トリコ 一夏がトリコの世界に行って料理人になって帰ってきたお話   作:ZUNEZUNE

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バイトの応援で遠くまで行くのがめんどくせぇー!!


グルメ81 堕ちた神!

美食會残党との戦いが遂に始まったIS学園、各々の武器を前面に出し迫りくる猛獣を蹴散らしていき死線を潜り抜ける。

校舎の近くでは楯無と簪が姉妹息ピッタリの連携をしていた。学園でもトップの実力を持つ楯無、そしてその妹でありグルメ世界で過酷な環境を潜り抜けた簪の2人にそう勝てる相手はいないだろう。

 

「大丈夫簪ちゃん?」

 

「お姉ちゃんこそ――!」

 

共にお互いの身を気にしながらも力を振るい猛獣を蹴散らしていく。猪突猛進、勢い付いた彼女たちを止められるものは誰もいないだろうと思われた。

しかしその瞬間、上空から降り注ぐ閃光がそれを阻止する。

 

「ッ――!?」

 

「私の可愛い子たちをよくもやってくれたわね、まったく酷い……」

 

降り立ったのは金色のISを纏った美女、禍々しいデザインのそれは量産型などではなく今までに見たことのないタイプのISだった。そして猛獣たちはまるで彼女を母親のように見てその側に近づく。

この女は一体何者なのか、簪の警戒をよそに楯無はその正体を見破る。

 

亡国機業(ファントム・タスク)……やはり貴方たちも関わっていたのね」

 

「あらバレちゃった?私はスコール、流石は生徒会長さんね」

 

いくら美食會とはいえ残党にここまで勢力を用意することはできない、そこで亡国機業(ファントム・タスク)の支援を受け合体し新たな悪の組織として復活を果たしたのだ。

 

「懲りずにまた攻めてきて……そう何度も追い込まれるほど私たちは甘くないわよ」

 

「それはこっちの台詞、まさか前回の失敗を忘れて襲撃してくると思う?」

 

「……何ですって?」

 

 

 

 

 

「オラァ!!」

 

一方その頃春十とラウラ、次々と飛んでくる猛獣……いや、()()()()を相手に奮闘していく。そいつらは普通の人間など簡単に丸のみにできる大きさを持ち、ワサワサとおぞましく蠢いていた。

この世にいる生物とは思えない姿、それを春十は一度見たことがあった。

 

「こいつら……まさか!」

 

「当たりだよォ!織斑春十ォーーッ!!」

 

刹那、大きな影が2人を呑み込む。見上げれば、巨大な塊が敵意の目を向けてこちらに降下してきた。

春十とラウラは急いでその場から離れその攻撃から回避、派手に上がった土煙が晴れるとそこには見覚えのある蜘蛛のフォームをしたISが立ち尽くしていた。

ISの光る鋼のパーツに加え、その隙間から飛び出る本物の蜘蛛の足。まさに化け物ISと呼ぶに相応しい姿である。

 

「お前は……学園祭の時の蜘蛛女!」

 

「オータム様だ!」

 

「こいつ……何だあの姿は!?」

 

初めて見るその異形にラウラは目を大きく見開き、恐れを抱いて唾を呑み込む。無理もない、グルメ世界にも気味の悪い生物は数多く存在していた。

しかしISと融合しているものは初めて見るだろう、しかもそれはこの前より更に進化しており禍々しい模様が鋼鉄の上からでも浮かび上がっている。

 

「本当は織斑一夏とあの女の相手をしたかったが……テメェにも恨みはある!覚悟しな!」

 

「はっ!どうせまた馬鹿でけぇ虫を呼ぶんだろ!?そんなのに今の俺がやられるか!」

 

前回はバーミンエンペラーという美食會の副料理長に所属していたトミーロッドが作り出した混合虫を差し向けてきたオータム、しかし春十もかなり強くなっており今となっては負ける気もしない。

しかし、オータムはニヤリと笑った。

 

「そいつはどうかな?今度の相手は結構効くぜ?」

 

そう言ってオータムは上空に黒い穴を形成、そこから何かを出す気だった。確かに強くなった春十だがその精神はまだまだ未熟というわけでもなく、警戒心を張り巡らせる。

しかし数秒経っても足の1本も出てこず、静かな空間が流れていく。

 

「……何だよ、何も出てこな――ヅァ!?」

 

「ぐはッ……!?」

 

拍子抜けした春十は呆れた様子でオータムを見ようとしたその時、鋭い感触が光線のように駆け走り春十たちを薙ぎ払う。急に吹っ飛んだ、今はそれ以外の認識方法が無い。

一体何が起きたのか?倒れる春十が見たのは、地面にゆらりと舞いながら落ちる()だった――

 

「……何だ……アレ」

 

そしていつの間にか「ソレ」はオータムの背後に立っていた。オータム自身はまるで虎の威を借りる狐のようにニヤリとした笑みを見せつけてくる。しかし彼女の表情なんてこれっぽっちも目に入らない。それ程までにその存在は大きいのだから。

 

鳥の顔を持ったそれは、孔雀のように色鮮やかな翼を広げた。

 

 

 

 

 

一方その頃、異変は一夏とリンカの方にも訪れていた。2人は他のメンバーとは比べ物にならない力量であっという間に猛獣の群れを蹴散らしていき、その周囲には何も残っていなかった。

 

「よし、他の奴らを助けに行くぞ!」

 

「ええ!」

 

そうして全てが片付いた後、一夏たちは早速援護に向かおうと走り出す。しかしその直前、背中から飛んで来た殺気に思わず足を止め後ろを振り向いた。

 

(なんだこれ……人間界の猛獣が出せるものじゃない!)

 

(この甘くて透き通るような香り……まさか!?)

 

一夏はその凄まじい殺意に、リンカは既視感のある匂いに冷や汗を流す。そしてその正体はゆっくりと四足歩行で歩み寄り姿を現す。神のように後光を肉体から出し続け、まるで雪のように純白なその毛色を宝石のように魅せていく。

そしてその顔が見せつけるのは圧倒的捕食者の顔、牙を見せ虎の視線で一夏たちを刺してきた。

 

「四神獣……クリーム白虎!!」


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