剣狂い転生漫遊記   作:アキ山

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 お待たせしました、剣キチFGO6話です。

 今回はツナギのお話。

 本番は他の面々と合流した後という事で。



剣キチが行く人理修復日記(6)

 星見台人理修復記6日目

 

 

 フランス特異点での初日を終えたワケだが、何とも濃い一日になってしまった。

 

 こっちに来た途端に自称・特異点のボスである『竜の魔女』ジャンヌ・ダルクと遭遇し、戦闘になった事。

 

 積年の憧憬も込めてビームを撃とうとしたら、開けてはいけない扉を開きそうになってしまった事。

 

 そして姉御の友人であるグンヒルドさんの到来に加えて、受肉したエイリーク氏と悪神への階位を上げたアンリ。

 

 さらには『竜の魔女』が何者かの願いを叶えた聖杯そのものであることや、現地サーヴァントであるマリー・アントワネット王妃に天才音楽家であるモーツァルト、そして竜殺しジークフリートとの遭遇と、たった一日のイベントとしては盛りすぎな内容であった。

 

 ジークフリートに関しては、街から少し離れた廃屋で倒れているのをグンヒルドさんの使い魔が見つけた。

 

 発見時の彼は複数の厄介な呪いに侵されており、グンヒルドさんとアンリ曰く『生きているのが不思議』なほどの有様だったそうな。

 

 とはいえ、見た目からはどちら側か判断が付かない為、意識を保っていた本人から事情を聞くことに。

 

 ジークフリート曰く、マスター不在で召喚された彼がフランス各地を放浪していたところ、リオンの町が竜の魔女に襲われた際に偶然居合わせたらしい。

 

 英雄の一人として民の窮状を見捨てることはできないと町を護る為に竜の魔女に立ちはだかったのだが、生憎と向こうは竜に加えて複数のサーヴァントを従えており、サーヴァントの何騎かは撃破する事が出来たものの多勢に無勢という事もあって彼は敗北を余儀なくされた。

 

 彼を蝕んでいた呪いも打倒したサーヴァントがイタチの最後っ屁で残したものらしい。

 

 敗れたジークフリートがここまで生き残ることが出来たのは、助太刀で現れたゲオルギウスという聖人のサーヴァントに助けられたからだそうな。

 

 ベイヤードという愛馬でジークフリートと共に敵陣を突破したゲオルギウスは、呪いで動けない彼をここに隠し自らは囮となって竜の魔女をリオンから引き離したという。

 

 ここまで聞いた王妃はフランスの民の為に戦ったジークフリートに礼を言うと、彼を連れて行くと提案してきた。

 

 こちらも手勢が増えるのはありがたいのでNoを言う理由は無い。

 

 あと、彼を戦闘不能にしていた呪いに関しては俺がバッサリと切り捨てておいた。

 

 確かにタチの悪い代物だったが、聖杯を汚染していたアンリに比べれば可愛いモノだ。

 

 この際に概念斬りを知らない面々が何やら騒いでいたが、この辺は割愛しておく。

 

 そんなワケで同行者に竜殺しを加えてリオンを発った俺達は、周辺の町に他のカルデアメンバーが居ないか捜索しながら、敵の本拠があると思われるオルレアンを目指すことにした。

 

 モードレッド達が心配ではあるが、カルデアとの連絡が付かない事には彼等の明確な位置の特定は難しい。

 

 今回の特異点の舞台がフランス一国とはいえ、その領地は広大だ。

 

 当ても無く探し続けると言うのは効率的とは言い難い。

 

 ならば、『竜の魔女の本拠がオルレアンである事は誰でも知っている』という王妃の言葉を信じて、他のみんなと現地か道中で合流する事を狙った方が確率は高いだろう。

 

 俺達のようにレイシフト事故が起こっている事を(かんが)みれば、彼等も不利な状況に追いやられている可能性も無いとはいえない。

 

 しかし情報がほとんどない状態では、そこで気を揉んでも詮無きこと。

 

 グンヒルドさんだって、こちらの事情を聞いて使い魔による周辺へ捜索網を敷いてくれている。

 

 ならば、こちらに出来るのは一分一秒でも早く合流することだけである。

 

 こうして始まったフランスの旅だが、こちらにとってはなかなかに厳しいものとなった。

 

