今回は小ネタでございます。
本編は某二世がハッスルしているお陰でなかなかに難航しておりますので、これで箸休めをしていただければと。
なんて言ってる間に、4周年イベが終わって水着剣豪が始まってしまった。
今回の福袋で当たった水着BBよ。
霊基一斉開放まで使ったんだから、役に立ってくれ。
特異点の結婚式における、ある青年と少女の会話
第二特異点修復の最中、私マシュ・キリエライトは生まれて初めて結婚式に参加しました。
この日夫婦となったのはカルデアの協力者であるアルガさんの次男ガヘリスさんと、現地サーヴァントのブーディカさんの長女エスィルトさん。
新婦のエスィルトさんもライダークラスで召喚されたサーヴァントなので、私はおそらく前例がないであろう英霊の結婚式に出席したという事になります。
私は生まれてからずっとカルデアの中で過ごしてきたので、結婚式というモノに出たことがありません。
なので、この式が通常とどう違うのかは把握できませんでした。
ですが、なんというか……ヴァージンロードを歩くエスィルトさんの姿に凄く感動した事は覚えています。
そうして式も終わり、私はマスターである藤丸立香先輩と食事を共にしながら式の感想を話し合っています。
「エスィルトさん、本当に綺麗だったなぁ。私も30までには結婚したいと思ってたけど、ああいう花嫁姿を見ると早い方がいいって思っちゃうよねぇ」
「どうして30歳なのでしょう? 世の女性は20代前半が結婚適齢期と聞いたのですが」
「私さ、将来看護師になるつもりなんだ」
「看護師、ですか?」
意外な事実に私が思わず目を丸くすると、先輩は笑みを浮かべながら言葉を紡ぎます。
「うん。私のお母さんも看護師でね、小さい時から怪我をしたらよく手当してくれたの。その姿に憧れてさ、絶対に看護師になろうって心に決めてたんだ。カルデアのバイトに応募したのは進学費用を稼ぐ為だし、高校も看護科に通っていたんだよ」
「特異点の冬木から戻ってきた後、爆発の被害者に的確に応急手当が出来たのはそういうワケなんですね」
ファーストオーダーから帰還した先輩は、ドクターと共に止血等の最低限の手当てで留められていた比較的軽傷な職員の応急処置を手伝っていました。
その際、ドクターの指示が無くてもテキパキと動いていたのは、この下地があったからなのでしょう。
「私なんてまだまだ見習いだよ。本職の人ならもっと手際よく出来てたはずだもん」
「そんなことはないと思います。順番を待つしかなかった状況で、職員の皆さんにとって先輩が施した手当はきっと救いになったはずですから」
「そうかな?」
「はい。少なくとも私はそう信じます」
「ありがとうマシュ。貴女の言うとおり、私の学んだことが皆の役に立ったのなら嬉しい」
先輩の顏に浮かんでいた苦笑いが笑顔に変わったのに満足していると、今度は後ろから声を掛けられました。
聞きなれない声音に振り返ると、そこには菫色の髪をした私より少し年上の男性が立っています。
「友達と盛り上がっているところ申し訳ない。もしよかったら、少し話ができないかな?」
「もしかして、それってナンパのつもり?」
前に出て私をかばう先輩の言葉に青年は目を丸くすると、今度は笑顔を浮かべてこう返します。
「───そうか。ナンパってこういう事をいうのか。ありがとう、一つ勉強になったよ」
「えっと、本当にナンパじゃないの?」
「僕はそのナンパをやった事が無いんだ。挨拶を抜いたら、家族以外の女性と話すのも久しぶりだしね」
思わぬ非モテ発言に、私たちはポカンと口を開けてしまいました。
だって、目の前の青年は英霊の皆さんに負けず劣らず整った容姿をされていたのですから。
いくら世間知らずの私だってわかります。
彼がその気なら世の中の女性の大半は選り取り見取りだという事が。
「ああ、そう言えば名乗っていなかったね。僕はギャラハッド。ガヘリス兄さんの弟だよ」
「ギャラハッドって、たしか円卓の騎士だよね?」
「はい。サー・ランスロットとペレス王の娘エレインの息子であり、聖杯探索を成功させた『円卓最高の騎士』と言われる英雄です」
