剣狂い転生漫遊記   作:アキ山

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 またはっちゃけちゃった。


剣キチが行く人理修復日記(3)

 星見台人理修復記 1日目

 

 

 拝啓、お袋さん

 

 常春の妖精郷には季節の変わり目はありませんが、いかがお過ごしでしょうか?

 

 冬木の特異点も解決目前にして、貴女の息子である剣キチは地味にピンチに陥っております。

 

 事の発端はアルトリアが黒化したこの世界のセイバーと戦っている間にまで遡る。

 

 二人が暴れ回る中、俺は大空洞の中に例のミュータントミミズの気配を感じ取った。

 

 魔力と邪気の質量からして、この大空洞に潜んでいるのは『フェアリー・ブレイバー』出動案件レベルの大物。

 

 奴の目的はどうであれ、セイバーに加勢されたりアルトリアが勝った瞬間に不意打ちされては拙い。

 

 そう考えた俺は奴が行動に出る前に処理する事にした。

 

 他のメンツがアルトリアの戦いに目を奪われている隙に氣殺法でその場を離れた俺は、大聖杯の蔭に隠れていた人に擬態していると思われるミュータントミミズを不意打ち。

 

 手足を落として無力化したところで、相手の姿を逆手に取って尋問を開始した。

 

 方法が青雲幇(チンワンパン)時代に使っていた過激なモノだったので、他のメンツに見えなかったのは好都合と言えた。

 

 というか無防備な相手に機械的に同じ質問を繰り返して、答えなかったら寸刻みに解体していくなんて絵面、とても子供達には見せられません。

 

 久々のダーティムーヴの結果として黒幕の名前を初めとしてそれなりの情報は手に入ったのだが、問題はカルデアからの緊急通信がオルガマリー所長に届いてからだった。

 

 人理焼却の事実が明らかになり、『シバ』と呼ばれる地球儀が真っ赤に染まった光景に錯乱する所長。

 

 彼女が縋ろうとしきりに名を呼んでいたレフ・ライノールなる男、彼の画像を見た瞬間に俺は思い切り顔を引きつらせてしまった。

 

 件の人物こそ、先ほど処理したミュータントミミズだったのである。

 

 人に化けているから何か意図があると思ってはいたが、まさかカルデアに潜入していたとは思わんかった。

 

『本当に人類が滅んでしまったなんて……ッ!? ねえ、ロマニ! レフは、レフはどうしたの!?』

 

 ……レフは肥料箱(ここ)にいます。

 

 よほど慕っていたのだろう、必死になってロマニ医師に問いただす彼女の姿には胸が痛んだ。

 

 結果的にはスパイを処理したことになるのだが、真実を告げるにはタイミングが悪すぎる。

 

 前にガレスが見ていた某ガンダムシリーズの様に『……レフです』とこの箱を渡そうものなら、ここまで築いてきた彼等との関係など木っ端微塵に吹っ飛ぶこと間違いなしである。

 

 俺は表情を消したまま肥料箱を姉御謹製の四次元倉庫へ放り込んだ。

 

 すまない、オルガマリー所長。

 

 君の信頼するレフ某は、妖精郷で立派なドリル大根に生まれ変わる事だろう。

 

 収穫のあかつきには一本進呈するので許してもらいたい。

 

 その後、合流した直後からずっと気になっていたオルガマリー所長が死んでいるという事実を本人に伝えたワケだが、これがまた手間がかかった。

 

 どこぞの世紀末救世主のように『お前はもう死んでいる』と言ったところで信じるわけがなく、納得させるのにロマニとダヴィンチちゃんからカルデアの被害や当時の状況なんかを聞きだして証拠を提示する必要があったのだ。 

 

 ぶっちゃけ、門外漢である俺に魔術を基にする証拠確立なんて無茶振りにも程がある。

 

 『爆発で肉体を失った所長を、テロのダメージで異常をきたしたシステムが英霊と誤認して冬木に送り込んだ』なんて超理論、よくもまあ信じてくれたものだ。

 

 この時ほど姉御の存在の大きさを実感したことはなかった。

 

 お通夜状態の立香ちゃんとマシュに『死にたくなーい!』とニセ赤木ばりに取り乱す所長。

 

