私は年末進行の修羅場の中、第二次採集決戦からの怒涛の展開と旅の終わりをしっかりと見届けました。
10年の長きにわたる冒険の結末、それは寂しいながらも素晴らしいモノでした。
FGOを作り上げてくれたスタッフの皆様には心からの感謝と称賛を送りたいと思います。
そんな訳でこちらの方の執筆意欲も復活しました。
長年塩漬けにしていて恥知らずこのうえないですが、再始動しますのでお暇な方は見ていただかれると幸いです
人理修復記65日目
やってきました、第四特異点。
場所は俺にとっての地元……といっていいのか?
19世紀のロンドンである。
俺達の時代だとロンディウムって呼んでたんだが、自然が溢れていた当時の面影なんて一ミクロンも無い。
一面石造りの建物に覆われた19世紀くらいの近代都市に様変わりしていた。
ジジイ臭い台詞だと思うが、時が過ぎゆくのを感じさせるもんだ。
そんな訳で今回のメンツだが、マスターは俺と立香ちゃんに我が家のニートと娘二人。
そしてサーヴァントはマシュ嬢にアンリ、シグルド夫妻、エイリーク夫妻、葛木夫妻、クー・フーリンにロビンフッド、マルタ女史とアタランテ、モーさん、メリュジーヌ、ブーディカ女史、イリヤ嬢とミユ嬢である。
子供達や立香ちゃんの安全を思えばもう少し連れてきたかったんだが、定員なので仕方がない。
そして子供の人数が増えているのでマルタ女史やブーディカ女史の負担が増しているのは申し訳ないが、その辺は勘弁していただきたい。
妖精郷で絶賛治療中の衛宮君が帰ってきたらイリヤ嬢達は帰ると思うので、それまでの辛抱だ。
そういえば彼の治療を担当すると言っていたプロフェッサーRとは何者なのだろうか?
通信画面の枠外から『魔導力とマグネットパワーでマグネマン・プラスに!!』とか聞こえてきて不穏なんだが……。
ともかく衛宮君が人間として五体満足で帰ってくることを祈って止まない。
具体的に言うと頭にセンサーが付いたり、腕が増えたり脚部が逆足にならない感じで。
さて、知人の安否はいったん置いておいて特異点の話に戻そう。
まず第四特異点に足を踏み入れた瞬間、モーさんに異変が起こった。
突然光り輝くと存在の重みというか氣の質が上がったのだ。
その理由に関してはモーさん自身が把握していた。
『あぁ……なんかこの特異点には俺が召喚されてたみたいだな。で、融合してより力が強い俺が残ったらしい。これが母上が言っていた世界は矛盾を嫌うって事なんだろうさ』
本人曰くこんな感じだそうな。
でもって、次に目に付いたのは視界を塞ぐ程の濃い霧だった。
ここが霧の街と言われているのは効いたことがあるが、この濃度はちょっとシャレにならない。
しかもドクターロマンの解析だとこの霧は大気組成に含まれているかと思う程に魔力が濃いらしい。
ここまでの濃さだと人体にも害を及ぼす可能性が高いとのこと。
なるほど、妖精郷在住の俺達には問題はないが、立香ちゃんやイリヤ嬢などの現代に生きる人達には毒になるか。
となれば、やる事は一つである。
抜き打ちで刃を奔らせれば一刀は霧中の魔力という因果を断ち、周囲を覆う白いヴェールは一気に無害化した。
我が子や預かっているお嬢さんがいるのだ、有毒ガスなど吸わせるわけにはいかん。
ちなみに、これを見たメリュジーヌは何故か知らんが大層驚いていた。
『なにあれ? 世界の理を切った? ねえ、彼って魔術王以上にヤバくないかな?』
目を丸くしてこんな事を言っていたのだが、聞いた相手がアンリだったので今更(笑)で流されていた。
さて、ここへ召喚された同位体と融合したモーさん曰く、このロンドンには人間の生存者はほぼいないらしい。
そして、人間の代わりといっては何だが霧の中には怪物がいるのだとか。
どんな化け物かとワクワクしてたのだが、出てきたのは重装甲の自律ドローンとガイノイドの出来損ないのようなオートマタだった。
この手の物をあまり見たことが無いサーヴァント諸氏は少し驚いていたが、俺にとっては馴染みの深い深ーいブツである。
前世の上海を思い出した所為もあって、そりゃあもう見事にバッサリ殺ってしまった。
