剣狂い転生漫遊記   作:アキ山

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 お待たせしました、今回はモル子日記です。

 我ながら山もオチもありませんが、暇つぶしになれば幸いかと。

 あとオニランドピックアップ、40回廻してパライソとイバラギン(狂)の宝具レベルが3になりました。(パライソ×2 イバラギン×1)

 シトナイ? 知らない子ですねぇ(涙)


【悲報】モル子日記【纏めたった】(9)

 マルティウス 27の日

 

 

 記念すべき日なのに日記を書く力が残っていない……。

 

 長年の努力が実を結んで、ついにアルガが自分の意志で私を抱いてくれたというのに、まったくもって情けない。

 

 あの子を誘惑するのは本当に苦労したのだ。

 

 恥ずかしいのを我慢して湯浴みあがりにワザと薄着で際どい角度で肌を見せてみたり、事あるごとに抱き着いたり胸を押し付けたり。

 

 あとは酒の勢いに任せようとしたり(あの子は常在戦場(じょうざいせんじょう)とか言って飲んでくれなかったけど!!)

 

 それでも抱いてくれる事は無く、私には魅力が無いのかと本気で悩んだ事もあった。

 

 そうやって一人涙を呑むこと幾星霜(いくせいそう)

 

 ようやくすべての努力が報われたワケなんだけど……これは無いと思うの。

 

 実質上の初夜という事で気合を入れていたのに、意識が無い時の5割増しでいぢめられて醜態を晒す結果に終わってしまったんですけど……。

 

 『アヘ顔ダブルピース』なんてよく分からない言葉が浮かんできたけど、きっと気のせいだ。

 

 誤解の無いように言っておくと、あの子も最初は優しく抱こうとしてくれていたし私もお姉さんとしてリードしようと思っていたのだ。

 

 しかし、悲しいかな。

 

 長きにわたる容赦の無い調教は、私をそんな程度では満足できない身体にしてしまっていたのだ。

 

 ソフトプレイのじれったさに我慢の限界に達した私は、あろうことかハードなリクエストをしてしまった。

 

 こちらの要求を聞いた時、アルガの表情が引き()っていたように見えたのは気のせいだと思いたい。

 

 それでも私の我儘に付き合ってくれたのだから、ウチの旦那様の優しさは本物である。

 

 まあ、そんな態度の割には『抜かずの8連発』とかやってた辺り、あの子もノリノリだったようだけど。

 

 ともかく、当初頭に思い描いていたロマンティックな夜なんて微塵も存在しなかったワケだ。

 

 精魂尽き果てて賢者モードになった時、自分のやらかした事にマジ泣きした私は悪くない。

 

 せめてもの救いは、離れで(いた)したお蔭で家族に音声を聞かれていない事か。

 

 ぶっちゃけ途中から何を言っていたのか覚えてないので、子供たちに聞かれた日には死ねると思います。

 

 あと例によってベッドはグチャグチャなので、お母様からの雷は覚悟しないといけないのが辛い。

 

 成人した息子もいるのに、全裸正座とか本気で勘弁です。

 

 基督教の伝説には『聖杯』という願望器があるらしいけど、それを見つけたらきっと『普通に抱かれて満足できる身体になりたい』と願うだろう。

 

 ブリテンには聖遺物を収集している家もあるそうだし、本気で探してみようかしら……。

 

 

 アプリ―リス 3の日

 

 

 今日は初めてアルトリアがウチを訪れた。

 

 アルガがブリテンの騎士達に剣術指南を行う代わりに、あの子は週に一回休みを取って我が家で過ごすようになったのだ。

 

 アルガの話だと現在のブリテンは文官不足の為に政務が上手く回らず、国王であるアルトリアは三徹くらいは当たり前。

 

 酷い時には一週間休まずに仕事をする場合もあるのだという。

 

 それを聞いた時は正直呆れてしまった。

 

 ブリテンの首脳部はいったい何を考えているのか?

