通しでアニメを見たり小説読んだりと時間を食いましたが、なんとか形になったと思います。
まだまだ見切り発車間は拭えませんが、ここから煮詰めて逝きたいと思います。
変身ヒーローのジーク君はどうしようか?
どうせなら、竜殺しじゃなくて鋼鉄の方になったら人気も出ただろうに……
剣キチさん一家ルーマニア滞在記(1)
ルーマニア旅行記 1日目
妖精郷はいいところである。
空気は美味いし自然は豊富。
取れる食材だって栄養価が満点で、気候だって過ごし易い。
幻想種という危険生物が
さて、そんな妖精郷にも欠点というものが存在する。
それは外界に出るのがとても面倒くさいという事だ。
世界の裏側という現実世界とは隔絶された空間なので、当然といえば当然なのだが。
それでも旅行一つも気軽にできないというのは、住人としては思うところがある。
とはいえ、これもまた世界の在りようというモノ。
文句を言っても仕方が無い。
愚痴を連ねたものの、そういった不便さを回避する手段だって無いワケではないのだ。
俺が修めた神仙術の縮地法もその一つ。
地脈・龍脈と呼ばれる星の血管に乗って目的地まで跳ぶこの技なら、面倒な手続きなしで現世に行く事も可能だったりする。
などと書けば便利極まりない技に聞こえるだろうが、この技も何気にクセが強い。
地脈に乗る関係上、制御が滅茶苦茶難しいのである。
ちょっとミスるとワケの分からない場所にカッ飛ぶハメになってしまう。
しかも妖精郷は世界の裏側という事で、世界の境目というモノがとっても緩い。
地脈の方も割と混線してやがるので、やらかすと正規の手続きの数倍面倒な事になるのだ。
……今のように。
まさか家族全員で現世のルーマニアに放り出されるとは思わんかった。
切っ掛けはモードレッドのワガママだった。
精神的にも肉体的にも全く成長しないウチの次女は前回のハワイに味を
妖精郷は時間の経過というものが無い世界だ。
基本スローライフなので、外界の刺激を味わったあの娘が飽きたと言い出す気持ちもわかる。
しかし俺達は神仙だったり女神の分霊やその子供達と、神秘が枯渇し環境汚染が進んだ現世の環境とは相性が悪い。
俺のように環境適応の修行を
前回のハワイだって、結局2日目にはガレスやモードレッドはバテてたし。
そういうワケなので諦めてもらおうとしたのだが、ここで待ったをかける者がいた。
ヴォーティガーン陛下支援組織『フェアリー・ブレイバー』技術長であるニニューさんである。
彼女は妖精郷の平和を護る為に、日々陛下の装備の魔改造……もとい、強化に心血を注いでいる女性だ。
ちなみに、そんな彼女のマイブームはジャパニメーション。
ロボット物のアニメを見ては目を輝かせている光景には、不穏なモノしか感じない。
……陛下には、是非とも強く生きていただきたい。
勇者的パワーアップがウチの息子たちに向いたら、ノリノリな長男次男はいいとしてもアグラヴェインの胃がヤバい。
話を戻そう。
彼女は妖精郷の住人が外界で活動できるシステムを構築していたらしく、そのモニターになってほしいと言って来たのだ。
聞いた話だと妖精郷の神秘とエーテルが礼装を通して装着者に流れ込むモノらしく、これを付けていれば姉御もスケールダウンする必要が無いそうな。
渡された礼装は俺とギャラハッドはブレスレッド。
姉御は指輪でガレスとお袋さんはネックレス、モードレッドはオモチャみたいなゴツイ腕時計だった。
ちなみに息子たちに関しては、少し前に行った義体のアップデートの際に同じ機能を付けていたので不要だとか。
なんかモードレッドだけ色々説明されていて、それを聞いていたあの子の顔が滅茶苦茶輝いてたんだがなんだったのだろうか?
