剣狂い転生漫遊記   作:アキ山

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 皆様、ご声援本当にありがとうございます。

 連続投稿も5日目、そろそろネタにも苦しくなってきました。

 鬼哭街パートを書く時には筆が走りまくっていたのに、日記になると途端に鈍った。

 やっぱり型月の設定は難しいね。

 死ぬほど穴だらけの設定ですが、順次補正していきますので勘弁してつかぁさい。



日記5

 暗く濁った空へと突き立つように乱立する高層ビルと、夜の闇を拒絶するかのように周囲を照らし続けるネオンの光。

 道路には旧世代とはいえまだまだ需要がある有輪の自動車、空には新世代と言われていくばくかの時を経た、新たな物流の覇者である推力推進車両(スラスト・ヴィーグル)が空中に引かれたガイドビーコンに沿って流れていく。

 ここは上海の中でも屈指の経済区である浦東金融貿易区。

 アジア圏のみならず世界中の企業が軒を並べ互いに利益を貪り合う、金の蟲毒壺である。

 そして、そんな大都市であるからこそ、清濁が共存する。

 表の顔がアジア圏屈指の経済地区であるならば、裏の顔はドラッグに非合法なサイボーグパーツ、武器を扱う裏社会。

 一歩堅気の道から外れれば、利権に群がる各国マフィアや地元中国の犯罪結社などが血で血を洗う抗争の鉄火場が展開されているのだ。

 多量の酸を含み、自然を鏖殺する毒となった雨が降りしきるビルの影、そこでもまた血生臭い旋風が吹き抜けようとしていた。

 そこにある人影は三つ。

 一つは上半身をくまなく金属に覆われた2メートルを超す巨漢。

 大きく膨れ上がった両肩と前腕部にパワーアシストとアクチュエーターが仕込まれた、パワータイプのサイボーグである事を無言のうちに示している。

 もう一つは伝統的な中国服に身を包んだ禿頭の男。

 足首にまで届く程の腕と、額から頭頂部に掛けて光る各種センサーが彼もまた半機半人である事を証明している。

 最後は黒のズボンにシャツを纏い、同色の耐環境コートを纏った男。

 年の頃は15に届くかどうかの中性的な細身の少年だ。

 女性と見間違うその容貌は、身に纏っている野暮ったい服を剥いでそれなりの装いをすれば、ナイトクラブに出しても通用するだろう。

 一見するならばひ弱な少年に詰め寄る悪党の図だが、少年が手にした倭刀と顔に浮かぶ不敵な笑みがそれを否定する。

「紅陽会の洪子轩(コゥ・ズー・シュエン)、そして李浩然(リー・ハオ・ラン)。お前等の命をもらおうか」

 鞘走りの音と共に姿を見せる鋼の刃、それを向けられてもなお二人のサイボーグは余裕を崩さない。 

「おいおい! なんの冗談だ、そりゃ」

「まさか、俺達相手にそんなナマクラで挑もうってのか、お嬢ちゃん?」

 二人の態度は当然と言えた。

 荒事に携わるサイボーグならば、防刃防弾処理は常識だ。

 当然二人のサイバーボディにもそれは行われており、高周波振動で切れ味を増した最新鋭の軍用ナイフですら防ぐことが出来るのだ。

 時代遅れの倭刀など、子供が持つビニール製のおもちゃと変わりはない。

 そんな己を舐め切った二人の態度など意にも解さない様に、一歩踏み出した少年は驚くほど淀みない動作で剣を振るった。

 一閃。

 空を切る音に続いて甲高い擦過音が路地裏に響き渡り、それに一拍子遅れて洪のサイバーアームの肘から下がアスファルトの上で重い音を立てる。

「あ……あああああぁぁっ!?」

 一瞬の空白の後、洪は半ばから失われた右腕を押さえて絶叫する。

 当然、破損を前提とするサイバネアームに痛覚は無い。

 しかし、己が四肢が失われれば声を上げるのが人間というものだろう。

「てめぇっ!!」

 相棒の惨状に、怒号を上げながら李が異形の腕を振るう。

 大きく垂れた袖の中から飛び出したのは、ソフトボールほどの大きさの(すい)だ。

900m/s、銃火器の弾丸と大差ない速度で襲い掛かるそれを、少年は首をすこし傾けただけで躱す。

 しかし、放たれた錘もまた普通の物ではない。

 ダイヤモンドコーディングが施された強化ワイヤー内に通るニューラル神経節の命令によって内蔵された排気口から圧縮空気を吐き出したそれは、まるで蛇のように身をくねらせると少年の頭頂部に食らいつかんと襲い掛かる。