 ああ、道が険しいとか妨害が熾烈(しれつ)だとかそういうワケじゃない。

 

 どちらかと言えばメンタル的な物である。

 

 王妃からの情報では、リオンから目的地であるオルレアンまではかなりの距離があるらしい。

 

 レイシフト当初の野郎三名やジークフリートなら生まれ持った足で踏破すれば済む。

 

 しかし、現在は王妃やグンヒルドさんがいる。

 

 さすがに貴人である彼女達や音楽家であるモーツァルトにそんな真似はさせられない。

 

 あ、貴人に関してはエイリーク殿も当然の如くノーカウントである。

 

 いかに国王経験があろうと、略奪上等なバイキングやってたんだから彼はこっち側で問題はあるまい。

 

 出発するまではジャパニーズ籠屋方式を取って二人一組で運ぶか、荷車を買い取って野郎四名で馬代わりになるかを悩んでいたのだが、そこは王妃の一言によって解決する事となった。

 

 意外なことにライダークラスであった王妃は、自身の乗り物に俺たちを乗せてくれると言ったのだ。

 

 彼女の申し出はまさに渡りに船であったのだが問題が一つ。

 

 王妃が召喚した乗り物というのが、少女漫画や童話に登場するようなガラスの馬車だったのである。

 

 王妃やグンヒルド女史、百歩譲ってモーツァルトはいいとしても、俺達野郎四人には似合わないことこの上ない。

 

 初対面でモーツァルトにマフィア・美女と野獣(-美女)・謎の原住民と言われた男三匹に加えて、前がバックリと空いた鎧の存在意義を問うような装備を着こんだ怪しい剣士である。

 

 こんな奴等がキラキラした物に乗ったとすれば、その姿はシュールを通り越してもはやギャグの域だろう。

 

 俺や他の三人も自身の容姿に自覚があるので歩くと提案したのだが、王妃の強引さには勝てずに同乗することになってしまった。

 

 馬車の中でグンヒルドさんとエイリーク殿を切っ掛けにして、二人の恋愛エピソードを聞きまくる王妃。

 

 そうなると我関せずを貫いていたこちらにも飛び火するわけで、狂化も()がれて真っ赤な顔で轟沈したエイリーク殿が己が未来の姿かと恐々としていると、グンヒルドさんがやってくれた。

 

 なんと『当事者が揃っていなければ面白くない』という理由で姉御との通信を開いてしまったのだ。

 

 魔女ネットで連絡を取り合ってるとは聞いていたが、まさか特異点の中でも繋がるとは思ってもみなかった。

 

 姉御も突然の通信に驚いていたようだが、グンヒルドさんの姿を見ると『グンちゃん』『モル子』と呼びあって互いに相好を崩した。

 

 その後は俺達の思い出話を肴に盛り上がる女性陣の横で、エイリーク殿と同じく顔に血を登らせて轟沈することとなったワケだ。

 

 つーかあれよ。

 

 結婚式代わりのホームパーティの事までバラさんでええやん……。

 

 しかし姉御やグンヒルドさんはともかく、王妃もなかなかにぶっ飛んだ性格をしている。

 

 オークニーでの姉御の奇行を情熱的の一言で片づけるとか、普通はドン引くモノだと思うんだが。

 

 ……ああ、そういえば彼女はハプスブルク家の関係者だったな。

 

 あの家は領地を護る為に血族結婚を繰り返していたらしいし、その辺の忌避感も無いのかもしれない。

 

 因みに、アンリとジークフリートはコイバナが始まった途端に窓から屋根に逃げおった。

 

 下からアロンダイトで突き上げてやろうかとも思ったが、さすがに乗せてもらっている身でそんな真似はできん。

 

 だとしてもマスターを置いて敵前逃亡した罪は重い。

 

 機会があれば、ガレスがやっていたバイオハザードというゲームに出ていた『ハンク式処刑』を食らわせてやることにしよう。

 

 如何に魔竜の鎧とはいえ、関節技ならば役には立つまい。

 

 話は変わって日記を書いていて気づいたのだが、昼間に襲ってきた黒騎士のサーヴァント。

 

 あれってランスロットではなかろうか。

 

