剣狂い転生漫遊記   作:アキ山

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 大変お待たせしました!

 なんとか年内に投稿が出来ました。

 ぶっちゃけ、忙しすぎてロストベルト5もロクに出来てません(涙)

 とりあえず、この正月休みに攻略したいと思います……

 拙作を見て下さった皆様。

 今年一年、大変お世話になりました。

 来年も頑張っていきますので、何卒よろしくお願いします。

 それでは皆様、よいお年を。


幕間の物語『ガウェイン・嫁取り再び』①

「父上! ラグネルを迎えに行きましょう!!」

 

 朝一番にいないはずの長男からこんなことを言われた俺の心境を述べよ。

 

 どうも、いきなりの事に混乱中の剣キチです。

 

 これだけでは何が何だかサッパリだと思うので状況を説明しよう。

 

 起床して日課の鍛錬へと向かおうと思っていると、部屋の出入り口にワームホールが現れた。

 

 何事かと見ていれば出てきたのは白のタキシード姿のガウェイン。

 

 聖剣の代わりにバラの花束を持った長男は、俺を見るなり鼻息荒く上記のセリフをぶっ放したワケだ。

 

 こっちとしては突然の事に唖然茫然。

 

 ガヘリスの結婚式の時に匂わせてはいたが、まさかこんなに早く動くとは思わんかった。

 

「すみません父上。私ではそこの暴走ゴリラを止める事はできませんでした」

 

 そう言って申し訳なさそうな顔で現れたのは、黒のスーツに身を固めた三男坊だった。

 

「アグラヴェイン、お前まで来たのか」

 

「母上から頼まれまして。『ガウェインの恋愛観は私似だから、暴走しない様についてあげて』と……」

 

 ……姉御、自覚あったのね。

 

 しかしこれは困った。

 

 今日はランサーのガレスと腕前確認を兼ねて手合わせする予定だったのだが……

 

「父上、今日は何かご予定が?」

 

「いや、実はな────」

 

「おはようございます、マスター! 鍛錬の時間ですよ!!」

 

 話そうと口を開いた途端、満面の笑顔でランサーのガレスが入ってきた。

 

 実にタイムリーである。

 

「ガ……ガレスなのですか?」

 

「ガウェイン兄さま! アグラヴェイン兄さま!! マスター! 二人も召喚されたのですか!?」

 

 目を丸くする息子達に、飛び上がらんばかりに喜びを見せるランサー。

 

 ぬか喜びさせたのは可哀そうだが、ここは誤解を解いておく必要があるだろう。

 

「すまんな、ランサー。二人は俺の息子だ」

 

「そっ! そうだったのですね! お初にお目にかかります! 私はランサーのクラスで召喚された円卓の騎士第七位のガレスといいます!」

 

 赤面しながらピョコンと頭を下げるランサーに思わず苦笑いの息子達。

 

「セイバーのモードレッドから聞いていましたが、実際に会うと驚きもひとしおですな」

 

「そんなに畏まらなくてもよいのですよ。世界は違えど私達は同じ母から生まれた兄妹です」

 

「……いいのですか?」

 

「ええ。可愛い妹が一人増えるのは私も嬉しい」

 

 感慨深げに呟くアグラヴェインと、コンマ秒で妹認定するガウェイン。

 

 我が息子ながらこの寛容さは凄いと思う。

 

 これもお袋さんの血の為せる業かねぇ……。

 

「じゃあお言葉に甘えてガウェインお兄ちゃんって呼ばせてもらいます!……私の世界では兄さまと呼んでいたので、この呼び方にはちょっと憧れてたんです」

 

 少し頬を染めながらはにかむ様に笑うランサーに『妹が尊い……』と涙を流すガウェイン。

 

 コイツもたいがいシスコンだな。

 

「ところで、お二人はどうしてここに? マスターの故郷を守っていると伺っていたのですが」

 

「我が妻ラグネルの居場所が分かったので、迎えに行く為に父上の力を借りに来たのです」

 

「こちらのラグネル様は生きていらっしゃるのですか!?」

 

「いいえ、彼女は異なる世界に生まれ変わったのです。ならば、その元へ馳せ参じて再び娶るのは夫としての義務でしょう」

 

「…………こいつも愛が重い」

 

「母上が監視を付ける訳ですな」

 

 これは最悪、武力行使も視野に入れておく必要があるかもしれん。

  

「取り合えずオルガマリー所長に話してくるから、お前たちはモードレッド達に顔出しとけ」

 

「わかりました」

 

 アグラヴェインの声を背に受けて俺は部屋を後にした。

 

 一応は俺もマスター枠に入ってるんで、ホイホイカルデアを留守にするのはあまりよろしくない。

 

 とはいえガヘリスを手伝ったのだから、ガウェインを手伝わない道理もないだろう。

 

 まあここには歴戦の英霊に加えてウチが誇るブリテンの赤きニートもいるのだ。

 

 特異点も見つかってないのなら多少は問題あるまいて。

 

