剣狂い転生漫遊記   作:アキ山

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 お待たせしました、ニートリア後編です。

 これにてニートリアは就労、ではなく終了となります。

 次からは元に戻るので、ご勘弁をば。

 余談(FGO三周年ガチャ)

 アキ山『スカサハ・スカディ。Q版マーリンと言われるサーヴァント……欲しい』

 アキ山『馬鹿! 次に来るイベントを考えろ! ここで使ったら元の木阿弥じゃないか! 耐えろ、耐えるんだ!!』

 アキ山、耐える!

 必死に耐える!

 だが……!?

 運営『わかるよ、水着イベントだろ? 考える事は一緒だ。だが、無理はいけない。無理は続かない。適度に自分を許してやるのが、長続きのコツさ』

 アキ山『運営さん、これは?』

 運営『FGO放送局公開記念の石60個さ。金は取らねえよ』

 アキ山『石が60個……10連二回回せる! ありがてぇ!!』

 その後、アキ山 石400 呼符20枚の大爆死。

 来た金枠鯖のは☆4のキルケーとカミーラ(宝具3)のみ。

 運営A『馬鹿丸出しですね』

 運営B『馬鹿だからね、仕方ないよ』

 というワケで、私の三周年は無事に終了しました。

 水着イベント? はて、なんのことやら。



【ネタ】ニートリアさん、続き(後編)

 現世歴2004年 2月 12日

 

 

 私が衛宮邸に召喚されて10日が経ちました。

 

 これだけ時間が過ぎれば、他人様の邸宅とはいえヒッキー生活も板に付くというモノ。

 

 というワケで、今日も今日とてまったりライフを送っていた私達ですが、早朝にちょっとしたアクシデントがありました。

 

 こちらの様子を見に来た衛宮少年がボブとエンカウントしたのです。

 

 居候の部屋に入ると、見覚えの無い黒人が我が物顔でクソゲーをしている。

 

 お人好しを絵に描いたような衛宮少年も、これには驚愕の表情で固まります。

 

 同時に、私も衛宮少年にボブの事を説明していなかったことに気が付きました。

 

 これはピンチです。

 

 ただでさえ無駄飯食らいのニート集団だというのに、不審者まで家に招き入れていると思われては、今度こそ追い出される危険大ではありませんか。

 

 内心冷や汗をかきながらも何とか切り抜けようと頭を回転させていると、脳裏にボブの声が木霊します。

 

 念話で彼がこちらに授けたのは、まさに天啓というべき策。

 

 少々引っ掛かる事もありますが、こちらに手段を選んでいる余裕はありません。

 

 私は(わら)にも(すが)る思いで、その策へと飛びつきました。

 

 『アルトリア……。その人は一体……?』

 

 『リタイヤしてしまったリンのサーヴァントの代わりに派遣された、ハリウッドのアーチャーことボブ・ウイルソンです』

 

 『ボブデース! NICE TO MEET YOU!!』

 

 『な……ナイス・トゥー・ミート・ユウ?』

 

 そこからはボブの独壇場でした。

 

 いやに流暢な英語で話しかける彼に、語学力の無い衛宮少年はタジタジ。

 

 街中で外国人に声を掛けられた日本人のごとく、早々に話を切り上げて警備室から撤退していきました。

 

 危機が去って平穏を取り戻した室内。

 

 最大の功労者たる彼は、私の視線に耐えかねたようにそっと顔を()らしました。

 

 『アーチャー……』

 

 『…………俺にだって、落ちぶれた姿を見られたくない相手はいる』

 

 ……ボブは泣かなかったと思います。

 

 余談ですが、セイバーの専属メイドと化したリンは、ボブと初遭遇した際に『誰よ、あのデトロイト出身みたいな黒人。セイバーの知り合い?』とのたまってました。

 

 見抜けと言う方が酷だと思いますが、元パートナーに対してのセリフとしてはあんまりではないでしょうか。

 

 まあ、彼女がやさぐれている原因である私が言えた義理ではありませんけどね。

 

 

 現世歴2004年 2月 13日

 

 

 さて、気を抜くと忘れそうになりますが、今は聖杯戦争の真っ只中だったりします。

 

 とはいえ、我が自宅警備隊で聖杯を必要とする者はいません。

 

 冬木市在住の葛木メディアさんが一時期欲しがっていたのですが、『バルーンファイト』でセイバーと対戦していた際にテンションの上がった私が竜の心臓をフル稼働させてしまった事によって、パスに流れ込んだ大量の魔力を得た彼女は受肉してしまいました。

 

 結果、念願だった葛木教諭との心魂合体も叶えられ、めでたく聖杯戦争離脱者になったのです。

 

 そんな私達とは違い、聖杯戦争を真面目にやってる輩も少数ですが存在します。

 

 今日、衛宮邸に乗り込んできた青い全身タイツのランサーも、そんな奇特な人物の一人です。

 

 葛木夫人が旧邸に置き去りにしてきたアサシンを降した彼は、聖杯戦争に招かれた英霊達と『震えるぞ、ハート! 燃え尽きるほどヒート!!』な戦いをする為に来たと声高に主張します。

 

 しかし、この家に集まった英霊は聖杯戦争などとっくの昔に解脱したニート達。

 

 セイバー『黙れ、駄犬! 私は新生ブリタニア帝国の歴史を書き記すのに忙しいのだ。明日には次話の投稿が控えているのに、貴様の相手などしていられるか!』

 