 多少は死んだとはいえ、450m/sの速度で降りかかる重量10kgの金属塊。

 しかし、それは少年の繰り出した白刃の軌跡によって、轟音を立ててビルの壁を大きくヘコませるに留まった。

「チィッ、クソォッ!?」

 悪態を付きながら右の義肢に繋がったワイヤーを戻そうとする李。

 しかしそれを許す程少年は甘くない。

 軽功術によって疾風の如き速度を得た彼は、神速の踏み込みと共に右に溜めた倭刀の切っ先を李の喉元目がけて放とうとする。

 だが、必殺の間合いに入る寸前で少年は大きく後ろに飛び退いた。

 李が驚きに目を見開いた次の瞬間、砲弾もかくやと言わんばかりの鋼の拳が少年が踏み入るはずの場所を通り過ぎた。

 八極拳が拳技が一つ、冲捶。

 洪が放った、厚さ20㎝を超える強化コンクリート製のビルの外壁を、容易く粉砕せしめた拳技の名だ。

 サイバネレッグによる震脚によって放たれる重量25.6kg、速度320m/sの拳は、威力で言えば対戦車兵器をも上回る。

 その拳風を浴びただけでも生身の者なら脳震盪を起こし、開祖李書文の拳が七孔から血を撒き散らしたというのなら、この特殊合金の拳はミンチとなった犠牲者の肉片を辺りに撒き散らす事になるだろう。

