剣狂い転生漫遊記   作:アキ山

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皆さま、お久しぶりです。

 前回の皆様の感想を真摯に受け止め、何とかスランプ脱却をと足掻いていたところ、なけなしの十連ガチャで久々の神引きを見る事に。

 ええ、狙っていたのは確かですが、まさかの一発XX降臨です。

 というワケで、今回はリハビリ的な意味も込めてニートリアINルルハワを書いてみました。

 『書けば出る』ならぬ『出たから書く』という何ともアレな動機ですが、皆様のお目汚しにならなければよいかと。


【ネタ】ニートリアのサバフェス旅行

【ネタ】ニートリアのサバフェス旅行

 

 

 現世歴2018年 8月 7日

 

 

 久しぶりに筆を執りましたね。

 

 ニート改め家事手伝いのアルトリアです。

 

 冬木の聖杯戦争が終了して幾月かが経ちましたが、ウチの家族は変わらず元気に過ごしております。

 

 私も脱ニート宣言に(のっと)って実家の農業を手伝うようになり、青白かった肌も以前より健康的になったと思います。

 

 え、就職?

 

 何を言っているのですか。

 

 私は実家が営むアルガ農園の従業員として、立派に社会人生活を送っていますよ。

 

 ええ、毎月のお小遣いもしっかりといただいてますし、気持ち程度ですが実家に生活費も入れています。

 

 この年で実家暮らしと聞くと眉を潜める人もいますが、胸を張って言いましょう。

 

 脱ニートは成功したと!!

 

 あ、趣味に関してはあんまり変わっていませんので、休日は基本的にインドアですけどね。 

 

 さて、本日の夕食の席で兄上から少し変わった提案が出てきました。

 

 なんと、家族全員でハワイに行こうと言い出したのです。 

 

 ウチの家族は神やら仙人やらと、神秘の消え失せた現世の空気には少々馴染み難い面々ばかり。

 

 第四次、そして五次の聖杯戦争に関しては、兄上達は特殊な処理を施していたので問題ありませんでしたが、何も行わずに出向いた場合は一日足らずで弱体化してしまうそうです。

 

 ……話が逸れましたね。

 

 そういった事情から家族旅行といえば妖精郷の中をピクニックが定番であり、現世のリゾート地になど行ったことがありません。 

 

 なので、どうしてそんな企画を立ち上げたのかと聞いてみたところ、兄上は一つのチラシを差し出しました。

 

 目にも鮮やかな表紙には『サバ☆フェス』と表題が打たれており、なんというか外れイベントっぽい雰囲気がプンプンします。

 

 読んでみたところ、どうも現在のハワイには『特異点』なる通常とは異なる空間が広がっており、そこでは兄上達も処置無しで普通に過ごせるのだそうです。

 

 なるほど、理解しました。

 

 そう言う事ならば、(おもむ)くのも(やぶさ)かではありません。

 

 モードレッドやガレスは古代のブリテンを除けば、妖精郷しか知らないと言います。

 

 これを機に見分を広めるのも、あの子達にとっていい経験となるでしょう。

 

 私とて人の子ですから、土と戦う毎日が続けば南の島で骨休めをしたいと考えるのは必然と言えるでしょう。

 

 というワケで、全員賛成という結果に基づいて家族旅行が決定したわけです。

 

 出発日は明後日の朝。

 

 今回に関しては兄上の縮地ではなくちゃんと料金を払ってゲートで現世へ行くそうなので、何だかよくわからない並行世界へ迷い込む心配はありません。

 

 思えば私も他国への旅行は初めての経験です。

 

 ここはヒッキー気質など部屋に置いて、旅の醍醐味を堪能(たんのう)することにしましょう。

 

 

 現世歴2018年 8月 9日

 

 

 やってきました、海外旅行です。

 

 ゲートを通って現地入りをした私達を待っていたのは、特殊空間たる特異点らしくハワイ諸島全てがドッキングして一つの島になった『ルルハワ』でした。

 