 ライダー『申し訳ありませんが、私は聖杯戦争からリタイヤしました。後はここでまったり過ごすつもりですので、血生臭い事は他でやってください』

 

 葛木夫人『夜中にうるさいわね! 新婚ホヤホヤなのに野蛮人の相手なんてするワケないでしょ! 水をぶっ掛けられる前にさっさと帰りなさい!!』

 

 ボブ  『すまないが、俺はコンボイの謎を解くのに忙しい。他を当たってくれないか』

 

 と完全無欠の塩対応です。

 

 あと、葛木夫人はまだ籍を入れてませんから新婚ではありませんよ。

 

 こう呼んでいるのは、彼女がどうしてもと頼むからです。

 

 本当に彼女が葛木メディアになるのは、春ごろになるのではないでしょうか。

 

 ……少々脱線しましたが、話を戻しましょう。

 

 円蔵山から降りてくる(おろし)に負けないほどの冷遇に少々怯んだものの、ランサーとて伊達に全身タイツで真冬の街中を徘徊している訳ではありません。

 

 『貴様等は聖杯によって召喚された英傑達だろうが! 勝負を挑まれて逃げるとは、戦士としての誇りは無いのか!? 俺を倒さねば聖杯は手に入らんぞ!!』と、やる気ゼロの彼等を引きずりだそうと必死に挑発をします。

 

 しかし、帰ってくるのは異口同音で『聖杯なんぞいるか!!』という取り付く島もない答え。

 

 これにはさしものランサーも白旗を上げざるを得ませんでした。

 

 『聖杯にも喰いつかねえとは……やれやれ、どうしたものかねぇ。やる気の無い奴と無理やり戦ってもつまんねーし。───しゃあねぇ、出直すか』と、帰っていきました。

 

 普通の荒くれ者ならここまで拒絶されれば逆上して暴れだすモノなのですが、あのランサーは苦笑い一つで肚に収めてしまいました。

 

 なるほど、戦士系によくある脳筋ではないようですね。

 

 あと、帰ろうとしたランサーに『不意打ちカリバー!!』をぶっ放そうとしていたセイバーを止めたのはナイス判断だと思いますよ、ボブ。

 

 

 現世歴2004年 2月 14日

 

 

 昼前、ちょうど100回目のチャレンジに失敗したボブが奇声と共に『ソード・オブ・ソダン』を壁に投げつけているのを見ていると、葛木夫人から声を掛けられました。

 

 何事かと話を聞くと、衛宮少年が拾ってきた銀髪ロリっ子の身体が妙なので、調べた方がよいのではないかと持ち掛けてきたのです。

 

 恥ずかしながら私は魔術については門外漢なので、夫人の懸念している事が何なのかはイマイチわかりません。

 

 そこで『餅は餅屋』という(ことわざ)もある事だし、専門家を招くことにしました。

 

 前回、風呂上りの兄上を召喚した反省を踏まえて携帯で問い合わせると、ちょうどガレスと買い物の途中だと言います。

 

 妖精郷にある実家は街から少々離れた田舎にあるので、引っ込み思案なうえに純粋で騙され易いあの子を置いてくるのは不安との事。

 

 ガレスには兄上が手ずから鍛えたオーガやデュラハン騎士団、コロを始めとした魔獣達で構成された『ガレスちゃん親衛隊』が常に一緒ですので、身の危険という意味での心配は全くの無駄だとおもうのですが。

 

 あ、彼等が暴走して街を破壊する方を気にしているのですね、それならわかります。

 

 というワケで、ガレスも連れて来るという姉上にOKを出したあと、笛を吹くこと2回。

 

 葛木夫妻の部屋に二人が転移してくると、さっそく私は姉上の胸にダイブしました。

 

 いやはや、サクラはあまり警備室に来てくれないし、たまに顔を見せたとしてもライダーのガードが固くて抱き着くことができないので、人肌に飢えていたんですよねぇ。

 

 地味に契約違反じゃね? と思わなくも無かったのですが、あの娘は肉体的ハンデが消えた事で衛宮少年に猛アタック中らしいので、私には構っている暇は無いのでしょう。

 

 王様からニートにジョブチェンジした今の私は、バッチリ空気も読めるし人の心もわかります。

 

 ですので、それについては咎めはしませんとも。

 

 姉上のおっぱいの柔らかさを堪能し、姉上分の補充も済んだところで話し合いとなるはずだったのですが、ここでアクシデントが発生しました。

 

 なんと、ガレスを見た葛木夫人が暴走をしてしまったのです。

 

 『素晴らしい! 貴女、素晴らしいわ!! 純真さと清楚さが同居した(たたず)まいに周りの者を癒す柔和な空気。一挙手一投足も洗練されて高い教養が(にじ)み出ているし、荒事に全く縁のない細い手足や白い肌もグッド!! 人間的に腐ってるニートや隣の部屋のやさぐれた駄文書きなんかじゃない! 私は貴方のような純正のお姫様を求めていたのよ!!』

 

 『あ……えと、ありがとうごさいます?』

 

 ポカンとした表情を浮かべるガレスの手を取り、テンションMaxで歓喜の声をあげる夫人。

 

 トンデモない罵倒を食らったような気がしますが、(おおむ)ね事実ですので反論できません。

 