 あの時は脳みそがオーバーフロー気味だったので気づかなかったが、あの靄を纏ったフルプレートは第四次聖杯戦争に現れた奴そっくりだ。

 

 詳しく気配を確認していなかったので断定はできないが、可能性は高いと思われる。

 

 とはいえ、第四次のように並行世界の別人という事も無いわけじゃない。

 

 果たして、あそこにいたヤツは俺の知らない同異存在か、それとも俺の世界のランスロットなのか。

 

 アロンダイトМKⅢが減衰した事から考えれば、あるいは……。

 

 ともかく、合流を急ごう。

 

 どちらにせよ、あれの正体をアルトリアが知ったら間違いなくえらい事になる。

 

 俺たちにとっては1500年以上も昔の事でも、聖杯戦争で時を超えたあいつからすれば高々数年前の事件だ。

 

 当時は自分が動けなかったこともあって、ランスロットに対しては恨み骨髄だろうからな。

 

 ウチのアーサー王伝説にある『カムランの戦い』を鑑みても、あいつが本気でキレたらこの国が更地になりかねん。

 

 

 星見台人理修復記7日目

 

 

 ティエールという町で二騎のサーヴァントと合流した。

 

 ……合流というか、勝手について来たと言うのが正しいのかもしれないが。

 

 新たに参入したのは清姫と名乗る和装の少女とエリザベート・バートリーという名の半竜半人の女の子。

 

 双方共に年の頃は十代前半という可憐な乙女達だ。

 

 彼女達が付いてきた理由だが、清姫嬢は『貴方達に付いて行けば、運命の人に出会えると思いますので』と言い、『アイドル』のクラスを称するエリザベート嬢の方は王妃の持つ天然のカリスマ性に目を付けたらしい。

 

 街中で喧嘩していた二人をジークフリートがその防御力を活かしてサンドバックとなる事で収めて何とか事情を聞いてみたのだが、その理由が双方共に『なんだか良く分からんが、気に入らねぇ』というトンデモナイものだった。

 

 ともあれ、増えた同行者が女子だった為にさらに(かしま)しさが増した馬車の中、本日の彼女たちの話題もやはりコイバナだった。

 

 なんでも清姫嬢は生前に思いを寄せていた安珍なる僧侶の生まれ変わりを探しているのだとか。

 

 人間がそうホイホイ生まれ変わるだろうかと思ったが、俺というケースが実際にある事を考えればあり得ないとは言い切れない。

 

 『生前では添い遂げられなかったが、今回こそは必ず!』と誓いを新たにする清姫嬢。

 

 王妃は素敵な事だと素直に喜び、生まれ変わりという概念に懐疑的な様子を見せるエリザベート嬢。

 

 だが、この場には清姫嬢の情熱に感銘を受けてしまった女性が二人いた。

 

 そう、姉御とグンヒルドさんである。

 

 二人は来世も夫と一緒になるという考えが目から鱗だったようで、並々ならぬ食いつきを見せたのだ。

 

 中でも俺が転生者だと知っている姉御の熱意は相当なもので、女神パワーを総動員して俺との絆を基に死でも途切れない縁を結んでしまったのだ。

 

 『これで来世も一緒よ』と久々にハイライトが消えた目で笑みを浮かべる姉御。

 

 というか、身重の人間が何やってんだ。

 

 一瞬呆気に取られたものの、よく考えればこれも悪い話ではない。

 

 今生のように記憶を継承して生まれ変わった場合、俺は剣術狂いのロクデナシになるのはほぼ確定だ。

 

 当然、色などいらぬと異性関係はブッチぎるだろうし、その前にこんな頭のおかしい奴に付き合う奇特な女性がそういるとは思えない。

 

 その点、姉御が一緒なら俺が色んなものを逸脱しない為のストッパーになってくれるし、こっちの性格も知り抜いているので楽である。

 

 欠点らしい欠点は少々ヤキモチ焼きなくらいだが、それだって姉御以外に女性から好意をむけられた事のない非モテ代表の俺には被害はない。

 

 なんだ、良い事づくめではないか。

 

 『術式を掛けたからね』という姉御からの事後承諾に、笑顔で応じた俺を奇異な目で見る王妃と清姫嬢、そしてエイリーク殿以外の面々。

 