こちらに耳打ちしてくる先輩に、私は小さく頷きます。
「大きいモードレッド姉さんから聞いてたけど、平行世界の僕は随分と高名なんだね。けれど、生憎と僕はそこまで大層な人間じゃないよ」
失礼にならないように声を潜めたつもりだったのですが、苦笑いを浮かべるギャラハッドさんには筒抜けだったようです。
そう言えば、ガヘリスさんやアルガさんは平行世界のブリテン出身でした。
その家族である彼が私たちの知っている伝説とは別の道を歩んでいても不思議ではありません。
「それで、ギャラハッドさんはどうしてマシュに声を掛けたの?」
「どうしてと聞かれると返答に困るんだけど……。なんというか、彼女は僕に近しい気配がしてね。良ければ話を聞いてみたいと思ったんだ」
「近しい気配、ですか?」
私としては心当たりがないので首を傾げるばかりなのですが、先輩はそうではないようで『そう言えば、二人ってなんか似てるよね』と言いながら頷いていました。
「先輩、そんなに似てるでしょうか?」
「うん。ぱっと見だと兄妹と間違う人もいるんじゃないかな」
自覚はないのですが。そうキッパリと断言されると『そうかも』と思ってしまいます。
「ところでギャラハッドさん。マシュとどういう話をしようと思ったの?」
「う~ん。それが、誰かを見極める事ばかりに気を取られてて、なにも考えていないんだよ」
「なにそれ。女の子に声を掛けるんだから、少しは話題を持って来なきゃダメだよ」
「ごもっとも。でも、気配の主が女の子だなんて思ってなかったからなぁ……。あ、そうだ! よかったら君たちの世界の僕について教えてもらえないかな」
それは思わぬ提案でした。
まさか世界が違うとはいえ、過去の英雄に本人の事を教えてくれと言われるとは……。
「いいよ。その代わりギャラハッドさんの世界の事を教えてよ! ほら、モーさんとモードレッドちゃんって歳も性格も全然違うし、こっちのアーサー王伝説にはアルガさんがいないんだもん。私も不思議に思ってたんだ!」
私が呆気に取られている内に、先輩がOKを出してしまいました。
たしかにアルガさんたちの歴史については私も気になっていましたが、簡単に聞いていいモノなんでしょうか?
ともかく、先輩が許可してしまったからには仕方ありません。
ここはファースト・サーヴァントとして全力で支援しなくては!
◇
あれから酔っぱらった清姫さんに先輩が連れて行かれるというハプニングがありましたが、私はギャラハッドさんとお互いの知る歴史を語り合いました。
驚いたのはあちらのギャラハッドさんが円卓の騎士に加入していなかったという事です。
ですが冷静に考えれば、それも当然の事。
ブリテン王国の末期に生まれた彼は、崩壊時はたったの六歳だったのだから。
いかに才気溢れているとはいえ、そんな子供が騎士に取り立てられる訳がありません。
その他にも私の知る伝承とは違った点は多々ありましたが、ギャラハッドさんの説明を聞いた私にはその多くがアルガさんの存在に起因しているように感じました。
「ここまで差があるとは思いませんでした……」
「同感だよ。まさかガレス姉さんが騎士をやってるとはねぇ。あの運動音痴っぷりで、どうやって務めを果たしていたのか、物凄く興味があるよ」
私の言葉にギャラハッドさんはおどけたように肩をすくめます。
たしかに歴史の差異にも興味があるのですが、私はそれよりも聞いてみたい事がありました。
「ギャラハッドさんは、どうして別の世界の自分のように英雄にならなかったのですか?」
自分でも不躾な問いだとは思います。
けれど、私の中の何かが彼にこの質問を投げかけさせました。
ギャラハッドさんの話だと、彼は胎児の時に施された特殊な魔術によって、3歳の時点で肉体的には15歳まで成長していたといいます。
それならば、こちらの伝承と同じく騎士団へと入隊し、英雄として歴史に名を残すことが出来た可能性は十分にあった筈。