前世では軍用ドローンを相手にした場合、刀では対処しきれない時もあったからな。
その辺の事情もあって、上達具合も含めて気が乗ってしまったのだ。
結果は一刀で簡単にメカ共は両断されてしまった。
多少は魔力で底上げされているとはいえ、素材が普通の鉄っぽいので当然といえば当然か。
その中には大型のロボットもいたのだが、奴も俺の一刀は受けきれなかった。
個人的には水晶蜘蛛の外殻は無理でも、戦車の正面装甲に使われる特殊合金を採用するくらいは頑張ってほしかった。
そんなこんなで1分足らずでバラバラになったメカ達。
興味本位で奴らの中身を覗き込んだ俺は思わず我が目を疑う事になった。
なぜなら奴等を動かしていた動力、それが蒸気機関だったからだ。
兇手時代の経験に加えて息子関係でフェアリーブレイバーにも顔を出すので、少々齧った程度とはいえ機械工学の知識はある。
ここまで複雑な機構を蒸気で動かす代物ははじめてお目にかかった。
というか、ここまでの構造なら電気駆動にした方が効率いいだろうに。
これを造った奴は蒸気機関に異様なこだわりを持つ変態と見た。
それと襲ってきた敵の中には真っ白で中途半端に人型な謎生物もいた。
ドクター曰く魔術による疑似生命体、いわゆるホムンクルスらしい。
コイツも輪切りにしてしまったが、イカみたいな体だし問題あるまい。
さて、特異点らしく街中に怪異が蠢くことが分かったところでモーさんが現地協力者がいると言い出した。
聞けばこっちに野良サーヴァントとして召喚されていた彼女が、その人物と共に霧などの問題解決で力を合わせていたらしい。
そういう事ならば力を借りない手はない。
そんな訳で知り合いがいるアパートに向かおうとしたところ、思わぬアクシデントが発生した。
周囲に立ち込めた霧が強い酸性を帯び始めたのだ。
そんな霧に紛れてイリヤ嬢に背後から襲い掛かる小さな影。
普通なら抵抗も出来ずに首を掻っ切られるのだろうが、そうはいかない。
サーヴァントとはいえ、お預かりしている子供に危害を加えさせては親御さんに申し訳が立たん。
相手の凶刃が振り下ろされる前にイリヤ嬢の手を引いて位置を入れ替えた俺は、襲撃者の刃に空いた手を添えると流れに逆らわずにそれを逸らす。
すると力の向きを狂わされた襲撃者の体は空中でクルリと回転し、そのまま背中から地面へ落ちる。
本来なら地面へ激突すると同時に内勁のこもった拳を水月へ叩き込むのだが、ある事に気が付いた俺はすんでのところで彼女の体を受け止めることになった。
『……あれ? モディのおじさんだ』
なんと襲撃を掛けてきたのはルーマニアでお世話した黒のアサシン、ジャックちゃんだったのだ。
六導女史の娘として転生した筈の彼女が何故ここにいるのか?
事情を聞いたところ、彼女は確かに人間に転生して母である女史と共に平和に暮らしていたらしい。
しかし、ある日目が覚めると英霊ジャック・ザ・リッパーに戻っていて、このロンドンに一人でいたと言う。
事情を聞いたメディア女史は、転生したジャックちゃんの身体は他の人間と同じく人理焼却によって焼き尽くされたのではないかと考察した。
しかし英霊である彼女の魂は燃え尽きることはなく一度英霊の座に戻り、再びこの特異点へ召喚されたのだろうとのことだ。
でもって、彼女が俺達を襲った理由は、ある魔術師にここに来る魔術関係者を倒し続ければ六導女史の元への帰り方を教えると言われたかららしい。
それを聞いた瞬間、俺はきっと奇麗な笑みを浮かべていたのだろう。
隣にいたアルトリアが『ひぃっ!?』とビビっていたから間違いない。
その魔術師がジャックちゃんにやったのは、犯罪者がよく使う子供を思い通りに動かす手だ。
攫われたり売られたりして右も左もわからない子供は、混乱が頭の中を占めていてそのままでは役に立たない。
そこでジャックちゃんのように元居た場所に帰れるなどと嘘をついて思考を仕事へ誘導するのだ。
モードレッドの友達にそんなふざけた真似をするとは、下手人は八つ裂きにせねばなるまい。