 ヘヴン状態になった夫人を止める事は出来ず、こちらが呆気に取られている内にガレスは着せ替え人形となってしまいました。

 

 どこからともなく現れたドレッサーの中には、令嬢やお姫様が着るようなドレスがこれでもかと詰まっており、夫人は我が世の春と言わんばかりの表情で次から次へとガレスに衣装を着せていました。

 

 異変を察知すればガレスの影から即座に飛び出してくるはずの親衛隊も、実害が無いと判断したのか出てくる気配無し。

 

 姉上にいたっては夫人に交じってノリノリで着せ替えショーに参加する始末です。

 

『こういうお洋服は、オークニーのお城を出てから着てなかったから……』

 

 とガレスは恥ずかし気に頬を染めていましたが、本人もまんざらではなかったようなので良しとしましょう。

 

 葛木教諭? あの人は人格者ですから衣装が現れた時点で外に行かれましたよ。

 

 30分ほど経過し、夫人と姉上が満足したところで話は元に戻ります。

 

 ロリっ子が衛宮邸に来てから夫人が取り溜めたデータとそこから導き出される推測を聞いたところで、今度は実際に会う事になりました。

 

 対象を連れて来るように言われた私は、居間でテレビを見ていた彼女と付き添いを希望した衛宮少年を葛木家へと案内します。

 

 そうして始まる稀代の魔女二人による診察行為。

 

 20分ほどで終わりを迎えたその結果ですが、ロリっ子は聖杯戦争において根幹を為す大聖杯の対であり、脱落した英霊の魂を受けて願望器へと至る小聖杯を宿している事が判明しました。

 

 彼女の心臓こそがその小聖杯であり、ここに英霊の魂が溜まっていくとそれに比例するかのように、人間としての機能が削がれていくという鬼畜仕様。

 

 こんな小さな子供になんて術式を施すのでしょうか、アインツベルンは。

 

 やはり、魔術師というのはクソばかりです。

 

 私と衛宮少年の憤りとは別に、表情を変える事無くロリっ子の肉体を再び精査する姉上と夫人。

 

 そうして二人はロリっ子を救う手段を見つけ出します。

 

 まず心臓に化けている小聖杯に関しては、すでにサーヴァントの魂が封じられている事から除去。

 

 その代替品として、心筋細胞を培養したクローン心臓を移植する事となりました。

 

 他の肉体的不具合に関しては、前回の聖杯戦争で姉上が大聖杯から回収したアインツベルンの術式に関する知識を使って再調整を行うらしいです。

 

 方針を確定させた二人は心臓の作成を夫人、身体の再調整を姉上が担当する事を取り決め、今日のところはお開きと相成りました。

 

 最後にロリっ子が発した『どうして助けてくれるのか?』という問いに、二人は気負うことなく『大人が子供を助けるのは当たり前』と返答を返します。

 

 ロリっ子は目じりに涙を溜めながら『魔術師らしくない』と憎まれ口を叩いていましたが、その認識は誤りです。

 

 古代の魔術師は今のような外道上等のカルト集団などではありません。

 

 頭の中と足元に年がら年中花を咲かせているクズ野郎のような例外もいますが、大抵は優れた知識と人格を持ち、自身の修めた技術を還元する事で人々の生活を支える賢者だったのです。

 

 だからこそ優れた魔術師は国に取り立てられ、相談役や宮廷魔術師のように高い地位を与えられ国政を担う一翼となっていたのです。

 

 故に、姉上や夫人の成した事は古代の魔術師としては極めて正しいと言えるでしょう。

 

 所用も済んで、夫人から送られたガレス用の衣服を両手に抱えて妖精郷へと帰る姉上。

 

 その際に彼女は私に一つお小言を残していきました。

 

 『アルトリア。ブリテン時代が酷かったから貴女がゆっくりするのは大歓迎だけど、それも度が過ぎるようではダメよ。お母様が手紙に書いていたように、ゆっくりでいいから生活を元に戻していきましょうね』

 

 『アル姉さま、頑張ってください!』

 

 姉上とガレスにまで、こう言われては私も覚悟を決めねばなりません。

 

 というワケで、今回の聖杯戦争が私の最後のバカンスとなりました。

 

 ニート生活のオオトリであるならば、ドカンと派手に楽しむこととしましょう。

 

 

 現世歴2004年 2月 15日

 

 

 本日、我々が警備する衛宮邸に不審者が3名侵入しました。

 

 一人目は以前も侵入してきた青い全身タイツのランサー

 

 もう一人は死んだ目の香辛料臭い神父風の男。

 

 最後に…………ウザいのであまり表現したくはないのですが、日記である以上は仕方ありません。

 

 金ピカストーカーです。

 

 まず、今日の午前中に神父風の男が聖杯戦争の監督役を名乗って訪れました。

 

 しかし、間が悪い事に家主である衛宮少年はサクラと共に買い物中。

 

 最初は居留守を使おうとも思っていましたが、何度も何度も呼び鈴を鳴らされては鬱陶しくてそれも敵いません。

 

 仕方が無いので『警備隊のロデム』ことリンに見に行ってもらいました。

 

 現在のリンは多額の借金によるストレスによって、通常とは比べ物にならないほどにやさぐれてます。

 

 セールスや新聞の勧誘なら、それこそ心をへし折らんばかりの罵倒を以って撃退してくれるでしょう。

 

 そう思って待っていると、玄関から『ぎゃああああああああっ!?』というリンの悲鳴が聞こえてきました。

 