 助かる方法は無いのかと三人で詰め寄って来たので、聖杯を使ったらいいんじゃねと提案してみた。

 

 誤解が無いように言っておくが、俺が提案したのは黒幕が残した特異点の根幹ではなく冬木の聖杯である。

 

 ピンチヒッターとはいえ、立香ちゃんは最後まで生き残ったキャスターのマスターだったのだ。

 

 勝者として聖杯を使う資格はあるだろう。

 

 幸い、大聖杯はナマモノになるほど汚染されてないようだし、肉体錬成諸々のやり方に関しても所長やダヴィンチちゃんがいる。

 

 というワケで専門家たちの集中講義を受けた立香ちゃんは頭から湯気を出しながらも聖杯を使用。

 

 見事、所長復活と相成ったわけだ

 

 この機会を逃さずに彼女が欲してやまなかったレイシフト適性とマスター適性をゲットさせたダヴィンチは天才だと思う。

 

 その後ほどなくして彼女達はカルデアに回収され、俺達もその縁を追って星見台の本拠へと足を踏み入れる事になった。

 

 訪れた当初は爆弾テロの直後とあってどこもかしこも大わらわ。

 

 これから世話になる身という事で、俺も瓦礫の裁断から運搬などなどを手伝わせてもらった。

 

 いくら客分とはいえ、あの修羅場を放っておくほど人間腐っていないのである。

 

 復活したばかりの所長は検査等々がある為に医務室に入院。

 

 立香ちゃんとマシュも初の特異点修復を成功させた為にグロッキー。

 

 実務を取り扱うロマニ医師とダヴィンチちゃんも事後処理に大忙しだったので、詳しい説明は明日以降という事にして俺達は用意された部屋で床に就いた。

 

 子供達と一緒に寝るのは予想していたが、アルトリアまで潜り込んでくるとは思わんかった。

 

 そういえば実家にいた時は一回も一人で寝た事なかったな、この娘。

 

 姉御とお袋さんがいないから、俺にお鉢が回って来たんだろう。

 

 実年齢アラフォー間近でこの甘え方はどうかと思うが、こちとら1600歳オーバーである。

 

 可愛い妹のおねだりくらいは聞いてやろうじゃないか。

 

 

 星見台人理修復記 2日目

 

 

 カルデア生活二日目である。

 

 朝起きたら、アルトリアが『姉上のおっぱいはサイコー……』と寝言を言いながらモードレッドのお腹に顔を埋めていた。

 

 なんとも微笑ましい光景だったので、姉御とお袋さんに動画を送っておきました。

 

 カルデアの混乱も一応は収まった為に、ダヴィンチちゃんをはじめとする首脳陣にこちらの事情を説明した。

 

 現世は人類滅亡の危機だというのに、こっちはミミズによる害蟲被害の対処である。

 

 温度差の激しさは理解しているが、農家としては死活問題なので呆れた顔をしないでいただきたい。

 

 並行世界のアーサー王とその関係者という事で戦力としての期待が凄い。

 

 現状のカルデアの戦力はシールダーのマシュだけなので、これは仕方のない事だと言える。

 

 まあ、こっちも満を持して『アロンダイトMKⅢ』の封印を解いたのだ。

 

 この件が終わるまで世話になる事も考えて、彼等の思いには応えねばなるまい。

 

 俺も一度は撃ってみたいしな、ビーム。

 

 で、先日俺をピンチに追い込んだレフだが、カルデア内で姿が見えない事から死亡扱いされていた。

 

 だいたい合ってるので訂正の必要はないが、関係者各位には肥料になる前に彼が残した遺言は伝えておく必要がある。

 

 今回の騒動の裏にいるのは魔術王ソロモンであり、焼却された人類史に七つの聖杯を用いて同数の特異点を生み出したらしい。

 

 そしてソロモンの下に行く方法は、全ての特異点を修復して七つの聖杯を集める事のみ。

 

 この事を伝えると『ソロモン……悪魔くん?』と言っていた立香ちゃん以外は頭を抱えていた。

 

 因みにウチの家族は全員ソロモンの事を知りませんでした。

 

