剣狂い転生漫遊記   作:アキ山

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 お待たせしました、最新話更新です。

 映画このすばを見直しながら執筆中。

 家に出れない影響で少しだけ早く上がりました。

 ガウェインの話も次で終わりかな?

 ロストベルト5後編が来る前に書き上げたいなぁ。


幕間の物語『ガウェイン・嫁取り再び』④

 こんにちわ。

 

 息子が異世界でこの世の地獄を作り出してしまった剣キチです。

 

 嫁取り最大の障害と思われた魔王ですが、昔ガレスと一緒に見た超早解きゲームのようにあっさりとカタが付きました。

 

 あの大破壊からしばらく、灼熱の園と化した魔王城跡を徹底的に精査した俺達。

 

 さすがに生身で近づく事が出来ないので、ガウェインロボのセンサーとアグラヴェインの探索用ドローン。

 

 さらには俺の気配察知を駆使して討ち漏らしが無いかを確認したのだが、当然ながら生物の気配は虫けらどころか微生物すらも感じる事が出来なった。

 

 長男が放ったのは炎熱と聖の二重属性の極大ビームだ。

 

 三男曰く妖精郷での実験だとサンプルで取っておいた水晶蜘蛛の足を跡形もなく消滅させたそうなので、低級神くらいなら耐えられないとの事だ。

 

 アクア神が言うには魔王は神以上の力は持っていないらしいので、死んだと判断しても問題ないだろう。

 

 そういうワケで合体を解除したガウェインが降りてきたところで、久々にゲンコツを一発落しておいた

 

「あいたっ!?」

 

「ラグネルちゃんの前だからってはしゃぎ過ぎだ。ここには彼女の親御さんもいるんだぞ、世界に与える影響を考えて行動しなさい」

 

 子供の時のように頭を押さえるガウェインにお小言を一つ。

 

 カルデアの面々が聞いたら『お前が言うな』とツッコミを入れてくるだろうが、こちらにも親のメンツというモノがある。

 

 無粋なチャチャは遠慮していただこう。

 

「そうですね、私が軽率でした。申し訳ありません、父上」

 

 思った以上に凹んでしまった息子にフォローの一つも入れてやろうかと思っていると、それを邪魔する者が現れた。

 

 サトウ君家のチビっ子アークウィザード、めぐみんちゃんである。

 

「なんですか、あのゴーレムは!? リアル変形合体デンドロメイデンだというのですか!? いったい何処で売っていたのです!? 言い値で買いましょう!!」

 

 なんてテンションMAXでガウェインに掴みかかる彼女。

 

 もっともタッパの差がありすぎて、親のベルトを引っ張ってオモチャをねだる幼児にしか見えなかったが。

 

 ちなみにツッコミ兼フォロー役のサトウ君は、口から魂が抜けてジェットの乗降口の近くでへたり込んでいた。

 

「勇者は勇者でも勇者ロボかよ……」

 

 という呟きは聞かなかった事にする。

 

 あとアクア神は『これで天界に帰れるわ!』と涙を流していた。

 

 聞けばサトウ君をこの世界に送る時にナメ腐った態度を取ったのが仇となり、彼の機転によって天界から落とされたそうだから、元の場所に帰れるのはそりゃあ嬉しいだろう。

 

 旅の同行者の手前、おめでとうの一つくらいは言っておいてもいいかもしれん。

 

 

◆ 

 

 

 なんだかんだとあったが、魔王退治日帰りツアーから一日に経った。

 

 あれからアクセルの街に戻った俺達は一応魔王討伐完了の報告をギルドに行った。

 

 とはいえ魔王は討ち取ったものの、欠片も残さず消滅してしまったので首など証拠品が無い。

 

 ガウェインに溶岩の中を漁ってもらうしかないかと思っていたところ、アグラヴェインがちゃっかり討伐の様子をドローンで撮影してくれていた。

 

 映像に映っていた建物が魔王城で間違いないという元幹部のウィズ女史からの証言もあり、俺達が魔王討伐を成し遂げたは冒険者ギルドに認められた。

 