 

 王はアルトリア一人しかいないのに、それを使い潰すようなマネをするなど愚の骨頂ではないか。

 

 ともかく、家に来たからにはあの娘は『アーサー王』ではなくアルトリアという一人の娘である。

 

 私達は国の事など綺麗に忘れてゆっくりと休んでもらおうと、前日から歓迎の準備を整えていたワケだ。

 

 で、アルガに連れられて現れたアルトリアだが、最初はやはりと言うかなんと言うか対応にぎこちなさが見えた。

 

 肉親と言っても赤子の時から二十年以上も空白期があるのだから、これは仕方のない事だろう。

 

 私達もその辺は理解していたので焦らず付き合っていくつもりだったのだが、思わぬところで事態は好転する事となった。

 

 アルトリアの心を解き解したのは、我らの長女であるガレスだった。

 

 瞳と髪の色が自分と同じ事が気に入ったのか、生まれたばかりの子犬を引き連れて『アルねえたま』『アルねえたま』と懐いたのだ。

 

 もこもこ毛玉に囲まれながらにぱっと笑って手を伸ばす姪っ子の姿に、アルトリアは『ぬふぅ……ッ』と女の子が出してはならない類の声と共に真っ赤な顔で鼻を押さえていた。

 

 どうやらあの子は可愛いものに目が無いらしい。

 

 こうなっては我が家の犬姫様の独壇場である。

 

 やれ『だっこ』だの『かたぐるま』だのと、キュンキュンと鳴く子犬を引き連れて新たにできた叔母へと纏わりつく、纏わりつく。

 

 さらには『おひるねー』とブラックハウンドの仲間たちの下へと引きずり込めば、その毛皮のモフモフ感でアルトリアの心は一気に解れてしまったようだ。

 

 ガレスに構う内にすっかり寛げるようになったアルトリアは、夕食に舌鼓を打ったのちお母様の希望で共に床に付く事となった。

 

 お母様の部屋へと入るあの子がちゃんと眠れるか少し不安だったのだが、それは杞憂だったようだ。

 

 翌朝、目の下の隈もすっかり取れたアルトリアは朝食をペロリと平らげたあと、ドゥン・スタリオンに(またが)って意気揚々と王都へ戻っていった。

 

 後で聞いた話だと、お母様に抱かれてベッドに入ったあの子はあっと言う間に寝入ってしまったらしい。

 

 いくら竜の因子を持つとはいえ、あの子も生身の人間だ。

 

 日々の激務で疲れていたのだろう。

 

 まあ、寝ぼけて赤ん坊のようにお母様の胸を吸っていた事については、姉の情けとして聞かなかった事にしようと思う。

 

 

 マーイウス 14の日

 

 

 突然ですが、懐妊いたしました。

 

 少し前から食の好みが変わったりつわりっぽい症状が出てたから『もしかしたら……』と思っていたのだけれど、大当たりだったようだ。

 

 出来たのは例の初夜(涙)の時だろう。

 

 あの体たらくで妊娠するとか、来てくれた子供に割と本気で申し訳ないと思います……。

 

 ともかく、新たな命を授かったのはめでたい事である。

 

 アルガを始めとしたウチの家族も喜びの声を上げており、お母様からは大事を取って家事や農作業は休むように言われた。

 

 みんなに負担をかけるのは申し訳ないと思うのだが、反面気遣われるのはやはり嬉しいものである。

 

 あと精の付く物を探しに行くとアルガがネビス山に入ってから、山から響く断末魔が止みません。

 

 いったいあの子は何を取りに行ったのだろうか?

 

 そういえばガレスがお腹にいた時は竜のレバーを食べさせられたっけ……。

 

 とりあえず、謎のゲテモノ料理は回避できることを切に願おう。

 

 

 クィーンティーリス 15の日

 

 

 休日なので今日もアルトリアがやってきた。

 

 この企画が始まった当初は緊張した面持ちだったあの子も慣れたもので、今ではウチに入ってくる時は『ただいま帰りました!』と満面の笑顔だ。

 

 母上にお土産を渡して私のお腹を優しくさすった後、私のお古の部屋着に着替えたアルトリアは『きゃーー!』と歓声を上げるガレスと共に動物たちへと突撃していった。

 

 めくるめくモフモフ天国を味わうあの子が浮かべるのは、作画崩壊を思わせるほどの至福の表情。

 

 具体的に言うとポンチ絵だった。

 

 ガレスや子犬達をお腹の上に乗せて、小さな手と肉球でほっぺをぷにぷにされながら『魂が浄化されます……』と(のたまう)う姿には、ブリテン王の威厳なんて毛の先ほども存在しない。

 

 今日も絶好調のアルトリアが幼女とワンコの癒しを堪能している内に日も暮れ、湯浴みを終えた私はアルトリアと共に床に着く事になった。

 

 あの子がウチに遊びに来るようになって何度か一緒に寝る機会があったのだが、こういう時のアルトリアは物凄く甘えん坊だ。

 

 王城では大きなベッドに一人で寝ているのが寂しいらしく、横になるとすぐに抱き着いてくる。

 

 そうして私の胸に顔を埋めて眠り、起きる頃には胸に吸い付いているワケだ。

 

 近所の村へ出向いた際に聞いたところによると、子供がこういう行動をとるのは乳児期に母親のぬくもりを与えられなかった事に起因するらしい。

 

 アルトリアはもう子供ではないが、この癖の原因は同じとみて間違いないだろう。

 

 本当にウーサーとマーリンはロクな事をしない。

 

 乳児を母親から引き離すのは悪影響しか与えないなんて考えなくてもわかるだろうに。

 

 しかし、この子って結婚とかできるのだろうか?

