トリコ 一夏がトリコの世界に行って料理人になって帰ってきたお話   作:ZUNEZUNE

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グルメ84 乗っ取り!

「この……速すぎるだろッ!!」

 

春十の周囲を緑色の閃光が飛び交う。いや、正確には閃光などではなく美しい羽根を持った朱雀であった。その速さはまさしく光速の如し、おまけに羽根の1枚1枚が光り輝いている為一閃の光と見間違えても無理は無いだろう。

その姿は一切見えない、見えない程速く飛び交っているので当然のことだ。しかしその深緑の線が描かれる度にその宝石の翅が空に舞いあげられ、風に煽られて優雅に落ちる。そうして地面に落ちる直前でまた吹き飛ばされての繰り返しであった。

 

その光景はまるで春十を中心に舞踏会が開かれているようで、素早いながらも美しい舞を朱雀は見せていた。ちなみにラウラはオータムと戦っており、1対1で分断されている。春十とラウラたちが優勢とは言い難いだろう、オータムもかなりの強化がされておりその上四神獣の1匹が相手なら苦戦も当然だ。

 

「ッ――悪魔の口(ヘルストマック)()()()()()()()!」

 

春十はビームシールドを自分の足元に展開、あっという間に周囲の地面はそこに吸い込まれていき凸凹だらけのクレーターが形成される。大量の瓦礫を吸い込んだ悪魔の口(ヘルストマック)、それはすぐさま開かれ今しがた吸い込んだものを朱雀の進行方向に吐き飛ばした。

一時的とはいえ軌道状に瓦礫の壁が形成されたため朱雀は飛行方向の変更を余儀なくされ、そのまま地面とは垂直に飛び上がっていく。その際にも羽根は花火のように散った。

 

「たくすばしっこい!」

 

『おうおう!いきなり敵のランクが上がったんじゃないかよ春十!』

 

そのかつてない強敵に白式と春十のグルメ細胞に宿る悪魔、サタンも反応。その姿は見えないし春十の耳にその卑しい声が届くことは無いが、それでも守護霊のように春十の背に現れる彼奴の姿を見るのは朱雀だけであった。

そこでようやく朱雀は表情を変える。今しがた自分が戦っている()()()()()に、とてつもないものが眠っていたのが分かったからだ。

 

『どうやら味のランクも極上らしいなぁ……そこの鳥、ちょっと齧らせろよ!』

 

「ぐあッ!?」

 

すると春十が苦しみだした瞬間、その目つきと表情は別人のように変わる。強敵として捉えていた目は完全に餌を見定めるものとなり、気のせいか牙を見せつけるかのように口角を曲げている。

 

『おお……向こうの世界でたらふく食ったとみえる。僅かな間とはいえここまで馴染むとは……少し肉体(からだ)を借りるぜ!』

 

そうして春十の体を乗っ取ることに成功したサタン、そのままISで一気に飛翔し朱雀へ接近。そのスピードは春十が主人格の時とは比べ物にならないもので、同格とはいかないものの渡り合えるぐらいの速さに進化した。

こうして繰り広げる凄まじい空中戦、ぶつかり合うたびに衝撃波が発生しどれ程激しくそして速い戦いが繰り広げられているかを説明した。

 

『流石に速いな!腹を空かせるには丁度いい!!』

 

サタンはそのまま刀も使わず拳で攻撃、その瞬間ISと春十の腕は白い巨大な腕に早変わりし朱雀に襲い掛かる。あまりにも大きく膨張したため朱雀のスピードでも回避が間に合わず片翼に掠れてしまう。初めてのダメージに朱雀は悲鳴を上げたりはしない、寧ろ空中でバランスを整えると同時に羽根の弾丸を発射していく。

 

『ほう、味見させてくれるのか!鳥頭の癖に中々親切じゃないか!』

 

それに対し悪魔の口(ヘルストマック)で防御、その際サタンの大きな口とビームシールドが重なるように見えた。

朱雀の羽根を全て吸い込み無力化、そしてそれをカウンターとして吐き出すことなくそれをただの栄養分として吸収していく。

 

『思った通りこいつの()()は極上だぜ!全部毟り取って食い尽くしてやらぁ!』

 

「待ちな!織斑春十!」

 

突如として鳴り響くオータムの怒号、サタンはそれが自分を指していることに気づくのが遅れ、数秒遅れて地面の方を見る。

そこでは、オータムがボロボロのラウラを大量の足で拘束していた。

 

「こいつがどうなってもいいのかよ!無駄に善戦なんかしやがって、動くんじゃねぇぞ!」

 

「す、すまん嫁……不意をつかれた」

 

オータムもラウラも今春十の体がサタンに乗っ取られていることは気づいていない。勿論サタンは春十のようにラウラへ何か特別な感情があるわけでもなかった。

 

『アァン?春十の女か……別にどうなったって――』

 

『――駄目に決まってるでしょう!いい加減にしなさい!』

 

そんな気高い女の声が上がると同時に、サタンは渋々と引っ込んでいく。白式と肉体の主導権は春十の下に戻る。それまで意識を失っていた春十は何が起きたのかと困惑して辺りを見渡す。

 

「あれ俺何を……ってラウラ!放せこの!」

 

「動くなと言ったはずだぜ!」

 

そこでようやく自分の状況を理解する春十、ラウラを人質にされ動けない状態となった。オータムはしてやったりといった表情で春十を睨みつける。そして己の蜘蛛の足で彼女の顎を丁寧に撫でている。

 

「調子に乗るからだ!このまま嬲り殺しにしてや――るぅ!?」

 

「その娘から離れろ!」

 

その瞬間、赤い斬撃がオータムを強襲。蜘蛛の足を切り裂いてラウラを解放。赤い悪魔――一夏が彼女のピンチを救う。

 

「一夏!」

 

「無事か春十兄!」

 

「てめぇ……織斑一夏ぁ!」

 

リンカと別れ春十たちの援護にやってきた一夏、ラウラを抱えて急旋回し春十の横に並ぶ。そして先ほどの変わりように静かに驚く。

 

(今の感じ……本当に春十兄だったのか?)

 

「すまねぇ一夏……こいつは朱雀だ!めちゃくちゃ強いぞ!」

 

「朱雀……野菜仙境のか!」

 

そこで一夏も敵を把握、野菜仙人のニジンから教えてもらったことを思い出す。そしてその朱雀も白虎同様操られていることに気づく。

 

「いくらテメェでも四神獣共には勝てねぇ!今度こそ捻り潰してやる!」

 

まさに虎の威を借る狐、オータムは指差して朱雀に指示を出す。気高い神獣も洗脳に負け彼女如きの命令に従ってしまう。

そうして再び羽根の弾丸が発射されたその瞬間であった。

 

 

「——ポイズンマシンガン!」

 

 

突如として地上から紫色の弾幕が展開、羽根を全て撃ち落としていく。それは全ての生物に有効とも言える毒で出来ていた弾丸であった。

その攻撃を撃った張本人に、一夏も春十も目を丸くした。

 

「——ララ!」

 

「久しぶりだね、一夏」

 

新四天王の一人、ララであった。

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