 もっとも魔王退治なんて依頼はギルドから出されておらず、当然討伐報酬はなかったワケだが。

 

 まあ、こちらとしては報酬目的で魔王にカチコミを掛けたのではないから、金が無くても問題はなかった。

 

 それを知った後で巨大カエルを100匹ほど狩れば、路銀も確保できたしな。

 

「それで、これからどうするのですか?」

 

 食堂で宿屋が出してくれた朝飯を食った後、ランサーがそう問い合わせてきた。

 

「とりあえずはラグネルちゃんの意思を確かめるだろうな。こんだけやっても向こうに結婚の意思が無いなら話にならんし」

 

「そこは抜かりありません。昨日の内にプロポーズを行って色よい返事を貰っておりますから」

 

 俺の言葉に笑顔で答えを返す長男。

 

「…………いつの間に」

 

「昨夜食事を取って自室に戻った後、すぐに宿を抜け出したのです。さすがに家族同伴で求婚するほど、私も野暮ではありませんからね」

 

 いやまあ、いいんだけどね。

 

「となれば、義姉上と共にご両親へあいさつに出向かねばなりませんな」

 

「正直、こういうのは親兄弟がついて行くべきじゃないと思うんだけどなぁ……」

 

「いえ、監視は外さぬ方がよいでしょう。義姉上関連だと、あのゴリラは少しの事で暴走しますから」

 

 たしかに昨日の大破壊を思えばその方が安全か。

 

 そんな風に考えていると、入り口から誰かが駆け込んで来た。

 

 何事かと見てみれば、件の人物はラグネルちゃんだった。

 

「どうしたんですか、ラグネル? そんなに慌てて」

 

「ガ……ガウェイン様! 私と子供を作ってください!!」

 

 息を切らしながら、とんでもない事を叫ぶラグネルちゃん。  

 

 突然の言葉に食堂にいた人間が金縛りとなる中、一人だけ全てを悟ったような笑みを浮かべるガウェイン。

 

「わかりました。貴女がそう望むのなら、このガウェインいくらでも協力しましょう」

 

「待ちなさい」

 

 そうしてラグネルちゃんの腰を抱いて部屋へと戻ろうとしていた長男の頭に、俺は容赦なく鞘を落とした。

 

 ゴビンッといい音を立てて床へと沈んだガウェイン。

 

 俺だって父親の端くれ、他所の娘さんと婚前交渉なんて認めませんよ。

 

 そういう事はちゃんと夫婦になってからしなさい。

 

 ズルズルと三男によって脇へ退けられた長男を他所に、俺はテンパっている義娘へ声を掛ける。

 

「落ち着きなさい、ラグネルちゃん。いったい何があったんだ?」

 

「お義父様! 私の故郷が……紅魔の里がぁ! 無くなっちゃうんですぅ!?」

 

 涙ながらにこう訴えるラグネルちゃんにタダならぬモノを感じた俺は、そういう事なら同じ里出身のめぐみんちゃんも一緒の方はいいだろうと、サトウ君宅へと足を運んだ。

 

 

 

 

 サトウ君達に立ち合って貰ってラグネルちゃんに語ってもらった事のあらましはこうだ。

 

 きっかけは俺達が魔王城に向かっている最中に彼女へ届いた父親からの便り。

 

 そこには紅魔の里が魔王軍の襲撃を受けている事、そしてこの手紙が届くころには自分はこの世にいないと書かれてあった。

 

 2枚目からは何故か彼女の同級生が書いた謎の小説になっており、占い師の予言では紅魔族の唯一の生き残り(この時点でめぐみんちゃんの存在は完全無視)のラグネルちゃんの息子が紅魔族の救世主になる云々などと書かれていたが。

 

 ラグネルちゃんがウチの長男と婚前交渉に臨もうとしたのは、これを友人の創作と気付かずに信じてしまったからだそうな。

 

 真実を知ったラグネルちゃんは前世でも聞いたことが無いような絶叫を上げて俺からむしり取った手紙を床に叩きつけた後、『あるえのバカぁぁぁぁぁぁぁっ!?』とガチ泣きしていた。

