剣狂い転生漫遊記   作:アキ山

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 投稿が遅れて申し訳ありません。

 リアルで忙しかったもので……。

 日刊というのは、結構キツいなぁ。

 あと、何故か親父やジジイキャラを書く時は気合が入ります。

 いぶし銀って、カッコいいよね。


日記8

 三度目人生記(33年6ヶ月25日目)

 

 

 今日、ガウェインとガヘリスが挨拶に来た。

 近々ヴォーティガーン王と決戦があるらしい。

 それで万が一の事があった時の事を考えているらしいのだが、不吉なフラグを立てるんじゃない。

 とりあえず、二人の頭を小突(こづ)いて怒っておいた。

 『親より先に死ぬのは最大の親不孝なんだぞ。だから、無様でも後ろ指指されてもいいから生きて帰って来い。それで騎士を辞めたとしても、ウチの家族に文句を言う奴はいない』

 そう言うと二人して泣かれた。

 身体は大きくなっても、まだまだ子供である。

 しかし、あの方自ら戦場に立つわけか。

 あの時の約束を果たさないといけないな、こりゃ。

 ちょうど、湖の乙女にも依頼された事があるし。

 そう考えた俺は、姉御に頼んでおいたお守りを二人に持たせておいた。

 生命に危機が訪れたら簡易の防御障壁が発動し、同時に俺へとアラームが鳴るというものだ。

 親馬鹿と笑わば笑え、息子を亡くすよりはマシじゃい。

 

 

 

 

 武器がぶつかり合う甲高い金属音と肉を断つ音、そして怒号と悲鳴が飛び交う戦場。

 焼け焦げた大地と血生臭さが漂う中を、男は気負う事無く歩みを進める。

 上下黒の服に膝まである黒のコート、そして手には数打ちの剣が一振り。

 その姿を見たブリテンの騎士達は歓声をあげ、逆にサクソン人たちは青褪(あおざ)めながら悲鳴を上げる。

 『剣魔』

 旧ブリテンでは悪魔に魅入られた王子を表す忌み名とされたその名も、現在では異民族に対する死神として語られることの方が多い。

 曰く、その者の振るいし剣は音を置き去りにする。

 曰く、剣魔が手に持てば、赤錆の浮いた(なまく)らも名刀が如き切れ味となる。

 曰く、木の枝で重装歩兵を斬殺した。

 傭兵や兵士の間で(まこと)しやかに語られる噂。

 聞いた多くの者が眉唾物だと鼻で笑った逸話が、多くの騎士の前で現実の物となっているのだ。

 始まりは入団して間もない若き騎士だ。

 手にした剣を弾かれて地面に倒れ伏した彼は、目の前で斧を振り上げるサクソン人に死を悟った。

 しかし次の瞬間、凛という涼やか音と共に死神と思われた蛮族が細切れに寸断されたのだ。

 肉は勿論、斧や金属製の防具まで。

 勝利の愉悦を浮かべたまま肉塊に果てた敵に呆然とする騎士の目に、風でたなびく黒いコートが映った。

 騎士はその男の顔を知っている。

 週に一度、自分が積み重ねてきたものとは全く別の術理を教授する剣術指南役。

 近衛に属する息子の縁故(えんこ)揶揄(やゆ)する者もいた、彼こそは剣聖であると持て(はや)す者もいた。

 だが現実にその手腕を見れば、そんな言葉は陳腐である事が解る。

 ゆっくりと歩みを進める彼の手がブレる度に、周りにいた蛮族が次々に斬殺されていく。

 振るった剣はおろか動きすら見えないなど、何かの冗談としか思えない。

 見れば、この戦線を支えていた近衛のベイリンとベイラン兄弟が彼の姿に歓声を上げている。

 彼の息子であるガヘリスは父の姿に目を丸くし、最高の騎士と誉れ高いランスロットも彼の登場に安堵の表情を浮かべている。

 その光景に騎士は改めて悟った。

 剣魔・アルガ。

 彼が持つ数多の逸話は真実なのだと。

 

