今回は山も谷もない箸休め。
波乱が来るのは腹ペコが活動し始めてからですね。
剣キチの日記の裏というコンセプトなので、その辺を表現できたらいいなぁ。
FGO 第二部
呼符6枚で、ゴーレムマイスターしか来なかった……。
おとなしく石を集めることにします。
デケンベル 12の日
ガウェインは日々健やかに成長している。
最近はハイハイが出来るようになり、あの子の活動範囲も大きく広がった。
この子は太陽の加護がある為に、日中はとっても暴れん坊である。
この前も育児室を抜け出したと思ったら、服を泥まみれにして兵の訓練場まで行っていたのだ。
そこで力尽きたらしく、大声で泣いていたところを気付いたアルガが保護してくれたらしい。
あの子の腕の中で気持ちよさそうに寝ていたところを見ると、ガウェインはアルガに会いにいったのかもしれない。
こちらの思惑通りに懐いてくれるのは結構なことである。
まあ、政務以外は人形同然であるロット王は育児に関わることがないので、ガウェインが懐く理由もない。
いつかは真実を告げることになるだろうから、そうなった後でも良好な親子関係を維持する為、あの子にはがんばってもらいたい。
マルティウス 21の日
この頃、オークニー国内にも蛮族の姿が見られるようになった。
このブリテン島を侵略してくる蛮族は大きく分けて二つ。
一つはヨーロッパ本土から渡ってくる異民族であるサクソン人。
ブリテン人よりも大柄で力も強く、獣の皮で出来た服に身を包んで斧などで武装した正真正銘の蛮人だ。
そしてもう一つがピクト人。
蟹の様な甲殻に身を包んだ爬虫類と人類の合成体、という風情の亜人種である。
こちらは完全な戦闘民族であり、こちらへ侵攻してくる理由もただただ殺戮のみ。
どちらも民間人にとっては脅威以外の何物でもなく、姿を見れば軍を派遣せねばならないので国庫的にも大変優しくない。
私達首脳部にとってはまさに悩みのタネだ。
というか、蛮族が襲撃してくる度に敵軍の五割をアルガ一人で倒しているというのはどうなのか。
他の騎士達を責める気は無いが、いくらなんでも差が付き過ぎだろう。
近頃は軍の上層部もあの子を頼りにしているようで、一兵士なのに単独行動が許可されてしまっている。
現場の指揮官が言うには、あの子の動きがあまりに超人過ぎて、付いていくことが出来ないんだとか。
それとなく本人に確認しても、修行になるから問題ないという答えが返ってきたし。
アルガが負担に思っていたならば、何らかの手を下すつもりで居たのだけれど、本人が納得しているのならどうしようもない。
とにかく、無茶だけはしないように釘を刺しておかないと。
マーイウス 13の日
今日、ようやくアルトリアの居場所を掴む事が出来た。
数年前にアルガが接触したのをマーリンに把握されていたらしく、奴がブリテンの王宮から姿を消してすぐに、あの娘はエクター達と居を移してしまっていたのだ。
オークニーでの生活が落ち着いた頃から、その足取りを追う為に使い魔を方々に飛ばしていたのだが、漸くその苦労が報われた。
滅び去ったブリテン王家の遺児。
王たるウーサーの直系であるあの娘を擁するマーリンの思惑はわからない。
だが、理想の王などという妄想によって、生まれながらに手を加えられたアルトリアを利用するのだ。
ブリテンの復興か新たな王国の為の旗印か、いずれにせよロクな事ではあるまい。
もちろん、私は奴の企みを黙って見過ごすつもりは無い。
憎きあの男の血を引くとはいえ、あの娘は紛れもない私の妹だ。
奴のいい様には絶対にさせない。
必ずこの手に取り戻して見せる。
マーイウス 14の日
我が事ながら今回の行動は迂闊だったと思う。
昨日、やっとの思いでアルトリアの居場所を掴んだ私は、あの娘を迎えに行こうと決めた。
こちらの使い魔を察知したであろうマーリンに再び姿を隠されるのを危惧したのもあるが、それ以上に大きくなったアルトリアと会いたかったのだ。
正直言えばアルガにもついて来てほしかったが、タイミングが悪いことにあの子は蛮族討伐の遠征で数日前から留守だった。
帰還予定が明後日だったので帰ってくるのを待つという選択肢もあったが、予定通りに終わる保証はなかったし、その間に手遅れになったら本末転倒だ。
他にも護衛も連れて行こうかとも考えたが、私一人ならともかく重武装したオークニーの騎士達を引き連れていては国際問題に発展しかねない。
そういうことがあって、私は単身でアルトリアを迎えに行ったのだ。
しかし、予想通りに敷かれていたマーリンの妨害によって、あの娘の顔を見ることもなく私は退かざるを得なかった。
いくら私が起源に覚醒したといっても、奴の魔術工房の中で戦うのは流石に無理があったのだ。