 俺や子供達はともかくアルトリアが知らんというのは少々意外な気もするが、あいつの立場を考えれば大昔に死んだ異国の王なんて憶えてる暇が無かったのだろう。

 

 その後、ダヴィンチちゃんから言われたのが、俺達にマスター適性があるかを検査したいというモノだった。

 

 現在、カルデアが保有しているマスター適性者は2名。

 

 内一名が入院中である事を思えば、現状で稼働できるのは立香ちゃん一人になる。

 

 人類の命運を賭けた闘いに於いて、さすがにこれは拙いとあちらも考えたのだろう。

 

 こっちとしては子供を戦場に出すとかナイワーなのだが、ミユちゃんは神使の使命の関係から出ざるを得ない。

 

 となれば、姉を自認しているモードレッドだって黙ってはいないだろう。

 

 俺が付いている間はいいが、何かの拍子に離れてしまった場合は不安でしょうがない。

 

 その際にサーヴァントが身近にいれば、あの子達の生存率は確実に上がる。

 

 危険が避けられないのならば、身を護る術を用意するのは当然と言えるだろう。

 

 そんなワケでダヴィンチちゃんの申し出を受けたのだが、検査の結果は全員がマスター適性ありだった。

 

 俺は過去に二度のマスター経験があるので当然だが、子供達やアルトリアにもあったのは意外だった。

 

 この結果を受けて、善は急げとばかりに新たなサーヴァントの召喚へと話は流れたのだが、これについては俺は遠慮しておいた。

 

 サーヴァントほったらかしで前線に出るからマスターの才能皆無だし、昔冗談で言っていた闇落ちした自分自身が現れたらシャレにならないからだ。

 

 アルトリアの方も『これ、私が召喚したら円卓の連中か、黒い私が来ませんか?』としかめっ面。

 

 とはいえ、俺たち二人が辞退するとカルデアの戦力的にヤバい。

 

 仕方が無いので妹に『黒いお前と黒い俺、来るならどっちがいい?』とアンケートすると、0.5秒で召喚すると言ってくれました。

 

 というわけで記念すべき第一回の召喚が始まった。

 

 一番手を飾るのは立香嬢ちゃんで、彼女が呼び出したのは青いケルティックスーツに紅い槍を持つランサーだった。

 

 立香ちゃんの頭を撫でながら『今度はちゃんとランサーで呼んでくれたな。ありがとよ、マスター』と言っているあたり、彼は冬木のキャスターだったクー・フーリンなのだろう。

 

 続いてはミユちゃんなのだが、マシュが置いた盾を前に表情を曇らせていた。

 

 事情を聴いてみると、召喚の呪文が難しくて憶えられないのだと言う。

 

 たしかに7歳児にあの呪文はハードルが高いだろう。

 

 どうしたものかと考えていると、モードレッドが『だったら歌にしたら憶えやすいぞ!』と提案。

 

 ミユちゃんはカンペを持ったアルトリアを前に、モードレッドと二人で『みったせ、みたせ~♪』と身体を振ってリズムを取り始めた。

 

 こうして即興の歌を終えると、出て来たのは冬木でアルトリアに吹っ飛ばされたアーチャーであった。

 

『サーヴァント・アーチャー、召喚に応じ参上した。私のような役立たずを……本当に君がマスターかね?』

 

 召喚と同時に皮肉気なセリフを吐いていたアーチャーであったが、呼び出したマスターが7歳児である事に面食らっていた。

 

 『ミユです! よろしくおねがいします!!』と元気よく下げられた頭を苦笑いで撫でていたので、悪い関係にはならないだろう。

 

 三番目はモードレッド。

 

 再度奏でられた『召喚のうた』によって呼び出されたのは、なんとルーマニアの聖杯大戦で知り合った赤のセイバー。

 

 並行世界のモードレッドだった。

 

『セイバー、モードレッド推参だ! 父上は……って、チビじゃねえか』

 

 どうも聖杯大戦での記憶があるらしく、歓声を上げて抱き着いて来たモードレッドの頭をワシワシ撫でていた。

 

『久しぶりだな、モーねーちゃん!』

 

『姉ちゃん言うな、モーさんって呼べ』

 

