剣狂い転生漫遊記   作:アキ山

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 新年、明けましておめでとうございます。

 お待たせしました、本編更新です。

 グダグダ具合が半端ない内容ですが、何とかアポクリファを閉められそうです。

 いやはや長かった。

 これでようやくFGOに箸を付けられそうです。

 一年以上も書いてこんな有様な拙作ですが、どうか今年もよろしくお願いします。

 PS 元旦にあげるのが間に合わなかったのは年初めの運試しでウチのカルデアに乗り込んできたエロ尼の所為。

 イリヤか水着ネロを狙っていた当方としては、年明け一発目で真顔になりました。

 まあ、その後で呼符15枚と石120個で紅閻魔が来たから相殺かなと。


剣キチさん一家ルーマニア滞在記(19)

「───なるほど。事情はわかりました」

 

 堕ちた空中庭園の中枢、大聖杯が安置されている間にルーラーの声が響き渡る。

 

 こちらから事情の説明を受けた黒のバーサーカー主従とルーラー一行は、互いに眉を潜めて考え込んでいる。

 

 聖杯大戦の最終局面において浮上した『小聖杯を願望器(いた)らしめる為の魔力不足』という問題。

 

 天草四郎曰く、これを解決するにはサーヴァント一体の犠牲が必要となるそうだ。

 

 本来ならこんな事は問題にすらならない。

 

 聖杯戦争はたった一人の勝者を決めるバトルロイヤルであり、赤の陣営が壊滅したからには黒の陣営やルーラーも敵でしかないからだ。

 

 一切合切皆殺しにして聖杯にくべれば、魔力なんてお釣りがくるだろう。

 

 理屈ではその通りなのだが、関わっているのが生者・死者を問わず人間である以上はそう単純にはいかない。

 

 一度は(くつわ)を並べた相手を『はいそうですか』と手に掛けるのは、普通の感性を持つ者なら気が引けて当然だ。

 

 特に今回は一人の子供の将来がかかっている。

 

 さんざっぱら命のやり取りをしておいて今更だが、出来れば裏切り等の汚い策略は無しでいきたいものである。

 

 まあ、いざとなった場合は躊躇するつもりはないが。

 

「まあ、これもソースは天草四郎の言葉だけだから、実際にそうだと────」

 

「そういう事であるのなら、私がこの身を捧げます」

 

 こっちの話がまだ終わっていないのに、あっさりと生贄に立候補するルーラー。

 

 こちらが唖然としていると、今度はアストルフォ嬢とジーク少年が声を上げ始める。

 

「ちょっ! ちょっと待ってよ、ルーラー!!」

 

「そうだ! 君が犠牲になる必要なんてないだろう!」

 

「いいえ。私は裁定者、聖杯戦争が正しく運営される為に召喚されたサーヴァントです。本来ならマスターとサーヴァントが最後の一人になるまで戦う必要がありますが、此度の聖杯戦争はそうするまでも無く勝者は決まっています。ならば、これ以上の無駄な犠牲を避ける為にも、私がその責を負うべきでしょう」

 

「しかし────」

 

「聞き分けてください、ジーク君。これは私の使命なのです」

 

 なおも言い募ろうとするジーク少年の手を取って、説得を行うルーラー。

 

「…………バーサーカー。茶番が終わったら教えてくれ」

 

「ウー……」

 

 一見するとメロドラマの男女の別れであるかのような光景の(かたわら)らで、『やってらんねーや』と言わんばかりに携帯ゲームの電源を入れるカウレス少年。

 

 もっとも命令を受けたはずのバサ子はゲームに興味津々のようで、ルーラー達の様子などそっちのけでマスターの肩越しから画面を覗き込んでいる。

 

「あ~。君達、まずは人の話を聞こうな」

 

 何とも言えない脱力感を感じながら、あーだこーだと言い合っているルーラー陣営に声をかける。

 

 個人的には志願したルーラーの首をかっ飛ばして終わりにしてもいいのだが、それをするとジーク少年とアストルフォ嬢が襲い掛かって来るしなぁ。

 

 ジャックちゃんの新たな門出を思えばこれ以上の流血沙汰は避けたいところなので、ここは自重しておこう。

 

「まだ何か問題があるのですか?」

 

「魔力が足りんと聞いたが、それは天草四郎の証言だけの話だ。だから、実際にそうなのかを専門家に調べてもらおうって言おうとしたんだよ」

 

「聖杯の専門家ってアインツベルンの事だろ? あいつ等は第三次の後に没落して、家も断絶したって聞いてるぞ」

 

