ぶっちゃけ乙女ゲーとネタに走り過ぎた感がありますが、そろそろ軌道修正していきたいと思います。
まあ、そんな事を言いながらも乙(魔)女ゲー編なんてネタが浮かんでいるワケですが。
FGOも4周年を迎えた事ですし、こちらの方も鋭意執筆していきたいと思います。
人理修復記34日目
明日はガヘリスの結婚式である。
挙式を決めてからは、会場・指輪に参加者全員分の礼服と用意するものが多すぎて東へ西へと奔走する日々だった。
そのお陰でわき役なのにやり切った感が半端ない。
用意を手伝ってくれたカルデアのメンバーには改めて礼を言っておいた。
特に当日料理を担当してくれるエミヤやキャット、祭司として二人に祝福を施す予定のマルタ女史には足を向けて寝れない。
さて久々に訪れた身内の結婚式だけあって、ウチの家族の気合の入りようは相当な物。
家族全員が式前日には特異点に乗り込んできたし、お袋さんは手縫いで家族全員の礼服に加えて、ガヘリス用のモーニングやエスィルトさんの花嫁衣裳まで作っていた。
笑顔で告げられた『夫婦の共同作業よ』という言葉に首を傾げていると、親父殿の腕パーツから業務用のミシンやら何やらが飛び出す始末。
ニニューさんは何を思ってこの機能を付けたのか?
旦那の祖母手ずからの花嫁衣裳という重すぎる贈り物にも、嫌な顔一つしなかった先方には本当に頭が下がります。
本番を明日に控えているとはいえ、ここまで来れば俺達にやる事は無い。
なので、今日は新郎新婦共に家族水入らずの時間を過ごす事にした。
少し前に試着したガヘリスの花婿姿の感想が飛び交う中、ガウェインがラグネルちゃんの事を話題に挙げた時は、さすがにみんなのテンションは下がってしまった。
実はラグネルちゃんはガウェインの死を知った事で、その後を追うように自ら命を絶ってしまったのだ。
ランスロットの反乱の際、奴等から返されたガウェインとガヘリスの遺体は俺達の下に来る前に王都へと届けられた。
その結果、当時ガウェインと共に王都に居を構えていたラグネルちゃんは、俺達よりも先に夫の死を知る事となってしまったのだ。
そして俺達がガウェイン達の不幸を知った時には、彼女は護身の短剣で自らの喉を突き、夫婦用の寝台の上で冷たくなっていた。
息子三人に加えて義娘まで失い、さらには彼女の行為を止められなかった事は、ウチの家族の中で拭えない後悔として残っている。
だからこそ、命日以外で彼女の事は誰も話題に挙げようとしないのだ。
まあ、タブーに触れた事で降下した空気もガウェインが声高に告げた『ラグネルちゃんは転生している』という事実によって、木っ端みじんに砕かれる事となったのだが。
座にラグネルちゃんがいないというガウェインの証言から、彼女の魂は輪廻の輪に還ったのではないかと姉御が推論を立てていたが、まさか本当に生まれ変わってるとは思わなかった。
ガウェインがこの事を知ったきっかけは、今回の結婚騒動にあった。
ガヘリスが結婚すると聞いたとき、ウチの長男は心の中で燻っていた嫁さんへの恋しさが再燃したらしい。
そう言えば結婚報告した時に、ラグネルちゃんがどうたらとか言ってたな、アイツ。
で、姉御の推論が本当かどうかを確かめる為に、湖の乙女の一人であるヴィヴィアンさんを訪ねたんだそうな。
ヴィヴィアンさんもランスロットの育ての親として奴のやらかしに思うところがあったのか、ガウェインの疑問に答える為に他の乙女たちと協力して事に当たってくれたそうだ。
その結果、ラグネルちゃんはこことは別の世界に転生している事が判明したのだ。
ガウェインからヴィヴィアンさんが湖の乙女パワーで念写した今生のラグネルちゃんの画像を見せてもらったのだが、その姿はどこか前世の彼女の雰囲気を残した黒髪紅目の美少女だった。
まあ、それ以上に想像を絶するボッチぶりに全員がドン引きすることとなったのだが。
百歩譲って空の椅子を相手に一人チェスに興じるのは良しとしよう。
だが話しかけようとした動物に逃げられ、さらには華に口づけしようとしたら華が自ら地面から抜け出て、根っこを足代わりに逃げるというのは如何なモノか。
あそこまで行くと妙な呪いでも掛けられてるんじゃないかと勘繰りたくなってしまう。
一人誕生会とか一人クリスマスパーティとか見せられた時は、割と本気で泣きそうになったし。
さて、そんな彼女の不遇っぷりを前世とはいえ夫であるガウェインが見逃すだろうか?
