、これじゃあ食材なんて傷だらけになってまう。

 

「くっそ……諦めてたまるか!」

 

しかしそれでも諦めず調理を続けようとする一夏、そしてそんなやる気を押し潰すかのように、さらに雨は強くなっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回の災害を書いてる際、原作での初グルメ界突撃を思い出しました。あの時の絶望感はヤヴァイ……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。