「専門家ってのはウチの嫁の事だよ。彼女はとある機会に冬木の大聖杯を精査した事があってな、その構造を全部把握してるんだ」

 

「そうなの?」

 

「そうなんだよ。───姉御、そういう事だから一度こっちに来てくれないか」

 

 アストルフォ嬢の問いに返してから念話で姉御に呼びかけると、俺の傍らに光で描かれた魔方陣が現れる。

 

 そして陣が光を放つと、その上に姉御とモードレッド、ジャックちゃんに怜霞女史、そしてアグラヴェインが姿を見せた。

 

「お待たせしました、父上」

 

「ごめんな、忙しいところ呼び出して。ところでガウェイン達の容態はどうだ?」

 

「とりあえず治療は完了したわ。念の為にニニューの所で診てもらうつもりだけど、こちらの見立てでは命に別状はないし後遺症も残らないと思う。今はお母様とギャラハッドに付いていてもらっているから心配しなくてもいいわよ」

 

 姉御の笑みから息子達の無事を知って胸を撫で下ろしていると、大聖杯の(そば)へと移動した姉御が軽く手を振った。

 

 すると大聖杯のすぐ下の床石が捲れあがり、中から見覚えのある黄金の盃が現れる。

 

「彼女がモルガン……」 

 

「なんて言うか、イメージと全然違うな。伝承だと淫蕩で邪悪な魔女って言われてたのに、逆に神聖さを感じるし」

 

「まあ、姉御は分霊とはいえ女神だからな。そう感じるのは当然だよ。……つーか、人の嫁さん捕まえて淫蕩とか言うな」

 

「あ、すみません」

 

 俺の指摘に慌てて頭を下げるカウレス少年。

 

 ここは並行世界だから姉御に妙なイメージが付くのは仕方ないのは分かるんだが、さすがに目の前で言われるのはいい気がしない。

 

 あと、アタランテよ。

 

 全部こっちに丸投げして子供達に構うのは止めなさい。

 

 一応、目の前の連中は敵だから。

 

 モードレッドとジャックちゃんを抱き上げて(とろ)けそうな顔をしているウチのサーヴァント。

 

 その姿を見ていると、そろそろ真面目に通報する必要があるような気がしてきた。

 

 英霊用の警察って番号何番だっけか?

 

 こっちで色々とツッコミを敢行していると、大小二つの聖杯を調査し終わった姉御が小さく息を付いた。

 

「たしかに、この小聖杯は魔力が足りていないわね」

 

「具体的にどのくらい足りないんだ?」

 

「天草四郎が言った通り一騎分。それさえ補充できれば、本来の使い方は無理でも願望器としてなら作用するわ」

 

「やはり。ならば、その一騎分は私が……」

 

「ダメだ、ルーラー。どうしてもと言うのなら、俺が彼に勝って聖杯の所有権を奪い取る!」

 

「ちょっ!? なに言ってるのさ、マスター! あいつは英霊でも歯が立たない正真正銘の化け物だ! たとえセイバーの力を使っても勝てっこない!!」

 

「だが、このままルーラーが犠牲になるのを指を咥えて見ているわけには……ッ!?」

 

 専門家からの太鼓判が押された事で、再燃するルーラー一行の押し問答。

 

 なんか不穏な言動が聞こえるけど、さっきと違ってこっちには家族がいるから剣を抜いたら容赦なく殺すよ、ジーク少年。

 

「何を言ってるの、貴方達。別にサーヴァントを脱落させなくても、あの馬を壊せばいいじゃない」

 

 その様子に呆れた口調で姉御が指差したのは、大聖杯の横に悠然と立つ馬ロボット。

 

 ここに来た全員が敢えてスルーしてたのに、タブーに触れよったわ。

 

「姉御や、この馬ロボがどうして魔力の補充になるのかな?」

 

「この変なロボット、聖杯を使って呼び出された物よ。魔力波長がアーチャーやライダーと同じだもの」

 

 この瞬間、空気が死んだ。

 

 天草君。

 

 君は物凄い大願を掲げて頑張ってたはずなのに、なしてこんな意味不明なモノを呼び出したのか?