しかし彼はそうはせず、家族からの要請によって見習いのまま騎士団を抜け、今は平凡な農家として日々を過ごしている。
その選択に至るまでにどんな思いがあったのか、私はどうしても知りたいと思ったのです。
「マシュさん、ヒヨコは鶏に憧れると思うかい?」
ですが、私の質問に返ってきたのはこちらが望むモノとは大きくかけ離れた奇妙な問いかけでした。
「…………いいえ」
「どうして?」
「ヒヨコは成長すれば鶏になる事が確約されています。憧れとはああ成りたいと思う理想、労せずに成れるモノに抱くものではありません」
「そうだね。さっきのマシュさんの質問だけど、僕にとって英雄とは『そういうモノ』だからだよ」
「え……?」
ギャラハッドさんの言葉に理解が追い付かなった私は、思わず口から言葉にならない声を漏らしてしまいました。
それを耳にした彼は、どこか困ったような表情で言葉を紡ぎます。
「僕はカーボネックのぺレス王によって、聖杯を得るに相応しい英雄としてデザインされた。ランスロットの種に、成長促進や能力向上など胎児の将来を犠牲にする事も厭わない程の付与魔術が施された母体。後から聞いた話だけど、母さん達が付与された魔術を解いてくれなかったら、僕は八年も生きられなかったらしいよ。そうして生み出された僕にとって英雄とはなって当然のものであり、聖杯へ至る過程でしかないんだよ。事実、君の世界のギャラハッドがそうであるようにね」
「……」
「だから、マシュさんが言った事は僕にとって価値はない。それよりも今の生活の方がずっと大切さ」
「普通の農家としての生活がですか?」
「そうだよ。───土をいじり、作物を育て、家族と共に生きる。他の人には平凡であり触れた生き方に見えるかもしれない。でも、僕という存在にとっては宝石よりも価値がある時間だ。なにせ、僕を敷かれたレールから救い上げてくれた人達が与えてくれたモノだからね」
穏やかな笑みを浮かべながらそう言い切るギャラハッドさんを見て、私は酷く羨ましいと感じました。
私もデザインベイビー、『そうあれかし』と意図されて生み出された子供です。
いくつかの偶然が重なった結果、あの事故から生き延びて先輩のサーヴァントをしていますが、その事に悔いや不満はありません。
ですが、定められた運命から外れて心のままに生きている彼を見ていると、『私にも別の生き方があったのでは?』という思いが湧き出てきます。
カルデアのサポートの中で使命を果たしながら稼働限界まで過ごすのと、課せられた全ての責務を脱ぎ捨てて短期間の自由を生きる事。
果たしてどちらが幸せなのでしょう?
「ギャラハッド。君は家族が好きかい?」
グルグルと頭の中で回る答えの無い問いに意識を向けていると、無意識に唇が言葉を紡ぎました。
いつもの私とは口調が全く違う、まるで他の誰かが放ったような問い。
それを聞いたギャラハッドさんは、にこりと笑って是と答えを返したのでした。
その後、ほどなくして新郎から来賓への挨拶があってパーティはお開きとなったわけですが、ギャラハッドさんは別れ際に彼が育てた野菜を手渡してくれました。
ニッカリにんじん、飛び跳ねキャベツ、ドリルだいこん、そしてエクスカリごぼう。
なんとも変わった名前の品々ですが、味は折り紙付きとの事。
ふと疑問に思ったのですが、アルトリアさんの聖剣の斬撃に耐える強度を持つごぼうなんて、何の目的で作ったのでしょう?
ギャラハッドさんは『父さんがミミズから作った肥料を撒いたらそうなった』と言っていましたが、改めて考えるとなかなかのミステリーです。
火を通すと柔らかくなるそうなので、エミヤ先輩にきんぴらごぼうをリクエストして、それを食べながら考える事にしましょう。
剣キチさんの乙女ゲー【モル子地獄変】
モル子『そもそも、人類史上最も恋愛に縁遠い女と言われる貴女が、乙女ゲーをやろうとすること自体間違いなのよ』
師匠 『言ってくれるなモリガンよ。では、貴様は儂より上手くゲームをクリアできるのか?』
モル子『誰に向かって言ってるのかしら、私は既婚者なのよ。貴方とは恋愛の経験値は天と地ほどの差があるわ』