工房の大半を焼き払ったこっちもこっちだが、その報復で星の聖剣のレプリカを持ち出すというのはやり過ぎではなかろうか。
レプリカといってもブリテン最高の魔術師であるクズが心血注いで作ったものなので、その威力は並の魔剣など比較にならなかった。
アルガからもらっていた湖の精霊の霊薬が無かったら、確実に体に傷が残っていたところである。
まあ、私もタダでやられたわけではなく、奴が半魔である事を逆手にとってモリガン由来の破魔の魔術を叩き込んでやったが。
奴に打ち込んだ術式には、男性として不能になる呪いや尿の通り道に石が詰まる呪いも仕込んであるので、精々苦しめばいいと思う。
マーイウス 15の日
………またアルガに勝てなかった。
一年ほど前の記念すべき初夜に手痛い敗北を喫した私は、アルガと体を重ねるのは少し自重しようと自分に戒めた。
だがしかし、マーリンとの戦いの後から続く身体の芯をとろ火で炙られるような火照りの所為で、今日の昼には私の体はかなり拙い状態になっていた。
ぶっちゃけると、エッチィことがしたくなっていたのだ。
今になって思えば、これは起源である戦女神モリガンの影響によるものなのだろう。
戦闘の高揚と命の危険を感じたことによる種の保存の本能。
戦と死を司る彼女の分霊である私は、そういった影響を殊更に受けやすいのだと思う。
そういうワケでお母様に再度協力を仰ぎ、リベンジと相成ったわけだ。
お母様から教わった殿方を喜ばせる方法というのは、まだまだ形を成していない。
というか、ああいうのって夫婦の営みで磨いていくものであって私には実践する機会が皆無だったりする。
はっきり言って耳年増になっただけである。
そんな有様なのに体の熱の欲するままに突撃したものだから、結果は惨憺たるものだった。
一年前の事で慣れてしまったのか、前回以上に快楽を感じてしまうようになった私の体は、アルガが無意識に行う攻めの前にあっと言う間に白旗を揚げた。
というか、胸まで攻めてくるのはズルイと思う。
ガウェインに授乳している所為で何時もより敏感になっているのに……。
結果は4回も気絶したうえに、前にも増してベッドが水浸しになってしまった。
お母様が後始末をしてくれなかったら、絶対バレてたと思う。
今も腰が抜けて動けないし………。
ねえ、アルガ。
毎回こんなだとお姉ちゃんダメになっちゃうから、次はもう少し優しくしてほしいと思うの。
マーイウス 29の日
やっぱりというか、なんというか。
私、二人目の子を身籠っていました。
前回もだけど今回だって安全な日だったはずなのに、どうして百発百中なのだろうか。
やっぱりあのお腹トントンがダメなのだろうか?
それとも、アルガが高位精霊である事が何か関係があるのかもしれない。
まあ、子宝は天からの授かり物だというし、考えても仕方ないだろう。
どうあれ、家族が増えるのは私にとっても喜ばしいことだ。
ただ、アルトリアに関して動けなくなってしまうのは痛い。
アルガに引き継いでもらおうと思っていたのだが、偵察に向かわせた使い魔からの情報では別の場所へと姿を隠した後だった。
さすがはブリテン最高の魔術師、抜け目がない。
正直なところ、これからのことを思えばアルトリアの捜索は時間がかかると思う。
マーリンだって今回のことを教訓に、認識阻害や隠ぺいの結界を強化するだろうし。
とはいえ、諦めるつもりはない。
『アーサーは理想の王として作り出したんだ。この子一人を使い潰す事で、ブリテンが平和になればハッピーエンドじゃないか』などと口にするクズに、あの子を任せてなどおけるものか。
マルティウス 17の日
今日、私たちの二人目の子供が生まれた。
名前は『ガヘリス』
とても力が強く元気な子だ。
初めての授乳の時も吸う力が凄くて大変だった。
体もガウェインよりも大きくて、産むのに少し苦労したくらいだ。
ガウェインの世話をしてくれていたお母様、そしてアルガもとても喜んでくれた。
まあ、おしめを替えようとしていたアルガにおしっこを引っ掛けるなんてハプニングもあったが、些細な事だろう。
ガヘリス、元気で生まれてきてくれてありがとう。
貴方にも多くの素敵な出会いと幸せが訪れますように。
アプリーリス 18の日
産後の影響からようやく復調した今日、ちょっとしたトラブルが発生した。
ガウェインやガヘリスに興味を示さないロット王に、アルガの堪忍袋の緒が切れてしまったのだ。
『子供には父親の愛情が必要です。この国を担う次代の王の為にも王子達と過ごす時間をお作りください』
怒っていながらも、礼儀を守ってソフトな言い回しで進言するアルガ。
思えばアルトリアの事や育児に追われて、ロット王を操作するのを忘れていた。
王子が生まれたのに顔も見に来ないとか、そりゃあダメだわ。