 

「それでルーラー、貴女はどうするの? この馬を壊す? それとも馬の代わりに────」

 

「馬を壊してください」

 

 ルーラーは即答でした。

 

 そういうワケで馬を破壊する事になったのだが、この馬ロボは謎の超金属でできているらしく中々に頑丈だった。

 

 アタランテの弓もアストルフォ嬢のランスも、ルーラーの旗も傷一つ付けられない。

 

 多分強度的には陛下の装甲並みの防御力を誇っているのだろう。

 

 まあ、みんながある程度好き勝手に殴ったあと、俺が縦にバッサリいったわけですが。

 

 謎のテクノロジーも因果の破断には叶わなかったようで、見事な開きとなった馬ロボはその断面図を見せながら、魔力の光に還ってその巨体を消した。

 

「なんというか、明らかに聖杯の光が増したな……」

 

「私は魔術の事はさっぱりですけど、何故か釈然としませんわ」

 

 腕の中で『ウマー、ウマー!』とロボを惜しむジャックちゃんを(なだ)めつつ、微妙な表情を浮かべる怜霞女史。

 

 まあ、一般的に魔法や魔術と言えばファンタジー的なモノを思い浮かべるだろうから、あんなオーパーツ的な機械馬がそうだと聞いても納得いかないのは無理もない。

 

 彼女の所感はともかく、これで小聖杯は願望器となった。

 

 ルーラーはこちらを実質的な勝者と言ってはいるが、こういったモノは大概後になって誰かが文句を付けてくるものである。

 

 そうなった場合に(こじ)れない為にも、使う前に他のサーヴァントとマスターに確認を取っておいた方がいいだろう。

 

「一応確認しておくが、この聖杯は俺が使うって事でいいな?」

 

「ああ。ルーラーが犠牲にならないのなら、こちらに反対する理由はない。元々、俺は願いを抱いて聖杯戦争に参加したわけじゃないからな」

 

「ボクもいいよ。聖杯に掛ける願いなんて無いし。マスターが無事ならそれでハッピーエンドさ」

 

 無言で頷くルーラーに続いて、ジーク少年とアストルフォ嬢からは肯定の答えが返ってきた。

 

 次に視線を向けた黒のバーサーカー主従だが、ルーラー一行とは違いカウレス少年は険しい表情を浮かべたまま、こちらに視線を返してくる。

 

「聖杯の使用権を譲る代わりに、一つ条件を付けてもいいか?」

 

「同盟締結時の条件は、こちらが使用権を得る代わりに大聖杯を譲る事になっていたはずだが、さらに上乗せをするつもりか?」

 

 こちらの言を聞くと、カウレス少年はその場に跪いて額を床に押し付ける勢いで頭を下げた。

 

「条件違いなのは百も承知してる。けど、そこは目を瞑ってお願いしたい! モルガン殿、貴方に姉の……姉ちゃんの足を診てもらいたいんだ!!」

 

 顔を上げる事無く、必死さを感じさせる声音で言葉を紡ぐカウレス少年。

 

 それを聞いて、俺はフィオレちゃんが車椅子を使用していたのを思い出した。

 

「姉ちゃんは両足にある魔術回路が変質した所為で歩くことが出来ないんだ! 回路を除去すれば歩ける見込みはあるらしいけど、それも完全とはいえない!!」

 

「それで聖杯を使ってお姉さんの足を治すつもりだったのね?」

 

「ムシのいい話なのはわかっています! でも……お願いします! 姉ちゃんを歩けるようにしてください!!」

 

 殆ど叫びとなった懇願と共に、何度も額を床に叩き付けるカウレス少年。

 

 その姿を見ていた姉御は、チラリとこちらに視線を向けると苦笑いと共に小さく息を付いた。

 

「わかったわ。ただし、治るという保証はしないわよ。相手の容態も診ずに出来るだなんて言うほど私は無責任ではないもの」

 

「ッ! ありがとうございます!!」

 

 姉御の返答を聞いて、カウレス少年は恐る恐る上げていた額を再び床に擦り付けた。

 

 念話でいいのかと聞いたところ、『こういう子は見捨てられないでしょう』と苦笑いと共に答えが返ってきた。

 

 たしかにNoというのは寝覚めが悪いわな。

 

 次にカウレス少年の傍らにいたバーサーカーに確認を取ってみると、彼女はジャックちゃんを指差してたどたどしい口調でこう言った。

 

「ウゥ……。あのこが……ひととして…うまれるなら……わたしは……ゆずって……いい……」

 

 カウレス少年の言う通り彼女がフランケンシュタインの怪物ならば、人によって生み出された人為らざる者である彼女にとって、人間として生を受けるという事は俺達が想像できない程に特別な意味を持つのだろう。

  

 その機会を見ず知らずの女の子に譲ることが出来る彼女は、きっと純真な心を持っているに違いない。

 

 そういう人物を望みがあるからとはいえ殺し合いの場に呼び出している事を思うと、改めて聖杯戦争の業の深さを思い知るな。

 

 さて、この場におけるマスターとサーヴァントには全て確認を取ったワケだが、あともう一組だけ確認すべき奴らがいる。

 

 俺は携帯を取り出すと、電話帳の最新の爛に記録された番号を選んで発信ボタンを押した。

 

『もしもし……』

 

 数度のコール音の後に出たのは、赤のセイバーのマスターである獅子劫だ。

 

 周りの喧騒からするに酒場らしき場所にいるようだが、一体何をしているのか?

