7話目です。
そろそろネタがなくなってきた。
いやいや、何とか頑張ろう。
三度目人生記(32年3ヶ月16日目)
アルトリアから手紙が来た。
以前から組織していたブリテン近衛騎士団が揃ったらしい。
そのお披露目会の招待と、できれば非常勤で構わないので剣術指南役をお願いしたいとの事。
妹よ。
今の兄は一介の浪人というか、ぶっちゃけ無職の道楽者ですよ?
そんなしょっぱい人間を指南役に据えたら、援助してる諸侯も騎士も納得しないと思うのだが。
指南役云々は置いておくとして、近衛騎士にはガウェインやガヘリスも名前を連ねているようだ。
我が子の晴れ舞台とあらば、見に行かないワケにはいくまい。
式はあと一ヶ月先だというし、それまでに管理者の仕事を進めておくとするか。
そういえば、これって姉御やお袋さんも連れて行ってもいいのかねぇ。
三度目人生記(32年4ヶ月17日目)
近衛騎士のお披露目に行ってきた。
代表を務めたランスロットを初めとして、精鋭ぞろいだったと思います。
姉御やガレス達はそんな中に顔を連ねるガウェイン達の姿に感動していたが、俺としては正直間に合ったという安心感のほうが強かった。
うん、行くと決めた後で礼服を持ってないのに気付いたんだ。
たかが服と
それが家族全員分となればなおさらだ。
さらに言えば、ウチは素浪人やってた俺を除けば全員元王族である。
中途半端なものは着せられません。
そんなわけで第二回ピクト人虐殺大会が開催される事になってしまった。
うん、首一つにつき金貨一枚なんて値がついたあいつ等が悪い。
式も滞りなく終わって来賓を交えた会食になったのだが、そこでランスロットとベイリンに声を掛けられた。
ランスロットからは命の恩人に剣を向けた事への謝罪と、剣術指南を楽しみにしていると言われた。
ベイリンにいたってはすでに師匠呼びである。
落ち着け小僧共、まだ受けるとは言ってない。
なんてやり取りをしていると、司会役のベディヴィエールから名指しで壇上に呼ばれた。
身に覚えのないままに行ってみると、高名な剣士扱いされた上に演武を披露するハメに。
『どういうことやねん!』という意思を込めて主催者席に目を向ければ、そこには申し訳なさそうにするアルトリアとドヤ顔するマーリンの姿が。
ハメられた事を理解した俺は演武にマーリンが参加する事、そして後でサシで会談する事を交換条件に出してやった。
浮かべていた笑みが一気にしかめっ面に変わったマーリンに、逆にドヤ顔をカマすのはなかなかオツなものである。
演武の内容はマーリンの放つ魔術を俺が木刀で打ち落とすというもの。
三発から始まって徐々に数を増やしていくのだが、10発を超えた辺りから向こうもムキになり始めたようで、最後には周囲を囲む形で30発近い弾が飛んできた。
さすがにこれには俺も驚いたが、全弾同時に当たるわけではなし。
身近なモノから捌き続ければ、危なげなく対処できる。
悲劇を予測していた来賓の悲鳴が歓声に変わる中、壇上を降りた俺は今にも大魔術をぶっ放しそうな顔の姉御を
魔力弾に殺気がなかった事を思えば、場を利用した暗殺という線は無い。
ただ単に熱くなっただけだろう。
そのあとは諸侯からの剣術指南やら仕官の勧誘がひっきりなしで、会食など楽しむ暇もなかった。
宴も終わり、来賓や家臣の目が届かない場所で頭を下げるアルトリアを宥めた俺は、マーリンとのサシの話し合いに臨んだわけだ。
何やかんやと言葉を交わして分かったのは、あいつが人自体は好きであること。
ただ、千里眼という特異な能力を持っているのと夢魔の血が混じっている為に、人間の感情が理解できていないこと。
そして、奴の目的は『ハッピーエンド』を見ること。
もっとも、その『ハッピーエンド』とは全体的な意味であり、それを構成する人間の幸福については度外視されているようだが。
『人の描く美しいものが見たい』
そう奴は口にするが、美しいと思う基準が一般とズレているような気がしてならない。
そう考えると『ハッピーエンド』とやらも眉唾物だ。