本人に聞いても『ニニュー姉ちゃんとの秘密なんだ!』って言って教えてくれないし。
そんな感じで現世での活動の問題も解消されれば、こちらとて可愛い娘の願いを断るわけにはいかない。
お袋さんの希望で行き先は日本の京都と決まり、いざ出発と相成ったわけだ。
しかし、ここでモードレッドがやらかした。
礼装を貰ったのが嬉しかったのだろう、縮地のツメに入っていた俺に跳びついてしまったのだ。
結果、当初予定していた目的地から大幅にズレて、俺達はルーマニアに来てしまった。
モードレッドの件は姉御とお袋さんが怒ったからいいとして、どうもこの街の空気は不穏だ。
なんか白い制服を着た連中が幅を利かせているし、住民たちも怯えているように見える。
初っ端から波乱ずくめの家族旅行だが、どうなるものか。
神は信じてはいないが、みんな怪我無く帰れる事を祈っておこう。
ルーマニア旅行記 2日目
いきなりですが、トゥリファス在住のみなさん、ウチの娘がごめんなさい。
到着当初は流石に戸惑いを隠せなかったが、来てしまった以上は仕方が無い。
気分を一新した俺達は用意していたドル紙幣を両替して
俺達が足を踏み入れたこの街は観光名所こそ少ないものの、中世の町並みが遺された異国情緒あふれる場所だった。
もっとも、この評価には『昼間は』という制限がついてしまうようだが。
礼装も問題なく効果を発揮し、家族総出で観光を楽しんでからホテルで寛いでいたところ、ガレスとモードレッドがお菓子を買いに行くと言い出した。
二人共普段は夜に出歩くなんて習慣は無かったのだが、旅行のテンションと普段は食べられない甘味の誘惑に負けての事だろう。
とはいえ、妖精郷と違ってここは現世である。
むこうなら夜中に外に出たとしても、せいぜいが幻想種に絡まれる程度で済む。
しかし、ここではどの様な危険があるかは分からないのだ。
世間慣れしていない子供二人を出歩かせるのは、あまりにリスクが高い。
というわけで付き添いとして俺とガヘリスが同行する形で外に出たのだが、案の定ドンパチに巻き込まれてしまった。
町並みに居並ぶゴーレムと白に統一された制服に身を包んだ怪しげな集団。
それに対するはゴツい鎧に身を包んだ騎士に、レザーの上下にグラサンとスジ者としか思えない格好のおっさん。
騎士は
またしても『聖杯戦争』絡みか、とため息をついていると、横にいたガレスの甲高い声が木霊した。
俺にガヘリス、モードレッドはそうでもなかったが、純正お嬢さまとして育てられたあの娘にはいきなりの鉄火場は刺激が強すぎたらしい。
素早く娘を抱きしめて惨状から目を
なんとガレスの恐怖の感情に反応した礼装が、妖精郷で飼っている幻想種を次々と呼び出したのだ。
庄之助と並んでウチのペットの最古参であるブラックハウンドのコロをはじめ、ビーバーの妖獣であるアーヴァングに妖精の番犬といわれるクーシー。
猫妖精のケットシーに『ガレスちゃん親衛隊』の異名を持つデュラハン騎士団まで。
ガレスが放つ怯えの感情を感じ取った彼等は、情け容赦無く修羅場の配役達へと襲い掛かった。
アーヴァングが鉄砲水で相手を怯ませると、虎や獅子に負けない体躯に魔剣の刃をも弾き返す毛を纏ったコロが先陣を切って襲い掛かる。
そしてそれに合わせるようにクーシー達がゴーレムを薙ぎ倒し、デュラハン騎士団がハルバードを振り回しながら制服組を蹂躙する。
ちなみにクーシーは牛並みに大きな犬で、群れになればワイバーンやオウルベアも瞬殺することが可能だったりする。
あとガヘリス、妹たちが心配なのはわかったからブルドーザー召喚すんな。
あっという間に制服組は全滅し、残るは筋者のおっさんと騎士だけになった。
