剣狂い転生漫遊記   作:アキ山

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 お待たせしました、小ネタの更新です。

 今回で終わらせるつもりだったのに、思った以上に伸びてしまった。

 なので、あと一回お付き合いください。

 本編の方も鋭意製作中ですので、もう少しお待ちを。


小ネタ『暗黒剣キチ・リハビリ小話・下編(前)』

 二度目人生記17年9か月26日

 

 

 穴倉生活最終日

 

 昨日就寝するのが遅かった事もあって、今日は昼過ぎまで惰眠を貪ってしまった。

 

 居候にはあるまじき失態なので、二度と繰り返さないように猛省したいと思う。

 

 本日に関しては穴倉に生活必需品を取りに行ったくらいなので、特に書くことはない。

 

 強いて言えば、アンリに『もう聖杯は守らなくていいのか?』と問うたところ、『姐さ……宿っていたモノは大丈夫だから、もう必要ねーよ』という返答を得た事くらいか。

 

 そういうワケで、今回は俺達を寝不足に追い込んだ事件をメインに記帳したいと思う。

 

 昨夜、時間にすればだいたい零時過ぎだったと思う。

 

 この柳洞寺にセイバーが襲撃してきやがった。

 

 ようやく星華も寝付いて俺もウトウトしていたところを敵『意』ガンガンで現れやがった招かれざる客。

 

 アンリ曰く奴は元国王だという話だが、仮にも国のトップを張っていたのなら世間の常識と近所迷惑くらいは知るべきではなかろうか。

 

 お陰で星華が目を覚ましたうえに、眠りを妨げられた不快感から大音量で泣きだす始末。

 

 こっちは居候である夫人の好意で軒を借りている身なのだ。

 

 朝が早い住職さん達の安眠を妨害するワケにはいかない。

 

 仕方が無いので星華を落ち着かせる傍ら、元凶を排除すべく俺達は山門に向かった。

 

 上記の理由+ストレスで殺意マシマシで出てきた俺だったが、生憎とセイバーを仕留める事が出来なかった。

 

 というのも、奴の相手をアサシンが買って出たからだ。

 

 サムライ曰く『剣の英霊と刃を交えるのは我が本懐。その機会を譲ってもらえるならば、勝敗に関わらずその娘の糧となろう』

 

 ここまで言われてしまえば俺も剣士の端くれ、場を譲らぬわけにはいかない。

 

 そうして始まったサーヴァント同士の対決だが、感想を言わせてもらうとアサシンの技のキレは娘の事が無ければ立ち合いたいと思わせるほどのモノだった。

 

 奴の秘剣『燕返し』は、見る機会を得てもなお破れる気がしない神業だ。

 

 一振りにして三刃同時攻撃、あんな物を魅せられて血が滾らない剣士はいない。

 

 今回だって、セイバーの攻撃を受け損ねた際に刀身が歪んでいなければ、奴の首を刈り取る事も出来たであろう。

 

 勝負は燕返しの刃圏から逃れた際にセイバーが階段を転げ落ち、それを士郎が迎えに来た事で終了。

 

 先方を見逃す形となったアサシンは、セイバーに『私と死合うならば、万全の状態に仕上げてくるがいい』と告げて霊体化してしまった。

 

 アサシンの言葉の通り、昨夜のセイバーは動きも太刀筋も精彩を欠いていた。

 

 あれなら贋作である影法師の方が3倍は強いんじゃなかろうか。

 

 悔しさを噛み締めながらもその場を後にするセイバー主従。

 

 山門の陰でその様子を見ていた俺に、この時天啓が降りてきた。

 

 今ならば士郎とトークが出来るではないか!

 

 そう思いついた俺は山門の影から飛び出して、チャリに跨ったまま背を向けている士郎に呼びかけた。

 

 俺がいた事に気づかなかったのだろう、士郎はこちらの姿に目を丸くしたものの話し合いに応じてくれた。

 

 ここからは夫人謹製のコミュ障対策ツール『話せるクン』が大奮闘。

 

 親父殿の葬式不参加や失踪についての謝罪に始まり、こちらの今までの行動の推移と目的など多くの事を話す事が出来た。

 

 驚いたのは親父殿が手帳を遺していた事で、それによって士郎とその仲間達は俺が呪いを受けていた事や第四次聖杯戦争の顛末を知る事ができたらしい。

 

 そのお陰で聖杯が汚染されている事や、俺が泥だばぁを防ぐため影法師相手に戦い続けていた事などもすんなりと受け入れてくれた。

 

 そういえば、アンリの奴は生来掛かっていた呪いが『この世全ての悪』の呪詛を弾いたと言っていたが、ならばあの日斬り落としたのは何だったのだろう?