 てな感じに並行世界の自分自身だけあって相性は悪くないようで、モードレッドが懐いて赤セイバーがぶっきらぼうながらも面倒を見るという関係が出来上がっていた。

 

 少々粗野ではあるが悪い子ではないので、モードレッドを任せても大丈夫だろう。

 

 そしてトリを飾るのはアルトリアだ。

 

 カンペを見てもなお噛んだりトチったりと不安な詠唱によって召喚されたのは、やはりと言うかなんと言うか並行世界のアルトリアだった。

 

 白の鎧に黒のリボンで髪を纏めたセイバーリリィと名乗る彼女。

 

 覇気や貫禄は絶対的に足りないものの純真無垢な少女を見て、『私にもこういう時代がありました』と召喚主であるウチのニートは目を細めた。

 

 当然、嘘つけとフルボッコにされたのは言うまでも無い。

 

 

 星見台人理修復記 3日目

 

 

 サーヴァントの増加によって、爆弾テロと人理焼却で消沈していたカルデアもにわかに賑わいを取り戻し始めている。  

 

 子供達の朝飯を作りに起きてみれば厨房ではアーチャーがエプロン姿で陣取っていたり、ランサーが事あるごとに不幸な目に遭ったり。

 

 またはリリィが何故かマスターであるアルトリアを師匠と呼んで慕っていたりと、彼等が巻き起こす騒動には(いとま)がない。

 

 今日も今日とて、疲れた顔の赤のセイバーから愚痴を聞く事になった。

 

 どうも彼女はアルトリアとリリィに構い倒されているらしく、二人のスキンシップと父親である騎士王の塩対応のギャップに悩んでいるそうな。

 

 アルトリアは彼女をガレスやモードレッドに続く第三の姪として扱い、リリィにしても未来の娘と聞いて興味津々の様子。

 

 他者の好意に慣れていないセイバーにしてみれば、『ケツの座りが悪い』という本人の弁の通りに落ち着かないものなのだろう。

 

 とはいえ、こればっかりは俺にもどうしようもない。

 

 嫌がらせを受けているならまだしも、構っている方が向けているのは100%純粋な善意と好意である。

 

 本人の口から拒否するなら兎も角、兄妹とはいえ第三者の俺がストップをかけるのは少し違うだろう。

 

 語っている途中で口元がにやけているのを見れば、本人もまんざらじゃない事はまるわかりだしな。

 

 ちなみにこの件、何気に面倒な方向で問題の芽が出ていたりする。

 

 セイバーから彼女の世界の父がやらかした事を聞いて、アルトリアの騎士王に対する印象が劣悪なモノになっているのだ。

 

 常識的に考えれば騎士王が取った対応はやむを得ない部分が多々あるのだが、生憎とアルトリアの良き父親の基準は俺。

 

 『どういう経緯であれ、子供が出来たならば認知しないと悪』という大変ハードルが高いモノになっている。

 

 さらにはウーサーやランスロットを通して子供へのネグレクトを死ぬほど嫌っている為、子供だと告白したセイバーを認めなかった騎士王の行動が許せないらしい。

 

『一代で国を潰した無能が他人に「王の器ではない」とか、どの口で言ってるんでしょうね。そういうセリフはまず鏡に映った間抜け面にむかってぶつけるべきでしょう』とは愚妹の弁である。

 

 アルトリア自身が自分は王としては三流だと思っているようなので、話しているとこういった自虐ネタはけっこうポンポン飛び出してきたりする。

 

 この発言の後で『騎士王が召喚されたら話(物理)を付けてセイバーを養子にする』などと息巻いていたが、果たしてどこまでが本当なのだろうか。

 

 というか、養子を迎えるつもりだったらニートは認めんからな。

 

 

 星見台人理修復記 4日目

 

 

 こちらでの生活も一段落したので、姉御に連絡を入れてみた。

 

 幸いな事に妖精郷の方は『フェアリー・ブレイバー』の活躍によって平穏を取り戻しているらしい。

 

 中でも陛下の新たなパワーアップ形態である『グレート・ヴォーティガーン』の活躍は目覚ましく、異常発生した大型ミミズ6体を単独で撃破する快挙を成し遂げたらしい。

 

 つーか、グレート計画完成してたのね。

 

