剣狂い転生漫遊記   作:アキ山

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 お待たせしました、FGO7話の投稿です。

 この頃はプライベートが忙しくてなかなかに時間が取れない日々、3月が終われば多少は楽になるだろうか……。

 FGO

 復刻CCCイベは殆ど手付かずでした。

 何とかエロ尼を倒すまでは行ったけどプロテアはムリ。

 今回は巡り合わせが悪かったと諦めましょう。 


剣キチが行く人理修復日記(7)

 星見台人理修復記8日目

 

 

 今日、ようやくカルデアメンバーと合流することができた。

 

 彼等がいたのはジュラと呼ばれる小さな森林地帯。

 

 街道を進んでいると森の方から細い煙が空へと伸びていたので、もしかしてと思って確認したらビンゴだったというワケだ。

 

 傾き掛けていた日の光もあまり入らない薄暗い森の中、それでも俺の姿を見つけたモードレッドとミユちゃんは喜色満面で飛びついて来た。

 

 数日間離れていたにもかかわらず、二人に怪我がなかったことは本当に幸いだ。

 

 二人の身を護ってくれたアーチャーとモーさん、そしてカルデアの面々には感謝の一言である。

 

 それからアルトリアと立香ちゃんにマシュ嬢の無事を確かめ、所長に声を掛けようとしたところでサーヴァントに新顔がいる事に気が付いた。

 

 新たな英霊は三騎。

 

 一人は黒髪に十字架の意匠が施された杖を持つ、清らかな気風を纏う女性。

 

 もう一人はルーマニアで主従関係を結んだアーチャー・アタランテ。

 

 最後の一人は竜の魔女と同じ容姿を持つルーラー、ジャンヌ・ダルクだった。

 

 挨拶を交わしたところ、黒髪の女性の名はマルタ。

 

 聖書の伝承にて竜を鎮めた聖女であり、今はミユちゃんと契約を結んでいるらしい。

 

 彼女を見たアンリは、青い顔で『なんでか知らないけど、鉄腕執行者を思い出した』などと意味不明な事を言っていた。

 

 まあ、悪神モドキと聖女では相性が悪かったのだろう。

 

 色々と聞きたい事はあるけれど、責任者のオルガマリー所長に挨拶をする方が先である。

 

 ミユちゃんが世話になったことの礼を告げた後、所長に無事帰還したことを報告。

 

 そのまま焚火(たきび)を囲みながら情報交換と相成ったワケだ。

 

 この際に再会と新顔へのお近づきの印として、先日取れたワイバーンのモツを使った鍋を振舞った。

 

 この鍋のコツは如何にして竜肉の臭みを消すかに限る。

 

 俺は下準備が済んだモツ肉を牛乳に漬け込むのと、竜ガラの出汁を取る時に根菜やネギにハーブを混ぜた袋を一緒に煮込む事で対処している。

 

 涎を垂らしそうだったウチの面々はともかく、カルデアメンバーは竜肉と聞いて若干引き気味な様子。

 

 まあ、初めての竜食でモツに挑戦というのは、ハードルが高い事は否めない。

 

 初心者に忌避されるのはいつもの事なので気にしなかったが、調理を始めると食いついてきた男が一人いた。

 

 カルデアの台所番、赤いアーチャーである。

 

 こちらの手際を見ていた奴は、俺の臭み消しの工程を見ていると感嘆の声を上げた。

 

 アーチャーが言うには上記の方法はフレンチの物らしい。

 

 こっちは旅先で竜が取れた時に手っ取り早く臭みを抜こうと試行錯誤していて気付いただけで、技法として確立していたとは露ほども知らんかった。

 

 そこからは手伝いを申し出てきたアーチャーも交えて調理を進めていったのだが、何故かその最中に真名を明かされる事となった。

 

 アーチャーの真名はエミヤというらしい。

 

 本人曰く無名の英霊だそうだが、マイナー度ではこちらも負けていないので気にはならん。

 

 こうして出来あがった竜モツ鍋を囲みながら親睦会は始まったわけだ。

 

 まずはこちらの現地協力者であるマリー・アントワネット王妃とヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト、清姫嬢とエリザベート嬢、最後にジークフリートとグンヒルドさんを紹介。

 

 姫君という言葉を体現したような王妃に子供達も興味津々なようで、挨拶が終わるとすぐに『お姫様だ!』と歓声を上げて彼女の周りをグルグル回りだした。

 

 王妃の方も子供の扱いになれているようで、楽しそうに笑いながら世話を見てくれた。

 

 モードレッドよ、母ちゃんやガレス姉ちゃんも一応はお姫様だったんだぞ。

 

 まあ、お前が生まれた時には平民だったから知らんだろうけど。

 