 

◇剣キチ『えーと……このすばって言えばいいのか?』

 

 

 そんなワケで俺達はラグネルちゃんのいる世界へと旅立つ事になった。

 

 所長は物凄く不本意な顔をしていたが、何とかOKをもぎ取った。

 

 ガヘリスの件といい、公私混同は申し訳ないとは思う。

 

 しかし物事には優先順位というモノが存在する。

 

 俺にとっては一に家族・二に剣術・三四が無くて五にマスターなのだ。

 

 結婚もしていない所長には理解しがたいと思うが、その辺は汲んでいただきたい。

 

 さて今回出向くのは俺と息子二人、そしてランサーである。

 

 ラグネルちゃん絡みと言う事でモードレッドも行きたがったのだが、これ以上カルデアの戦力を割くのは拙い。

 

 それにラグネルちゃんがいるのは未知の世界だ、万が一の事が有っては悔やんでも悔やみきれない。

 

 留守番を頼んだ時はかなりのふくれっ面だったので、お土産は奮発する事にしよう。

 

 『サンライズ・ブレスター』なる謎の爆撃機と連結したガウェインのジェットに乗る事2時間。

 

 俺達は異世界へと降り立った。

 

 飛行機から降りて最初に飛び込んできたのは緑豊かな丘陵地。

 

 大気から感じるマナも現世よりも明らかに多く、環境的には妖精郷に近いように感じる。

 

「うわぁ……」

 

「ここが異世界か。争いや厄介事の気配が見えんが果たして……」

 

 感嘆の声を上げるガレスと油断なく周囲を警戒するアグラヴェイン。

 

 で、今回の主役はと言うと───

 

「ようやくラグネルがいる場所まで来ました。人理によって座へと上げられ、そこに貴女がいないと聞いて幾星霜……」

 

 近場の丘に登って一人で独白をしていた。

 

 おかしいな。

 

 アイツはあんなナルシストっぽい事はしない奴のハズなんだが……。

 

「殴って連れ戻しますか?」

 

「いや、久々に嫁さんと会えるからテンションが上がってるんだろう。そっとして───」

 

 そこで言葉を切って、俺は腰に下げた倭刀の柄に手をやった。

 

 地中からこちらに浮かび上がる複数の気配を感じたからだ。

 

「アグラヴェイン」

 

「ええ、分かっています」

 

 俺が声を掛けた頃には三男は剣を抜いて俺の背後に付いていた。

 

 気配察知の方も磨きが掛かっていて何よりである。

 

「ランサー、早速だが敵襲だ。君は飛行機を守ってくれ」

 

「分かりました! ですが、ガウェインお兄ちゃんはどうしましょう?」

 

「心配はいらん。奴も聖剣の担い手、この程度は自力で切り抜ける」

 

 ランサーの危惧をバッサリと切って捨てるアグラヴェイン。

 

 まあ、あいつだって本気を出せば竜種をソロで狩れる男だ。

 

 地下から上がってくる奴等はそこまでの脅威とは思えんし、放っておいても大丈夫だろう。

 

 そんな事を考えている内に草原地帯にボコボコと小山が出来、そこから襲撃者達が姿を現した。

 

 しかし───

 

「カ……カエル?」

 

 呆然とアグラヴェインが漏らしたとおり、その姿はもっともポピュラーな両生類カエルだった。

 

 もっとも、その大きさは象並にデカいのだが。

 

 此方を取り囲むように陣取った奴等の数は六体。

 

 少々マヌケな風体ではあるが、始めて出会う生物である以上油断はできない。

 

 そう気を引き締めた俺は軽身功による音速の踏み込みで懐に入ると一刀を放った。

 

 空を切る白刃は反応を示さないカエルの腹に容易く食らいつき、あっさりと奴を横一文字に両断する。

 

 なんつーか、めっさ柔らかい。

 

 一応はワイバーンの鱗くらいの防御力を想定してたんだけど、刃を入れた際の抵抗がほぼゼロなんですが…。

 

 此方の行動を敵対と理解したのか、次々に他のカエルが舌を伸ばしてくるが、それもあくびが出るほど遅い。

 

 二体目の頭を刎ねながら他のメンツの様子を見ると、

 

「『意』すら押さえようとしないのでは、我々は捉える事などできはせん!」

 

 宙を舞うアグラヴェインは鳳凰吼鳴でカエルの頭を眉間から両断し、

 

「ちょっと気持ち悪いけど、その程度では私の槍は鈍りません!!」

 

 盾を前面に構えたランサーは突進の勢いそのままに、ランスをカエルのどてっ腹にブチ込んでいる。

 

 二人の活躍に満足しながら長男の方を向いた俺は、飛び込んできた光景に思わず固まってしまった。

 

 何故なら自分の世界に浸っているガウェインが、背後から迫るカエルに丸呑みされる寸前だったからだ。

 

「絶対に私は貴方を取り戻す。そしておっぱ────うぬぅ?」

 