 ヒロインのような絹を裂く悲鳴ではなく、この世の全てに絶望した亡者の苦悶を思わせる声に現場に駆け付けると、そこには滅茶苦茶イイ笑顔と共に手にしたデジカメを天に掲げる神父風の男。

 

 そして、その男にヤクザにしか見えないような蹴りをかまし続けるリンの姿がありました。

 

 一体何が起こったのか? と疑問に思っていたのですが、真っ赤な顔のリンが身に着けている衣服を見て原因を思い当たることができました。

 

 今のリンの格好は黒い猫耳に猫のしっぽ。

 

 さらに身に(まと)っているのは赤を基調にした一昔前の魔法少女然としたコスプレです。

 

 見る限り神父はリンの知り合いのようですから、あんなイタい恰好を見られたなら悲鳴の一つも上げたくなるでしょう。

 

 このままでは(らち)が明かないので、ボブにリンを回収させて話を聞くことに。

 

 この神父風の男は言峰綺礼。

 

 今回の聖杯戦争の監督役らしく、ウチに来たのはガッツリサボっているサーヴァント達に発破をかける為だと言いました。

 

 言峰の言う事は理解できます。

 

 聖杯戦争は七騎のサーヴァントとマスターが最後の一人になるまで殺し合うサバイバルゲーム。

 

 その内の四騎がボイコットをしていては、とてもゲームとして成り立たないことでしょう。

 

 とはいえ、先日のランサーの一件でも見せた通り、ウチの警備隊に戦意はゼロです。

 

 みんな趣味に生きてますし、願いも各々で折り合いを付けてしまった為に聖杯も餌にはなりません。

 

 その辺を端折って説明したうえで、『もういっその事、中止にしたらどうですか?』と提案したのですが、言峰は首を縦に振りません。

 

 『そういうワケにはいかん。聖杯の完成にはサーヴァントの犠牲は必要不可欠なのだ。監督役としては、君達は強制的にでも戦ってもらわねばならん』

 

 そう口にする言峰神父に否応なしに警戒心が高まる一同。

 

 しかし彼は身に纏っていた胡散臭い雰囲気を引っ込めて、こう言いました。

 

 『と言うべきところではあるのだが、今の私にはそれよりも興味深いことができた。一つ問いたいのだが、凜は何故あのような恰好をしているのかな?』

 

 唐突に問いを投げてくる神父に隠す事でもないので事実をそのまま伝えると、彼は鉄面皮のような表情を歪ませてその場で口元を抑え始めました。

 

 『流石は遠坂家当主! 死に至るうっかりは……ぶぷっ! しっかりと受け継いでいる……プスー! しかし……あの凜が借金王とは……ぶっ! これは時臣師に是非とも伝えねば……ブッフォ!!』

 

 ……しゃべるか吹き出すか、どっちかにするべきだと思います。

 

 間の悪い事にボブの連行を振り切って戻って来たリンがそのセリフを聞いてしまい、全力全開で言峰神父を殺しにかかったりもしましたが、些細(ささい)な事なので置いておくとしましょう。 

 

 話が進まないので、借金の権利を衛宮少年に譲渡するという脅しを盾にリンを鎮圧すると、神父は最終確認を取るかのようにこちらに言葉を投げかけます。

 

 その内容はもちろん『聖杯戦争を続けるか否か』

 

 衛宮家警備隊に属するサーヴァントの答えは決まっているので否と答えを返すと、仕方ないという呟きと共に神父の傍らにランサーが現れます。

 

 どうやら彼を嗾ける事で強制的に聖杯戦争を続行させるつもりのようですが、そうは問屋が(おろ)しません。

 

 衛宮家では基本的に暴力行為は禁止です。

 

 『言峰神父。衛宮邸はともかくとして、ここの周りは魔術を知らない一般の方も多く居を構えています。ここで無理に戦端を切れば、無関係な人まで巻き込まれかねません。それは貴方も望むところではないでしょう』

 

 私の言葉に言峰神父は鷹揚に頷きました。

 

 『たしかに。では、場所を変えるということかね?』

 『いいや。荒事でなくとも勝負する手段はあるという事だ。ついてくるがいい』

 

 セイバーを先導に警備室に戻った我々を待ち受けていたのは、一台のマージャン台。

 

 ここで私達が出した条件は、リンの時と同じ。

 

 マージャン勝負で勝つことが出来れば、ボイコットを続けているサーヴァント全員が聖杯戦争に復帰するというものでした。

 

 ちなみに今回は『点1戦闘機』などというギャグを用意しているわけではありません。

 

 チャレンジャーに掛けられたペナルティーは1000点につき令呪一画譲渡です。

 

 マスター一人に付き三画と聞いていたので最初は10000点につき一画を予定していたのですが、監督役は予備令呪なるものがあり彼が二十五画もの令呪を持っている事が発覚したので、このルールとなりました。

 

 トンデモない暴利だとロデムが憤慨していましたが、そんな事はありません。

 

 むこうはこちらに殺し合いを強制しているのです、ならば相応の代価を払ってもらうのは当然ではありませんか。

 

 まあ、令呪がゼロになった時点でランサーに殺されそうなので、奇しくも神父の方もまた命懸けになってしまいましたが、つり合い的にはトントンなのでOKとしましょう。

 