 そこはかとなく厄介事の臭いがしないワケでもないですが、そこは兄上の組んだ企画。

 

 何かあれば、いつものチート剣術で片付けてくれるでしょう。

 

 冬木にいたサクラによく似た案内人から注意事項を聞いた私達は、ホテルに荷物を置いて海水浴場へ出る事に。

 

 そういえば、ホテルのロビーでモードレッドを大きくしたような少女にあったのですが、私の顔を見るなり父上呼ばわりされて大変でした。

 

 おそらく、彼女は並行世界で私と姉上の間に生まれたというモードレッドなのでしょう。

 

 五次のセイバーを見る限り、容姿は私とほぼ変わらないようですし、見間違えるのも無理はありません。

 

 ええ、きっと。

 

 今回の旅行に際して、私はそれなりにおしゃれで女性らしい恰好をしてきているのです。

 

 水着だって、キャメロットの舞台から飛び降りるつもりでビキニにしました。

 

 だから、女を捨てたとか、男にしか見えないなんてことは無い……筈。

 

 閑話休題

 

 家族みんなで水着に着替えたわけですが、男衆や体格的に控えめな私や姪達はともかく、姉上と母上の水着姿は完全にアウトでした。

 

 あの凶器といっても過言ではない胸部装甲にキュッとくびれた腰、そして安産型の立派なお尻とリゾート気分で開放的になった野郎どもが見れば、むしゃぶりつくのは目に見えてます。

 

 現に見覚えのある赤毛のトリ野郎や、軽薄に見えてブラックなトークで元部下をいぢめてそうな金髪のチャラ男に声を掛けられてましたし。

 

 まあ、ガウェイン達が男除けになっていたり、母上も姉上も一途で身持ちが固いこともあって『消えろ、ブッ飛ばされんうちにな!』とナンパ男どもを一蹴してましたが。

 

 そんな事はいざ知らず、テンションの上がった姪達は海水浴に大はしゃぎ。

 

 付き添いの兄上の背中にしがみ付いて泳いでもらったり、レンタルした大型浮き輪をけん引してもらったりと笑顔が絶えませんでした。

 

 改めて見てみると、兄上はしっかりと父親していますね。

 

 普段は剣士としての側面が先行してるのでそんな雰囲気は無いのですが、子供達と(たわむ)れているのを見ると尚更(なおさら)そう思います。

 

 思えば、私の周りにいる父親は大概(たいがい)ロクデナシばかりでした。

 

 わが父ウーサーは横恋慕した女を手に入れる為にクズと共に部下を(おとしい)れ、連れ子はもちろん産まれた我が子すらダイナミック育児放棄。

 

 ランスロットの奴も、ペレス王が放逐したギャラハッドをソッコーで『修道院行きにする』とほざく始末。

 

 五次聖杯戦争で知った事ですが、セイバーこと並行世界の私も認知するように求めたモードレッドに対してNoを突き付けたそうです。

 

 まあ、ランスロットとセイバーに関しては、罠に嵌められて作った望まぬ子どもであるという情状酌量の余地が無いとは言えません。

 

 しかし、ほぼ同条件で認知したうえに立派に育て上げている兄上を思えば、その辺の事情だって霞んでしまうのは無理からぬ事です。

 

 ……この辺のことは深く考えると憂鬱になるのでやめましょう。

 

 少なくとも、私は母になることはあっても父親になる事はあり得ませんし。

 

 さて、海水浴も終わっておいしい夕食を頂いた私は、ルンルン気分で廊下を歩いていました。

 

 昼は海水浴で身体を使ったうえに、腹もくちくなった事でいい感じに眠気も襲ってきています。

 

 これはベッドの中でソシャゲをしながら寝オチコースかと思っていたところ、突如物凄い力で隣の部屋に引きずり込まれてしまいました。

 