そう考えてジャックちゃんに魔術師の元に案内してもらおうと思ったのだが、生憎と彼女は件の野郎の居場所は分からないらしい。
すぐに落とし前をつけられないのは残念だが、彼女に魔術関係者(おそらくはカルデアが本命だろう)の始末を命じていることを思えば、遠からず向こうから接触してくるはずだ。
斬刑に処すのはその時まで取っておくとして、今はモードレッドと再会を喜んだり、ミユちゃんに『お姉ちゃん』と呼ばれて『ふぉぉぉぉ……』と感極まっているジャックちゃんを見て癒される事にしよう。
人理修復記66日目
ジャックちゃんを保護した俺達はこの世界に召喚されたモーさんが根城にしていたアパートに転がり込んだ。
そこには同居人として一人の青年がおり、彼はヘンリー・ジキルと名乗った。
ドクター・ロマンが言うには、彼は『ジキルとハイド』という物語の主人公……より正確に言えばそのモデルとなった人らしい。
そんな彼は碩学、本人が言うには科学者らしい。
実際薬品保管用とはいえ、19世紀と思われるこの特異点で冷蔵庫を運用しているのだから大したものだ。
そんな彼とこのロンドンについて情報を交換したのだが、現在は魔力を多分に含んだ『魔霧』の影響によって住民の大多数は死亡。
生き残りはいたとしても建物から出られない状態で、街が魔霧に包まれ続けていると餓死などで全滅は必至だそうだ。
話の最後にジキル氏とドクターはこの魔霧の出所を探る事こそが第四特異点を攻略するための鍵なのではないかと推論を出した。
俺達も行動の指標はないので、知恵者二人がそう結論付けたのなら異論を挟むつもりはない。
というわけで、魔霧の調査の一環として俺達はジキル氏の頼みを一つ聞くことになった。
彼の頼みとは、同じ碩学を嗜み魔術師でもあるヴィクター・フランケンシュタインの保護だった。
魔霧の中、靄に紛れて襲ってくるメカやホムンクルスを蹴散らして進むことしばし。
件の老人の家に着くと、その入り口には一匹のサーヴァントが陣取っていた。
道化師に似た見るからに胡散臭いソイツが口を開くより早く、俺は奴の首を斬り飛ばしていた。
『叔父上、ソッコーでブチ殺してどうすんだよ。情報の一つくらい取ろうぜ』
その様子にモーさんが呆れていたが、生憎とそういうわけにはいかない。
何故なら奴は猟奇系の殺人鬼だからだ。
あの手の目とツラをした奴が女の子供から抉り出した内臓で自慰をしたり、死体を料理して食う様は前世の上海で掃いて捨てるほど見たからな。
存在自体が子供にとって害悪すぎる。
実際、奴の身体には血と臓物、そして火薬の匂いが染みついていた。
案の定、件のヴィクター老人は既に猟奇系サーヴァントの手によって命を落としていた。
彼が残したものは二つ。
一つは書いている途中に襲撃を受けたのだろう、ヴィクター老人の筆跡である書きかけのメモ。
これにはロンドンで進行しているであろう『魔霧計画』なる企みと、その首謀者たる『P』『B』『M』という三人の首謀者のイニシャル。
その首謀者達が英霊である可能性が高い事や、ヴィクター老人も件の計画への参加を要請されて断った事が書かれていた。
彼が始末されたのは、これが原因だろう。
そしてもう一つは彼が生涯をかけて手掛けた人造人間。
その彼女はなんとルーマニアでバイキンマンとして俺を狙い続けた黒のバーサーカーであった。
しかし彼女はサーヴァントではなく生前、つまりフランケンシュタイン作の人造人間としてこの特異点に存在していた。
彼女は当初名前がなく、ロマンは怪奇小説からフランケンシュタインの怪物と呼んでいた。
しかしそれに不快感を示した彼女の様子を見て、立香ちゃんが『フラン』という名前を提案。
本人もこれを気に入った為に、彼女はこれからフランと名乗る事になった。
その後、ヴィクター老人の屋敷を引き払った俺達はジキル氏の待つアパートに戻った。
その際に身体検査でジキル氏がフランちゃんにセクハラ疑惑を掛けられるなど微笑ましい一幕があったが、その辺は置いておこう。
まずは『魔霧計画』を解明し、3人の首謀者を仕留める事を考えねば。
これは勘だが、ジャックちゃんをハメた魔術師も件の3人の中にいるだろうからな。