 この勝負を神父は承諾しましたが、『私は神に仕える身なので賭博はできん。そこでこいつを代打ちに立たせよう』という事でランサーが卓に座る事になりました。

 

 『そこで指でも(くわ)えてな、言峰。俺の強運を見せてやるからよ!』

 

 などと啖呵を切るランサーに、神父は笑顔でこう返しました。

 

 『大した自信だな。ならば、私も祝福を施してやろう。【令呪を(もっ)て命じる。相手に振り込んだら自害せよ、ランサー】』

 

 いとも容易く行われたエゲツない行為に、当のランサーはもちろんギャラリーも固まります。

 

『どういうつもりだ、テメエ!?』

 

『なに、マスターとして必勝を祈願しただけのことだ。人は追い詰められれば、思わぬ底力を発揮するものだからな。貴様もコノートとの戦争では、そうして国を護ったのだろう?』

 

 言峰神父の浮かべる物凄いドヤ顔に、ランサーの額にはメロンの表皮を(はし)る筋のように青筋が浮かび上がりました。

 

 この程度の事で自害を強制されるとか、やっぱりサーヴァントなんてやるものではありませんね。

 

 一つ賢くなったところで、私は神父のセリフの中に聞き逃せない言葉があった事に気づきました。

 

 『コノートとの闘い』

 

 コノートはアイルランドを主とするケルト神話において女王メイヴが治めた国のはずです。

 

 彼の国と戦を繰り広げた国家の中で特に有名なのは、赤枝の騎士団を擁するアルスター。

 

 そして、その中でも随一の英雄と言われているのは『クランの猛犬』の異名を持つクー・フーリンです。

 

 ランサーのクラスに加えて初日で血のように紅い魔槍を振るっていた事を加味すれば、彼の真名がそうであるのは間違いないでしょう。

 

 ここまでの考えに至った私は、パスを通じて夫人に一つの事をお願いしました。

 

 理由も告げずに面倒な事を押し付けた所為か最初は夫人も渋っていましたが、妖精郷に帰ったらガレスの着せ替え画像を送る事を告げると、掌を返すように快諾してくれました。

 

 姪を売る事には心が痛みますが、これも我が家の平穏の為です。

 

 聡いあの子ならきっと分かってくれるでしょう。

 

 ぎゃあぎゃあと騒ぐランサーの声を聴いていると、私のアホ毛と直感がビビッと反応しました。

 

 これは私にとってとっても嫌なモノが近づいているという警戒信号。

 

 見ればセイバーも何かを感じ取ったのか、ブルリと体を震わせていました。

 

 ささくれ立つ心を隠して警戒を強めていると、庭に誰かが侵入する気配。

 

 慌てて卓から腰を上げようとする間に、庭に面した障子がスパンッと開かれました。

 

 果たして、そこにいたのは───

 

『ずいぶんと面白い事になっているではないか、綺礼。こういう時にこそ、我を呼ばずになんとする!』

 

 十年前、出オチのように兄上にブチ殺された金ピカでした。

 

 あの時、背後から心臓を一突きされたうえに首を刎ねられるという、容赦の欠片もない手口であの世に送られたはずなのですが、再召喚でもされたのでしょうか?

 

 訝しむこちらを他所に、金ピカは私とセイバーを見てこう言い放ちます。

 

『よもや、多重召喚されているとは思わなかったぞ、セイバー。我の寵愛を受けるのに身一つでは足らんとは、この強欲者め。だがよい。我もハーレムを築いた事がある男だ、貴様等双方ともに分け隔てなく愛してやろう!』

 

 ヤヴァいドラッグでもキメているのか、訳の分からない事を口走る金ピカ。

 

 とはいえ、意味は分からずとも不快な事には変わり有りません。

 

『殺るか?』

 

『ああ』

 

 と、一瞬のアイコンタクトによってセイバーと共に、眼前にいる目にも眩しい変態の殺害を心に決めました。

 

 そんなこんなでこちらがドタバタしている間に、ランサー陣営も準備が整ったようです。

 

『~~~~~っ!? 上等だ、やってやろうじゃねえか!!』

 

 言葉巧みに言い負かされたのでしょう、嫌らしい笑みを浮かべる言峰神父に吐き捨てると、ランサーは卓へと向き直ります。

 

 色々な意味で命懸けとなった対局、それはランサーの親で始まりました。

 

『ソラッ!!』

 

 気合と共に切られた發。

 

 それが場へと流れた瞬間、私とセイバーは自身の配牌を前に倒します。

 

『『ロン』』

 

『!?』

 

 瞬間、部屋を流れる時は凍結しました。

 

 姉上特製の魔眼殺しの眼鏡の奥で目を見開くライダーに、まったく同時にバグった『ジャン・ライン』に天を仰ぐボブ。

 

 そして、『GTOの内山田教頭』が愛車をスクラップにされた時のような表情を浮かべたランサー。

 

 私のアガリは国士無双十三面待ち(ライジング・サン)、そしてセイバーのは緑一色(エメラルド・グリーン)

 

 振り込んだ親のランサーは言うまでも無く即死です。

 

 まさに空気が死ぬとはこの事でしょう。

 

 しかし、そんな静寂も長くは続きませんでした。

 

 『『ブッフォッ!?』』

 

 ランサー側の神父と金ピカが吹く声によって、固まっていた各自の時は動き出します。

 

 『さ……さすがは幸運『E』。噂に……違わぬ……仕事っぷり……ッ!?』

 