表面上は平静を保ちながらも自分のポカに頭を抱えていると、文官を務める貴族達が騒ぎ出した。
『一兵士が王に意見するなど、おこがましい!』
『本来なら謁見も許されぬ立場のくせに、外戚だからといって調子に乗るな!』
などと、出るわ出るわのブーイングの嵐。
あまりの物言いに私の堪忍袋の緒が切れそうになった時、軍務を司る貴族がこう言い放った。
『王への礼を逸した罰として、ピクト人に占拠された村を一人で開放してこい!!』
前にも書いたが、ピクト人は戦闘種族である。
硬い甲殻に人をはるかに上回る強大な膂力。
実際、戦力差はピクト人1に対してオークニーの兵士10人と言われている。
貴族が挙げた村には約500人のピクト人が暮らしているので、開放するには最低5000の兵が必要ということだ。
貴族が出したあまりにも無茶な指令に宮廷スズメ達が押し黙る中、アルガは何の躊躇いもなくその指令を受けた。
使い魔を使って宮廷内の情報を集めたところ、その貴族はお母様に気があるようで一緒に暮らすアルガの事を常々目障りに思っていたらしい。
それを聞いた後、そいつには全身を毒蛇に咬まれてのたうち回って死ぬ呪いを掛けておいた。
アルガだけでなく、お母様にまで手を出そうとする痴れ者には似合いの最後だろう。
そうこうしている内に日暮れ時になると、任務に出ていたアルガが戻ってきた。
生きて戻ってくるなどとは夢にも思っていなかった貴族たちが見ている中、馬用の荷車を引いて城に入るアルガ。
全身にベッタリと血を浴びているものの、ケガらしいケガはなかった。
その事にはホッとしたのだが、本人が無事だと分かれば今度は荷車の中身が気にかかる。
役人の一人が荷車に掛けられた布を取り払ったところ、周囲に絶叫が鳴り響いた。
荷車に積まれていたのは、山のように積まれたピクト人の首だったのだ。
『ピクト人から拠点開放の証拠として持ってまいりました。どうぞ、ご検分ください』
ニコリと笑みを浮かべるアルガに、諸侯はもちろん見物に来た野次馬も言葉を発することができない。
数百に及ぶ生首の死臭はすさまじく、その場で嘔吐する者はまだマシな方で気の弱い者は気を失い、中には失禁する輩もいたくらいだ。
その後、首達は焼却され、遺灰は首塚に埋葬された。
やりすぎだと思わなくもないが、これでアルガのことを疎ましく思っていた連中もあの子に何も言えなくなるだろう。
今回のことはそのくらいのインパクトがあったのは間違いないのだから。
アプリーリス 23の日
日々オークニーの城で暮らしていると、騎士や兵士と侍女の恋愛というのをチラホラと見かける。
まあ、城に務めている者の半分以上は結婚適齢期の男女なのだから、こういう風になるのは自然の流れと言っていいのだろう。
そういう事情があるとはいえ、こうも年若い職員たちに人生の春が訪れるのを見ていると、気になるのがアルガの評価である。
というのも、私は城の中でアルガが女性と話しているのを見たことがないのだ。
あの子を見かける時は大体が剣の稽古か子供たちの世話、たまにお母様の手伝いや軍の所用といった感じで女っ気など0なのだ。
目つきが鋭いのが玉に瑕だけどお母様似の顔は端正と言えるし、高身長で細身ながらも身体は鋼のように鍛えられている。
一兵士だが単騎特攻が認められたりと軍内の評価もよく、給金だってほかの一般兵とは比べ物にならない。
コミュニケーションにしても女性に優しく、話術にも長けた印象を持つ。
姉の贔屓目を無しにしても、超が付くほどの優良物件だと思うのだが。
気になったので、私付きの侍女にその辺の事を聞いてみると意外なことが分かった。
あの子がモテない理由は『異性に対して興味があるように見えないから』だそうだ。
侍女が言うには、年頃の殿方は少なからず視線なりなんなりで、こちらが欲しいというアピールをしてくるものらしい。
相手や状況によりけりだが、女性の方も自身が求められている事実は嬉しく思うし、それが相手に異性としての好意を抱く切っ掛けとなるのだという。
しかし、アルガにはそれが全くない。
ほかの兵士に比べて礼節も弁えているし言葉使いも柔らかいのだが、異性としては欠片も意識されていない。
いくら自分が求めていたとしても、彼は自分という『女』にまったく興味がないというのが分かるのだそうだ。
当然の話だが、そんな人間に異性としての好意など抱きようがない。
出会った当初は容姿や態度に惹かれた女性達も、そういった理由でアタックをする前に次々と手を退いていったのだという。
実に興味深い話である。
夜の様子を見る限り、女性に興味がないというのはあり得ないと思うのだが。
あの子の好みのタイプって、今度聞いておこうかしら。
『姉ちゃんみたいな人』なんて言ってくれると嬉しいなぁ。