その内容を奴自身の口から明言されていないのだから。
他と認識が違うという事は、当人に悪意がなくとも周囲に悪影響を振りまく事が多い。
身体を機械に挿げ替えたサイバネ武術家の所業を目にし、また己自身も人を捨てた事がある俺はそれを良く知っている。
ブリテンに関わっている身内は三人、か。
……剣術指南の件、突っぱねるワケにはいかなくなったかもしれん。
三度目人生記(32年4ヶ月19日目)
今日は色々と大変だった。
ブリテンの宮殿で一泊したあと、俺はアルトリアに剣術指南を引き受ける事を伝えた。
条件は二つ。
一つは指南は週一回だけであること。
これは管理者の仕事もあるし、家族も心配なので山から離れたくないからだ。
なんかこっちに入り浸ると姉御がヤバい気がするし。
そして二つ目は、指南の翌日はアルトリアが休みを取って、俺と一緒に山に帰る事。
昨日マーリンがポロリと
もうマジでアホかと。
過労死経験者から言わせて貰うけど、そんな生活してたら肉体的にも精神的にもイカレて死ぬ。
というワケで週に一回、あいつにはアーサー王ではなくアルトリアという一人の娘に戻って、まったりしてもらいます。
休養先は人里離れた山ではあるが、ウチにはガレスという超絶癒し兵器が配備されているのだ。
アルトリアをさらにゆるふわにした10歳児が黒い毛玉に囲まれた姿は、マイナスイオン垂れ流しである。
『犬姫様』の二つ名は伊達ではない。
是非とも黒ワンコに埋もれながら日ごろの疲れを癒してもらいたい。
条件を提示した当初、アルトリアは難色を示していたが『イヤなら指南役は受けん』と強く押せば了承してくれた。
というか、周りの奴等が無理やりにでも休ませんと、責任感の強いタイプや自分を追い込むような奴は自発的に休む事はないんだからな。
この事を幕臣に伝えると、ケイ卿が複雑そうな顔で礼を言ってきた。
長年アルトリアの義兄として接してきたのだから、ポッと出の俺がチャチャを入れるのが受け入れがたいのだろう。
彼には二人きりになった時に『こっちは
最後にガウェイン達に激励の言葉を残してブリテンを後にしたのだが、山に戻ると黒の武具を纏った一団が待ち構えていた。
恨まれる筋は山とあるので『どこぞの組織の報復か』と警戒していると、一団の中から黒いフルプレートを纏った老人が現れた。
白髪と共に鎧と同色のマントをたなびかせる老人マッチョ。
なんとこの男、卑王ヴォーティガーンだったのだ。
傭兵としてサクソン人を入植させて、ブリテン島統一を目指す野望の男。
何の用かと問えば、俺を自軍に勧誘しに来たという。
立ち話はなんなので本人と護衛を家に招いて話を聞くと、驚く事にこの王様は管理者の事やブリテン島の裏事情まで熟知していたのだ。
曰く『自分は白い竜の代弁者であり、人間からブリテン島の神秘を護る者である』
彼の目的は島で生まれた神秘を宿した
そのうえでこの島を結界で覆い尽くし、人の立ち入る事のできない秘境にするのだという。
姉御が予測したマーリンの目的とほぼ変わらない計画に唖然となったが、気を取り直して話を続けた。
俺を勧誘する理由については、管理者である事に加えて人を逸脱し仙人へと昇華したこと。
そして世界の法則から逸脱した魔剣を振るうところに目をつけたらしい。
失礼な。
俺の剣はそんなイタい妄想の産物ではなく、ごくごく普通の武術である。
と反論するとヴォーティガーンに加えて姉御とアグラヴェインから、いかに異常であるかを
ヒデェ。
あと、ヴォーティガーンの話によるとこのブリテン島は神秘的な意味で地球のヘソのようなものであり、ここを押さえるか否かで今後の世界の様相を変えることも可能なんだとか。
具体的には適切な場所で適切な術式を行えば、神代のように神秘溢れる世界に変える事もできるらしい。
……うん。
魔術やら神秘やらが難しすぎて、剣キチにはついていけません。
もう俺の役目は邪魔する奴も邪魔しない奴もぶった切るでいいよね。