 何事かと目を白黒させていると、どこかすえた臭いと共に現れたのは赤い『Buster』Tシャツに黒の短パンを身に纏った、かつての戦友であるセイバーでした。

 

 リゾート地なのにどう見ても修羅場ってる彼女は、下水道にこびり付いた金メッキのような瞳でこう言いました。

 

『新刊が落ちそうだ、手伝え』

 

 意味が分からずに事情の説明を求めた私は、彼女の口から(もたら)された真実に戦慄を覚えることになります。

 

 このルルハワで行われている『サバ☆フェス』なるイベント、それは何とウ=ス異本の即売会だというのです。

 

 ウ=ス異本、それはヲタクの中でも殊更(ことさら)にディープな世界。

 

 関わっていると知れた日には、一般ピーポーからは中世の魔女狩りの如き異端審問を掛けられること間違いなしという、特級の危険物なのです。

 

 そんな会場に家族総出で来ているという事実、それは私の心胆を震え上がらせるには十分なモノでした。

 

 自分の家族とウ=ス異本即売会に行くなど、ヲタクにとってはエキセントリックな自殺以外の何物でもありません。

 

 これが事実ならば由々しき事態です。

 

 『Arts』と書かれた青のTシャツを手にしたセイバーの呼び止める言葉を背に、自室へと駆けこんだ私はガレスを引き連れて寝室へと向かいました。

 

 我が家の中でウ=ス異本の事を知っているのは、私よりはライトユーザーとはいえ同好の士であるガレスのみ。

 

 例の情報を知ったガレスは、顔色を一気に紙のようにして崩れ落ちました。

 

『……アル姉さま、お父さまとお母様はサバフェスに行く気です』

 

『なん…だと……』

 

 わななく私を他所に、ガレスは涙声で言葉を続けます。

 

 兄上達はあのイベントをただの書籍の即売会としか認識していない事。

 

 さらに現地の黒髭が目立つオタッキーから普段では手に入らない珍しい本が並んでいると聞いた事で、なにげに読書を趣味としている兄夫婦は行く気満々。

 

 母上もモードレッドの教育に良い本があればと乗り気になってしまったとか。

 

 子供の教育になんて、害悪レベルで悪いモノしかねぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!

 

 隣の部屋でチラリと見ましたけど、セイバーは10年以上続いているクッソ長いWeb小説『ブリタニア列王記』の製本版!

 

 隅の方にいたボブに至ってはファミコンの『チーターマン攻略本』ですよ!!

 

 需要なんてどこにあるんですか、とくにボブ!!

 

 私達を除けば、ウチの家族は無菌室で育ったラットみたいなものなんです!

 

 それを都会の下水道のごとき、汚染物質塗れな即売イベントになんて行かせられるかぁ!!

 

 思いのたけをブチまけてみましたが、これでは何の解決にもなりません。

 

 真実を告げれば兄上達の勘違いを正すことが出来るかもしれませんが、『何故、そんな事を知っているのか?』とツッコまれた時点で、隠れヲタであるガレスは首を吊ることになるでしょう。

 

 とはいえ、家族を連れてあの修羅場に突入するのはどうあっても避けたい。

 

 ここで私は(はら)(くく)りました。

 

 ガレスには何も知らないフリをさせたうえで、私の口からサバフェスの内容を説明するのです。

 

 なに、大した事ではありません。

 

 私の趣味など、ニートをしていた時に母上達にはバレているに決まっています。

 

 いまさら罪状が一つ二つ増えたところで、何を恐れる事がありましょうか!