 

 私だってまともな結婚をしたワケではないので言えた義理ではないけれど、アルトリアはマザコンに加えてシスコンまで発症させている可能性が高い。

 

 まあ、女の子なので男ほどに否定的に取られることはないとは思うが、それでも不安材料である事は変わらない。

 

 それ以前に性別を偽って王をやっている関係から、婿どころか嫁をあてがわれる可能性だってある。

 

 あの子はそういう特殊な性癖は持ち合わせていないようなので、話が持ち上がれば回避しようとするだろう。

 

 けど、国内の権力闘争や諸侯の後ろ盾などを引き合いに出されると逃げられない可能性もある。

 

 そういった事がなかったとしても、肉体的には15歳とはいえアルトリアも20代半ば。

 

 女性としては行き遅れのレッテルを張られるには十分な年齢だ。

 

 このまま30に突入したら、本気で伴侶を得る機会が無くなってしまう。 

 

 どうにかして王位を誰かに譲渡して、普通の女の子に戻ることは出来ないものだろうか?

 

 お姉ちゃんは妹の婚姻がとても心配です。

 

 

 ユーニウス 6の日

 

 

 今日は夢のような日だった。

 

 なんとアルガが私に花嫁衣裳と婚姻の証として指輪を用意してくれたのだ。

 

『大々的に式を開くってワケにはいかないけど、形くらいはさ』と照れながら笑うあの子に私は号泣してしまった。

 

 こんな関係だから、式はもちろん結婚に関する事は出来ないと諦めていたのに……。

 

 10分ほど時間を費やして何とか落ち着いた私は、早速花嫁衣装に袖を通した。

 

 純白の衣装はシンプルなものだったけど、ロット王との婚儀で用意された物より遥かに美しく見えた。

 

 隣に立つのが想い人というだけで、ここまで変わるものなのか。

 

 自室で身支度を終えると礼服に着替えたアルガが入って来た。

 

「うん、やっぱりモルガンは綺麗だな」

 

 はにかみながらも紡がれたあの子の言葉に思わず赤面してしまった。

 

 いつもは私の名前を夜伽の時にしか呼ばないくせに、こういう時に言うのはズルいと思う。

 

 アルガと手を繋いで家を出ると、庭一番の大きな木の前にはドルイド風の老人がいた。

 

 彼はアルガが妖精郷から連れて来た方らしく、昔は国の重鎮も務めた高僧なんだとか。

 

 立ち合い人を務めてくれた彼の前で誓いの言葉を述べると、次に私達を待っていたのは庭に並べたテーブルいっぱいの料理の数々だった。

 

 今日の為にお母様と子供達が内緒で準備していたそうだ。

 

『おめでとう、モルガン。偽りじゃない貴女の花嫁姿を見られて本当に良かった。お父様も天国で喜んでいると思うわ』

 

 お母様の祝いの言葉に再び涙腺が決壊してしまったのはご愛敬だ。

 

 家族だけの(つつ)ましい式は途中で駆けつけて来たガウェインやガヘリス、さらにはアルトリアまで加えて陽が落ちるまで続いた。

 

 色々な意味で普通の人とは違う私達だけど、今日初めて本当の意味で夫婦になれたと思う。

 

 私達の前に広がる時間は悠久で色々な事が起こると思うけど、これからもよろしく旦那様。 

 

 

 ユーニウス 6の日

 

 

 今日、新たな命が生まれた。

 

 彼女が授かった名前はモードレッド。

 

 私達の五番目の子供で二人目の女の子だ。

  

 部屋中に響き渡るくらいの産声を上げた可愛い娘、きっと将来はちょっぴりお転婆で元気な女の子になるだろう。

 

 お姉ちゃんのガレスが大人しめなので、この子はそのくらいでいいと思う。

 

 妹の誕生に末っ子を返上したガレスは子犬と一緒に小躍りして喜んでいた。

 