 

 基本大人しい彼女が故郷の為に勇気を振り絞った結果がこれでは、ああなるのも仕方あるまい。

 

 ちなみに怪文章には彼女の伴侶として(何の力もないダメ男)などと書かれていたが、皆に読み聞かせる際に敢えてそこは黙殺した。

 

 暴走気味の長男がこれを真に受けたら、下手人を消す為にアクセルの街を焦土に変えかねん。

 

 妙なおふざけはあったものの、めぐみんちゃん曰く紅魔族が魔王の目の敵にされているのは事実だそうなので、帰郷するというラグネルちゃんについていく事にした。

 

「魔王討伐に加えて里まで救ったとなれば、親御さんも我々の婚姻を認めざるを得ないでしょう!」

 

 なんて割とゲスい打算をしている息子には微妙な気分になってしまったが、そのくらいは許容範囲としておこう。

 

 最初はジェットで行く予定だったのだが、昨日ぶっ放した対水晶蜘蛛兵器によってエネルギーの大半を使用しており、アクセルに帰ってきた時点で向こうの世界に帰る分ギリギリしか残っていないという答えが。

 

 長男よ、考え無しにも程があるだろう……

 

 仕方が無いのでラグネルちゃんの転移魔法で紅魔の里へと着いた俺達を迎えたのは、こちらに向かって突進してくるブタ顔の女の群れだった。

 

「久しぶりのオスよぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

「しかもイケメンぞろい!!」

 

「そこのお兄さんたち! 私達とイイ事しなぁぁぁぁぁぁいっっ!!」

 

「わお、すっげぇ」

 

 口々に叫びを上げながら突っ込んでくるブタ女達に、思わずアンリ・マユのセリフが口を付く。

 

 よほど男日照りが酷いのだろう、出てくる言葉は欲望ダダ漏れなモノばかり。

 

「義姉上、あの珍妙なクリーチャーはなんですか?」

 

「お……オークです」

 

「オーク、ですか? 我々の認識ではオークはオスが主流の生物だと思っていたのですが……」

 

 ガウェインの言うとおりだ。

 

 俺もオークと聞けば『生殖猿』と脳内変換されて、何故か無性に首を刎ねたくなってしまう。

 

 これは一体どういうことなのか?

 

 …………おっと、話がそれてしまった。

 

 ともかく、この世界の認識は別物らしい。

 

「現在、この世界にオークのオスはいません。みんなメスに色々な意味で貪られてしまって、絶滅してしまったそうです。だから、彼女達は他種族のオスを攫って伴侶とする事で繁殖しているんです……というか逃げましょうよ!」

 

「そうですよ、マスター! どうして平然としてるんですか!?」

 

 余裕ぶっこいてる俺達を引っ張って逃がそうとするラグネルちゃんとランサー。

 

 さて、どうして俺達が呑気に見物をしているのか?

  

 その答えは奴等との距離が1メートルにまで縮まった時に判明した。

 

 奴等の先頭がそのボーダーラインを踏み越えた瞬間、空から音速を超えて飛来した光弾がメス豚共に着弾し、天を穿つほどの爆炎によって奴等が消滅したからだ。

 

「な…なな……」

 

「今の…どこから……」

 

 へたり込む女性陣2名を他所に「たまやー」と呑気に掛け声を上げる俺達。

 

「やはり、こうなりましたな」

 

「母上が父上の事を見てないワケがないですからね」

 

 さも当然の事のようにうんうんと頷く息子達。

 

 俺の行動は姉御によって常時RECされてます。

 

「今のってお義母様なんですか!?」 

 

「うん。ラグネルちゃんの前だと見せなかったけど、ウチの嫁さんはちょっぴりヤキモチ焼きなんだよ」

 

 まあ、それでなくても息子達が生殖サルに襲われるのはNGだろうけどさ。

 

 しかし一瞬で爆炎に消えるのと空間ごとぶった切られるの、奴等にとってどちらが幸せだったのかねぇ。 

 