 アルトリアは己が失態に歯噛みをしていた。

 数多のサクソン人の妨害を退けて足を踏み入れた卑王ヴォーティガーンの居城。

 老齢に差し掛かっても覇気が衰えない漆黒の王は、自分達の姿を見ると侮蔑の笑みと共に手にした紅い液体を嚥下(えんか)した。

 簡素なワイングラスに入っていたのはブリテン島を二分する守護竜の一つ、自身に加護を与えた赤き竜と対を成す白き竜の血。

 人とは思えないような凶相を浮かべながら玉座から腰を上げた老漢は、闇を纏いながら雄叫びを上げた。

 最低限の燭台が薄ぼんやりと照らしていた室内に闇が渦巻き、次の瞬間には王がいた場所には巨大な黒い竜が存在していた。

 鎌首を上げ、憎悪に光る金の瞳でこちらを睨む魔竜。

 彼女とガウェインが全力でその場を飛び退いた直後、彼女たちのいた場所は竜のはなった漆黒のブレスによって蹂躙された。

 王と共に戦場を駆け抜けた別動隊の騎士達は、悲鳴を上げる暇もなく闇の奔流にその姿を消す。

 仲間の死に激昂したガウェインは激情のままに太陽の聖剣の真名を開放するが、それもまた闇のブレスによって捻じ伏せられた。

『そんなものに頼らねば我が前に立てんか、未熟者め。貴様の父親ならば数打ちの剣一つあれば、我と渡り合えるぞ』

 先の衝撃で城壁に叩き付けられたガウェインに、失望したかのように言葉を吐き捨てる魔竜。

 悔しげに歯を食いしばっているガウェインの様子に、アルトリアは思わず顔を引き攣らせる。

 彼女に言わせれば、剣術であの兄と比べること自体間違いなのだ。

 折れかけた鈍らでアロンダイトを叩き斬るなど、どれほどの境地に立てば可能だというのか。

「兄上を知っているのか!?」

 些末事はさて置いて、アルトリアが頭に過った疑問を投げかけると、ヴォーティガーンは遥か先を見るように目を細める。

『あの者もまた、陰ながらこの島を護る者よ。同志にならなかった事は残念だが、奴の存在があればこそ我も己が道を進む事が出来る』

 問いたい事、言いたい事は数多と有ったが、魔竜の目に殺意が蘇った事でアルトリアは言葉を飲み込んだ。

 ガウェインに目を向けると、アミュレットでもつけていたのだろう、魔力障壁のお蔭で本人に傷は無い。

 しかし、闇のブレスとの撃ち合いに負けたガラティーンの刀身はその光を失っていた。

 今の状況ではかの魔竜に勝つことはできない。

 そう判断したアルトリアは、太陽の聖剣が復活するまで時間を稼ぐことにした。

 引き留めようとするガウェインの声を背に、単身ヴォーティガーンに挑むアルトリア。

 闇が渦巻くこの部屋の影響でエクスカリバーの真価を発揮できないながらも、アヴァロンの治癒力と絶対防御をフルに使って時を稼ぐ。

 嵐を呼び、闇と共にその身を巨大化させる魔竜。

 肥大化した黒い体躯はついに天井を突き破り、城砦を押し潰さんまでとなった。

 相手の強大さから、撤退を進言するガウェインの言葉にアルトリアは首を横に振る。

 彼の竜の力がこの島と同じだとしても、私と貴公がいれば鎮められるだろう、と。

 闇の中で孤軍奮闘する主であり叔母に闘志を取り戻したガウェインは、身を犯す闇を打ち払った太陽の聖剣と共に戦場へ身を投じる。

 再び激突する、闇の竜氣と星の聖剣。

 時に光が闇を祓い、またある時は闇が光を呑む。

 そして長い(しのぎ)の削り合いの末、二人の騎士はそれぞれの聖剣を相手の両手に突き立てる事に成功した。

「最果てより光を放て。……其は空を裂き、地を繋ぐ嵐の錨! 最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)!!」

 魔竜の動きを封じる千載一遇のチャンス、アルトリアは満を持して抜き放った聖槍『ロンゴミニアド』を手に突撃し、その心臓に突き刺した。

 致命の一撃だと確信した、手応えもあった。

 だがしかし、魔竜の暴威は未だに収まらない。

 両手と胸から黒い血を溢れさせながらも、ヴォーティガーンは天に叫ぶ。

『我はまだ地に膝を付くわけにはいかぬ! 我が屈すれば、人と世界に不要とされた者達が居場所を失う!! 妖精、精霊、竜種、巨人! 霊長の種と(おご)り高ぶった我等がどれだけの物を踏み躙って来たか、貴様等は知るまい!! 開墾の邪魔と住処を追われた者がいた! 大陸から伝わった教えによって存在を(おとし)められた者がいた! そして人を愛したが故にその身を封じられた者がいた!!』