 『一手で……敗北するとは…流石に散り際が鮮やかだった男は……やることが違う……ッ!?』

 

 呼吸困難になるほど笑いながら、畳の上で悶絶する神父たち。

 

 絶望の表情を浮かべていたランサーは、令呪の効果によって槍を手に己の胸を穿(うが)とうとします。

 

 だがしかし、間一髪のところでライダーの放った釘剣に繋がれた鎖がランサーを拘束する事に成功しました。

 

 『破戒すべき全ての符(ルール・ブレイカー)!!』

 

 そうして身動きが取れないランサーの胸に、夫人が持つ稲妻のごとき奇妙な形の刀身の短刀が突き刺さります。

 

 すると、拘束を解こうと足掻いていたランサーの身体から力が抜け、彼は安堵の息と共に背もたれへ身体を預けました。 

 

 彼の散りざまを(さかな)にしようとしてた金ピカと神父は驚愕に目を見開くと同時に、卓を踏み台にしたセイバーが金ピカへと躍りかかります。

 

 咄嗟の事に対処が追い付かないまま、腕と後ろ襟を取られて天井へと放り投げられる金ピカ。

 

 時を同じくして神父の腕を捕らえた私は、魔力放出で強化された腕力に物を言わせて宙を舞う金ピカへ神父を投げつけました。

 

 『おのれ……セイバー!?』

 

 『貴様等、なにを……』

 

 彼等は空中で揉み合いながらも口を開きますが、こちらが語る事など何もありません。

 

 答えを返すのは、私の手に収まった『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』とセイバーの黒く染まった聖剣です。

 

 『エックス───』

 

 『カリバーーーーーーーー!!』

 

 二本の剣から放たれた黄金と黒の極光は、天板に叩きつけられた男たちを飲み込み、衛宮邸の屋根に大穴を開けて天へと消えていきます。

 

 そうして光の柱が治まると、大穴が開いた屋根から快晴の青空が見えました。

 

 『すっきりしましたね』

 

 『ああ。年の初めの朝に、新品の下着を履いたように清々しい気分だ』

 

 冬の寒気を和らげる陽気を感じながら額の汗をぬぐう私達。

 

 周りから冷たい視線を向けられた様な気がしますが、まあ気のせいでしょう。

 

 『天井を直しておけよ、ロデム』というセイバーから下された非情の命令によって、寒空の中をミニスカメイド服で大工仕事に勤しむ事となったリン。

 

 魔法少女コスよりはマシとはいえ、近隣住民に目撃されればリンばかりではなく衛宮少年の社会的生命を断ちかねないのですが、このSSライターは容赦がありません。

 

 まあ、私としても寒風吹きすさぶ部屋に引きこもってなどいられませんので、賛成こそすれ助け船を出す気は毛頭ありませんが。

 

 さて、私達の貞操の危機を護る為の必要な犠牲に補填の目途が立ったところで、カメラをランサーへと移動しましょう。

 

 夫人の宝具『破戒すべき全ての符』によって主従契約を解除されたランサーは、このままでは魔力の補給ができずに消滅するのを待つばかり。

 

 しかし、こちらとしてもそういうワケにはいきません。

 

 彼には我が家の平穏の為の(いしずえ)となってもらわねばならないのですから。

 

 夫人、ボブに続いてランサーへとパスを繋いだ私は、拘束されたままのランサーに声を掛けます。

 

 『ランサー。貴方はアルスターの大英雄にしてスカサハの弟子であるクー・フーリンに相違ありませんね?』

 

 核心を以ってランサーへ投げた問い、その答えは()でした。

 

 それを聞いた私の顔には、きっと悪い笑みが浮かんでいたのだと思います。

 

 何故ランサーを助けたのかというと、彼の師であるスカサハが二年ほど前より兄上へちょっかいを掛けてくるようになっているからです。

 

 最初は夢を媒体にして兄上の精神体を影の国に引き込もうとし、それが破られると今度は妖精郷に現れては兄上に勝負を挑んできます。

 

 曰く『お主ほどの武を持つ者ならば、儂を殺せるかもしれん。その力を示せ、このスカサハに!』

 

 たしかに世界をも斬れる兄上の剣ならば、逸脱者と化したとかいう彼女を斬れる可能性は高いでしょう。

 

 しかし、スカサハはケルト神話で冥界にあたる影の国の女王です。

 

 ダーナ神族の引き篭もっている常若の国(ティル・ナ・ノーグ)は妖精郷のすぐ近くにありますから、彼女を除けば神々からクレームが殺到するでしょうし、女王亡き後の影の国の動乱が妖精郷にどんな影響を与えるかも分かりません。

 

 そういう事もあって、彼女が現れる度に兄上は角が立たない様に手合わせを断っていたのです。

 

 しかし、相手は脳筋ケルトを代表する女傑。

 

 その程度では諦めようとはせずに、アプローチは激しさを増すばかり。

 

 最近では突然槍を投げつけてきて、『馬鹿弟子を除けば、儂を殺しうるのはお主のみだ。さあ、儂と死合うがいい』と無茶ぶりをしてくる始末だそうです。

 

 兄上の事なので男女間の関係になる可能性は限りなくゼロだと思うのですが、姉上はちょっぴり焼きもち焼きなところ(ソフトな表現)があります。

 

 私としても彼女が現れると家の空気が悪くなるので、とっとと諦めて欲しいというのが本音です。

  