もちろん、答えは『否』である。
『小柄な体にワガママおっぱいは、まさに往年のラグネルその物! これは私が迎えに行かねばならないでしょう!!』
これは奴が語った原文のままである。
あんな不遇な少女を前にしてこのセリフ、お父さんは情けなくて涙が止まりません。
奴のフェチへの拘りは知っていたが、まさかここまでだとは思わなかった。
やはりあの時に宿業は斬っておくべきだったか。
そも、今生のラグネルちゃんの立場は不明だとしても、いきなり前世の夫ですとか言って上手く行くと思っているんだろうか?
そんな真似をしても彼女が俺みたいな記憶持ちでもない限り、不審者扱いされて終わりである。
という俺のツッコミも『大丈夫です! 私の愛の前ではそんな事は些細な問題ですから!!』と一蹴されてしまった。
またしても『愛』か……。
どうやらガウェインは異性への執着は姉御譲りらしい。
聞いた話によるとガウェインのジェット機にも陛下たちと同じ次元航行機能があるという。
万が一にも迎えに行くとなれば、ストッパーとしてついて行かねばなるまい。
早まるなよ、ガウェイン。
姉御が取った戦法は女性だからこそ許す余地があったのだ。
野郎がやったらガチで最低だからな。
人理修復記35日目
肩の荷が一つ降りたような気がする。
本日、めでたくウチの次男が新たな家庭を持つこととなった。
ローマ首都近郊にある小さな野外ホールを舞台に、料理から何から全てを身内で用意した細やかなモノだったが、個人的には良い式だったと思う。
姉御から聞いたブーディカ女史親子の逸話を思えば、彼女がエスィルトさんの花嫁姿に涙する姿を見られただけでもやった価値はあるだろう。
これはちょっとした余談だが、ガヘリスはエスィルトさんの生前の出来事を知っていた。
ブーディカ女史に結婚の報告をする際、自身と娘の過去を語ったうえで本当に結婚するのかと覚悟を問うたそうだ。
そして、彼女の問いにガヘリスはこう言い切った。
『俺はそれも含めてアイツに惚れた。だから気にしないし、アイツもそんな事を思い出す暇もないくらい幸せにするから問題ない!!』
手前味噌だが何ともいい男に育ってくれたものである。
式の前に改めて親族紹介をしたワケだが、ウチの濃いメンツには花嫁親子は終始目を白黒しっぱなしだった。
この時に親父殿が漏らした『ロボですみません』はそう簡単に忘れられないだろう。
式の段取りについては現代に近い形にした。
参列者の中にはそれなりに既婚者もいるが、時代の国もバラバラでは正しい結婚の礼式など分かりはしない。
ならばと一々ややこしくならないように、現代式で行くことにしたのだ。
諸事情を考えて宗教色は極力排する形になってしまったが、それでも祭司の役を引き受けてくれたマルタ女史には心から感謝したい。
花を振りまくミユちゃんを先頭に、ブーディカ女史に寄り添われて会場に現れるエスィルトさん。
一歩一歩噛みしめる様にヴァージンロードを歩いた彼女は、祭壇の前で待つガヘリスの元へとたどり着いた。
娘の手をガヘリスに渡す時、ブーディカ女史はその目にどんな感情を込めていたのだろうか?