 アルトリア達はもとより、人として生きた己をも呪おうとする声と共に、竜の両目から血涙が流れ落ちる。

『彼女に罪は無かった! ただ、偶然出会った私を愛しただけだった! だが、私が王の子であったばかりに、その恩恵を狙う欲深な人間共によって湖に封じられてしまった!! 普段は妖精憑きと私を(うと)ましがっていたくせに、利があると見れば飛びついてくる! (おぞ)ましい、悍ましい、悍ましい!! 貴様ら人間の欲望はいずれこの星を喰らい尽くす! だからこそ、我は貴様等によって住処を失うであろう者達の居場所を護らねばならんのだ!!』

 力を失い巨大化が解けた魔竜は、現れた時と同じサイズになっていた。

 しかし、アルトリア達は縛り付けられたかのように動けない。

 何故なら、目の前で荒れ狂う竜は邪悪などではなかったからだ。

 消えゆく者達を一身に背負って満身創痍でこちらを睨むその姿は、己と同じ守るべき者を前に立つ王だった。

『消え去るがいい、ウーサーの子よ! この地に人間(キサマラ)は不要なのだ!!』

 血反吐と共に放たれる漆黒のブレス。

 迫りくる魔力の奔流に、手元に聖剣が無い二人が目を閉じて覚悟を決めたその時───

 凛という音と共に、ブレスは両断されてその姿を消した。

 目を開くと、そこには闇と同じ色のコートを羽織った後ろ姿が見える。

「父上……」 

 見慣れた光景にガウェインは呆然と呟く。

 幼少の時にはよくおんぶをねだり、剣を取ってからは目標として来た背中だ。

「間に合ったみたいだな。二人共、無事で何よりだ」

 いつもと変わらない穏やかな父の声に、ガウェインは思わず涙ぐむ。

「兄上、何故ここに……?」

「ちょっと勤めを果たしにな」

 アルトリアの問いに、曖昧な答えを返したアルガは自身を睨み付ける魔竜に向き直る。

『管理者よ、どういうつもりだ? この戦に介入するだけでなく、ブリテンに付くというつもりか』

 己が血に塗れた牙を剥き出しにして威嚇するヴォーティガーン。

 しかし、アルガは穏やかな顔のまま戦意を見せようとしない、

「陛下、貴方に託された務めを果たしに来たのです」

『我が託した務め、だと?』

「はい。あの時、貴方は言った。『私が倒れたときは、まつろわぬ者達を頼む』と。だからこそ、貴方を妖精郷に迎えに参りました」

『馬鹿な、我はまだ倒れてはおらぬぞ!』

 怒声を上げる魔竜に、アルガはゆっくりと頭を振るう。

「いいえ。貴方のお命はあと僅かです。ご自身でも気づいておいででしょう?」

 静かな、そして毅然(きぜん)とした言葉にヴォーティガーンは言葉を呑む。

 目の前の青年の言う通り、今の彼は執念と気力のみで生きながらえている状態だ。

 仮にアルトリアを討ち果たしたとしても、その後に待っているのは死だけだろう。

「貴方が人のまま果てたならば、私が訪れることは無かったでしょう。ですが、今の陛下は幻想種の頂点たる竜。なればこそ管理者の(ことわり)により、かの(さと)にお迎えするべきと()せ参じました」