 というワケなので、スカサハがウチにちょっかいを出さない為にランサーには生贄になってもらう事にしました。

 

 ええ、あの彼女自身が『弟子なら自分を殺せる』という旨の発言をしていたのです。

 

 その当人を渡してやればスカサハも満足することでしょう。

 

 そう説明すると、ランサーは顔を真っ青にして拘束されながらも激しく抵抗してきます。

 

 『もう二度とあんな修業は嫌だ!』とか『影の国になんて行きたくねぇ!』などと叫んでいましたが、知った事ではありません。

 

 師匠が弟子の責任を負うのが世の常ならば、師匠の不始末を弟子が受け持つのもまた物の道理という奴です。

 

 私の家族の平穏の為に死ぬがよい、ランサー。

 

 

 現世歴2004年 2月 16日

 

 

 これが衛宮邸の事を付ける日記の最後となります。

 

 期間にして約2週間、思えば色々とありました。

 

 名残は尽きないものですが、最後はしっかりと締める事にしましょう

 

 まずは今日の朝ですが、かなり厄介な事がありました。

 

 例の銀髪ロリっ子であるイリヤスフィールの容態が急変したのです。

 

 夫人が言うには、彼女の心臓でもある小聖杯に英霊の魂が満ちた事によって、本格的に聖杯として機能し始めたとか。

 

 夫人達が対処を行おうとするのですが、イリヤスフィールの目や口から呪詛を含んだ汚泥が出てくる為に手を出すことができません。

 

 皆が手をこまねいている中、私は素早く笛で兄上と姉上を呼び出しました。

 

 イリヤスフィールの肉体への調整を姉上が受け持っていた事もありますが、彼女から流れる呪詛には覚えがあったからです。

 

 あのバッチい泥は、まさしく十年前に大聖杯が化けたナマモノから発せられていた物と同じ。

 

 イリヤスフィールが聖杯として機能した事で泥が現れた事を見ても、ここの聖杯も汚染されていると見て間違いないでしょう。

 

 というワケで、兄上にはもう一度ナマモノを石へと変えるイリュージョンをしてもらいましょう。

 

 ところでセイバー、姉上を見て『モルガンが味方になる……だと? これはこれでアリか!』と閃くのはやめてください。

 

 というか、貴女の小説だとモルガンは『衛星軌道爆撃型ロンゴミニアド』によって、オークニーごと吹っ飛んでるじゃないですか。

 

 生きていたという超展開はともかくとしても、そこから味方になるのは無理があり過ぎるでしょう。

 

 前回に登場した『黄金王国ウルク』といい、思い付きで書いているとそのうち読者に叩かれますよ?

 

 おっと、黒のジャージにドテラという私以上にダメな格好で執筆に入った剣の英霊は置いておきましょう。

 

 事情を察した兄上達はすぐさま行動を起こしてくれました。

 

 姉上は夫人のサポートに、そして兄上は円蔵山にある大空洞へと向います。

 

 いかに私とはいえ、今回ばかりは引き篭もってはいられません。

 

 兄上のサポートとして、聖剣と聖槍を持って同行することにしました。

 

 え、鎧はどうしたって?

 

 別にジャージでいいじゃないですか。

 

 重いんですよ、アレ。

 

 物語だと数々のライバルや再生怪人によって妨害が為されるところなのですが、そんな事はまったくありませんでした。

 

 拍子抜けするほど簡単に空洞の中まで辿り着き、件のナマモノも兄上の一閃によってアッサリ石へと進化完了。

 

 周辺に呪詛が残っていない事を確認したうえで衛宮邸に帰ると、離れにある葛木家兼キャスターの工房ではイリヤスフィールの心臓移植が行われていました。

 

 ライダーからは『夫人の手掛けていたクローン心臓がギリギリで間に合ったので、今は停止した身体の人間性を含めて修復しているところ』と言われました。

 

 手術は昼過ぎまで掛かったものの何とか成功を掴み、イリヤスフィールは一命を取り留めることができました。

 

 夫人曰く『アサシンは兎も角として、ヘラクレスに金ピカと今回脱落した英霊は特一級の者だった。だからこそ、その魂の比重も通常の英霊の二倍ないし三倍はあった為に、三騎脱落の時点で聖杯が発動したのではないか?』とのこと。

 

 ヘラクレスはもちろんだとして、あの金ピカが特一級の英霊だとは露ほども思っていませんでした。

 

 ところで、あれって何者だったのでしょうか?

 

 私の疑問は置いておくとして、こうして大方の厄介事が解決したわけですが、最も大きなモノが残っています。

 

 それは聖杯をどうするか、という事です。

 

 借金地獄にあえぐロデムを除いて、ここにいる主従全員が聖杯に掛ける願いはないのです。

 

 とはいえ、このまま放っておくのはあらゆる意味で危険すぎるので無理。

 

 聖杯を無害化するには、中に溜まった魔力を使い切った後で破壊しなければなりません。

 

 ライダーと離れたくないという桜の願いにヒントを得た私は、ニート共に声を掛けました。

 

 『現世に留まるか、それとも座に還るか?』と。

 

 結果は満場一致で現世に留まるという答えが返ってきました。

 

 アレだけ趣味に走りまくっていたのですから、今更座に還るなんて言わないと分かってましたけどね。

 

 というワケで、姉上と夫人の術によって両聖杯に溜まっていた魔力は4騎のサーヴァントの受肉に使われました。

 

 え、ニートは私を除けば三体じゃないのかって?