 アグラヴェインの話では、この 『グレート・ヴォーティガーン』は通常形態の陛下に比べて5倍のパワーを持つらしい。

 

 マジかー。

 

 新たな力を得た妖精郷の勇者に驚くやら頼もしいやらでリアクションに困っていると、ここでお袋さんから思わぬ情報が齎された。

 

 なんと親父殿が生きていたらしい。

 

 この言葉を耳に入れた瞬間には、何を言われたのか理解できなかった。

 

 親父殿が死んだのは1500年以上も前ですよ、姉上。

 

 エイプリル・フールにはまだ早いなどと思いつつも聞いた事情は、予想の斜め上を行くものだった。

 

 事の始まりはウーサーと我が父ゴルロイスの内乱終結まで遡る。

 

 合戦中に討たれた親父殿は、その首を取られる寸前で援軍に来たヴォーティガーン陛下によって回収された。

 

 長年の友の加勢に間に合わなかった事を悔いながらも、陛下はニニューさんから聞いていた秘術を使って親父殿の魂を専用の器である宝石に保存したそうだ。

 

 今の魔術では魂の物質化や保存は魔法の域らしいのだが、当時では割とポピュラーな術だったらしい。

 

 実際お袋さんの家系に伝わる秘術の中にもそういった物が在り、魔法と定義されているものの幾つかはキリスト教入来の際に邪教として駆逐され、失伝したものも含まれているのではないかと見解を示していた。

 

 まあ、第二魔法と言われている並行世界移動が縮地で出来ている事を思えば、魔術師の魔法の定義も割とガバガバなんだろう。

 

 ともかく、保存された親父殿の魂は俺の勧誘にウチを訪れた際にお袋さんへと渡り、妖精郷への移住を切っ掛けとしてニニューさんへと託された。

 

 お袋さん的には陛下と同じくオートメイルの義体を用いての復活を期していたのだろう。

 

 親父殿用も作成されて無事に目覚めの時を迎えた訳だが、ここで一つ誤算が起きた。

 

 陛下やお袋さんから俺達の事を聞いた親父殿は、ショックのあまり自分の殻に閉じこもってしまったのだ。

 

 どうも俺と姉御が近親婚していたことがショックだったらしい。

 

『私の娘が倒錯的な性癖を持っている訳がない!!』という言葉を残して、システムダウンしたオートメイル。

 

 それは『フェアリー・ブレイバー』の前身たるニニューさんの倉庫に封印された。

 

 とはいえ、そのまま放置されていたワケではない。

 

 陛下の義体のアップデートに合わせて、親父殿の義体もまた改良を続けられていた。

 

 そう、『妖精郷の勇者ヴォーティガーン』の相棒として。

 

 それはかつて親父殿の救援に間に合わなかった陛下の『ゴルロイスと共に戦場に立ちたい』という積年の願い故だった。

 

 そうして倉庫に眠る事幾星霜。

 

 家の近くに発生した6体の巨大ミミズを相手に陛下が窮地に陥った時、親父殿は覚醒した。

 

 家族と親友を護る為、新たな妖精郷の勇者「ゴルロイスペリオン」として。

 

 …………なんだろうか。

 

 ロボット物の王道的展開だったり、なにげに家族がピンチやんけとか、ツッコミどころがありすぎて笑いしか出ないんだが。

 

 その後、二体の勇者が合体したことによって誕生した『グレート・ヴォーティガーン』によってミミズ達は無事に駆逐された。

 

 幸いなことに家族はもちろん家や畑にも被害はなく、親父殿が引きこもった原因である近親婚についても理解を得られたのだという。

 

 なお、姉御の説得の中に『お父様、ジオングって知ってますか?』という不穏な発言があった事に関しては眼を瞑ることにする。

 

 最後に此方の様子と今回の黒幕がソロモン王であることを伝えて、お互いの近況報告は幕を閉じた。

 

 しかし、帰郷するのがちょっと憂鬱になってきたな。

 

 親父殿の事なんて微塵も覚えてないし、姉御との事を言われても今更感が凄いんだが。

 

 ……とりあえず、父親の職業が『強化パーツ』であるという現実を認める事から始めるとするか。

  


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