 出産に立ち会ってくれたお母様も5人目になると慣れたもので、モードレッドを危なげなく取り上げると一仕事済んだと言わんばかりに一息ついていた。

 

 それとは反対に、終始落ち着かなかったのがアルガだ。

 

 いつもの泰然とした雰囲気はどこへやら。

 

 産声が聞こえるまで部屋をウロウロしたり、庭で延々と剣を振ったりと珍しく地に足が付いていない感じだったらしい。

 

 お母様にその事を指摘されると、叔父だと思って待ってるのと父親として立ち会うのは全然違うと返していたそうだ。

 

 そう言えば、あの子はガレスまでが叔父さんだと思っていたんだったわ。

 

 けれど、あの子のそんな様子を見れなかったのは少し残念に思う。

 

 新たな妹が生まれる事は王都にいる長男と次男にも伝えており、ガヘリスからの返信だとガウェインは誕生の報を聞いたと同時にランスロット卿から剣で一本取ったらしい。

 

 そういう形で祝いを表現する辺り、あの子もアルガの息子なんだと再認識してしまう。

 

 ガウェインと言えばもう一つ。

 

 使い魔に送らせた文には王都と実家は離れているのでニ、三日後に顔を見に来ればいいと伝えていたのだが、なんとガウェインはその日の内に走って家まで帰って来たのだ。

 

 家に辿り着いた時のあの子の姿は炎を宿した剣片手に汗だく泥まみれ。

 

 見た瞬間、きったねぇ賊だと思ってしまった母を許してほしい。

 

 泥だらけの顔に爽やかな笑顔を浮かべたガウェインはモードレッドに会いたがったけれど、そんな恰好で赤ちゃんに触れさせる訳にはいかない。

 

 お母様に追い出されて汗を流す様に言われたあの子は、元気のよい返事と共にガラティーンでお風呂を焚きはじめたのだ。

 

 世界に三振りしかない星の聖剣を松明の次は薪替わりとは、魔術的物の価値に拘らない感性はきっと父親譲りなのだろう。

 

 人目を憚らず庭先ですっぽんぽんになり、カラスの行水もかくやの早業で風呂から上がったガウェイン。

 

 お母様から託されたモードレッドをおっかなびっくり抱き上げると、『この子にも太陽の祝福がありますように』と祈ってくれた。

 

 朝から色々と大変な一日だったけど、新しい家族を迎えた記念すべき日なのだ。

 

 騒がしいくらいが丁度いい。

 

 最後に新しい我が子に笑顔と幸福が絶えない日々が訪れますように。 




小話『親』

リリィ『師匠はウーサー王について知ってますか?』

ニートリア『なんですか、藪から棒に』

リリィ『考えてみると私は両親の事を何も知らない事に気付いたんです。母上については師匠のお母様にあってわかったのですが、父上については分からないままなので……』

ニートリア『なるほど。たしかに私達以前のブリテンについては残っている文献が少ないですからね。う~ん、私の世界のウーサーでいいのなら教えられるのですが、知らない方がいいと思いますよ?』

リリィ『え!? どうしてですか?』

ニートリア『この世の中、得てして真実は残酷だからです』

リリィ『…………それでも私は知りたい。自分のルーツすら知らない者が、良き王になど成れるわけがありませんから』

ニートリア『後悔はしませんね?』

リリィ『はい!』

ニートリア『……ウーサーは知っての通り旧ブリテンの王です。ヴォーディガーンと彼が招いたサクソン人の侵略から国土を守り抜いた有能な施政者なのですが、当時の人から聞いた情報では人間としてはクズだったようです』

リリィ『え、ク……クズですか?』

ニートリア『マーリンや旧ブリテンに属していた諸侯の話ではワンマンシップの俺様キャラだったそうで、基本的に周りの諫言を聞かない男だったそうです。彼は兄であるアンブロシウスの死後、ブリテンを立て直す事に奔走した所為で、長きに渡って正妃を取る事がありませんでした』

リリィ『アンブロシウスとは?』

ニートリア『私達の伯父でウーサーより一代前のブリテン王です。サクソン人との戦で戦死したと言われていますね』

リリィ『はあ……。ですが、ここまでの話だとウーサーは王を失って混乱した国を維持した立役者ですよね。彼が悪し様に言われるような人物であるとは思えないのですが』

ニートリア『それについてはここからが本番です。ある時、サクソン人との戦の戦勝の宴で彼は一人の女性に心を奪われてます。彼女の名はイグレーヌ、ウーサーの右腕で智将と謳われたコーンウォール公ゴルロイスの妻です。ウーサーは彼女を見るとすぐに熱烈なアプローチを掛けたそうなのですが、当然人妻である彼女がなびくわけがありません。それどころか、自分の伴侶に無遠慮に手を出そうとする様を見たゴルロイスの怒りを買い、公爵夫妻は早々に宴を去ってしまいます』