 モーツァルトの方は挨拶もそこそこに切りあげると、王妃の元に行って子供達が王妃に披露していた『召喚のうた』にピアノで伴奏を付け始めた。

 

 馬車の中では結構毒舌なアンチャンだったのに、芸術音痴の俺でも素晴らしいと思える演奏を即興で作るとは。

 

 天才というのはああいう人間を言うのだろう。

 

 次にグンヒルドさんだが『我が夫に色目を使わないように』と本隊の女性陣に釘を刺した程度で、あとは普通に対応していた。

 

 出会ったばかりである立香ちゃんの礼装の術式に綻びがある事に気付いて補修したり、カルデアとの接続点の効率を上げたりと魔術に関しては現代の魔術師の追随を許さない腕を披露。

 

 姉御もそうだが、この手の女性は嫉妬が絡まなければ常識的で優秀なのである。

 

 エイリーク殿はもちろん、狂化の皮を被って被害が出ないように奮闘中。

 

 エリザベート嬢はむこうの面々にはあまり興味がない様子で、適当に挨拶を行うとモツ鍋を掻き込んでいた。

 

 過日の焼き肉から彼女も竜食の良さに目覚めたようで、なかなかの喰いっぷりだった事を付け加えておく。

 

 ジークフリートは最低限の自己紹介と共に頭を下げるのみ。

 

 その割にはハート狙いでガンガン鍋を突いていたことは見逃していない。

 

 キャベツとニラも一緒に食わんかい。

 

 テンションの格差はあったものの、ここまでは問題なく紹介することが出来たのだが、トリを務める事となった清姫嬢の挨拶の際に予想外の事態が起きた。

 

 以前話していた安珍の生まれ変わり、彼女はそれが立香ちゃんであると断定したのだ。

 

 これには俺も度肝を抜かれ、エイリーク殿も狂化が剥がれて素に戻るほどの衝撃を受けた。

 

 『性別違っとるやんけ!』とか『証拠はどこにあんねん!?』というツッコミが頭を駆け抜けたが、この手の女性には何の意味も持たない。

 

 『ああっ! 貴女はまさしく安珍様の生まれ変わり!! 清姫は貴女様と再び巡り合える日を一日千秋の思いでお待ちしておりました!!』

 

 そう言いながら立香ちゃんに抱き着く清姫嬢。

 

 当然、立香ちゃんにしてみれば意味不明の状況だ。

 

 普通であれば、『なんじゃい、お前!?』とうっちゃりの一つをかましてもおかしくないのだが、彼女はそうはしなかった。

 

 恐らくは想い人(?)の再会に感極まったのだろう、自分の胸に顔を埋めて嗚咽を漏らす清姫嬢の頭を撫でながら優しくあやしたのだ。

 

 清姫嬢の見た目は立香ちゃんよりも二つ三つ年下の女の子。

 

 そんな彼女が涙を流しているのを無碍にできなかったのだろう。

 

 その優しさは素晴らしい。

 

 間違いなく尊いものだと言えるだろう。

 

 だが、今回に限っては悪手と言わざるを得ない。

 

 一通り落ち着いたのか、彼女から離れた清姫嬢はお馴染みのハイライトが消えた目を立香ちゃんに向けると、有無も言わさぬ迫力を以てマスター契約を結ばせてしまったのだ。

 

 不穏に感じたのだろう、マシュ嬢から大丈夫かと問われた立香ちゃんは『大丈夫だよ。安珍って何なのかは分からないけど、中学生くらいの女の子が泣いて縋ってくるのは放っておけないもん。こうやって甘えてくれるのも妹みたいで可愛いしね』と朗らかに笑っていた。 

 

 清姫嬢の執着はそんな可愛いモノではないのだが、本人がそう言うのであればこちらも無理に引きはがすワケにはいかない。

 

 それにあの包容力があれば、清姫嬢の炎上アタックを受け止められる可能性も無いとはいえん。

 

 愛の重い女性と上手く付き合うコツは、相手の愛情を否定せずに受け入れる事にある。

 

 下手に拒絶すると命のやり取りしか残らないので、それは絶対に避けねばならんのだ。

 

 しゃくり上げる清姫嬢をあやしている立香ちゃんに俺とエイリーク殿が出来た事は、グンヒルドさんが例の呪いを掛けようとするのと止めるのと、

 

 『彼女の事は全てありのままに受け入れなさい。ただし、本当に嫌な時はしっかりと意思を示す事。───何かあったら相談に乗るからね』

 

 『ファイトだ、少女よ』

 

 と激励の言葉を贈ることだけだった。

 

 この先、彼女が清姫嬢との関係で悩むことがあれば先達として世話を焼いてやろうとおもう。

 