「よくも俺様の腕を……ッ!? 殺す! 殺してやるぅぅぅぅっ!!」

「吼えてないで掛かってこい、鈍間(ノロマ)が」

 猛り狂う洪に向けて、手招きと共に挑発を行う少年。 

 冲捶に始まり、裡門頂肘、川掌、さらには双撞掌と。

 次々と震脚でアスファルトを踏み砕きながら放たれる八極拳の絶技も、闇夜に踊る剣閃に妨げられて少年を捉える事は出来ない。

 片腕を失った洪の身体のバランスが狂っている事もあるだろうが、それ以上に少年の技が巧い。

 李もまた左手からも流星錘を放つが、まるで予知しているようにその悉くを防がれてしまう。

「なんでだ!? なんで当たらねぇ!?」

「たかが生身の人間が……ッ どんなトリックを使ってやがる!?」 

 あまりにも信じがたい現実に、攻めているはずの二人から焦りと恐怖が籠った声が上がる。

 そしてそれは李の操る錘の操作をほんの少しだけ狂わせる。

 時間にしてコンマ01秒の時間だけ動きを止めてしまった錘は、掬い上げるような剣閃によってワイヤーの半ばから斬り飛ばされた。

 内部配線を剥き出しに垂れさがる右のワイヤーを見ながら、李は戦慄した。

 ダイヤモンドコーティングされたワイヤーが完全に切断されている。

 機甲車両並の装甲を誇る洪のサイバネアームが両断された事で警戒はしていたが、ここまでの鋭さとは。

 迂闊に手を出せば丸裸にされる……。

 そう判断した李は左の錘を巻き取り、襲撃者を葬り去る為の好機を狙い始める。

 一方の洪は、一合ごとに拳士としての矜持を削り取られながらも、それでもなお攻撃の手を緩めなかった。

 彼の脳裏には武林の仲間内で聞いた噂話が延々と渦巻いていた。

 相手に触れるだけで死にも勝る苦痛と共に、サイボーグを葬る事が出来る内家の拳士がいると。

 曰く、その絶技の名は電磁発勁。

 その絶技を使いし者の二つ名は『紫電掌』

 その時は眉唾物と笑い飛ばしていたが、サイバネ武術家相手に一歩も退かない目の前の小僧を見ていると、それが真実であると感じずにはいられない。

 もし、こいつが『紫電掌』だとしたら……。

 それは即ち、剣の後ろに構えた左手に触れられたが最後、自分は地獄に落ちるという事だ。

「ぐおおおおおおおおっ!!」

 雄叫びを上げながら、洪は拳を放ち続ける。

 脳に備わった補助CPUから全身の過負荷について警告が出ようが、そんなものは知った事ではない。

 ここで凌ぎきらなければ、自身に明日は無いのだ。

 しかし、そんな悲壮な決意とは裏腹に必殺の打撃は相手を捉えることは無い。

 オーバーヒートで身体が鈍ったことに加え、李の援護が途切れた為にむしろ相手は余裕を持つようになってしまったからだ。

 鋼の八極拳士の脳裏に絶望が過ぎり始めたその時、少年の左腕が動いた。

「ヒィィィッ!?」

 洪は情けない悲鳴を上げるが、補助脳によって命令が下された身体は主の意思とは無関係に拳を放つ。

 しかし心身が揃わぬ児戯にも劣る攻撃、そんなものがこの少年に通じる訳がない。

 放たれたサイバーアームの下を掻い潜った少年は、手にした刀を振り上げながら大きく跳躍した。

 鋼の咆哮が夜闇に響くと同時に、血と潤滑油が混じった飛沫が吹き上がる。

 放たれた変形の戴天流剣法・鳳凰吼鳴によって頭部を縦に割られた洪の身体は仰向けに地面に沈み、震脚によって巻き上げられた瓦礫と共に少年の身体は宙に舞う。 

 その瞬間、息を潜めていた李は両手からワイヤーを放った。

 複雑な軌道を描きながら少年に襲い掛かる機械仕掛けの二匹の蛇。

 一方には当たれば肉ごと骨を砕く鋼の塊が、もう一方にはネオンにその身を光らせる鋭き(ひょう)が牙をむく。

 錘は正面から腹部を、鏢は背後から後頭部を狙う。

 どちらか一方を剣で落としても、もう一方が確実に命を奪う!

 しかも生身の少年には空中での移動手段はない!!

 勝利を確信し、笑みを浮かべる李。

 彼の操る蛇が得物の身体を食い千切ろうとした瞬間、少年の身体は大きく前に跳躍(・・・・・・・・)した。

 虚を突かれて固まる李、しかし彼に備わっていたセンサーは一つだけ下に速度を増した瓦礫を捉えていた。

(あの状況で瓦礫を足場にするなんて、化け物か……!?)

 呆然と宙を見つめる李の目に最後に映った光景は、ギラギラとした目で大きく口の端を吊り上げながら、大上段に剣を振りかぶる少年の姿だった。

 

 身体を縦に両断された暗器使いが地面に沈むのと同時に着地した少年は、手にした倭刀の血振りを行った。

 多くのサイボーグは要所にしか血液は流れていないが、代わりに油や冷却液など鋼に悪いモノが巡っている場合が多いのだ。

 それが終わると李の死体に向けて二度・三度と剣を疾らせる。

 これは刀剣のみでサイボーグを屠るのに必要な措置だ。

 何故ならば───

 振り向きざまに少年が放った抜き胴は、一刀の下に背後で拳を構えていた洪の身体を両断した。

 二度、三度と宙を回転してアスファルトに落ちる上半身。

 二つに割れた頭部から覗くのは神経ケーブルと人工の補助脳のみ。

 胴の切り口から鉄錆の臭いと共に、ケースの破片と灰色の肉片が流れ出てきている。

 サイボーグには既存の急所は通用しない。

 極端に言えば、サイバーボディは本人の人格が詰まった脳以外なら、どこを取り除いても生存が可能なのだ。

 だからこそ戦闘を生業にする荒くれ者の中には、頭部には機能補助の人工知能を入れて本当の脳は消化器官を取り除いた腹の中に隠す、なんて輩も珍しくないのだ。

 珍しいところでは、尻や股間に隠していたなんてケースもある。

 だからこそ、身体の一部に触れることによって末端神経に電磁パルスを送り込み、電磁誘導を引き起こす事で神経節や主要機関を破壊する事が可能な電磁発勁が重宝されるのだが。