 

「急に連絡して悪いな、獅子劫」

 

『アンタか。そっちが連絡を入れて来るって事は緊急事態か? 酒が入っちまったから俺とセイバーは行けねぇぞ』

 

 何処か呂律(ろれつ)が怪しいと思っていたら、案の定酒盛りをしているらしい。

 

 突入前に宣言していた通りに赤のアサシン撃破を果たしてくれているから、こちらとしても言う事はないんだが……。

 

「緊急事態とかじゃないから安心しろ。こっちは天草四郎を倒して聖杯に願いを掛けようってところでな、それで最終確認の為に電話したんだよ」

 

『確認? いったい何のだ』

 

「ジャックちゃんの願いを叶える為に聖杯を使っていいか、のさ」

 

 そう問うと、獅子劫は携帯の先で深々とため息を付いた。

 

『今更何言ってんだ。俺達の願いはオタク等が終わらせちまっただろうが』

 

 獅子劫に言われて改めて思い出した。

 

 そう言えばそうだった。

 

『俺達が戦争を抜けなかったのは、魔術協会の依頼とオタク等への義理からで聖杯の為なんかじゃない。だから、俺達の事なんて気にせずに好きに使ってくれ』

 

「そうか。ありがとうな」

 

 そう言って電話を切った俺は願いを叶えるべく姉御に声を掛けようとしたのだが、それより先に胸ポケットに仕舞った携帯がけたたましくなり始めた。

 

 誰かと画面を見ると、掛けてきているのは先ほど話を付けたばかりの獅子劫である。

 

「もしもし、どうした?」

 

『一つ聞き忘れていたことがある。聖杯を使ったらサーヴァントは座に還っちまうのか?』

 

 どこか焦った風な獅子劫の問いに、俺は姉御に確認を取った後で()と答えを返す。

 

 すると電話の向こうで獅子劫がミスを犯した事に気づいたかのように低く呻き、申し訳なさそうに言葉を紡ぎ始めた。

 

『すまん。願いを叶えるのは明日の夜まで待ってもらえないか?』

 

「何かあったのか?」

 

『実はセイバーの奴をイギリスに連れていくと約束しちまったんだよ』

 

「うん?」

 

 予想外の事に思わず妙な声が漏れてしまった。

 

 自分の戦いを終えたとはいえ、サーヴァントが旅行に行くなんて思ってもみなかったからだ。

 

 とはいえ、冷静に考えてみればあり得ない事ではない。

 

 自身の故国が未来においてどんな姿になっているのか。

 

 それに興味をもたない英雄などごく少数であろう。

 

『今から出たらむこうに着くのは夕方になるから───』

 

「観光する時間を含めて、最低でも明日の夜まで時間がほしいと」

 

『そうだ。悪いが何とか時間を都合してもらえないか?』

 

 こればかりは独断で何とかなる物じゃないので、答えを保留して一端通話を切ってから姉御に相談を持ち掛けた。

 

 姉御曰く『小聖杯に蓄積された魔力は英霊の分霊を基にしているので、一日二日では減少しない』との事。

 

 その後でルーラーと怜霞女史に事情を説明したところ、ルーラーからは『聖杯は貴方方の物なので、余程の無茶をしない限りはそちらの判断に任せます』との返答が帰って来た。

 

 怜霞女史の方も『ジャックはモードレッドちゃんと遊び足りないようだし、自分ももう少しこの子と触れ合っていたいので構わない』との事だった。

 

 取りあえず時間の確保は問題ないようなのでその旨を獅子劫に伝えると、むこうから謝罪と感謝の言葉が返ってきた。

 

 その後、念の為にと姉御が保存と侵入者避けの結界を聖杯が安置された部屋に張り、それを合図として全員解散する事になった。

 

 聞けば残った主従各々が、パートナーであるサーヴァントとの最後の時を過ごすのだそうな。

 

 ジャックちゃんが願いを叶えるのは、明日の18時に獅子劫から連絡が有ってからになる。

 

 血生臭い事態はもう起こらないと思うが、身体を張ってくれたガウェイン達の為にも最後まで油断しないようにしよう。  




ユ●コーン『擬態は完ぺきだったはず……!? 読者(きさま)等、何故俺がサーヴァントである事に気づいた!?』
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