 ───無論、縁切り以外の方向で。

 

 少々トラブルはあったものの此方の話は一先ず終了。

 

 所長とバトンタッチをして、むこうの軌跡を聞くこととなった。

 

 所長の方で手に入れた現地協力者は三名。

 

 ルーラー・ジャンヌ・ダルクを皮切りとして、ライダー・マルタ。

 

 そしてアーチャー・アタランテだ。

 

 ジャンヌにお久しぶりですと言われた時は思わず首をかしげてしまったのだが、程なくして彼女がルーマニアでもルーラーをしていた事を思い出した。

 

 ごめんよ、他の面々が濃すぎて君の事忘れてたわ。

 

 しかし、改めて見ても竜の魔女と彼女は瓜二つである。

 

 グンヒルドさんの言葉を信じるなら、この場合は竜の魔女が彼女に似ているというべきだろう。

 

 その再現率はまさに2Pカラー。

 

 次に紹介されたマルタ女史とアタランテだが、このニ騎はなんと竜の魔女に呼ばれたバーサク・サーヴァントなる存在だったらしい。

 

 バーサク・サーヴァントとは、狂戦士以外のクラスでありながら召喚時に狂化が施されたサーヴァントを指すのだとか。

 

 何故そんなことをするのかと言えば、フランスの滅亡という竜の魔女の目的に付随した民の虐殺による忌避感や精神的ショック、反感などを軽減させる為だという。

 

 彼女達とカルデア組が出会ったのは、レイシフトが成功してこの地に降り立って間もない頃。

 

 細やかな行き違いから現地兵士と一戦交える事になったカルデアの面々が誤解を解いて彼等の砦に招かれた際、そこを攻め落とすために派遣されたのがマルタ女史達だったのだ。

 

 本来であれば彼女たちが味方になるなどあり得ないのだが、数多の偶然と千載一遇のチャンスを物にすることで立香ちゃん達はそれを実現させた。

 

 竜の魔女の采配ミスは数あれど、最も大きなポカは彼女達が最も忌避する行為を令呪によって強制したことだろう。

 

 一時の戯れか、それとも二人の意思が強固過ぎて、こうでもしなければ従わせられなかったのか。

 

 理由は不明だが、マルタ女史に掛けられた『無辜の民を虐殺する』事とアタランテへの『子供達をその手に掛ける』という絶対命令。

 

 これによって彼女達の竜の魔女に対する敵愾心が爆発的に膨れ上がり、結果としてカルデアの付け入る隙へとなったのだ。

 

 砦に姿を現した彼女達は令呪に全力で抗っていた為に、交戦する余裕など無くなってしまっていた。

 

 絶対命令権と言われる令呪に抗う事が出来たのは、マルタ女史の方は聖女という事で呪いに高い耐性が有ったから。

 

 一方、そんな物は無いアタランテはどうしたのかと言うと、子供好きという岩をも穿つ一念で無理から令呪に抗い続けていたそうな。

 

 アルトリア曰く『女神アルテミスよ! 世界中の子供達よ!! 私に力を! この呪いに打ち勝つ力を分けてくれ!!』と天に叫ぶ彼女の気迫は元気玉を作れそうなほどだったらしい。

 

 そうしてカルデアメンバーがワイバーンの群れを駆逐した辺りで、戦局に大きな動きがあった。

 

 ある時を境として、マルタ女史達を苛んでいた令呪の強制力が大きく減衰したのだ。

 

 聞いた時間から逆算すると、俺がやらかしてグンヒルドさんが竜の魔女の記憶を消したのと一致していたので、恐らくはその影響なのだろう。

 

 これ幸いとマルタ女史は令呪の命令を狂化を含めて解こうと試みたが、サーヴァントへの絶対命令権は伊達ではなく、あと一歩のところでそれを脱することが出来ずにいた。

 

 その時、彼女を手助けしたのがミユちゃんである。

 

 ワイバーンと戦っている間にマルタ女史達が漏らした声から、彼女たちが望んで侵攻している訳ではない事を知った立香ちゃんと子供たちは、マルタ女史達を助けようと動いたのだ。

 

 神使であるミユちゃんにとって解呪はお手の物。

 

 マルタ女史が持つ抗呪力に聖女由来の解呪、更にミユちゃんの力も加わったことで狂化と令呪による縛りは見事消え去った。

 

 アタランテに関しては上記と同じである。

 

 その際にモードレッドの姿を目ざとく見つけ、抱き着く事で心の支えにしていたのは不問にしようと思う。

 

 とは言え、お腹に頬ずりし続けた事に関してはその限りではないが。

 