まあ、おっさんは兎も角サーヴァントの方は、『ガレスちゃんの愉快な仲間達』による猛攻とガヘリスの轢き逃げアタックを喰らって、相当に消耗していたようだが。
一定の距離を置いて包囲陣を築き上げ、2人を中心にしてゆっくりと回りながら隙を伺う幻想種達。
そんな中、膨大な魔力を推進力にして騎士が、赤雷と共に幻想種たちの囲いを突破してきた。
奴の狙いは幻想種を束ねているように見えるガレスだ。
雄叫びを上げながら、騎士はウチの長女目がけて剣を振りかぶる。
当然、俺がそれを見逃すわけがない。
抜き打ちの袈裟斬りで奴の剣を弾き飛ばすと、そのまま刃を跳ね上げて右切上の一撃を叩き込む。
ニニューさんが構築した妖精郷のネットで知った『燕返し』
振り下ろした刀の勢いを受け止めて跳ね上げるという手首の強さが求められる連撃だが、慣れてみるとなかなかに使い勝手のいい技である。
断ち斬られた鎧の破片を撒き散らしながら、来た道へと吹き飛んでいく騎士。
『セイバー』という筋者のおっさんの叫びも虚しく、石畳に叩き付けられた奴は破片を撒き散らしながら地面に沈んだ。
取り敢えずトドメを刺そうかと奴に近づいたのだが、砕けた兜から現れた顔に思わず頭を抱えるハメになった。
何故なら、奴の顔がモードレッドを少し成長させたような少女のそれだったからだ。
第四次で『セイバー』に出会った経験から、ノックダウンさせたのが平行世界のモードレッドと当たりを付けた俺は、念話で姉御に連絡。
二人で話し合い事態を把握する必要があると結論付けた俺達は、情報源として筋者のおっさん『獅子劫界離』をホテルに連れて行くことにした。
獅子劫のほうも、奥の手であるサーヴァントが一瞬で返り討ちに遭った事で勝ち目が無いと踏んだのか、大人しく従ってくれた。
二日目にして厄介事が飛んでくるとか、マジで勘弁して欲しい……。
これが人理や阿頼耶識の仕業だとしたら、微塵斬りにするしかない。
◇
トゥリファスの一角にあるこの街で数えるほどしかない観光客用のホテル。
その一室でアルガはベッドで眠る『セイバー』を見張っていた。
手持ち無沙汰に握っている倭刀の鯉口を親指で微かに上げ下げしていると、軽く上着の裾を引かれる感覚がした。
ベッドから目を切って足元に向けると、そこには眠っている人物を幼くしたような少女がクリクリとした翡翠の瞳でアルガを見上げている。
「父上ー。これって誰なんだ? ガレスねーちゃんに似てるけど、オレの従姉か?」
殺し殺されの修羅場に巻き込まれた事など全く気にしていない風なモードレッドの言葉に、アルガの顔に苦笑いが浮かぶ。
まあ、ちょくちょく幻想種を狩って来ている事を思えば、こちらが思うよりも命のやり取りには慣れているのだろう。
「まあ、似た様なもんだな。あっという間にノしたから、目が覚めると暴れるかもしれん。お母さんのところに行っていなさい」
「母上はおっさんと難しい話をしてたから、いても面白くないぞ。むこうに行くよりも父上と一緒の方がいい」
頬を膨らませて抱き着いてくる娘の頭をアルガはクシャクシャと撫でてやる。
姉やガレスよりも少し癖のある金糸の髪は相変わらず撫で心地が絶妙だ。
父親としてはそろそろ親離れしてほしいところだが、女神と神仙の子のうえに時間の流れの無い妖精郷に居を構えているのだ。
まだまだ時間が必要だと考えるべきだろう。
(やれやれ。ガレスを含めても孫の顔を見るのは当分先になりそうだな、こりゃ)
軽く嘆息しつつも、陽だまりの猫のように目を細めているモードレッドを見ていると『まだ先でいいや』と考えるあたり、この男もなかなかに親バカである。
そんな感じで続いていた親子のスキンシップは、ベッドから発した身じろぎする音で終わりを告げた。
「テメェは……ッ!?」
小さいうめき声と共に双眸を開いた少女騎士『セイバー』は、アルガを見るなり勢いよく立ち上がる。