剣キチ『姉御って、そんなに恋愛経験豊富だったっけ?』
モル子『まさか。六歳の時から貴方一筋だもの』
オッキー『恋愛経験一人だけじゃん……』
モル子『甘いわね、そこのヒッキー。剣キチは世界でトップレベルに攻略困難な男よ。それを射止めた私にしてみれば、普通の男なんて飢えたサルにも等しいわ』
剣キチ『ものすんげぇ言われようなんですが……』
ニート『姉上の場合、射止めたというよりも罠にハメたというべきでは』
ぐだ子『それってどういう意味なの?』
グンさん『我が身が可愛ければ追及するな、小娘。あ奴の手練を竜の娘が耳にすれば、お主も同じ目に遭うぞ』
ぐだ子『ゴメンなさい、お口チャックしときます』
師匠 『ふん、一人の男しか知らんウブなねんねが吠えてくれる。たしかに剣キチは戦士としては特級だ。だが、男としてはそこまで難攻不落とは思えんがな』
モル子『言ったわね。女子力がマイナスに振り切れてる貴女が、ウチの旦那を堕とせるとでも?』
師匠 『儂を誰だと思っている。武ならともかく、男女の勝負なら剣キチ程度造作も無い』
モル子『面白いじゃない。だったら、やってみなさいよ!』
グンちゃん『いいのか、モル子? 其方の旦那なら大丈夫だと思うが、あの女と相性がいいのもまた事実。万が一という事もあり得るのではないか?』
モル子『本物に手を出すなんて許すわけないでしょ! ゲームよ、ゲーム!!』
オッキー『あ、何か転送されてきた』
ニート『乙女ゲー風の絵で書かれているのは、兄上と甥っ子たちでしょうか。題名は『妖精郷ラヴァーズ』?』
モル子『少し前にガレスから話をきいたニニューさんが乙女ゲーに興味を持ってね。ウチの子供たちが職場の女性に人気があるのも手伝って、ゲームを作っちゃったのよ』
剣キチ『エラいもんを生み出しよったわ、あのマッド。つーか、それなら何で俺が入ってるの?』
モル子『4人だとキャラが少ないから人数合わせだって。この扱いには私も思うところがあるけど、6人目がヴォーディガーンだから良しとしたわ』
ニート『人の夫どころか自分の旦那まで……科学者って業が深い』
剣キチ『いや、陛下って勇者ロボだぞ。どうやって恋愛すんだよ』
モル子『そんな疑問は置いておきなさい。それよりおっぱいタイツ、このゲームで剣キチを堕とせたら貴女の勝ちよ!』
師匠 『面白い。その挑戦、受けて立ってやる』
なすび『どうしましょう、先輩。ただのゲームなのにキナ臭い雰囲気です!!』
ぐだ子『まあ、暴力沙汰にならなかったらいいんじゃないかな。というか、湖の乙女が恋愛ゲーム作ってるとか妖精郷って本当にどうなってるの?』
きよひー『お二人の勝負に水を差すのも無粋。私はますたぁのお傍に行きましょう』
ぐだ子『よろしくね、きよひー』
きよひー『はい』
剣キチ『おっぱいタイツよ、今回のアドバイザーはどうする?』
神祖 『今回については私も観戦させてもらう。女人同士の戦いに男が入るのは無粋であろう』
師匠 『勝負の形式上、剣キチは中立でなければならん。かと言って、先ほどの者達もモリガンと一緒に来たことを思えば除外する他ない。ふむ、どうしたものかな……』
???『話は聞かせてもらったわ!』
モル子『誰!?……って、アナタはケルトビッチ!』
ケルトビッチ『水臭いわよ、おっぱいタイツ。こと恋愛なら私を呼ばずに誰を呼ぶというの!』
師匠 『なるほど。誰のモノでも咥え込む頭も股も緩い貴様なら、男を堕とすのも手慣れておるか』
ケルトビッチ『……喧嘩売ってるのかしら!?』
オッキー『今のは師匠が悪い』
ニート『仮に事実だとしても、公衆の面前で言う事じゃないですね』
ケルトビッチ『兎に角、モリガンの男を奪うというのはなかなか面白い趣向だわ。私が手伝ってあげるから大船に乗った気持ちでいなさい!』
師匠 『よかろう。ひと時の共闘と行こうではないか』
◇
オッキー『さて、ゲームスタートだね』
ニート『今回はほぼ同人ソフトという事で、私達もまったく展開が読めません』
なすび『しかも攻略対象は剣キチさんですからね』