 普段の飄々(ひょうひょう)とした態度を微塵も感じさせない兄の姿に、アルトリアは戦場にいるにも拘らず呆気に取られていた。

 会話の内容は理解できない事が多いが、恐らくはヴォーティガーンの口にしていた兄の役割に関わる事なのだろう。

 斜陽が放つ赤い光の中、青年と魔竜はまっすぐに互いの目を見つめる。

 呼吸も出来ないような緊張感が続く中、不意に竜は息を吐くとゆっくりとその身を横たえた。

『我が野望、成就ならずか。……口惜しい事よ』

「……陛下の見識通り、人間の欲望は留まる事を知りません。仮に御身の計画が成功しても、いずれは人によってこの地は踏み荒らされたでしょう」

 竜が漏らした諦観(ていかん)の籠った言葉に、アルガは少しだけ表情を曇らせる。

 まるでその光景を見たかのような目に、アルトリアは否定の言葉を飲み込んだ。

『……この地に逃れて来た者達は?』

「みな、妖精郷へと旅立ちました。巨人たちは通常の方法で送るのは困難でしたが、私が彼等の肉体のこの世界との(よすが)を斬る事でなんとか」

『そうか。……なれば、そなたに引導を渡されるのも一興かもしれぬな』

 竜の身でありながらクックッと笑うヴォーティガーンに、アルガの顔に苦笑いが浮かぶ。

「そう言ってもらえると恐縮です。ちょうど、向こうで陛下を待つ方にも伝言を伝えるように依頼を受けましたから」

『……我を待つ者だと?』

 (いぶか)しがる竜にアルガは腰に下げた剣を掲げて見せた。

 アルトリア達はその剣に見覚えがあった。

 数年前、湖の乙女の依頼で彼がベイリン卿から回収した剣だ。

『それは……!?』 

「はい。50年前に陛下が湖の乙女の一人、ニニュー殿に渡した剣です」

 目を見開き言葉を詰まらせるヴォーティガーンの前に剣を置き、アルガはゆっくりと語りを続ける。

「ニニュー殿は再会の証として渡された剣をたいそう大事にしておりました。この剣に『この世で最も優れた騎士にしか抜けない』という封印を施したほどです。まあ、年月が経った所為で封印が(ほころ)んでいたり、盗難防止で陛下以外が所持すると『自分の最も愛するものを殺害する』なんて物騒な呪いが掛かっていますが、その辺は愛嬌という事で」

 苦笑いでシャレにならない事を言うアルガに、遠巻きに聞いていたベイリンの顔が盛大に引き攣る。

 あの時アルガに返さずにいれば、その呪いの餌食になっていたのだから、それも仕方が無いだろう。

 妖精というものは得てして愛情深く、そして執念深いものなのだ。

『彼女は……私を待っていてくれているのか?』

「ええ、封印を施されてからずっと。その剣が盗まれた時には、他の乙女を締め上げて私に奪還依頼を持ってきたほどですから」

『ふふっ……変わらずお転婆のようだな』

 それだけ聞いたヴォーティガーンは愛おしそうに剣をひと()めすると、ゆっくりと目を閉じた。

『管理者よ、そなたの引導を受けよう。……彼女の待つ妖精郷に送ってくれ』

「承知しました」

 そう応えるとアルガは手にした剣を納め、真の愛刀である真打を鞘走(さやばし)らせる。

「───まつろわぬ者達の偉大なる王。この島の古き名『アルビオン』を冠する白き竜の意思を継ぐ者よ。ブリテン島当代管理者の名の下に(つつし)んで介錯(かいしゃく)つかまつる」

 アルガの宣言に微かに震えていたヴォーティガーンの動きが止まった。

 そして、かの王の口から愛する妖精の名が零れる。

「御免!!」

 気合と共に振るわれた一刀はヴォーティガーンの首を大きく切り裂き、溢れ出したその血は大地へとしみ込んでいく。

 そして、黒き魔竜はその身を『アルビオン』の名の由来である『ドーヴァーの白い崖』と同じ白きチョーク層に変えて、風に散った。 

 この日、ヴォーティガーンを討ち果たしたブリテンは、事実上のイングランド統一を果たしたのだ。

 

 

 

 

 三度目人生記(33年6ヶ月29日目)

 

 

 まずはヴォーティガーンに哀悼の意を表する。

 彼の意志や思想は尊敬に値する者だった。

 星の巡りが違っていれば、俺は彼に仕えていたかもしれない。

 

 湿っぽい話はこれくらいにして、役目を果たした俺はようやく家に帰って来た。

 庄之助には毎度毎度世話になっているので、今度牛一頭でも送ろうと思う。

 会戦のあと、ブリテンの陣地に連れていかれた俺は、祝勝会の席でアルトリアから質問攻めにあった。

 まあ、こいつもブリテン島を統べる身になる事だから、と管理者と島の裏話を教えると何故かメソメソと泣き出したではないか。

 あ、王様モードから小娘モードに変わったな、と察した俺はアルトリアを連れて離脱。

 異様な熱意で追いかけてくる騎士共を振り切り、誰もいないところで話を聞くと俺達家族と別れるのがショックらしい。

 そう言ってくれるのは嬉しいし、素直に感情を表せるようになったのには安心した。

 これもガレスやモードレッドを始めとする、ウチの女性陣の成せる技だろう。

 しかしこればっかりは仕方が無い。

 神秘が消えつつあるこの島では、いつか俺達はいる事が出来なくなる。

 俺はその気になれば環境に適応できそうだが、姉御がなぁ……。

 と言っても納得しないのが、今のアルトリアだ。

 頬を膨らませて『だったら私も行きます!』と言い出す始末だ。

 まあ、こいつも竜の因子なんてモンを植え付けられてるから、妖精郷に連れてはいける。

 けど、国はどうするの? って話だ。

 ここまでデカくなったら放り出すなんて無責任は出来ない。

 アルトリアが退位するとすれば、最低でも後継者が必要だ。

 そう言うと、声高々に『子供を作ります!』と返しおったわ、こやつ。

 相手に当てがないらしいから、当面は大丈夫だろうが。

 思えばこいつも結婚適齢期か。

 いや、今って23くらいだろ。

 この時代だとけっこう行き遅れじゃね?

