トリコ 一夏がトリコの世界に行って料理人になって帰ってきたお話 作:ZUNEZUNE
宣伝としてなろうでの作品も晒します。
「丸太の戦乱」
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ぜひご覧ください!
『さぁー闇料理対決も終了いたしました!両者とも料理を完成させてキッチンの中から出てきました!』
小松と一夏が同時に外に出て、今まで闇の中にいたため昼間の明るさに目がくらむも自分の品を審査員の前に出していく。どちらも満足のいく料理ができたらしくやり切った顔で自慢の品を見せていく。
『まずは一夏シェフから!どうぞぉ!』
「俺の作った品です!どうぞ食べてください!」
そう言ってG7の前に品々を出していき、一斉に開かれる。
そこにはトマトの赤みが移ったパスタの麺、ベーコンやピーマン、タマネギといった具が一緒に絡まっていた。
「これは……ナポリタンか!」
「はい!『ブドウトマトナポリタン』です!」
一夏が暗黒の中で作ったのは、その暗い空間とは正反対の情熱の赤、ブドウトマトのケチャップで味付けしたナポリタンであった。
ブドウトマト、それはミニトマトがブドウの房のように集まって実る特殊なトマト。それでも1つ1つは普通のトマトやブドウに負けない甘みと新鮮さを持っている。それをケチャップにしたわけだ。
早速G7はフォークを使い麺を絡め、他の具材と共に口の中へと運んでいく。そしてその味を舌の上に乗せた瞬間、大きく見開いた。
「これは……ブドウの濃厚な甘み、トマトの爽やかさ、一見正反対にも思える味が共存し麺の一本一本に染み込んでいる!それでいて僅かな酸味が食欲を掻き立てている!」
「そしてこの『パスタ麺の木』の樹皮から生産されたこの麺、しっかりと濃厚なブドウトマトの味を持っているというのに、まるで蕎麦のような喉越しの良さだ!爽やかで深い味わいが一気に喉奥へ走っていく!」
そして審査員たちはまるでラーメンのように麺を啜り始める。少し行儀が悪いがそれ程までにブドウトマトの味が病みつきになっているのだろう。
そして勿論、このパスタの強みは麺だけじゃない。
「スライム玉ねぎ、ルビーピーマン、野菜の具材たちが別方向からブドウトマトの味を押し出し、素晴らしい引き立てだ!柔らかい玉ねぎと歯ごたえのあるピーマン、その食感も面白い。噛むのがやめられんぞ!」
『おぉー!一夏シェフのナポリタンは好評のようだ!これは勝負が分からなくなってきたぞぉー!』
「うむ、見事だったぞ一夏シェフ」
「ありがとうございます!——よし!」
見事G7たちの舌を高めた一夏はガッツポーズをし、心の中で歓喜する。あの暗闇の中でも十分美味しいパスタを作れた、それに加えて見えない中パスタ麺やトマトをちゃんと時間通りに煮込めた点は高得点となるだろう。
しかしまだ勝負は分からない、次は小松の番だった。
「……一夏君、さっきのナポリタン凄かったよ。でも、君はまだ
「え……?」
師匠の言葉に若干戸惑う一夏、そして小松は一夏と同じようにG7の前に自分の品を出す。
パラパラとして黄金色に輝く米粒、中には様々な具材が眠っておりホカホカの匂いを醸している。そう、これは——
「チャーハンか……!」
そこで一夏は驚愕する。あの手元が全く見えない状態で焼き加減を伺う必要があるチャーハンを作る。それがどれ程の技術が問われるか、しかもフライパンだって碌に使えないはずだ。
そしてその凄さは、使っている米などの食材によって更に証明される。
「これは……焼く時には全ての米粒を均等に焼かなければならない『石米』!これをあの中で、尚且つチャーハンにするとは……喜んで実食させてもらおう」
そうしてレンゲを持ち、爽やかな匂いを放つチャーハンを掬っていく。1粒1粒がまるで宝石のように輝くそれは何とも美しく、一瞬口の中に入れるのが惜しいと思う程だった。
しかし食わなければ意味がない、審査員たちは少し遠慮してその味を堪能し始める。そして一夏の分も作ってくれたらしく、有難くいただくことに。
(口の中に入れた瞬間、香りと旨味が一気に広がった!米粒が爆弾のような存在感を放ち続け、いつまでも味が口の中に広がっていく!)