「電磁発勁は一発使っただけで内臓へのダメージが半端ないからなぁ。俺みたいな鉄砲玉が使ってたらあっという間に多臓器不全でお陀仏だっつーの」

 鼻歌交じりに独り言を呟いた少年は、地面に転がった死体の懐に手を突っ込むと手が汚れるのも気にせずに物色し始める。

 少しの間ゴソゴソと探っていた手を引き抜くと、そこには故人の財布が握られている。

「……チッ、シケてんな。武器をメンテに出したら一週間と喰えねえじゃねーか」

 ブチブチと文句を言いながら金子のみを引き抜いた少年は、不要になった財布を死者の顔面に投げ付けて大通りに向けて歩き始めた。

 

 

 三度目人生記(29年9ヶ月22日目)

 

 

 久々に前世の夢を見た。

 我ながらゲスい上に未熟だわぁ。

 今ならアレくらいの雑魚、一合で斬り殺せるだろう。

 けど、あの当時の俺等の給金って死ぬほど安かったんだよなぁ。

 コンビニでバイトした方が全然高いくらいなんだから、組織が俺等の事を如何に軽視してたかがよく分かる。

 ま、鉄砲玉の餓鬼なんぞに金を掛けたくないってのは分からなくもない。

 現に同期なんざ一年もしない内に全員あの世に逝ったからな。

 青雲幇(チンワンパン)で俺の事を気にしてくれてたのって、濤羅(タオロー)(あに)いと元の兄貴達くらいだったし。

 あの人達がいなかったら、殉死じゃなくて飢え死にしてたわ。

 いやはや、それに比べれば今の仕事のなんと楽な事よ。

 衣食住が保障されてて、あったかい家族がいるとか最高じゃね?

 けど、前世の夢を見た所為か、心のどっかに実戦の勘が鈍ってるんじゃないかって懸念もあるんだよなぁ。

 どっかにサイバネ武術家と闘える場所とかないかね。

 

 三度目人生記(30年0ヶ月1日目)

 

 

 ついに俺も三十路である。

 『三十にして立つ』という孔子の言葉があるように、俺もしっかりと仕事と修行に励まねばなるまい。

 姉御の話では、アルトリアとの顔見せから少ししたあと、ブリテンから同盟の話が来たそうだ。

 どうやら前回の事が上手く作用したらしい。

 善哉(よきかな)善哉(よきかな)

 でもって条約会議なんだが、近頃さらに体調が悪くなった王に代わってガウェインと姉御。

 そして何故か俺が参加する事になった。

 なんでやねんとツッコミたいが、向こうたっての要請だというなら一兵士としては断る事は出来ない。

 まあ、あれだ。

 護衛の一人として姉御の横に突っ立ってたらいいだけだろ。

 発言を求められる事もないだろうし、気楽にいこう。

 

 三度目人生記(30年0ヶ月15日目)

 

 