 因みに姉御が生み出した術式は即座にグンヒルドさんへとシェアされ、俺から10分ほど間を置いてエイリーク殿へも無事掛けられる運びとなった。

 

 言うまでもないが、やはり事後承諾である。

 

 まあ、当人もその辺は覚悟していたらしく、『次の生が許されるなら、再び妻と一緒に生きるのも悪くない』と笑っていた。

 

 最後に清姫嬢から『安珍様の生まれ変わりが見つかったなら、先ほどの術式を掛けてくださいませ』と頼まれたグンヒルドさんは快く頷いていた。

 

 もし本当に件の人物がいた際は、あの手の女性の付き合い方を色々アドバイスをしてやろうと思う。

 

 

 星見台人理修復記8日目

 

 

 今日も今日とてワイバーンが美味い。

 

 ジークフリートを助けた所為か、今日の朝方くらいからワイバーンが積極的にこちらを襲ってくるようになった。

 

 王妃の馬車は普通自動車と同じくらいのスピードで走っているのだが、それでも空を行くワイバーンを振り切るのは難しい。

 

 そうなると当然戦闘になるのだが、ちょうど撃墜スコアが30を超えた辺りで俺はこう思ってしまった。

 

 ワイバーン肉、もったいないと。

 

 俺の好物の一つに竜の肉がある。

 

 廃嫡されてすぐの頃に食べたワームを始めとして、ワイバーンやサーペントにレッドドラゴンなど。

 

 俺の竜食への歴史はなかなかに深い。

 

 1500年以上も食っているのだから、その年期たるや相当なものである。

 

 そんな俺にしてみれば、ワイバーンの肉を放置するなど普通は考えられない。

 

 干し肉に燻製、スライスした骨で骨センベイ。

 

 骨と薬味や香草から取った出汁で、臭みを抜いたモツを煮込んだ鍋。

 

 ブレスに使う喉袋や逆鱗辺りの肉はその場で焼いて岩塩でガッツリいただくなど、と楽しみ方は大いにあるのだ。

 

 今回は非常事態という事で我慢していたがいい加減堪忍袋の緒が切れてしまった。

 

 という訳で、俺は襲ってきたワイバーンを食う事に決めた。

 

 と言っても、そう何匹も食えないので余った分は燻製にして、胃に収めるのは一番脂が乗っている喉に腹、腿の肉だ。

 

 塊肉にかぶり付くのがアウトドアの醍醐味だが、王妃達がいる以上は最低限の礼節を忘れるわけにはいかない。

 

 そんなワケで、一番脂がのった部位を一口大に切り分けて即席の(かまど)と石板で焼く事に。

 

 味付けは複数のハーブを混ぜた岩塩の粉末のみ。

 

 久々のワイバーン肉だが、ブリテンや妖精郷にいる物に比べると脂が少なくさっぱりとした味だった。

 

 とはいえ、決して不味いわけではない。

 

 例えるなら、鶏のもも肉とささ身の違いといったところか。

 

 竜食というのは他人に勧められるものではないので最初は一人で食うつもりだったのだが、この旅の同行者は食い意地も度胸も一級だった。

 

 ファフニールという竜を食った事があるジークフリートが最初に手を付けると、それに釣られるように食い始める他の男性陣。

 

 女性陣の方も王妃やグンヒルドさんは興味津々でフォークを伸ばせば、共食いと躊躇していたエリザベート嬢や清姫嬢も恐る恐る手を出すようになった。

 

 幸いなことに味に関しての苦情はなく、みんな舌鼓を打ってくれていた。

 

 久々のアウトドア、しかも量と味重視の男飯だったのに受け入れられて何よりである。

 

 そんなこんなで、今日の夕餉(ゆうげ)の三匹分のワイバーン肉は綺麗に姿を消した。

 

 いやはや、四次元倉庫に飯盒と米を入れておいて本当に良かった。

 

 急ぐ旅である事は変わりないが、気を張り続けていては本番を迎える前に疲れてしまう。

 

 ならば、こういった細やかな楽しみを満喫するのも成功に必要な要素と言えるだろう。

 

 腹も膨れたし英気も養えたのだ。

 

 明日にはオルレアン近辺に着くらしいし、他のメンバーと合流できると信じようではないか。

 

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