「石米は焼く時間と火加減によって味を大きく変えます、その中でも一番濃い味付けになる焼き方にしました!」
「濃厚な味でいて何てパラパラ感!水のように飲み込めるし、決して味に飽きない!具材もそれを上手く引き立てて食べるのを止められない!」
「具材は『七色カニカマ』、『鶏王卵』などふんだんに使いました。石米のチャーハンに一番合う……いや、
「……会いたがっていた?」
すると小松が一夏の方に向き合う。その表情は物事を説く師弟同士のようであった。その言葉を理解できてない時点で一夏と小松の間にはかなりの実力差があるだろう。
「一夏君、君は確かに食材の声を聞いてあの具材を選んだ。だけど食材たちが真に求め合う組み合わせまでは読み切れなかったようだね」
「?――そうか、そういうことか!」
一夏はあの闇の中、なるべく調理が難しい食材を選んだ。その方が高得点になるからだ、しかしそれで食材の声を一部聞き逃すことになってしまい、一番合う組み合わせを見誤ってしまったのだ。
その点小松は闇の中で正確にその声を聞き取り、見事石米にピッタリな具材を選ぶ。声を聞くという観点からも小松の方が大きくノウハウがあるわけだ。
(俺はまだまだ、食材を調理のものとしか捉えられていなかった、だけど師匠はその食材が一番望んでいることを親身になって聞き取った!)
「
しかし本当は違う、どこかの国宝が言った――「食材が料理人を選ぶ」のだと。
こうしてG7は両者の品々を堪能する。そこから数分話し合い、結論に至った。
最早、どちらの勝利かは明白だった。
「一夏シェフの料理も見事だったぞ。しかしそれ以上に小松シェフの方が食材の味、引き立て、組み合わせを熟知できていた。よって勝者は——!」
「一夏ー!」
廊下を歩いている一夏に真四天王とIS組が駆けつける。既に一夏は着替え終わり、今から客席に行くところだったのだ。
「ドンマイ、相手が悪かったわね」
「ああ、俺もまだまだってことが分かったよ。やっぱ師匠はすげぇや!」
結果は明白、一夏の負けである。敗北した一夏を慰めようとリンカたちはここに来たわけだ。
「……悔しくないのか?」
春十の言葉を聞いた瞬間、一夏は持っていたシェフの帽子を握りしめた。バレないように唇も噛み締め、プルプルと腕を振るわせた。
しかしそれでも明るい笑顔をすぐに見せ、誇らしい表情で嬉しそうに話す。
「悔しいさ……だけどそれ以上にあの人と戦えて嬉しかった。後は観戦して沢山勉強する!」
「そう……それでこそ一夏よ!」
どんなに打ちのめされても諦めない、それが一夏という男だった。
そうして場の空気が和やかなものになった途端、腕につけていた別宇宙移動装置のアラームが鳴る。それはIS学園からの通話、つまり千冬からものであった。
「もしもし、どうしたの千冬姉?」
『い、一……夏か!?』
しかしそこから流れるのは掠れた千冬の声、雑音、爆撃音、破壊音など、あらゆる負の音が混ざり合っている。それによって落ち込んでいた一夏の気持ちが一気に跳ね上がり、他の面々と共にそれに集中した。
「――本当にどうしたの!?何か凄い音が……!」
『こ、この間学園を襲撃した連中が、また……ぐわぁ!?』
聞き慣れていない千冬の悲鳴を最後に通話は強制終了する。少なくとも向こうは楽しい雰囲気とかではないらしい、そしてその内容に一夏はハッとする。
それは、4年に一度の祭典のことなどすぐに忘れさせるものだった。
「まさか……俺たちがいない時を狙って……!?」
ちなみに小松の料理をチャーハンにしたのは、アニメのトライアスロンクッキングでチャーハンを作っていたからです。