 ブリテンとの会議が終了した。

 結んだのは相互不可侵で同盟にはならなかった。

 理由は俺。

 むこうは同盟の条件として、俺を近々結成する近衛騎士団に迎え入れたいと要求してきたのだが、姉御がこれを突っぱねたからだ。

 アルトリアやランスロットはかなり熱心に勧誘してきたのだが、俺からもお断りしておいた。

 さすがに姉御やお袋さんを置いて他の国に行くのは、ちょっとなぁ。

 ちなみにペテン師は俺が来るのを嫌がってたみたいで、断ったらすんげえ嬉しそうにしてたけど。

 会議が終わった後、姉御に頼んでアルトリアと私的な話が出来る様に計らってもらった。

 お袋さんも連れてくるので、ついてこようとしていたペテン師にはフォウ君を嗾けておいた。

 奴を見た瞬間に両手の爪で『スクリュードライバー』をぶっ放すあたり、ペテン師キラーの面目躍如だろう。

 お袋さんの私室で20年ぶりの親子対面と相成ったわけだが、アルトリアは物凄い戸惑っていた。

 赤ん坊の時にあったきりなんだから、この態度も仕方が無い。

 次に偽証探知の魔術を掛けて、ギアススクロールとかいう魔術的な契約書に偽りは言わないって誓った後、話し合いが始まった。

 というか、こんな前準備がいる私的話し合いってどんなだよ。

 まず最初に今までの経緯をお袋さんから説明したところ、アルトリアは死んだ目で机に突っ伏してしまった。

 なんでも、あのペテン師からお袋さんはウーサーと共に死んだと聞かされていたらしい。

 他にも、姉御は魔女でゴルロイス公の事とブリテンの王位を奪った事で自分を恨んでいる。

 俺に関しては悪魔憑きの人斬り狂って設定だったらしい。

 二人は兎も角、俺に関しては微妙に間違っていないから何とも言えん。

 つーか、剣魔ってなんなんだ。

 そんな厨二病な二つ名、名乗った事ねーよ。

 話の流れでアルトリアから『剣魔』のやらかした凶行(笑)を聞いたんだが、それにお袋さんと姉御は激怒した。

 戸惑うアルトリアに半ギレで事実を捲し立てる姉御。

 事実を知ったアルトリアがこっちに土下座しようとするのを止めるのは大変だった。

 しかし分からんのがペテン師である。

 野郎、なんでここまで話を捻じ曲げたんだ?

 疑問に思ってアルトリアに尋ねたが、返って来たのは分からないという返事。

 ただ、姉御が女神の分霊になったのはあいつにとって超が付く程の誤算らしい。

 そこで件の姉御に聞いてみたところ、なかなか興味深い話が帰って来た。

 お袋さんはこのブリテン島を司る土着の女神の末裔だというのは以前にも書いたが、同時に嫁いだ者を大陸の管理者(王とは別物)にするという役目も持っていたらしい。

 その管理者の役目は、時代の流れと世界を見て取ることで滅びゆく種や世界では生きられなくなった生物を、妖精郷と呼ばれる異世界に導く事なんだそうな。

 なんでもこの世界には神秘なる力が存在しており、神の時代から人の時代に移り変わった事によってそれはドンドン薄れているんだとか。

 保護対象の生物なんだが、俺が今まで出会ってきた幻想種とかいうナゾ生物がそうらしい。

 彼等は存在するだけでその神秘なるものを発生させ、同時にそれが無くては生きていけない。

 だからこそ幻想種を保護する為、そして神秘が消えるという世界の流れからブリテン島が置いて行かれないようにするために、管理者の役目は必要なんだとか。

 うん、ぶっちゃけ良く分からん。

 要するに環境保全と絶滅危惧種の保護が仕事、と考えればいいのか?

 先代の管理者は俺達の父親であるゴルロイスで、お袋さんの助けを借りながらチマチマと役目を果たしていた。

 公は管理者の仕事に理解を示しており、あのまま行けばブリテン島も他の地域と同じく普通の土地になっていたらしい。

 だがしかし、その公もウーサーの所為で落命。

 管理者というのは、お袋の一族の長子(血筋的に女系の一族なので長女)が純潔を捧げた者しかなれないそうなので、ウーサーは引き継ぐことはできずに管理者の役目は宙に浮いてしまっていた。

 神秘が薄れてるにもかかわらず、ブリテン島にナゾ生物が多いのはそれが原因なんだと。

 で、ペテン師の目的なんだが奴は夢魔と呼ばれる幻想種と人の混血なんだそうな。

 夢魔というのは人間の精神に取り付く寄生虫のようなモノなので、人間と同じ世界に生きなくては立ち行かない。

 混血である奴はその限りではないのだが、それでも人間という種には依存に近い感情を持っているそうな。

 ただ、半分は幻想種である以上、神秘が無ければ生きていけないのは奴も同じ。

 だからこそ女神の末裔であるアルトリアが王を務めるブリテンという国を楔にして、ガラパゴス諸島のように幻想種が残りうる唯一の地にしようとしているのでは? というのが姉御の予測である。

