トリコ 一夏がトリコの世界に行って料理人になって帰ってきたお話 作:ZUNEZUNE
「フゥーハハハハハッ!!こんな砂粒でこの我が止められると思うか!?」
一方隣のキッチンでは、ガルベルトが高笑いをしながら調理をしている。現在そこでは砂漠も顔負けの砂嵐が巻き起こっており普通なら食材に砂粒が大量につき、料理なんてできないはず。
しかしガルベルトと厨房を守るのは
ガルベルトは開始直前でこのチョコレートの壁を形成、冷蔵庫と厨房をつなぐ半場家のようにも見えるその中で調理を続け、一夏と比べて若干作業が進んでいる。この砂嵐の前に襲っていた猛吹雪によってチョコは更に固まり圧倒的な強度を誇っている。最早敵なしであった。
――そう、次の災害が襲ってくるまでは。
「なッ……この暑さは!?」
砂嵐が止み、キッチン内の気温が急激に上がっていく。レンジの中のような温度となり滝のように汗が噴き出していく。手汗も尋常じゃないくらい出て包丁すら持てなくなった。
「ッ――我が要塞が……!」
その為今までガルベルトが作ったチョコレートの壁が全て溶けてしまい無駄なものになってしまう。
そう簡単にこのK・Tは攻略できないということだ。サウナも顔負けの猛暑がガルベルトの脳を襲った。
「たかが暑さに……このガルベルトが屈するかぁーー!!」
しかしそれがガルベルトを更に奮起させ、気温と共に燃え上がる情熱がその食材へと注がれているのであった。
「だぁあ!雨が強すぎる!」
一方その頃一夏は、その豪雨に手も足も出ず動けずにいた。滝のような水圧と量が上から降り注ぎミキサーにかけられたような気分を味わっている途中だ。
当然そんな中で食材など取り出すこともできず、冷蔵庫を開く暇もない。本当に何もできない時間が続き大きなロスとなっていた。
「どうにかしないと……一体どうすれば」
なんとか打開策を見つけ、そのロスを埋める必要があった。
しかし次の気候も予測できず何をすればいいのか?残り時間への焦りと四方八方の塞がり、それらが一夏の視野をどんどん小さくしていく。
そんな時、その耳にとある声が届いた。
(俺を……使え?)
冷蔵庫の中に入っている食材が突如として一夏に声をかける。自分を使ってほしいという希望を募らせるがこの状態で外に出した途端駄目になるのは目に見えている。
その瞬間――再び天候が変わった。
「竜巻!?」
なんと大きな竜巻が巻き起こり全てを吹き飛ばさんとする。あまりの突風に立つこともできず調理が困難になった。一体こんな状態でどうやって料理なんてすればいいのか……
(……まさか!)
そして一夏はあることに気づき、吹き荒れる風の中を何とか突き進んで冷蔵庫の前へと辿り着く。そのまま開けさっき自分を呼んだ食材を確認する。
それは赤色の燃え上がる豚肉であった。
「やっぱりか……『紅蓮豚』、こいつは大量の熱を放射して料理人を近づけない肉……!」
その豚肉をまな板の上に乗せた瞬間、ガルベルトを襲った災害に負けない熱を出し始める。本来ならすぐに吹き飛ばされてしまうはずだが、竜巻の突風がどんどん
「この猛熱で風が上に行っている……お前はこれを伝えたかったんだな?」
竜巻の風は紅蓮豚の熱によって上昇気流となり、完全とはいかないものの突風を防いでいた。
つまり紅蓮豚はこの突風の中で調理するには相応しい食材ともいえる。そしてそれを教えたのはその豚肉自身であった。
(さっきの泡トマトも警告していた……もしかして、食材たちは次の災害が何かが分かるのか?)
そう言って一夏はその結果に辿り着く。泡トマトや紅蓮豚だけではない、実は最初に調理した氷河キャベツも声をかけており一夏はそれを無意識で聞き、あの極寒の中で氷河キャベツを選んだのだ。
そして一夏は、このK・Tの攻略法を見出すことに成功した。
(そうか!俺はこの災害の中で自分しか見ていなかった。だけど真に耳を傾け顔を見るのは食材たちなんだ!食材に次の天候を聞いて、どれを使えばいいかを見極めるんだ!)
それに気付いた一夏は嬉々とした表情で突風の中冷蔵庫を漁る。「俺はこの風をなんとかできるぞ!」「この竜巻には負けるが次の災害は何とかできる!」という声が次々と上がっていった。
「これなら……いける!」
そう言って一夏はニヤリと笑い、強く包丁を握りしめた。