ぐだ子『そういえば、ゲームの剣キチさんも既婚者なのかな?』
グンちゃん『さてな。だが、そこが攻略の大きなファクターになるだろう』
きよひー『実在の人をゲームに出来るのでしたら、私はますたぁが出るゲームが欲しいです』
ぐだ子『私が攻略対象だったら、乙女ゲーじゃなくてギャルゲーになっちゃうね』
なすび『ダヴィンチちゃんにリクエストしておきましょうか?』
ぐだ子『やめて。マジでやめて』
師匠 『ふむ、先ほどと同じく最初はキャラを作るのか』
ケルトビッチ『ステータスの項目は容姿、武力、直感、魔力、気品の五項目。振り分けられる初期ポイントは20ね』
師匠 『では武力と魔力に』
ケルトビッチ『バカなの貴女。男を虜にするのなら、容姿と気品でしょうが!』
剣キチ『さすがはおっぱいタイツ、行動にブレが無いな』
神祖 『武と魔導、それこそがあの者を形作るに必要な寄る辺なのだろう』
モル子『だとしても、早速仲間割れしてる様では先が思いやられるわね』
ケルトビッチ『アンタ、クーちゃん以外にまともな恋愛なんてしてないでしょうに! 物理的にしか心臓を掴めない奴は黙ってなさい!!』
師匠 『………』
剣キチ『あの女王様、おっぱいタイツをやり込めたぞ』
モル子『正論過ぎてぐうの字も出ないようね』
ケルトビッチ『全部割り振っても容姿と気品は20か。全然足りないけど一番最初だから仕方ないか』
ぐだ子『なんだろう。主人公が蛮族じゃない事に凄い違和感を感じる』
オッキー『マーちゃん、あれが普通だから。乙女ゲーの主人公が筋肉ムキムキのメスゴリラの方が異常なの』
ケルトビッチ『さて、これからが私の腕の見せ所よ。旦那だけとは言わず、モリガンの息子達でハーレムでも作っちゃいましょうか!』
剣キチ『ビッチがわりと好き勝手言ってる件』
モル子『さて、そう上手く行くかしら』
オッキー『キャラメイクも終わって、主人公の設定が出てきたね』
ニート『主人公は妖精郷の自衛組織『フェアリーブレイバー』の事務に就職したばかりの妖精のようですね』
ぐだ子『それで実働部隊であるガウェインさん達や、近所の農家なアルガさん達と親交を深めていくって感じかぁ』
なすび『キャラ紹介も兼ねた顔合わせも済んで、ここから本格的にゲームが始まるみたいです』
ケルトビッチ『まずは攻略対象を素早く堕としましょう。というワケで、剣キチがいる畑に行くわよ!』
剣キチ『おいおい。早速仕事サボったぞ、あの女』
モル子『その理由が男の為とか現実だったら完全にクビね』
師匠 『無事に畑に着いたようだな。剣キチはあそこで鍬を振っている人物か』
ケルトビッチ『もちろん声を掛けに……って選択肢だわ。1.剣キチさーん! と駆け寄る。 2.ここで剣キチを呼んでみる 3.なんだか嫌な予感が、と後退する』
師匠 『さて、お手並み拝見だ。どうするビッチ?』
ケルトビッチ『勇者を誘惑するときに私は後退のネジを外しているのよ! というワケで1!!』
【剣キ────アウゥゥン】
【YOU DIED】
グンちゃん『……一歩踏み出した瞬間、巨大なミミズに喰われて死んだな』
モル子『あれってウチの畑にちょくちょく出て来るワームね』
剣キチ『獲物を咥えてから左右に振って巣穴に引きずり込むまでバッチリ再現してたぞ。完成度たけーなー』
オッキー『なんという洋ゲーばりの初見殺しwww』
ニート『というか、なんで断末魔がバイオ4のレオンwww』
なすび『先輩、プレイ開始三分でビッチさんは天に召されてしまいました!』
ぐだ子『乙女ゲーなのに、どうしてこんな死が近いのかなぁ……』
剣キチ『まあ、このくらいは【妖精郷あるある】だしな』
神祖『これもまたローマ』
師匠 『甘く見たなビッチ。乙女ゲーは修羅の道、暴力無くしては生きてはいけん』
ケルトビッチ『ぐぬぬ……』
師匠 『さあ、コントローラーをよこせ。真打登場だ』
ケルトビッチ『こんなの、恋愛ゲームじゃないわよ』
師匠 『さて選手交代したとはいえ、こんな非力な娘では剣キチの奴に近づく事すら出来んな。……やはり出直すしかあるまい』