そしてすぐさま武装しようとするが、全身に纏った魔力は武具へと変化する前に敢え無く霧散してしまう。
「武装できねえだと!? おい! なにしやがった!?」
「まあ、落ち着きな。こっちは子供も連れてるから、物騒な事ができないようにしたんだよ」
言葉に釣られて、アルガの傍らから自身を見上げるモードレッドに目をやるセイバー。
不思議そうに首を傾げるその姿に堪った不満を吐き出すようにため息を吐くと、彼女はドカリとベッドの上に腰を下ろした。
「テメェ等はいったい何なんだ? 街中で化け物ブチ撒けた女の仲間なんだろ」
「ああ、あの時は娘が悪かった。なにせ箱入りで育てたもんだから、血生臭い場面には耐性が無いんだ」
「んな理由で一々あんな真似されたらタマンねーよ。それで?」
「何者だと聞かれてもな。ただの観光客としか答えようがないんだが」
「ふざけんなよ……! テメエ等揃いも揃って高位精霊じゃねーか。それが観光客だぁ? 馬鹿にしてんのか!?」
「そいつは偏見だな。精霊だって身内はいるし、たまには家族サービスを頑張っても不思議じゃないだろ」
「どんな精霊だ、そりゃ!? ……もういい。ところで、オレの連れは何処にいるんだ?」
「黒いおっちゃんなら、母上と難しい話をしてたぞ」
「どうも厄介事に巻き込まれたみたいなんでな。事態を把握する為に事情を聞いてたのさ」
アルガの返答にセイバーの目が鋭さを増す。
「妙な真似はしてねえだろうな?」
「もちろんだ」
向けた威圧も何処吹く風と意にも介さないアルガに、セイバーは不機嫌さが増した顔で舌打ちを打つ。
張り詰めているのか弛緩しているのか、どちらとも言えない微妙な空気の中、不意にアルガはコメカミに人指し指を当てた。
『アルガ、そっちはどうかしら?』
脳裏に響くのは、マスターから情報を引き出している自身の妻の声だった。
『セイバーが目を覚ました。姉御の結界のお蔭で、ホテルの中で大立ち回りをせずにすんだよ』
『そう。こっちはマスターさんにこちらの事情を話し終えたところよ。暴れる心配が無いのなら、連れて来てくれる?』
『了解だ』
モルガンの声が途絶えたのち、アルガは自身を睨むセイバーへにこやかに笑みを向けた。
「それだけ動けるなら問題ないだろう。連れのところへ連れて行ってやるよ」
そう伝えてアルガは部屋の出口に向けて踵を返す。
視界の端にセイバーが青い顔で目尻に涙を浮かべていたのが映ったが、気のせいだと思うことにした。
なんだかんだ言っても再び背に張り付いた娘と同じ人物だ。
友愛を込めた笑顔に怯えるなんて、あろうはずが無いと。
だがしかし、彼は知らない。
その渾身の笑顔は、どこぞの世界で魔王になったり英雄になったりと忙しい『善悪相殺』の剣冑を駆る男が浮かべる『悪鬼スマイル』と同じである事を。
「母上ッ!? それにガウェインにガヘリス! アグラヴェインまでッ!?」
ホテルのリビングに入った途端、セイバーは驚愕の声を上げた。
それを耳にした獅子劫は頭を掻きながら深々とため息を吐く。
「……お前さんがそういうなら、彼女の話は本当って事になるな」
「どういう事だ、マスター!?」
掴みかからんばかりのモードレッドに獅子劫は『目の前のモルガン達は平行世界の存在である事』『彼等は聖杯戦争とは何の関係も無く、本当に旅行でこの町を訪れた事』を語った。
「そういう事よ。初めまして、サー・モードレッド。あ、聖杯戦争中なんだから、セイバーと呼んだほうがいいかしらね」
にこやかに微笑むモルガンに、呆然とした顔で『信じられねぇ』と言葉を零すセイバー。
すると父親の背中にしがみ付いていたモードレッドが、スルスルと降りてきて母親の前に立った。