 

 いいえ、数はあってますよ。

 

 四体目はランサーですから。

 

 彼にはスカサハの目を逸らすデコイという、大変重要な役割が待っています。

 

 そういった事情から私が強制的に受肉させました。

 

 各サーヴァントの生活基盤に関しては、それぞれのマスターが受け持つことになりました。

 

 セイバーは苦笑いを浮かべる衛宮少年に対して『心配するな、シロウ。これは一つの先行投資だ。私の作品は書籍化、そして映像化と活躍の場を広げていく事になる。その時は生活費も入れるし、今までの費用も倍にして返してやろう』と言っていました。

 

 セイバー、それはニートが引きこもり生活を続ける為のダメな常套句じゃないですか。

 

 並行世界の自分がダメ人間になる様を見せられるのは、さすがの私もクルものがありますね。

 

 ライダーはそのまま間桐家の居候となるようです。

 

 読書マニアと化した彼女は本に囲まれて過ごす生活を希望しているそうなので、サクラは離れにある一部屋を提供するのだとか。

 

 まあ、本人はアルバイト求人雑誌片手に労働意欲を見せていましたので、堕落したとしてもフリーターで留まると思います。

 

 ボブに関しては、彼がアーチャーだと知ったロデム改めリンが引き取る事になりました。

 

 例の借金も聖杯戦争終結と共に無効となりましたから、彼を養うことくらいはできるでしょう。

 

 ボブは『将来的には自立して、クソゲー・Barを経営したい』と抱負を口にしていました。

 

 クソゲー・Bar……。

 

 なんという香ばしいコンテンツなのでしょうか。

 

 酒を飲みながらクソゲーをやるとか、どう考えてもトラブルの予感しかしない……。

 

 当面の目標は帝王『ソダン』をクリアすることだそうなので、頑張ってほしいものです。

 

 まあ、ポーションの飲み合わせをしくじって、何度も即死している時点で道は遠いと思いますが。

 

 メディア夫人は葛木氏と共に、以前の住居である柳洞寺に戻るそうです。

 

 夫人の戸籍など諸々の手続きが終わるまではそこでお世話になり、挙式をするのはそれが終わってからという事になるようです。

 

 すぐさま結婚とはいかない事に彼女は少し残念そうでしたが、先の事を考えれば地盤を固める時間は必要でしょう。

 

 式を挙げる際には是非とも呼んでほしいものです。 

 

 聖杯戦争とは関係ないのですが、衛宮少年とサクラが結婚を前提に付き合う事になりました。

 

 どうも私達がニートをしている間に仲が深まったらしく、サクラ曰く彼女のお腹に衛宮少年の子供がいるとか。

 

 …………おかしいですね。

 

 ここは初々しいカップルの前途を皆で祝うところでしょう。

 

 場の空気が完全にお通夜状態なのですが……。

 

 あ、ボブが泡を吹いて倒れた。

 

 サクラから事情を聴取したところ、彼女に恋愛を指南した人物からこう言われたそうです。

 

 『高すぎる目標を掲げた男性は、そのままだと自分を置いて理想を追い求めてしまう。それを繋ぎとめるには既成事実を作って子供を宿すしかない』

 

 この手管、物凄く心当たりがありますね。

 

 姉上? どうして目を逸らしているのですか、姉上?

 

 ……容疑者への追及は後ほど行うとして、衛宮少年はそんな壮大な目標を掲げていたのでしょうか?

 

 私には人のいい少年にしか見えませんでしたけど……。

 

 というワケで衛宮少年からも事情を聴いたわけですが、今回ばかりはサクラと姉上が正解だと思いました。

 

 全てを救う正義のミカタって、そりゃあ神様でも無理ですよ。

 

 そんな物を追い求めてもどこかで野垂れ死ぬか、もしくは致命的な間違いを犯してどん底まで堕落するのがオチです。

 

 まあ、子供が出来た事で衛宮少年も腹を括ったようで、将来は正義のミカタではなく消防士になると抱負を語っていました。

 

 あれですね。

 

 子育ては親も子と共に成長すると言われていますから、正義のミカタにはなれなくても立派な大人にはなれると思いますよ。

 

 次にランサーですが、妖精郷に帰った途端にスカサハとエンカウントした為、その身柄は快く彼女に引き渡しました。

 

 なんでも全盛期より弱くなっているらしく、一から鍛え直してやるとスカサハは張り切っていました。

 

 ゲートを通る際に響き渡った悲鳴と宙を掻いた助けを求める手が哀れさを誘いましたが、こればっかりは仕方がありません。

 

 彼には是非とも強くなっていただき、延々とスカサハを押し留める楔になってほしいものです。

 

 最後に私ですが、妖精郷に戻ってから最初の夕食で脱ニート宣言をいたしました。

 

 実家のお世話になって早十年です。

 

 そろそろ真面な生活を送らねば、甥や姪たちに示しがつかないでしょう。

 

 とはいえ、いきなり就職というのはハードルが高いので、当面は兄上の農業を手伝おうと思います。

 

 今回の騒動についてのリフレッシュ休暇を入れて、一週間後くらいに。

 

 ………………ダメ?




 突発的に書いてしまいましたが、個人的には大満足です。

 さあ、次からはシリアルだ!

 

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