リリィ『それは当たり前ですよね。というか、嫌な予感がしてきたのですが……』

ニートリア『ウーサーはゴルロイス公爵が退出する際、自分への挨拶が無かったことに憤慨し、謝罪が無ければ反逆罪としてコンウォールへ攻め込むと通達しました』

リリィ『うわぁ……』

ニートリア『当然公爵が自分に非があるなど認めるワケがなく、内乱の戦端は開かれてしまいます。ブリテンとコンウォールの闘いは数こそはブリテン軍が圧倒していましたが、コンウォール側は地の利と智将であるゴルロイスが仕掛けた数々の策によって一進一退を続けていたそうです。そんな中、イグレーヌへの慕情を押さえられないウーサーは宮廷魔術師であるマーリンに相談を持ち掛けます。マーリンも理想の王の母体として女神の末裔たる彼女が有用と判断した為、彼へ協力することにしました』

リリィ『えっと、イグレーヌってお母様のことですよね。お母様って女神の末裔だったのですか?』

ニートリア『私達の世界ではそうですね。マーリンは魔術でウーサーをゴルロイス公爵に変装させるとイグレーヌ……もう母上でいいですね。彼女が済むティンタジェル城へと潜入させました。同時に戦場にいるゴルロイス公爵へ妻の窮状を流したのです。マーリンの策では、この報で冷静さを欠いた公爵を討ち取ると同時にこの不義を盾に母上をウーサー妻にする予定のですが、目論見は半分しか達成されませんでした。ゴルロイスは戦場で命を落としたものの、母上はマーリンの魔術を見破ってしまったからです』

リリィ『マーリン、ヒドイです……』

ニートリア『母上の話だと、当時は産まれたばかりの兄上や乳児であった姉上と一緒に寝ていたので、公爵との性交渉はお休みしていたそうなのです。そんな中、性欲に目を血走らせたウーサーが入って来たのだから、偽物だとすぐに気がつきますよね。予想外の事態にマーリンが慌ててウーサーを回収したので事なきを得ましたが、ゴルロイスが亡くなった以上公爵軍は敗北です。捕らえられた母上は姉上と兄上の身の安全を条件に、ウーサーとの婚姻を飲むことになりました』

リリィ『ロマンスとかそういうのを想像していたのに、これでは完全に鬼畜の外道行為じゃないですかぁ……』

ニートリア『あくまで私の世界では、ですよ。話を戻しましょう。そういった形で婚姻を結ぶことになったのですが、母上もそう易々と言いなりになっていたワケではありません。こちらからも『ウーサーに抱かれるのは一度だけ』そして『子供を産むのも一度だけ』という条件を付けたのです。当然、ウーサー達からしてみれば受け入れられない事ですが、断れば母方の血筋に伝わる秘術で子供と共に自害すると言われては頷くしかありませんでした』

リリィ『魔術ならマーリンが解いてしまうのでは?』

ニートリア『母上曰く、使ったのは母の家系に伝わる女神由来の秘術だそうです。いくらマーリンでも血筋の身に作用する神霊の秘術には手が出せなかったようですよ。その後、兄上を放逐したり私が産まれたリと様々な事があり、これから14年後にウーサーは崩御します。死因は様々な病や感染症を併発しての病死だそうです。───私が知るのはこのおくらいですね』

リリィ『えっと、師匠の話だと私達ってお母様にとって忌子になるんじゃないですか? どうしてあんなに温かく迎えてくれたのでしょう?』

ニートリア『母上は生まれてくる子供に罪は無いと思っていたそうです。その考えに兄上達も賛同したから、私を妹として受け入れてくれたのでしょう。……本当にありがたい事です。一歩間違えれば、兄上がヴォーディガーン側に付いていたかも……。あ、なんか想像したら寒気が……』

リリィ『師匠? 顔が真っ青ですよ、師匠!?』

ニートリア『妖怪『聖剣コロシ』と闘ったらむーざん むーざんな目に……タスケテー! タスケテーー!!』

リリィ『師匠! しっかりしてください!! 聖剣コロシってなんですか、師匠ーー!?』

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