 珍妙な声と共にパクリと上半身を咥えられたガウェインは、天に口を向けたカエルによってドンドン呑み込まれていく。

 

「ちょおまっ、ガウェイイイイイイイイイイン!!」

 

 さすがにテンパった俺は、移動する間も惜しいとばかりに空間斬でカエルを腹から両断した。

 

「大丈夫か、ガウェ────生臭ッ!?」

 

 地面に落ちた上半身から這い出てきたガウェインに手を差し伸べたものの、奴は妙に生臭かった。

 

「すみません、父上。私としたことが不覚を取りました」

 

 思わず後ずさった俺に頭を下げるガウェイン。

 

 その髪の毛も再プロポーズの為にしつらえた純白の衣装も、カエルの粘液でベタベタになってしまっている。

 

「ふむ、おめかしゴリラがぬるぬるゴリラになりましたな」

 

「……アグラヴェイン、言い方」 

 

 なんでお前はお兄ちゃんに辛辣なんだ。

 

「ですが、その格好ではラグネル様に会うのはダメだと思います。ガウェインお兄ちゃん、湯あみをして着替えてきてはどうでしょうか?」

 

「そうですね。丁度サンライズ・ブレスターにシャワーと洗濯機があります。一度身を清め……」

 

 そう言って立ち上がろうとしたガウェインだが、彼方の方を見ると目を見開いて固まってしまった。

 

 釣られて映した視界の先には、ガウェインがラグネルちゃんの生まれ変わりと言っていた少女が立っていた。

 

「ラグネル……」

 

 呆然と呟くガウェイン。

 

 さて、問題はここからである。

 

 むこうがラグネルちゃんだった記憶を持っていて、かつ今もガウェインに好意を持っているなら問題はない。

 

 しかしそのどちらかが欠けている場合は、暴走するであろう長男を止めねばならん。

 

 いつでも意識を奪い取れる準備をしながら、俺はジリジリとガウェインの背後に回り込む。

 

 願わくば息子に手を上げる事など無ければよいが……。

 

 緊迫した空気の中、ガウェインを認めた少女は信じられない者を見たような表情を浮かべる。

 

 同時に俺の耳は彼女の零した『ガウェイン様……』という呟きを聞き逃さなかった。

 

 期待はしていたものの、まさか本当に彼女が記憶を持って転生しているとは思わなかった。

 

 いやホント、どんな確率だよコレ。

 

 こちらが唖然としている中、ガウェインはゆっくりと立ち上がる。

 

 俺に聞こえているという事は、高性能の義体を持つアイツもあの声を拾ったという事だ。

 

 位置関係でその顔は見えないが、息子はいったいどんな表情を浮かべているのだろうか?

 

「ラグネル……ラグネルなのですね」

 

「本当にガウェイン様……なのですか?」

 

「ええ。貴女の夫であるガウェインです」

 

 まっすぐに自分を見て肯定するガウェインに、ラグネルちゃんの顏に戸惑いの表情が浮かぶ。

 

「でも、貴方はあの時命を落とされたはず……」

 

「話せば長くなりますが、私は父母や精霊の助けを借りて現世に戻ることが出来たのです」

 

「そうなのですか……」

 

「会いたかった……ラグネル。私の生に於ける最大の悔いは、貴女を残して命を散らしてしまった事なのだから」

 

「ガウェイン様ぁ……」 

 

 ガウェインの言葉に真紅になったラグネルちゃんの目に涙が浮かぶ。

 

 そして感極まったのだろう。

 

 二人は両手を広げて足早に距離を詰めていく。

 

 しかし、あと数歩で抱き合う事が出来る距離になって、何故かラグネルちゃんの足が止まった。

 

「ガ……ガウェイン様」

 

「なんですか?」

 

「あの……なんだか身体がテラテラしてるんですけど」

 

「ああ。恥ずかしい話ですが先ほど不覚を取りまして、カエルに食べられそうになったんですよ」

 

 何事もないかのようなガウェインの言葉に、一気にラグネルちゃんの顔が引きつった。

 

 そして次の瞬間────

 

「いぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 まったく無駄のないクイックターンで後ろを向いたラグネルちゃんが全力で逃げ出したのだ。

 

「どうしたのです、ラグネル! 何故逃げるのですか!?」

 

「来ないで! 来ないでくださぁぁぁぁぁぁぁい!!」

 

 改めて考えたら当たり前だった。

 

 いくら前世の夫とはいえ、生臭いカエルの粘液塗れの男と抱き合う女の子はおらんわ。

 

 身体からヌルヌルの汁を垂れ流しながらガチ泣きの女の子を追いかける様は、我が息子ながら変態にしか見えない。

 

「ガウェインお兄ちゃん、それはダメですよぅ」

 

「父上……」

 

「ああ」

 

 眉間を揉みながら渋い顔をするアグラヴェインの言葉に、俺は溜息と共に長男を鎮める為に鞘へ手をやるのだった。     

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