 

 

 

ある族長の日記

 

◎月×日(晴れ)

 

 今日、娘が男を連れてきた。

 

 魔王軍の幹部が里の襲撃部隊に出張っているクソ忙しい時に、奴は『娘さんを私にください!!』などと言う。

 

 しかも魔王を討伐したなどというハッタリ付きでだ。

 

 騎士か何か知らないが、どこの馬の骨とも知れない奴に可愛いゆんゆんをやれるワケがない。

 

 娘の事をラグネルなんて妙な名前で呼ぶ無礼者では尚更だ。

 

 だから里の外にいる魔王軍を一人で倒してこいと言ってやった。

 

 お任せくださいと頼もしく胸を張っていたが、果たしてその威勢は何時まで保つかな?

 

 

●月▼日(曇り)

 

 

 ただ今、里の外が炎上中!

 

 なんなのこれ?

 

 なんか『ガラティーン!!』って叫びが聞こえる度に上級魔法なんてメじゃない位の獄炎が噴き出まくってるんだけど!

 

 もしかしてこれって、あの若造の仕業なのか!?

 

 ヤヴァいよ!?

 

 あの周りには観光名所にしようとしてた自然やら遺跡がいっぱいあるのに!?

 

 というか、それ以上にこのままだとゆんゆんをゴリラの生贄にしないといけなくなる!!

 

 魔王軍、頑張ってください!

 

 お願いします!!

 

 

 

 

 えー……剣キチですが、ウチの長男の所為で紅魔の里の周辺が紅蓮に燃えています。

 

「聖者の数字で身体能力は三倍! ラグネルへの愛によってさらに2倍! そして嫁取りの決意で剣を握る腕に込められた力は当社比2倍! すなわち、今の私は10倍ガウェイン!!」

 

「「「「「ぎゃあああああああっ!?」」」」」 

 

「あらやだ、圧倒的」

 

 来た当初でも里の人達の攻撃魔法によって吹っ飛ばされていた魔王軍残党は、テンションMAXで戦場に飛び込んだガウェインの攻撃によって次々と『汚物は消毒』されていっている。

 

 というかアイツ、剣を振り切った瞬間に魔力放出で前に飛ぶ事で、真名解放の隙を潰して宝具を連発してるんだけど。

 

 なにあの変な技。

 

「落ち着けゴリラ! ポンポンポンポン宝具演出をキャンセルするなぁぁっ!!」

 

「ラグネルさん、どうしましょう!? このままだとお兄ちゃんの所為で里の周辺が焦土になっちゃいます!」

 

「ご……ごめんなさい! お父さんが結婚したいなら魔王軍を倒してこいって言っちゃったから、ガウェイン様が張り切ってるんです!!」

 

 御両親との挨拶には立ち合わなかったけど、そんな事を言われちゃったのか。

 

 その条件って、完全にあいつの思うつぼなんだもの。

 

 そりゃあガウェインも張り切るワケだ。

 

 周辺に群がっていた魔王軍たちが綺麗さっぱり焼き払われると、灼熱地獄さながらの光景は終わりを告げた。

 

 気圧差で吹き込んだ風が粉塵を吹き払えば、そこには陽光を浴びてガラティーンを天へと掲げるガウェインの姿が。

 

「我が名はガウェイン! 族長の娘の婿にて太陽の聖剣を統べる者!!」

 

 ラグネルちゃん曰く、紅魔族は目立ちたがり屋が多いという。

 

 仮にこっちで暮らす事になっても、ウチの息子なら上手くやっていけるのではなかろうか。

 




10倍ゴリラ

 ギフト『不夜』(あらゆる攻撃に対する耐性をアップ&毎ターンチャージを2増やす)+『暴走』(宝具封印耐性をアップ&毎ターンチャージを最大にする)

毎ターン 聖者の数字(EX) カリスマ(B)

 鬼の防御に毎ターンバフ付き宝具『ゴリティーン』が飛んでくる。

 今だと1ターンキルも楽になったから、そこまで脅威じゃないかも……

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