「母上、モードレッドはオレだぞ」
「このお姉さんもモードレッドというのよ。でも同じ名前だと大変だから、彼女の事はセイバーって呼ぶわね」
プクッと頬を膨らませて不満をアピールする娘に、少し苦笑いを浮かべながらゆっくりと頭を撫でるモルガン。
セイバー視点では絶対にありえない光景は、彼女の表情をさらなる混沌へと導いていく。
「ちょっと待て。じゃ、じゃあそのチビが……」
「そう、こっちのモードレッド。ウチの可愛い末娘よ」
「母上、オレはカッコいいって言って欲しい」
「女の子なんだから、可愛いで我慢しなさいな」
気の抜けるような親子の会話を耳にしながら、ついにセイバーはその場に崩れ落ちた。
これがモルガンの作り出した幻術だとしたら、どれだけ救いがあるだろう。
だがしかし、周りから感じるサーヴァントを遥かに超えた霊格の高さが淡い希望を否定する。
モルガンや自分が家族をしている光景が、ここまで精神的に破壊力があるとは……。
「おい、セイバー! しっかりしろ!?」
「マスター、これは夢だよな。きっと、悪い夢なんだ……」
「気をしっかり持て、セイバー! 悲しいけど、これは現実なんだ!!」
さり気なく獅子劫が自身のサーヴァントに止めを刺している頃、アルガはモルガン達に長女の様子を尋ねていた。
「ガレスの調子はどうなんだ?」
「心理的にショックが大きかったのか、先程まで別室で泣いていました。今はお婆様が付いています」
「悪い、兄貴。オレが付いていながらこんな事になるとは……」
「ガヘリス、貴様が気に病む必要は無い。戦場に巻き込まれて傷を負うならともかく、その光景を視界に納めないようにするなど不可能だ」
ガウェインが暗い表情で答えを返し、落ち込むガヘリスをアグラヴェインが慰める。
兄弟全員がアグラヴェインを嫌っていたというセイバーの円卓では有り得ない光景に、彼女はペタリと床に伏せってしまう。
「そうか。荒事とは無縁で育ってきたあの子には刺激が強すぎたみたいだな」
「ええ。心に傷が付いていないといいけど……」
モードレッドを抱きしめながら顔を伏せるモルガンに、アルガは小さくため息を吐いた。
せっかくの旅行が台無しになってしまった。
こうなれば、せめて元凶に文句の一つも言ってやらないと気がすまない。
「姉御、そこの旦那から聞いた話を聞かせてくれるか」
「……わかったわ」
アルガの言葉を受けて、モルガンは獅子劫から得た情報を紡ぎ始める。
このトゥリファスでは魔術師と聖杯によって召喚された14騎の英霊が、赤と黒の二つの陣営に分かれて聖杯戦争が行われているという。
黒の陣営は魔術協会から独立を目論むユグドミレニアという魔術師の一派が、そして赤の陣営はそれを阻止せんとする魔術協会の精鋭が担っている。
そして、この街はユグドミレニアの本拠であり、日本の冬木から持ち込まれた大聖杯があるのだという。
「なるほど。俺達はその『赤』と『黒』の抗争に巻き込まれたって事か」
「そうなるわ」
ふむ、と呟いたアルガは、必死にセイバーを励ましている獅子劫へと視線を向ける。
「そこの旦那。アンタ、そのユグドミレニアって奴等の本拠がある場所を知ってるか?」
「え? ああ……この街の離れにある古城がそうだったはずだ」
突然の問いかけに思わず口を滑らせてしまう獅子劫。
それを見咎めたアグラヴェインは、父が浮かべているとてもイイ笑顔に嫌な予感を憶えつつも問いを投げる。
「……父上、いったい何をするおつもりなのですか?」
「観光客がいるような場所でドンパチを始めるような常識知らずには、一発ガツンとクレームを入れようと思ってな」
『やっぱり……』
命知らずなんてレベルじゃない発言にセイバー主従は呆気に取られ、モードレッドを除く家族全員が天井を仰ぐのだった。