 ……妹が良縁に恵まれる事を切に祈ろう。

 





後書きオマケ

ゆるゆる第五次聖杯戦争

進路

クズッキ「そういえば、キャスターと一緒に暮らせる場所を紹介してくれるとか」
剣キチ 「少々物騒ですがいい場所ですよ」
若奥様 「そこって神秘の度合いってどのくらいなの?」
モル子 「一般人が入ったら『あべしっ!?』するレベルかしら」
青兄貴 「それって駄目じゃねーのか?」
剣キチ 「姉御だったら調整くらい出来るだろ?」
モル子 「もちろんよ」
若奥様 「いいえ、ソーイチロー様のお世話は私がするわ」
モル子 「あら、遠慮しなくていいのよ?」
若奥様 「自分の男って、他の女に触って欲しくないでしょ?」
モル子 「なるほど、それもそうね」
若奥様 「ふふふ……」
モル子 「フフフ……」

えみやん「……なんだろう、背中がゾクッてした」
青兄貴 「近寄んなよ、坊主。あそこはグラウンド・ゼロより危険地帯だ」
クズッキ「…………苦労、しますな」
剣キチ 「…………お互いに」

記録

青王  「ところで姉上、みんなの様子はどうですか?」
モル子 「気になるのなら戻ってくればいいじゃない」
青王  「それはちょっと……」
モル子 「もう、強情なんだから。はい」
青王  「これは……水晶玉?」
モル子 「私が作った記録媒体よ。魔力を流せば記録した画像を見れるの。ほら」
青王  「あっ、映りました! これはガレスですね!!」
えみやん「顔はセイバーそっくりだけど、穏やかそうな娘だな」
若奥様 「可愛い娘ね、もっとフリフリの服を着たら似合うのに」
青兄貴 「俺的にはもう少し成長した方が好みだな」
モル子 「セクハラ反対」
青兄貴 「あばばばばばばばばっ!?」
クズッキ「娘さん、ですかな?」
剣キチ 「長女です」
クズッキ「優しそうな子ですね」
剣キチ 「ありがとうございます」
青王  「次はモードレッドですか。あ、これは兄上との稽古ですね」
若奥様 「こっちは随分とボーイッシュね」
モル子 「お父さんっ子だったせいで、ヤンチャに育ってね。未だに自分の事、オレって言うのよ」
えみやん「この子もセイバーに似てるよな」
青王  「姪っ子ですから。みんな母上に似てるんですよ」
青兄貴 「ん? モードレッドって国を滅ぼした反逆の──」
青王  「少しは空気を読めカリバー!!」
青兄貴 「ちょっおまっ!?」
クズッキ「……全身タイツの男が黒焦げになりましたな」
剣キチ 「……悪運が強いそうなので、命に別状はなさそうですね」

自裁

青王  「母上やコロたちも元気そうで安心しました」
モル子 「みんな、貴女を待ってるわよ」
青王  「……ごめんなさい。もう少し、自分が納得するまでやってみたいんです」
剣キチ 「お前が頑固なのはわかってるからね。気が済むまでやりなさい」
モル子 「そうね。全部終わったら胸を張って帰ってきなさい」
青王  「はい! あ……」
若奥様 「あら、また画像が変わったわね。これって……」
えみやん「若い剣キチさんとモル子さんって、なに撮ってんだよ、コレ!?」
青兄貴 「どう見ても事後なんだけど、なんでこいつ爆睡してんだ?」
モル子 「いやだわ、これって私達の愛のメモリーじゃない。ちなみにこれは初夜の分ね」
青王  「初夜って、ガウェイン誕生ですね!」
剣キチ 「………ランサー。腹を斬るから介錯を頼む」
青兄貴 「痛みは無いようにするから、迷わず逝けよ」
えみやん「ちょっと!?」


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