トリコ 一夏がトリコの世界に行って料理人になって帰ってきたお話 作:ZUNEZUNE
世界は変わり、IS世界では山田真那が作業をしていた。目の前のディスプレイに目を通しながらキーボードを打ち続けその隣には織斑千冬がその横に立っている。
「織斑君たち……今頃向こうの世界を謳歌しているんでしょうね」
「何度目だその言葉。そう言えば今日グルメ世界では大きな料理大会が行われていると聞いた、もしかしたらそれに一夏が参加しているのかもしれない」
と千冬は言うが、まさかそれが3億人という人数が入るコロシアムで行われているものとは思いもよらないだろう。「大きな」という形容詞では言い例えられない程の規模の大会、それがクッキングフェスティバルであった。
春十たち専用機持ち組が向こうの世界を楽しんでいる間、教師陣は仕事を続ける。それに嫌気が差したのか真耶はうっすらと弱音を吐いてしまった。
「はぁ……私も向こうに行って美味しい食べ物とか食べたかったです」
「いや、流石に教師陣も同行するのは駄目だ。ただでさえ代表候補生たちが異世界に行くことを各国に認めさせるのも苦労したんだぞ」
代表候補生というのはその国にとっての宝、そんな彼女たちが危険極まりない猛獣たちが巣食う世界に行くなど国の重要人が簡単に承諾するはずもなく、実はその件のことで千冬たちの仕事は増えていたのだ。
しかし、「これは異世界の未知の技術を吸収するため」という心にも無いことを報告し何とか納得してもらった。つまり今春十たちが楽しめているのは千冬と真耶のおかげでもあった。
「それよりも織斑食堂のことはどうなった?」
「ええ、織斑君……弟君の方の料理の味で舌を肥やしてしまった生徒たちが、普通の食事では満足できないようになってしまって……」
「まったく情けない……強い乙女を目指すのなら、食問題ぐらい自力でなんとかしろ」
そう溜息を吐きながら愚痴を零し生徒に呆れる千冬だったが、実は彼女も一夏が旅立って数日ぐらいはその味が忘れられず人知れず困っていたのだ。それ程までに一夏の料理は学園全体に影響を及ぼしていた。その秘密を知っている数知れない1人である真耶はそれに対し「どの口が言うか」と言った感じでクスクスと笑っていた。
見透かされている、千冬の頬が若干紅く染まった。
そんな平穏な時間、それが
「なッ……これは!?」
『さぁーいよいよ予選の再会です!第1回戦も無事終了、生き残った16人がどんな料理、そして味を魅せてくれるのか楽しみです!』
「「「うおおおおおおおおお!!!!」」」
一方その頃グルメ世界では祭りが一段盛り上がっており、会場は何度目か分からない沸騰を迎えていた。VIP席ではIS世界の住民と新四天王が談義している。
「おい!一夏の野郎マジで優勝狙えるんじゃねーか!?」
「当たり前ですわ!私のコンビですもの!」
「いや、一夏は僕のパートナーだよ」
「アタシのだアタシの!」
地位が上の者しか座れないはずのVIP席、しかも各国の大統領や国王と並ぶ席なので当然マナーがある前提だ。しかし春十たちはガヤガヤと騒ぎその片鱗すら見せていない。
「これもう絶対優勝するって!」
「いや……まだ分からないわよ!」
するとリンカだけは珍しく落ち着いた様子を見せ、春十の自信満々な言葉を否定する。その様子に新四天王たちは首を傾げた。
「珍しいね、リンカが一夏の事でそんな風になるなんて……てっきり賛同するかと思ってたけど」
「だって……次の対戦相手は小松さんよ?」
そう、次の一夏の対戦相手は師匠である小松、そのことについてリンカは不安を覚えていたのだ。
「確かに
そうしている間にも両選手が登場していく。小松と一夏、客にとっては夢のようなカードとなり会場は一気に盛り上がった。
「下克上だ一夏ぁー!!」
「師匠の底力を見せてやれ小松シェフッー!!」
『さぁーお待ちかねの師弟対決ゥ!!果たしてどちらが勝利するのでしょうかぁーー!?種目はこちらです!!』
そう言ってムナゲが宣言すると再びスタジアムの中心に新たなステージが追加される。それはまるで暗幕のテントのように不気味な雰囲気を醸し出していた。
それは、小松にとって懐かしいものでもあった。
『闇料理対決!!この何も見えない暗黒空間の中で料理してもらいます!』
「特訓の成果……見せてやりますよ!師匠!」
「うん、一夏君!」
この師弟対決、どちらが勝つかもう分かり切ったものですね。