 

 だから、これを書いたら兄上達にサバフェスについて伝えに行きましょう。

 

 なんだか文字が(にじ)んで見えますが、ちょっと疲れてるだけなんです、きっと。

 

 

 現世歴2018年 8月 10日

 

 

 ……説得、失敗しました。

 

 兄上達保護者に決死の思いでウ=ス異本の即売会を説明したのですが、『普通の本もあるんだろ。ウチはモードレッドとガレス以外は成人してるし、多少の事なら大丈夫だって。これも経験、経験』と取り合ってくれませんでした。

 

 エロい事に難色を示すであろう女性陣に水を向けてみても、『拙いと思ったら引き返すから大丈夫よ』と楽観視です。

 

 どうやら私とガレスの精神的地獄巡りは確定のようです。

 

 本音を言えばロンゴミニアドで会場を消し飛ばしたい所ですが、せっかくの旅行なのに家族に迷惑をかけては目も当てられません。

 

 まあ、あれです。

 

 最悪、ガレスが強硬に嫌だと主張すれば、兄上達も早めに切り上げてくれるでしょう。

 

 イベントの開催は四日後といいますし、それまでは全てを忘れてバカンスを楽しむことにします。

 

 さて、今日は早朝から兄上に連れられて、アグラヴェインやギャラハッドと共に山へ行きました。

 

 理由はもちろん剣術の鍛錬。

 

 一年365日、絶対に休まない兄上の日課なので、この辺は諦めています。

 

 ちなみにギャラハッドは朝の体操程度の認識、現状で兄上の剣の後継者とされているアグラヴェインは真剣そのものでした。

 

 私としては軽いダイエット替わりといったところでしょうか。

 

 なにせ、このルルハワは食べ物が美味です。

 

 特にホテルの食事は本当に美味しいうえにビュッフェ形式ですので、ついつい食べ過ぎてしまうのです。

 

 というわけで久々に聖剣を振ろうとやってきたワケです。

 

 準備運動から始まり、素振りに一定時間で相手を変えての打ち込みと定番のメニューを熟した私達を、兄上は山肌から突き出た巨岩へと誘います。

 

 『今日はちょっとした小技を教えるからな』

 

 そう言って黒塗りの鞘に収まった刀を岩に押し当てると、兄上の身体がブレたと思った次の瞬間には巨岩が横一文字に両断されてしまいました。

 

 あまりの事にポカンとしている私達に、兄上は種明かしをしてくれました。

 

 今のは足捌きと腰の回転を利用し、腕の動きは最低限で剣を振り抜くという技術だそうです。

 

 言われて初めて成程といえる技ですが、こんな曲芸じみたモノが役に立つのでしょうか?

 

 私とギャラハッドが疑問をぶつけると、兄上はふと視線を林の中に向けました。

 

 釣られて見たその先には、どこか所在なさげにうろついているシャドウサーヴァントの姿。

 

 黒い靄を纏っていてよく分かりませんが、フルプレートを纏った騎士のようです。

 

『さっきの質問だけど、使い方を実践してみせてやるよ』

 

 そう言うなり、大股でシャドウサーヴァントへと近づく兄上。

 

 そうして間合いに入ると同時に放った横薙ぎは無造作であるものの、見ている者の背筋を凍らせる鋭さを持っていました。

 

 兄上の斬撃をギリギリ首の皮一枚で防いで見せた黒騎士。

 

 しかし次の瞬間には、甲高い音と共に彼の首と得物の刀身は宙を舞うことになりました。

 

 再びポカンと口を開けてしまった私達に、兄上は苦笑いで声を掛けます。

 

 兄上が行ったのはさっきと一緒。

 

 防がれた次の瞬間に、ゼロ距離斬撃で相手の得物ごと首を刎ね飛ばしただけです。

 

『今みたいに攻撃を防がれた際、防御ごと相手を斬り伏せるってのがこの技の使い方だ。これのコツは自信を持てるような鋭い攻撃を防がれた後に放つ事。こちらが必殺を期して放った一撃を防ぐ事が出来れば、少なからず相手は安堵する。安堵するってことは、一瞬でも心が緩んでるわけだ。そういった心の間隙を突けば、こんな大道芸じみた技も必殺の一手に化けるってワケさ』

 

 それを聞かされた私達は二の句が継げませんでした。

 

 あまりにもエゲツなさすぎます。

 