 報告を上げてくれたモーさん曰く、引き剥がそうとした際に『汚いモードレッド』呼ばわりされたそうなので、その辺も併せて追及せねばなるまい。

 

 セクハラ被害を受けたウチの娘だが、顔見知りだったこともあってかアタランテに抱き着かれたことは嫌がっていなかったらしく、頭を撫でながら『がんばれ~』と声まで掛けていたらしい。

 

 優しい子に育ってくれて父は大変嬉しい。

 

 ただ、その優しさを向ける相手は選んでもらいたいと切に願う。

 

 その後、竜の魔女との契約を赤いアーチャーが投影した魔術契約を破棄する効果を持つ短剣によって無効化し、野良サーヴァントとなった彼女達はマルタ女史はミユちゃんと、アタランテはモードレッドと契約する事となった。

 

 これは余談だが、その際のアタランテの姿があまりにも犯罪チックだった為か、アーチャーは短剣を彼女のケツにブッ刺したそうな。

 

 こうして相手の戦力を削りながら自軍を増強するという難行をやってのけた一行は、竜の魔女の居城という噂のオルレアンを目指してここまでやってきたのだ。

 

 無い無いづくしで始まった人理修復だろうに、子供達もカルデアの面々も予想を超えるタフネスぶりである。

 

 旅は始まったばかりだが、背中を預けるに足る味方になるのも遠い話ではないかもしれない。

 

 これは余談だが、出したモツ鍋は食材のキワモノさに反して好評だった。

 

 一般人の立香ちゃんはともかく、貴族であるオルガマリー所長からはNoを突き付けられると思っていたのだが、あれだけガツガツいってくれたのなら作り手としても出した甲斐があるというものだ。

 

 まあ、モツは一日置いて熟成させた物だし、具も飛び跳ねキャベツや超力ニラなどウチで採れた野菜で固めたものだ。

 

 味の方は太鼓判を押せる代物なので、食ってから拒否されることは無いと自負していたが。

 

 他にも、エミヤの話ではこちらに着いてから保存食ばかりだったそうなので、久々の温かい食事が身に染みたのだろう。

 

 それと計算外だったのは、リリィがアルトリア並みに食べた事だ。

 

 愚妹のフードファイター並みの食欲は承知の上だったので、あいつが囲む鍋には一匹分のモツを用意していたのだが、リリィというダークホースのお陰で足りなくなってしまった。

 

 飢えた竜二匹を満足させるには保存していた3匹分全てを出しても足りず、結局は緊急狩猟ミッションを行う羽目に。

 

 さすがに二人して潤ませた上目遣いで『兄上、お腹が空きました』とされては、こちらも断るのは無理でした。

 

『新鮮な竜を喰うのはおれだぜーーッ! 心臓がうめーんだよぉ、心臓がァ~~~~ッ!!』

 

 と、完全にキャラが変わってしまったジークフリートの後押しもあって、完全に日が落ちたにも拘わらず二匹の猟果を得ることが出来た。

 

 というか、どこの屍生人なんだ、お前は。

 

 心臓を喰ったのはシグルドだろうに。

 

 その後はエミヤにも手伝ってもらって、血抜き、解体、下準備、調理と大忙し。

 

 〆の雑炊用の飯まで手が回らなかったので、清姫嬢が飯盒で炊いてくれていたのは助かった。

 

 生前は良家のお嬢さんと聞いていたので、完璧に飯を炊いて見せたことには地味に驚きだった。

 

 昔の日本って令嬢に料理させてたっけか?

 

 あと、魔力で大量の水を用意してくれたグンヒルドさんには大感謝である。

 

 俺に同行していたメンバーから焼き肉のリクエストもあって、食事会は当初の予想を超える規模になってしまった。

 

 ぶっちゃけ、敵に嗅ぎ付けられなかったのが不思議なくらいである。 

 

 酒を用意しろと言いだしたランサーやモーツァルトが地味にうざかったが、美味いものには酒は付き物だ。

 

 四次元倉庫にミユちゃん関連でゴヴニュからお歳暮で貰ったエール酒が有ったから樽で出しておいた。

 

 製作者の名前を聞いた途端にランサーが噴き出していたが、不老不死の秘術は掛かっていないので安心するがいい。

 

 そんなこんなで飲み会へと変貌した食事会は深夜まで続き、腹がくちくなった事と酒精も相まって殆どのメンツは夢の中へと旅立っていった。

 

 で、寝ずの番をやっているのは俺とエミヤ、後は宗教的な理由で酒を飲まなかった百貌のハサンというわけだ。

 

 さて、二人に負担を強いるのはアレだし、今日の日記は閉める事にしよう。

 

 明日もいい日でありますように、と。

 


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