そして祭壇へと立った二人は祭司であるマルタ女史へ永遠の愛を誓い、互いの指輪を交換して口づけを交わした。
この時点で姉御達は大号泣。
来賓であるカルデアメンバーも、立香ちゃんを始めとする女性陣は感動で涙を零す者も見られた。
次いでネロ帝からの祝福の言葉があったワケだが、花嫁の視線が冷たかったのは言うまでもない。
ゴメンよ、エスィルトさん。
彼女ってローマ皇帝なうえに会場のオーナーでもあるから、『余も見せ場が欲しい』ってワガママを突っぱねられなかったんだ。
企画段階だと記念として『二人の愛』とかいう題の邪神像の授与まであったんだけど、それだけは何とか阻止したから許してほしい。
話を戻して、二人が一度会場を後にするとそこから立食パーティが始まった。
ブリテン島で狩りに狩りまくった食材を基にエミヤ達が仕上げた料理はとても美味で、会場の誰もが舌鼓を打っていた。
英雄とはこういった宴や祝い事が大の好物である。
そこに酒が入れば、乱痴気騒ぎへなだれ込むのはあっと言う間だった。
カッパカッパとワインを飲んでは花嫁を捕まえて強制ガールズトークを開催し、新郎との馴れ初めから何から根掘り葉掘り聞き出そうとするマリー王妃。
酔っぱらって邪竜の本能が出たのか、ワイバーンのもも肉にかぶり付いては犬のように左右にブンブンと振り回し、行儀が悪いとマルタ女史にブン殴られるジークフリート。
アタランテは恍惚の表情でおめかしした子供達を激写し、百貌ボーイズはガレスにナンパを仕掛けるも敢え無く撃沈。
次々と娘の影から顔を覗かせたコロや妖精の番犬たるクーシに齧られていた。
お袋さんに捕まって膝の上に座らされたうえに死ぬほど甘やかされるリリィに、アルトリアの立食メニュー全皿制覇に付き合わされるモーさん。
立香ちゃんは木陰に座って何故か膝枕で清姫嬢を寝かしつけているし、マシュ嬢はギャラハッドと真剣な顔で語り合っていた。
ブーティカ女史と意気投合した姉御が酒を飲もうとしてグンヒルドさんに止められたり、テンションの上がったネロ帝がどこからか紛れ込んでいたエリザベート嬢と放った『
あと、何故か俺はアグラヴェインと一緒に剣舞を披露することになっていた。
こんな予定は無かった思うのだが、いつ組み込まれていたのだろう?
まあ、アグラヴェインの力量がさらに増した事を知れたので結果オーライか。
あいつも第四次のランスロット戦からメキメキ腕を上げてるからな。
このまま行けば、六塵散魂無縫剣に手が届く日も遠くないだろう。
そんなこんなで参加者が思い思いに暴走する中、宴もたけなわとなった所で新郎から〆の挨拶の時間となった。
ガヘリスはこういった大舞台に慣れていないのでミスらないかと心配していたが、まさかここでアイツから俺達への手紙を読み聞かされるとは思わなかった。
手紙の中でガヘリスは『父ちゃんは本来なら英雄として世界に名を轟かせる事が出来た。それをブリテン島に押し留めたのは俺達だ』と言っていた。
そして『地位も名誉も欲せず、家族の為だけに剣を振るい続けた父ちゃんを尊敬する。英雄なんてならなくていい、世界を救おうとも思わない。俺は父ちゃんのように嫁やこれから生まれてくる子供の為に戦う男になりたい』とも。
これを聞いたときには本気で泣きそうになった。
ブリテン時代も今も、俺は地位や名誉なんかに興味は無い。
何故なら、そんな物よりも剣の道を極める事や家族の方がよほど価値があるからだ。
けど、聖杯戦争に関わるようになって綺羅星のように光る英霊たちを見ていると、やはり心のどこかでは思ってしまう事がある。
自分もこうやって修めた武を十全に示して輝ける場所があったのではないか? と。
けど、今日のガヘリスの言葉でそう言った思いはスッパリと消え去った。
もし俺がブリテンを離れて英雄となったのなら、きっと家族を大切になどしなかっただろう。
どれだけ分厚い皮を被ろうとも、俺の本質は剣の為なら万人の血を啜り肉を食らう鬼でしかない。
世界という戦場に漕ぎ出せば、姉御達の事など簡単に忘れて修羅道をまい進するに決まっている。
そうして英雄となったとしてどうなる?
