「お待たせしました。これ、ヨシェナベです」
ことり、と目の前に鍋と小皿が置かれる。食べたことも見たこともないその食べ物に、興味が湧く。聞いていたものと比べものにならないくらいのいい匂いに、我を忘れそうになるが、自我を保つ。ここは、トリステイン魔法学院なのだから。
「あの時は…ありがとうございました」
ヨシェナベを出してくれた少女の名前は「シエスタ」と言うらしい。普段から目にしているとは言え、名前は聞いたことが無かった。
「いや、あれは俺も無我夢中で」
紛れもない事実だ。トリステイン魔法学院で1、2を争うビリっけつの俺が誰かを助けるための余力があるわけ無い。あれはただ単に、不幸中の幸いだったというだけだ。
「あなたの本当の名前、教えてくれませんか?」
「言う、約束だったな」
シエスタは、ヨシェナベを食べるように手で促しつつも、あの日交わした約束を果たすように圧力を掛けてきた。忘れていた訳では無いが、本当に約束を果たすことになるとはな…。
「俺の名前は、アレス。『アレス・ブラットレイン』だ」
「それって…」
本名を言うのは、約束とは言え躊躇われた。今はメイドとは言え、本来はいい家の出身なのかもしれない。そうだとするならば、本名をさらけ出すのは危険だ。
「ああ。嫌われ者の、英雄さ」
一呼吸置き、俯く。
「そんなことは無いです!あなたは…嫌われてなんかいません!」
シエスタの大声に、思わず顔を上げる。金さえ積めばどんな人だろうと殺す俺が、嫌われてない?そんなはずが無い。そんなわけが無い。
「あなたは、人を助けられる優しい人です」
「そんなことは…ない」
優しい、ともシエスタは言った。確かに俺は彼女を助けた。しかし、それはあくまで結果に過ぎない。結果に、過ぎないのだ。
「…すいません。言い過ぎましたね」
「気にしないで、いい」
声の違いに気がついたのか、シエスタは謝ってきた。彼女が謝る義理も必要性もない。本来なら、俺が謝らなければならない。だが、たった一言も俺は言えない。それほどまでに、俺は弱い。
「あなたは、強いです」
そんなことは無い。その一言も、言えない。こんな俺より、シエスタはもっともっと強い。
「あなたの秘密、知っちゃったから私も秘密、教えますね」
一呼吸置き、シエスタは本当の英雄の名を口に出した。
「私、サイトって人が好きなんです」
片手で数えれるぐらいの魔法しか、俺は満足に扱えない。だが、それを極めれば、通り名が付いて回るようになる。
『
序章で早くも違和感ありありですか?
勉強するので許してください何にもしません(勉強はします)
終章までお付き合い頂けると幸いです。m(_ _)m