オッキー『どうやら師匠は最初からやり直すみたいだね』
ニート『今なら始まって間が無いので、新規で出直しても問題はないでしょうが……』
師匠 『力無き者には何も成すことは出来ぬ。それは国盗りでも恋愛でも同じことよ』
グンちゃん『初期ポイントを武力に全振りとは……随分と思い切ったな』
師匠 『乙女ゲーという荒野を切り開く為に、我が分身はこうでなくてはならん』
【ジャッッ!!】
ぐだ子『出た、スカサハ(狂)』
なすび『どうしてでしょう。あの姿を見ていると古巣に帰ってきたような安心感が……』
オッキー『なすびちゃん、毒されてる毒されてる』
ニート『あれが乙女ゲー主人公のスタンダードだと思ったらもう末期ですね』
ぐだ子『オープニングで描かれてるヒロインの立場が事務職から実働部隊に変わってる件』
オッキー『能力に準じて立ち位置が変わるとか、何気に芸が細かい』
ニート『というか、さっきの乙女ゲーと一緒で力の入れ所を間違っているような臭いがします』
なすび『そうこうしている間に、ビッチさんの殺害現場まで場面が進みました』
オッキー『意味としては間違ってないんだけど妙な含みを感じる言い回しだよね、それ』
ケルトビッチ『わかってるでしょうね、おっぱいタイツ。あれだけ大口を叩いたんだから、無様な姿を晒したら承知しないわよ』
師匠 『ふっ、任せておけ』
ニート『まだ攻略対象と顔を合わせてすらいないのに、この盛り上がりである』
オッキー『ほ~ら、また目的が迷走し始めたぞぅ』
師匠 『ふん、やはり選択肢が来たか。1.剣キチの元へと駆け寄る。 2.ここで剣キチを呼ぶ。 3.気合一閃、前方に跳ぶ。───さすが我が分身、後ろに下がるのではなく前進制圧とは。無論、答えは3』
ぐだ子『なんか「はおっ!!」って叫びながら思いっきり前宙で跳んだんだけど』
なすび『それでもちゃんとワームの襲撃を躱しましたよ』
グンちゃん『だが、そこから先が続かんな。どんどんワームに追い詰められてる』
剣キチ『あのスカサハ(狂)はステータスが低いからな。前のゲームみたいに己を鍛える暇がなかったし』
モル子『ワームも低級とはいえ竜の一種。これはビッチと同じく餌コースかしら?』
神祖『否だ。画面の中の剣士が助け出したようだぞ』
オッキー『ねえ、ニート。こういう場合って、ヒーローがヒロインを姫抱っこで助けるのがセオリーだよね?』
ニート『画面の兄上はスカサハ(狂)を荷物のように脇へ抱えてましたね。まあ結果として助かったし、アレを抱き上げるのはハードルが高いので気持ちはわかりますが』
師匠 『少々釈然とせんが、まあいい。非は醜態を晒していたこちらにある』
【危なかったな。君はたしか、ガウェイン達の後輩のゴメスさんだったっけ】
ぐだ子『ゴメスwww』
オッキー『名前と一文字もかすってないのに、ここまであのキャラを体現したあだ名があっただろうかwww』
【この畑は危険な生物がワリと出るから、勝手に入ったらダメだぞ】
なすび『その危険な生物をクワで斬り殺した剣キチさんは何なんでしょうか?』
ニート『気にしてはいけません、なすび。現実でもだいたいあんな感じです』
ぐだ子『妙な選択肢が出るかと心配だったんだけど、この辺は普通に会話が進んでるね』
オッキー『乙女ゲーの主人公なんて、香ばしい選択肢を選ばなければ基本は常識人だからね。───あ、モル子さん登場』
ケルトビッチ『ふぅん、ターゲットはやっぱり妻子持ちなのね。さて、どうするの?』
師匠 『勿論、宣戦布告だ。おあつらえ向きに選択肢も出たしな。1.奥様、私は助けられただけでやましい事はありませんよ。2.ごめんなさい、私の所為で旦那様に迷惑を……3.いい男だな、気に入った。こいつは私がもらう。───ここは3以外あるまい』
【そういう冗談はやめてくれ。オジサンはこれでも妻子持ちなんだよ】
【大丈夫よ、剣キチ。私も若い子のイタズラを気にするほど子供じゃないから】
【そっか。ところで、そのフクロウはどうしたんだ?】
