トリコ 一夏がトリコの世界に行って料理人になって帰ってきたお話 作:ZUNEZUNE
「チッ……織斑一夏はMに取られたか」
一方その頃学園ではオータムがMと一夏の消えた空を眺め舌打ちをする。前回の襲撃の際一夏とリンカにコテンパンにされた身としては今度こそその復讐を果たそうと思っていたが、それも叶わず彼女の苛々は徐々に頂点へと上っていく。あの赤い機体をこの蜘蛛の足で貫いてやりたいとウズウズしていた。
「まぁいい、兄とその妾共の無残な死体を見せれば少しは面白い表情をするか」
「やれるものならやってみなさいよ!」
そのオータムの相手は簪と楯無以外の専用機持ち、春十を筆頭とした箒、セシリア、鈴、シャル、ラウラと多勢に無勢だが進化したオータムの相手にはこれくらいの戦力差が丁度いいかもしれない。
かといって強くなったのは勿論春十たちもだ。グルメ界での経験は彼女と互角に渡り合えるようにしていた。
「俺は殺されないし一夏もやらせない!俺たちがお前を倒す!!」
「――生意気なんだよカス共がぁあ!!」
すると「アラクネ」の異形化した8本の足が瞬く間に展開され、その矛先が一斉に春十たちに襲い掛かる。咄嗟にISで空を飛翔し陣形を形成、春十と箒は上空に飛びシャルとセシリアは後退、鈴とラウラは左右に分かれた。
まずは後退組の援護射撃、ブルー・ティアーズのビットとラファール・リヴァイヴ・カスタムIIの弾丸が後方から撃ち込まれていく。足の間合いからはちゃんと離れ安全地帯からの射撃だ。
「鬱陶しい!そんなものが効くかッ!!」
しかし届かないだけで足自体は自由に動く。オータムはアラクネの足を驚くほど俊敏に操作し飛んでくる弾を次々と弾いていった。射線は通っているが決して命中することもなく、金属音が立て続けに鳴り響く。
「そんな!ブルー・ティアーズの一斉射撃をいとも簡単に……!」
「大丈夫!鈴とラウラが何とかしてくれる!」
すると次に動いたのは左右に分かれた鈴とラウラ、
引きつけるための誘導でもあった。
そうして足の可動域を支えている関節部へ斬りかかる。見事切断することはできたが数秒も経てばすぐに再生してしまう。
「なっ……再生だと!?」
「どんな仕組みよ一体!?」
「――お前らの前時代的で古臭いISとは違うんだよ!」
オータムは再生した足で鈴たちを一掃、更に爪先から光弾を発射することで更なる追い打ちを叩き込んだ。至近距離から放たれる光弾、薙ぎ払われた直後の2人に命中し派手に吹き飛ばす。
「づぅう……!!」
「このぉ……!!」
「私とアラクネはグルメ細胞によって既にISの範疇から外れている、最早お前らの知っている兵器じゃない!」
オータムの体にはグルメ細胞が後天的に植え付けられその影響がISにまで及ぼし実質融合のような形となっている。なので壊れた個所はすぐに修復、もとい再生するのであった。これを果たしてISと呼んでいいのだろうか、否――あれはもう別の何かであった。
「グルメ細胞とIS!この合体をお前らが倒せると思ってんのか!?」
「ほぉ……奇遇だな。俺も細胞持ちだ!!」
そうして有頂天になっているオータムに罰を与えるかのように、本来ならばISの戦いにおいて存在しないはずの男の声が響く。慌てて上を見上げるがもう遅い、同じくグルメ細胞……しかも食欲の悪魔を宿したIS使いの春十とその幼馴染である箒が一気に降下してきた。
2人の刃が、同時に振り下ろされる。
「「――おりゃああ!!!」」
「ぐおッ……!?」
その二撃に対し致命傷とはいかないが多くの足で支えられていた姿勢を崩すことには成功し、アラクネの重量感のある機体が地面に付く。
(こいつら……囮は後方射撃だけじゃない、第二陣も織斑春十たちの一撃を確実に当てる為か!)
6人もの戦士がバラバラに分かれたのは本命の一撃を必ず当てる為の陣形、この中で一番ダメージを与えられる可能性を持つのはグルメ細胞を持つ春十と最新ISに乗る箒だと踏まえての作戦であった。
勿論第一陣第二陣は本気で仕留めるために攻撃を放った。しかし下手に手加減すればそれこそ上空の春十と箒に気づかれてしまうかもしれない。
「足は蜘蛛の数だけあるのに、目は2つだけみたいだな」
「このぉ……糞カス共がぁあ!!!」
その挑発に易々と乗ったオータムは今しがた罵倒の材料にされた足を文字通り八方に伸ばし一気に光線を発射、辺りを更地にする勢いで破壊していく。
「くっ……なんて強さですの……!」
「これじゃあ近づけないよ……!」
あまりの弾幕に春十たちは逃げることしかできず、必死になって光線の間を潜り抜けていく。その破壊力は圧倒的なものでそれだけで自分たちの勝機を疑ってしまう。
「いや……やっぱり数の段違いで俺たちの方が有利だ。さっきみたいな陣形で攻め続ければ勝機はある!」
「流石は嫁、私が考えていたことと全く同じだ。やはり私とお前は結ばれる運命にある!」
「こんな時に何を言っている!わ、私だってそれくらい考えてたぞ!」
「いいえ!一番最初に考えたのは私ですわ!」
「僕なんか、それ以上の作戦を考えていたさ!」
ラウラの嫁発言に対し波紋が広がるかの如く反応していく鈴以外の女子たち、戦いの最中だというのにギャーギャーとまるで普段のように騒ぎ始めた。その原因は春十であるが……
「なんだ皆凄いな!やっぱ勝てるってこれ!」
(((相変わらず鈍感な……)))
「さっきから舐めてんのかお前ら!よし分かった、まずはお前らから潰してやるぅ!!」
こうして更に過激さが増していく戦い、春十たちはもう一夏がいなくとも十分グルメ世界の要素と戦えるようになっていた。
今回は割とスラスラと駆けました。