 これって一切合切を両断できる兄上に限って言えば、防御=死って事ですよ。

 

 しかも防御した相手の心の隙を突くとか、完全に暗殺術の領域ですし。

 

 なんというか、背中を追っているアグラヴェインが気の毒になってきました。

 

 ちなみに、これを習得する為と行ったゼロ距離斬撃で木を斬るという鍛錬。

 

 やってみたものの表面に傷を付けるだけで、両断どころか刃を立てることも出来ませんでした。

 

 まあ、兄上も『一朝一夕で出来る技じゃないから、ゆっくり腰を据えて挑戦する事』と声をかけてくれたので、まったりと練習することにしましょう。

 

 ところで、帰り道に兄上を見ながらしきりに刀の鍔を鳴らしていた変わった和装の女性を見たのですが、彼女は一体何がしたかったのでしょうか?

 

 ある程度剣を鳴らすと、肩を落として帰っていったのですが意図がさっぱり分かりません。

 

 さて、朝食が済んだところで、本日の私達の予定はショッピングです。

 

 ダイヤモンド・ストリートを巡り、思い思いの店を覗いては旅のお土産として買っていく。

 

 母上の持ってきたフリフリの服をモードレッドが嫌がったり、宝石店で兄上が姉上に指輪を買ってみんなに囃されたり。

 

 他にもガヘリスがゲームセンターの腕相撲マシンの腕を捥いだり、アグラヴェインがガンシューティングで高得点をマークしたりと、家族全員大はしゃぎ。

 

 しかし、そんな楽しい時間は唐突に終わりを告げました。

 

 太陽も中天に上がり、そろそろお昼を取ろうかと話していた時、上空から何かが降って来たのです。

 

 道路にクレーターを造り、粉塵の中から現れたのは白銀のメカというかロボ。

 

 全身装甲に双頭の槍を持つその姿を見た私は、アホ毛がチリチリと伝える独特の感覚に頭を抱えてしまいました。

 

 間違いありません、また、別の私です。

 

 というか、他の世界にはいったい何人の私がいるのでしょうか?

 

 その内、母上並みに身体が成長した私や、純真無垢だった時代の私が現れるんじゃないでしょうね。

 

 さて、この謎のメカ子の名前は『謎のヒロインXX』というのだそうです。

 

 ツッコミどころ満載の名前なのに、何故か言及するとブーメランになると直感が告げています。

 

 サバフェスの阻止という、何とも素晴らしい目的の下に現れた彼女。

 

 スラスターを吹かして突撃してきたところを、いち早く跳び出した私は聖剣と聖槍で受け止めました。

 

 正直、彼女の邪魔などしたくはないのですが、その進路上の先では兄上がとても朗らかな笑顔を浮かべています。

 

 ダメです、あれはモノクマのエクストリームなお仕置きタイム以上の死亡フラグです。

 

 このまま突撃を許せば、間違いなくXXの首は宙を舞うでしょう。

 

 早朝に見たえげつない技を思い返しながら、私は彼女が絶対的な死へ飛び込まないように必死に抑えました。

 

 エネルギーバルカンに拡散レーザーと、ロマン武器を惜しみなく展開し激しく抵抗するXX。

 

 せっかく用意した水着に瑕がついた時は、手加減無しの『アーサー三連殺』を叩き込んでやろうかと思いましたが、そこは『サバフェス撲滅』という甘美な言葉で耐えます。

 

 ある程度槍を打ち合わせると、彼女は『勤務時間終了』という言葉を残して天へと帰っていきました。 

 

 正直、彼女が何なのかはさっぱりですが、掲げた『サバフェス撲滅』という理想は買いです。

 

 手助けはできませんが、その聡明な理想は同じアルトリアとして応援しています。

 

 是非とも私の代わりに、その聖槍でサバフェス会場を吹き飛ばしてください。

 

 

 現世歴2018年 8月 11日

 

 

 リゾート地に来ているというのに、私は一体何をしているのでしょうか?