【家の庭で拾ったの。羽を少し痛めてるみたいだったけど、明日には飛べるようになるはずよ】
【そりゃよかった。それより君、今日の所は帰りなさい。その格好だと仕事にも行けないだろう】
ケルトビッチ『なによ、軽くあしらわれてるじゃない』
師匠 『まだ序盤なのだ、好感度も上がっていないのだから仕方あるまい。今日のところはモリガンに挑戦状を叩きつけて良しとしておけ』
剣キチ『ヤバいな。今のスカサハ(狂)の頭上には、めっちゃ死兆星が輝いてる気がする』
モル子『そんな事は無いわよ。あれくらいなら本当に言われても別に怒らないもの』
剣キチ『けど、姉御って結構焼きもち焼きだからなぁ』
モル子『たしかに少し嫉妬深い自覚はあるけど、だからといって直接手を上げるなんて事はしないわ』
師匠 『ふむ、一日目はこれで終わりか』
ケルトビッチ『なんというか、イマイチ盛り上がりに欠けるわね』
師匠 『ハイライトと言えるモノはお前がミミズに喰われる所くらいだからな』
ケルトビッチ『うっさいわね!』
師匠 『なんにせよ始まったばかりなのだ、結果を急く必要はあるまい。……む、ステータスポイントが手に入っただと?』
ケルトビッチ『入手したポイントは30か。というか、生存ボーナスってなによ』
師匠 『なるほど、こうして修羅場を潜り抜ける度に強くなるという事か。ならば、一刻も早く剣キチの奴に追いつかねばな。───というわけで武力全振りだ』
ケルトビッチ『アンタ、本当に目的分かってる?』
師匠 『もちろんだ。ステータスを割り振ったら二日目が始まったな。まずは窓を開けて陽の光を浴び───』
【ズドムッッ!!────アウゥゥン】
【YOU DIED】
ケルトビッチ『 (゚Д゚) 』
師匠 『 (゚Д゚) 』
ぐだ子『えぇぇぇぇぇぇっ!?』
なすび『カラスがッ!? カラスがスカサハ(狂)さんの目に突き刺さってます!!』
きよひー『野次馬の言葉を聞くに、フクロウに追われたカラスが勢い余って部屋に突っ込んだのが原因のようですね』
オッキー『ていうか空飛んでるフクロウって、昨日モル子さんが助けた子じゃない?』
ニート『本当だ、同じところに包帯を巻いてます!』
モル子『ピタッゴラッスイッチ♪』
オッキー『なんという邪悪なピタゴラスイッチwww』
ニート『完全にファイナルデスティネーションじゃないですかwww』
なすび『あっ! なにか画面にヒントが出てます!!』
ぐだ子『なになに……【①このゲームの既婚者ルートで現れるライバルキャラは狂暴です。注意して対処しましょう。②急な危難を察知するには直感が必要だ。迫りくる死を避ける為に感覚を研ぎ澄ませ!】だって』
オッキー『どう見ても乙女ゲーのアドバイスじゃねー!』
グンちゃん『ふむ。モル子から男を取り上げようとすれば、こうなるのは当然か』
モル子『腑抜けたわね、おっぱいタイツ! 古来より恋愛とは戦と同じ。剣キチに手を出そうとした時点で、アンタはいつ命を狙われてもおかしくなかったのよ』
剣キチ『姉御、ステイステイ。興奮したらお腹の子に障る』
師匠 『───たしかに腑抜けておったわ。だが、この儂に二度目の不覚は無い。かくなる上は剣キチより先に貴様の首を獲ってくれる』
モル子『あら、私に手を出したら剣キチが黙っていないわよ?』
師匠 『是非もなし。その時は剣キチも打ち倒すまでよ』
スーパービッチ『アンタ等、これが恋愛ゲームってこと忘れてるでしょ』
水着剣豪をやっていて浮かんだ小ネタ
水着剣豪へと変貌した北斎を連れて、極小特異点ラスベガスに乗り込んだカルデア一行。
そこで待ち受けていたのは、短パンタイプの黒の水着にランダの面を付けた第一の水着剣豪『デスクィーン師匠』であった。
『出産祝いだ、ゴラァ!!』と、お供のガウェイン(モヒカン)ガヘリス(モヒカン)を連れて、次々とカジノで荒稼ぎをするデスクィーン師匠。
水着オッキーから有り金を巻き上げんとする彼を諫めんと、北斎は初陣の舞台へと踏み出す。
次回『水着剣豪第一戦 初っ端にしてははーどるが高すぎねえかい?』
本戦のオッズは10:0