匙を投げたくなるのを我慢して何とか話を聞いていると、この人はこの人なりにこの島を護ろうとしてるのが分かった。
彼の居城は妖精の立てたものであり、神秘薄れ行く世界から追い立てられるように巨人や幻想種が集まってきているらしい。
王は
『世界は人にその所有権を託そうとしている。だからと言って、今まで生きてきた者達の居場所が奪われてよいワケがない! ブリテンは世界に否定されたまつろわぬ者達が集う安住の地であるべきだ! 断じて人の手に
消え行くモノ達の代弁者の声を聞いて、頭に浮かんだのは前世のクソッたれな自然だった。
大気に立ち込めたスモッグが太陽の光を奪い、汚染物質を多量に含んだ酸性雨が植物を枯らす。
土は放射能を始めとした多種多様な人工物によって腐臭を放ち、世界中から動物は姿を消した。
店先に並ぶのはクローン培養され、科学によって保護された環境で育てられた人工の生物だ。
上海の下水道には汚染物質によって奇形になったネズミが腐るほどいて、食うものに困った奴はそんなモノにすら齧り付く。
あの世界を知っているから思う。
ヴォーティガーンの試みはきっと成功しない。
人間は強欲だ。
仮にこの島を結界で覆ったとしても、文明が発達し技術が進歩すれば必ずブリテン島にも乗り込んでくる。
神秘を科学で覆し、魔術を技術で凌駕して。
彼らは諦める事を知らない、折れる事を知らない。
目的を遂げる為ならば、それこそ先祖の墓でも掘り返して利用する。
だからこそ人類という種はこの星を制覇した。
そして、この星を食い潰すのだ。
俺はヴォーティガーンの誘いを断った。
彼の行いを間違っているとは思わないが、その先に未来が見出せなかったからだ。
こちらを辞する際、彼は俺にこう言った。
『私が倒れたときは、まつろわぬ者達を頼む』と。
卑王と呼ばれ、暗愚と島の民から嫌悪される男。
やり方は決して褒められるものではないが、彼もまた島の未来を憂う者なのだ。
三度目人生記(32年5ヶ月21日目)
剣術指南が始まって約一ヶ月が経った。
打ち払いや防御にプラスして受け流すという防ぎ方を主眼に訓練中だ。
腕の立つ者には接近戦での頂肘や体当たり、足技なんかも教えている。
騎士の中でも飛びぬけているのはランスロット、後はベイリンか。
息子二人は出来て当然として、アルトリアが不器用だった事には驚いた。
まあ、真面目なうえに負けず嫌いなので、そう掛からずに技をマスターできるだろう。
あと、休日作戦はけっこう上手くいってる。
姉御のお古が取ってあったので、それに袖を通して女の子として過ごしてもらっている。
ガレスはアルトリアのことが気に入ったようで来る度に『ねえさま、ねえさま』と懐いている。
アルトリアもまんざらではないようで、気付けば『犬姫様2号』が出来上がっていた。
お袋さんも積極的にコミュニケーションを取ってくれてるので、アルトリアのほうも少しずつだが自然に接するようになってきたと思う。
まあ、こうやって一週間に一回でも癒し要素があれば、あの娘も少しは楽になるだろう。
あと、アルトリアがコロの生んだ白い仔犬を一匹持って帰っていた。
なんでも宮殿で世話するらしい。
カヴァスと名付けて随分と可愛がっている。
一応言っておくが、それってブラックハウンドだからな。
噛まれないように気をつけなさい。
三度目人生記(32年6ヶ月15日目)
姉御が身篭ってました、現在6ヶ月です。
相手は誰だって?
俺に決まってるだろ、ド畜生が!!
あ、畜生は俺でした。
あの暴露で色々と吹っ切れちまったんだよ、悪いか!?
つーかな、姉御は絶世の美女なんだぞ!
スタイルもめっちゃ良くて、胸もバインバインなんだ!
そんな女性に毎日誘惑されてみろ、我慢できるわけねーだろ!!
式とか絶対無理だから、せめてと思って花嫁衣裳と指輪も買ったっつーの!
姉御が無茶苦茶泣くから大変だったわい。
どう考えても泥沼にハマってるけど、そんなのはもう今更だ。
こうなったら、底までテメエで潜水してくれるわっ!!
ウチの家族は絶対に幸せにしてやるからな!!
