トリコ 一夏がトリコの世界に行って料理人になって帰ってきたお話   作:ZUNEZUNE

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グルメ7 一夏の課題!

「さてと…話をしますか」

 

事件後、ラウラは医務室に運び込まれ、春十、箒、シャル、セシリア、鈴、千冬、真耶が理事長室に呼ばれた。

そこにいたのは、この学園の表向きの経営者である「轡木 十蔵」。「学園内の良心」とも呼ばれている壮年の男性だ。

 

「まずは…『血まみれ』の話ですね」

 

「…ッ!」

 

その名を聞いて、織斑姉弟と箒、そして鈴が言葉を詰める。

千冬以外の3人は俯いている始末だ。

 

「…織斑先生、それに織斑君や篠ノ之さん、凰さんは彼を知っているのでは?」

 

「……はい」

 

答えたのは千冬だった。

他の3人は冷静に答えられる程、落ち着いてはいなかった。

その態度に部外者は不思議に思う。

 

(何故織斑先生や皆は…そんなに落ち込んでいるのだろ?)

 

(鈴さん…彼の素顔を見て泣いた…何故でしょう?)

 

その答えは、千冬が喋った。

 

「彼…いやあいつの名前は…『織斑 一夏』、私や織斑の…弟です」

 

「「「!!??」」」

 

弟、何も知らない人達はその単語を聞いて驚く。

 

「…弟?」

 

「はい、私達織斑家には末の弟がいました。しかし…」

 

その続きを話そうとすると、鈴が再び涙を流す。それに対し、セシリアが寄り添った。

 

「あいつは…数年前の第二回モンド・グロッソの時に誘拐されました」

 

「誘拐!?」

 

「誘拐犯の目的は、弟を人質にとって私を連続優勝させないことでした。しかし私は誘拐のことを大会関係者から伝えられておらず、終わると同時に教えられ、急いで助けに行きましたが…」

 

「一夏は…消えたんだ」

 

ここで黙っていた春十が口を開く。これ以上、悲しい話を姉にさせたくないのだろう。

 

「消えた…?」

 

「はい、一夏の姿はどこにも無かったそうです。捕まった誘拐犯に聞いても『何も知らない』『急に消えた』だけで…」

 

「行方不明…ということですか」

 

「………はい」

 

「しかし消えたはずの彼は男性でありながらISを操縦し、謎の怪物と戦う者として現れた…と」

 

「俺には分かりません!何故一夏が化け物と戦っているのかが!何故俺達に会わないのかが!」

 

「…分かりました。『血まみれ』が『織斑 一夏』であることを伏せて、今回の事件は政府に報告します」

 

「理事長先生…!」

 

「今日は解散です。皆さんはしっかり休んで下さい」

 

 

 

 

 

 

「鈴さん…それで泣いていたんですね…」

 

「行方不明の弟か…そりゃびっくりするよ…」

 

廊下を歩きながらセシリアとシャルが話している。

 

「それにしても…一夏って人…凄かったね」

 

「…ええ、あんなデカい怪物をあっさりと…」

 

「改めて気になるよ…怪物達の正体、織斑一夏の強さ…」

 

「また怪物は現れるのでしょうか?」

 

「…分からない。けど、これだけは言える」

 

シャルがセシリアに振り向いて、こう言った。

 

 

「そうなった時、あの一夏って人は…織斑先生(おねえさん)春十(おにいさん)を絶対助けるって…」

 

 

 

 

 

 

一方束のラボでは…

 

「お待たせしました〜!」

 

一夏の料理で、パーティが開かれていた。

 

「おお〜!!」

 

束とクロエに用意されたのは、数多の料理。狩った鵺コッコで作ったのである。

 

「鵺コッコの『狸の胴体』で作った『狸汁』にぃ…『蛇の尻尾』の『串焼き』、まだまだありますよ!」

 

「「いただきます!!」」

 

その料理を、2人が堪能する。

 

「この狸汁!ちょっと臭いけど美味しい!この臭みが肉の味を盛り上げてるよ!」

 

「蛇の串焼き…見た目は少々グロテスクですがジューシーでとても味わい深いです…」

 

「他には…『鶏の頭』のチキンステーキに、『翼』で作った手羽先、『虎の手足』の焼き肉です!」

 

「私虎初めて食べるよ!まず食べられるの?」

 

「強壮効果があるって昔から言われてるみたいですよ束様」

 

「鵺コッコは部位によってできる料理も違う…料理人にとって最高です!」

 

「そう言えばいっくん、何だか最近厨房に籠もりっぱなしだね」

 

それに対し、一夏は頬を掻きながら答える。

 

「実は…この間向こうの世界に行った時…師匠から課題を出されて…」

 

一夏の師匠、それは美食屋トリコのパートナーである小松である。

小松の教えは、一夏に途轍もない技術力を与えている。

 

「課題?」

 

「はい、その課題が難しくて…」

 

「どんな課題なんですか?」

 

クロエが気になって質問する。一夏は冷や汗を流して言った。

 

 

「『ロイヤルマンボウ』の調理です…」

 

 

「「ロイヤルマンボウ?」」

 

聞いた事の無い名前に首を傾げる2人。

マンボウは聞いた事はある。しかしロイヤルが付いたマンボウは知らない。

当然だ。グルメ世界の食材なのだから。

 

「普通のマンボウって…『最弱の魚』で有名じゃないですか」

 

「うん、ジャンプすると水面に激突して死んだり太陽光で死んだり海底に潜ってその寒さで死んだり」

 

「束様、それ嘘らしいですよ」

 

「へぇ〜」

 

束の知識にクロエが指摘する。

少し軽い空間になったのだが一夏の表情は暗かった。

 

「だけどロイヤルマンボウは本当に最弱で…その嘘以上に死にやすいんですよ」

 

「例えば?」

 

「えっと…住処から少しでも離れるとストレスで死んで、他の魚を見るとびっくりして死んで、小さな音にもびっくりして死んで、僅かな水流に対しても死んで…」

 

「弱っ!?」

 

「だから捕獲も大変なんです…ストレスを与えないよう一瞬でノッキングする。死んだら味も悪くなるし…」

 

その説明は、溜息が混じっていた。

 

「一応捕獲に成功されたのを用意されましたが…捌くのも大変で…少しでも力加減を間違えたら味が悪くなる…とんだフグ鯨です」

 

「そ、それ本当に調理できんの?」

 

その説明を聞いた束とクロエはただ呆れていた。

本当に弱い生き物だ。どうやって生きてきたのだろう?

 

「一応調理できる人はいますよ…『師匠』に『国宝の弟子』、『三代目調理王』に『膳王のひ孫』とか…」

 

「…何か二つ名を聞いただけで凄そうな人だね」

 

「『凄そう』じゃなくて『凄い』んです」

 

ここで一夏は座り、疲れ切った表情で項垂れる。

 

「やっぱ1回『食林寺』に行った方が良いかも…」

 

難しい課題に、一夏は頭を悩ませた。

 

 

 

 

 

 

ちなみに学園では…

 

「お前は私の『嫁』にする!決定事項だ!異論は認めん!」

 

「「「えええええ〜〜〜!!!???」」」

 

「よ、嫁!?婿じゃなくて?」

 

とある事件が起きていた。

 

 




今回はちょっと短めです。原作二巻を買いました!

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