 そんな事できんのか? という疑問はあるが、姉御曰くアルトリアにはこの地を守護していた赤い竜の因子が仕込まれているので、不可能ではないかもとの事。

 ただ、その為には一定量の神秘が必要となるので、幻想種を妖精郷に還されるのは困る。

 だから、管理者の選定権を持っていた姉御が女神になった事に焦ったのではないかと言っていた。

 ……自分で書いていてよく分からんが、あいつがウーサーをはじめとして自分の周りの人間を利用しまくってるのだけは理解できた。

 話し合いの後、アルトリアはそのままブリテンに帰っていった。

 家臣の為にも王の責務を途中で投げ出す事は出来ないし、マーリンを監視しながら真実を見極めたいとの事らしい。

 まあ、長年師匠として付き合ってきたんだから、いきなり突き放すなんてできんわな。

 何かあったら呼べとは言っといたけど、やはり心配だ。

 あと、姉御に神秘云々の問題があるのなら俺等がいるのも拙いんじゃないか? と聞いたら『ここには管理者もいるし、私の工房にしているから当面は大丈夫』と言っていた。

 ただ、そう遠くない内には妖精郷に行かないといけないのは確実だそうだ。

 しかし、話の通りなら当代の管理者ってロット王になるのだが大丈夫なのだろうか? 

 あの人、もうヨボヨボなんですけど。

 そう呟いた時に姉御とお袋がこっちを見て笑ったのはなぜなのだろうか……

 




後書きオマケ

ゆるゆる第五次聖杯戦争

召喚

若奥様「告げる───以下略」
剣キチ「呼ばれました」
若奥様「貴方、精霊みたいだけど、何処の英霊なのかしら?」
剣キチ「鰤天で一般兵やってました。あとまだ生きてます」
若奥様「そのようね。それで腕の方は自信はあるのかしら?」
剣キチ「それなりには」
若奥様「なら、この門を護りなさい。誰も通してはいけないわ」
剣キチ「イエッサー」
若奥様「あ、そうだ。貴方、その山門に括られてるから動けな『ていやっ』……何をしたのかしら?」
剣キチ「その因果を断っただけですが、なにか?」
若奥様「…………」

相互理解

若奥様「貴方って、大変だったのね」
剣キチ「見ちゃいましたか、王女」
若奥様「見ちゃったわ。私をそう呼ぶって事は貴方も見たのね」
剣キチ「見ちゃいました」
若奥様「ギリシャ出身だけど、姉弟で逆レ夜這いは無いと思うの」
剣キチ「甥や姪だって思ってたのが全部自分の子っていうオマケ付きですよ」
若奥様「……かける言葉が見つからないわ」
剣キチ「いいですよ。王女の男運の無さもお袋バリですし」
剣キチ「最初が良かっただけ、あの人の方がマシだと思うけど」
剣キチ「あ、そうだ。契約解除をお勧めします」
若奥様「どうしてかしら?」
剣キチ「姉がですね───」
若奥様「すぐにやらせてもらうわ」

勧誘

剣キチ「ところで、王女はマスターさんと暮らせればいいんですよね?」
若奥様「ええ。あの人と添い遂げられたら、故郷に帰れなくてもいいわ」
剣キチ「じゃあ妖精郷に来ますか? むこうは神秘も溢れてますし、王女ほどの魔術の腕なら受肉、でしたっけ。それも問題なくやれるでしょ」
若奥様「いいの?」
剣キチ「ええ。問題が三つほどありますけど」
若奥様「問題について教えてちょうだい」
剣キチ「一つ、幻想種とか言うナゾ生物が闊歩してます。二つ、シリーズ人間のクズが監禁されてます。三つ、姉の追求から逃れられません」
若奥様「……どうしようかしら。三つめがキツすぎるわ」
剣キチ「行かなくてもホーミングしてきますけど」
若奥様「なにそれ、ヒド───」
モル子「来ちゃった(は~と)」
剣キチ「…………」
若奥様「…………」

再会

青王「ここにキャスターの根城か。……何者!!」
剣キチ「やあ」
モル子「久しぶりね、愚妹」
青王「はわっ…はわわっ……はわわわわぁぁぁ」
えみやん「セイバー、なんでそんな号泣してるんだ!? セイバー!? セイバー!?」

続かない

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