三度目人生記(32年11ヶ月21日目)
えー、五人目の子宝に恵まれました。
名前はモードレッド。
ガッツリ女の子です。
ガレスは生まれてきたこの子を見て、ワンコと一緒に小躍りしてました。
それとこの知らせを聞いたガウェインが、ランスロットに模擬戦で勝ったそうです。
長男よ、嬉しいのは分かったから聖剣を松明代わりにして走って帰ってくるな。
夜道で見たとき、新種の妖怪かと思ったわ。
姉御も健康上問題無いみたいだし、本当に安心した。
五人目だけど、自分の子って意識して待つの初めてだったから無茶苦茶心配したわ。
神様はいやな予感がするんで、仏様に頼みます。
この子の人生が幸せでありますように。
後書きオマケ
ゆるゆる第五次聖杯戦争
暴露
青兄貴 「礼装付けてなかったら即死だった」
剣キチ 「出会いがしらに人の家族をクソなんて呼ぶからだ」
青兄貴 「あ~、悪かったよ。しかし、変わったなモリガンの奴。俺が知ってる時はもっと性格キツかったのに」
モル子 「正確に言えば分霊だからよ。あと、本体も私も貴方なんかに興味ないから。とっとと消えなさい、駄犬」
青兄貴 「犬って言うな! つーか、お前に付きまとわれないのは嬉しいけどよ、理由はそこの坊主か?」
剣キチ 「坊主って歳じゃないなぁ。これでも1500歳超えてるし」
モル子 「歳の話題は禁則事項よ、剣キチ」
剣キチ 「アイサー」
青兄貴 「しかし、モリガンを堕とすとはお前さんもやるじゃねーか。けっこう女で遊んだクチか?」
剣キチ 「嫁さんオンリーですがなにか?」
青王 「そうです! 兄上は姉上に純潔を奪われてからは夫婦円満に過ごしているんです! 貴方と一緒にしないで貰おう!!」
剣キチ 「人の秘密を暴露する悪い口はこの口かなぁ?」
青王 「いひゃいひゃい! なにふぉしゅるんれふか!? ほっぺたひっふぁらないでくらはい!?」
哀愁
青兄貴 「お前、もしかして食われたのか?」
剣キチ 「姉御の情愛爆弾を腰に食らってしまってな……」
モル子 「さすがは旦那様、一発必中だったわ」
剣キチ 「やめて……」
青王 「じゃあ、その時にガウェインが出来たのですね!!」
剣キチ 「…………」
青王 「はわぁぁぁぁっ!? アホ毛を、アホ毛を引っ張らないでください!?」
えみやん「……えっと、二人は姉弟じゃなかったっけ?」
剣キチ 「えみやん少年、察するんだ」
えみやん「アッ、ハイ」
青兄貴 「ちょっと待て、聖杯の知識だとガウェインってロット王とか言う奴の息子だろ?」
モル子 「馬鹿ね、偽装工作よ」
剣キチ 「その偽装、俺も見抜けなかったんですが」
青兄貴 「ひでぇ」
主
若奥様 「その話題はやめて上げなさい。剣キチが心労で死ぬわよ」
青王 「貴様、キャスターか!?」
剣キチ 「どうもオーナー」
若奥様 「せめてマスターと呼んでちょうだい。初めましてかしらね、セイバー、ランサー。」
青兄貴 「チッ、こっちも魔女かよ。つくづくツイてねー」
若奥様 「剣キチ、ぶった切ってしまいなさい」
剣キチ 「さっきやりましたが?」
若奥様 「もう一度よ」
青兄貴 「へっ、二度もやられるかよ! こっちには矢避けの加護があるんだ!!」
剣キチ 「我が一刀は『意』に先んじて鞘走り、無心の内に敵を斬る。───つまり、回避は出来ん」
青兄貴 「ちょっ、まっ……いってぇぇぇぇぇぇっ!?」
青王 「ランサーが死んだ!」
えみやん「この人でなしぃ!!」
モル子「ざまぁwww」
面談
青兄貴 「危ねぇ……仕切りなおしが無かったらあの世行きだった」
若奥様 「なによ、しぶといわね」
青兄貴 「生き汚いのが取り得なんだよ。つーか、なんなんだそいつの太刀は。ルーンの効果ごとばっさりイかれたぞ」
剣キチ 「因果が断てますので(通常攻撃・強化解除付与100%)」
若奥様 「何度見ても理不尽すぎるわ」
青王 「私のカリバーンを斬りおとしたくらいですから(涙)」
モル子 「泣くくらいなら、自虐ネタなんてするんじゃないの」
えみやん「セイバー……」
剣キチ 「ところでオーナー、何か御用では?」
若奥様 「そうだったわ。私のマスターを紹介するわね」
クズッキ「どうも、高校で教師をしているクズッキです」
剣キチ 「奥方様に雇われている剣キチです」
クズッキ「…………」
剣キチ 「…………」
クズッキ「…………苦労、なさってるのですな」
剣キチ 「…………そちらも」
モル子 「どういう意味かしら!?」
若奥様 「ソーイチローさま!?」