後に残るのは前世の末期と同じく血に塗れた剣と身体、そして人心など遥か彼方に捨て去った化け物だけだ。
それに比べれば、今の俺はどれほど恵まれている事だろう。
こんな俺を愛してくれる女がいる。
俺の事を見守り、時には諫めてくれる親がいる。
俺の事を慕ってくれる可愛い子供たちがいる。
皆がいるからこそ、鬼に堕ちずにここまでこれた。
皆が俺を人に留めてくれたから、これからも進んでいける。
これに比べれば、英雄としての光など屑鉄ほどの価値も無い。
ガヘリスのお陰で再確認できた。
俺が剣を振るうのは家族の為だ。
それは今回も変わらない。
人理の修復など、家族とその生活の場を護るついででしかないなのだ。
ありがとう、息子よ。
お陰で初心に帰る事が出来た。
そんなワケなので、次の子が生まれるまでに今回の件を片づけるのを目標にしよう。
差し当ってはこの特異点を修復して、脱ローマと行こうではないか。
人理修復記39日目
結婚式の後片付けも終わり、ウチの家族は妖精郷に帰っていった。
ガウェイン達には妖精郷の防衛任務があるし、身重の姉御や非戦闘員のガレスやお袋さんをいつ戦場になるか分からない場所に置いておくことは出来ない。
個人的には子供達も一緒に連れて帰ってほしかったのだが、当人たちが断固拒否の姿勢を示している事に加え、今や人類に残された数少ないマスターという事もあって断念した。
エミヤやマルタ女史は帰る事に賛成してくれたのに……。
とりあえずガチで俺を射ろうとしていたアタランテは、二人の爪の垢でも飲んで猛省するように。
あとガヘリスとエスィルトさんだが、実は二人ともこの特異点に残っている。
理由は以前にも何度か記したが、エスィルトさんがこの特異点に召喚されたサーヴァントである為だ。
何の処理もせずに彼女を妖精郷に連れて帰ろうとすれば、契約が切れて座へと戻ってしまうのは明白。
エスィルトさんが妖精郷で新婚生活を始めるには、彼女を受肉させて特異点との繋がりを断つ事が必要なのだ。
その為には強大な魔力リソースが必要となるのだが、今のところこの特異点の核である聖杯にしか心当たりがない。
七つの特異点を修復した後『実は人理修復の為に必要だった』なんて事になっては目も当てられないので、出来れば手を出したくないのだが……。
まあ、取らぬ狸のなんとやらを考えるのはこの辺にしよう。
そんな事情もあって、ガヘリスが正統ローマに力を貸す事となった。
当初はエスィルトさんも戦うと言ってたのだが、ガヘリスとブーディカ女史からダブルでNOを突き付けられて断念することに。
過保護と思わなくも無いが、次男の立場を自分に当て嵌めてみると俺も姉御を戦場に出さないだろうから、あんまり強くは言えない。
とりあえず新しくできた姉にチビ達がよく突撃しているので、それでストレスを発散してほしいものである。
私事で大きく足止めを食わせてしまったのは申し訳ないが、今後の正統ローマの活動予定について記そう。
軍議でネロ帝が定めた次なる手は連合ローマへの電撃作戦だった。
現状におけるこの特異点での勢力分布は、ガリアを奪還しても7対3と天秤は連合ローマに大きく振れている。
敵将であるカエサルやレオニダスを討ち取ったとはいえ、聖杯が敵に手にある以上は時間を置けば次のサーヴァントが召喚されるのは想像に難くない。
現状で俺達に勝つ手があるとすれば第一特異点のように敵本拠を強襲し、聖杯を所持しているサーヴァントを討つ事だろう。
しかし恐るべきはネロ帝の才覚である。
サーヴァントや特異点がどういうモノかすら明確に理解していないのも関わらず、迷う事無く現状の最善手を選ぶとは。
万能の天才を自称するのは伊達ではないという事か。
ともかく今後の方針は整った。
ガヘリスが受けた恩を返す意味も込めて、連合ローマ首都への道を見事開いて見せようではないか。
◇
「うおおおおおおおおおっ!!」
「チィッ!」
気炎を吐きながら襲い来る連合ローマ兵を、俺は半ば舌打ちとなった呼気と共に斬り捨てる。
これで退けた兵は500余り。
普段なら鼻歌交じりで
それもこれも経絡を乱された所為で、氣を練る事が出来なくなっているからだ。
現状で生み出せる内勁は通常の十分の一に届くかどうか。
皮肉な事に末期のブリテンと同じ程度でしかない。
これでは秘剣を放つ事は叶わず、刀を因果の断裂まで引き上げるのが精一杯だ。
「奇門遁甲によって天地を返した。いかに貴様が神仙に至る氣功の使い手でも、体内の循環をここまで乱されれば勁を練ることは出来まい」
こちらを包囲するローマ兵、その後ろに控えた禿頭の巨漢の脇に立つ黒のスーツに身を固めた長髪の男は、手にした羽扇をこちらに向けて宣言する。
奇門遁甲か。
なるほど、道術に通じているのなら氣功術の破り方を知っているのも道理。
そして特異点には世界各国の様々英霊が召喚される以上、中国に所縁のあるキャスターが召喚されても不思議ではない。
だが一つ、解せない事がある。
「貴様の能力と性格ならば、一軍を掌握する軍師がいると知れば単独で暗殺に乗り出してくると踏んでいた。だからこそ、私は自分を囮にして陣を敷いたのだ!」
奴は何故、俺の手の内をここまで把握している?
「最大の脅威である圏境はもう使えん! 剣魔アルガ、貴様の剣技は我が計略で打ち破らせてもらう!!」