 

 ルルハワ三日目ですが、悲しい事に棒に振る結果となってしまいました。

 

 原因は隣に泊まっていたダメ王。

 

 初日に掛けられた『新刊落ちそう、手伝え』が現実になってしまったのです。

 

 当然ですが、最初は私だってNOを付きつけました。

 

 南の島に来てまで同人活動なんてやってられませんから。

 

 しかし、ここで過去の過ちが私の動きを封じてしまいます。

 

 そう、十年前の第五次聖杯戦争。

 

 何故か知りませんが、あの時の自堕落な生活っぷりが動画になって残っていたのです。

 

 セイバーはUSBメモリーを手にニヤリと笑います。

 

『先日云った通り、これから貴様には私のアシスタントをしてもらう。もし拒否をするのなら、このデータは貴様の母親に渡る事となる』

 

 はっきり言ってそれはヤバイ。

 

 第五次聖杯戦争に関しては、母上は私がしっかりとサーヴァントとしての任を果たしたと思っています。

 

 そして、それが脱ニートの自信になったのだと。

 

 そんな経緯もあって衛宮邸での生活をバラされてしまうと、母上からの私の信用が地に落ちてしまいます。

 

『選ぶがいい。私は何の強制もしない』

 

 拳王先遣隊みたいなセリフを吐きおって、このダメ王……ッ!

 

 ですが、いくら歯ぎしりしてみたところで、私の負けは決定的です。

 

 なす術の無い私は、セイバーに屈服するしかありませんでした。

 

 そうして始まった同人作業。

 

 奇声を上げながら原稿用紙を埋めていくセイバーと、その文章をパソコンで清書する私。

 

 以前の衛宮邸では普通にタイピングしていたくせに、どうして原稿用紙に筆を走らせているのでしょうか、このダメ王。

 

 ツッコミどころは満載なのですが、愚痴ったところで仕方ありません。

 

 私にできる事は今日中に作業を終わらせて、明日からは観光に戻る事でした。

 

 ところでボブ。

 

 貴方のやっている実写ガンダムゲーム、いつになったらガンダムはサイド7を脱出するんですか?

 

 かれこれ六時間はジーンとデニムにガンダムを破壊されまくってるじゃないですか。

 

 そろそろガンダムの生首が転がるコンティニュー画面は見飽きたのですが。

 

 閑話休題。

 

 そうしてちまちま作業をしていると、もう一人懐かしい顔に出会いました。

 

 冬木のライダーことメドゥーサです。

 

 彼女もルルハワに観光に来たところをダメ王とその下僕に掴まったそうで、今まで差し入れ用のジャンクフードを買い出しに行っていたそうです。

 

 ダメ王が原稿が進まずにのたうち回っている間、彼女から衛宮少年とサクラの事が聞けました。

 

 あれから十年余り、二人は衛宮少年が消防士となると同時に結婚したそうです。

 

 その後は4人の子宝に恵まれ、現在は衛宮少年は消防から救急へと所属を変えて、日夜家族と人のために奮闘中。

 

 サクラの方も子供達に囲まれて幸せそうにしているとか。

 

 リンに関しては、高校卒業と同時に魔術の本場であるイギリスに移住し、そこから疎遠になってしまった為によく分からないそうです。

 

 まあ、衛宮少年もサクラも魔術を捨てて一般人になったそうですから、魔術師のままだというリンが懇意にするのは色々と拙いのでしょう。

 

 理屈や事情は分からなくも無いですが、そんな事で姉妹が離れてしまうのは少し寂しい気がしますね。

 

 結局、今日のところはダメ王がスランプを発症した為にここで終了と相成りました。

 

 予定では加筆修正が後50ページほど残っているのですが、あのザマで書けると思っているのでしょうか?

 

 まあ、マル秘データが入ったUSBメモリーも調達した事ですし、あとはお手並み拝見と行きましょう。




 

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