 

 あの時は頭を過った疑問も『ぱ~ぱ! せーか、せーか!』と後ろで髪を引っ張って自己主張する娘に消えてしまったが。

 

 改めて考えると謎である。

 

 一方の士郎だが、会話の序盤にセイバーが口を挟もうとしたところ、なんと令呪を使って黙らせてしまった。

 

 当人は独断専行をやらかした罰と気にしていなかったが、もしかして主従仲に問題があるのではないだろうか。

 

 あと星華を紹介したら目玉が飛び出んほどに驚いていた。

 

 この歳で子持ちになるなんてそうそう無い話だが、顔芸を披露するほどのモノでもあるまいに。

 

 それはともかくとして、肝心な部分である夫人との協定と星華の主食がサーヴァントである事については、この場では伏せておいた。

 

 士郎を信用していないワケではないが、さすがにセイバーが聞いている状態では口にできる内容では無いと判断したからだ。

 

 この辺はタイミングを見計らって伝える事にしよう。

 

 例の御三家に洩れたら面倒なことになりそうだしな。

 

 最後に士郎から家に帰って来いと言われたので『聖杯戦争が終わるまでは』と断ったところ、代わりに明後日家に来て仲間に事情を説明するように言われた。

 

 曰く『聖杯戦争から街を護るって目的は同じなんだから協力した方がいい』との事なんだが、我が義兄弟ながら何とも考えが甘い。

 

 マスターやサーヴァントの区別なく、このバカ騒ぎに参加している奴は何らかの目的を持っている。

 

 そしてそれは聖杯に掛ける願いの有無は関係ないのだ。

 

 なので、例え聖杯に掛ける願いは無いと口にしていても=人畜無害というワケではないのである。

 

 しかも士郎の仲間というのは聖杯戦争のシステムを築いたハタ迷惑御三家の末裔ときた。

 

 これでは信用など出来ようはずがない。

 

 そういった感じの事を理詰めで説明し、また今度機会があれば誘ってくれと送り返しておいたのだ。

 

 要求を受け入れなかったものの、アイツのことだから雷画爺ちゃんには渡りをつけてくれるだろう。

 

 ともかく、明日はある種影法師全員を相手にするより難度の高い交渉である。

 

 聖杯戦争根絶と俺の社会復帰の第一歩だ、上手くやってみせようじゃないか。

 

 ところで、俺の声を聴いた士郎が『ゆっくりかよ!?』と言っていたが、どういう意味なのだろうか。

 

 もしかして、『話せるクン』の発音速度って遅いのか?

 

 

 二度目人生記17年9か月29日

 

 

 寺居候生活2日目

 

 とりあえず、大仕事が済んだので日記に記しておこうと思う。

 

 先ほど社会復帰の第一歩として藤村邸にお邪魔してきた。

 

 到着したのが昼過ぎだったので、高校教師をしている大河姉ちゃんはいなかったけれど雷画爺ちゃんは在宅だった。

 

 約束通り士郎が話を通してくれていたのだろう、乳児を背負った怪しいガキにも拘わらず組の人は丁寧に爺ちゃんの元へ通してくれた。

 

 久方ぶりに見る爺ちゃんは、朧げになった記憶の中にある姿と変わらぬ老人マッチョだった。。

 

 もちろん感動の再会などと行くわけがなく、むこうはこちらを見るなり顔を真っ赤にして拳を振るってきた。

 

 背中に娘を背負っていた事もあって何とか踏ん張ったが、爺ちゃんの拳は本当に痛かった。

 

 殴られたショックで星華が泣き声を上げると、それに気づいた爺ちゃんは冷めやらぬ怒りを吐き出すようにため息を付いた後、ドカリと音がしそうな勢いで座布団に腰を下ろしてくれた。

 

 そこから話し合いが始まったワケだが、事情の説明を求められた際には衛宮家を出てから今までの事を包み隠さず話した。

 

 夫人は魔術には神秘の秘匿がどうのと言っていたような気がするが、カルトに染まっていない俺や爺ちゃんには関係のない。

 

 こちらは後見人だなんて都合のいい頼みをするつもりなのだ、嘘偽りを聞かせるような不義理は絶対にできない。

 

 そうしてすべてを語り終えた後、爺ちゃんは与太話を一蹴されてもおかしくない俺の話をすべて信じてくれた。

 

 なんでもスパーキングであの世に送った蟲爺、アレは極道などが仕切る裏社会でも有名なバケモノだったらしい。

 

 爺ちゃんも若い時に人が襲われる様を見た事があるらしく、『身体をおびただしい数の蟲に変えて人を食うバケモンがいるんだ、魔術って奴があってもおかしくねぇ』だそうな。

 

 あとは証拠はあるのかと問われた際に見せた、自身の身体が功を奏したかもしれない。

 

 小さい頃の傷というのは成長と共にある程度大きくなるもので、俺の身体には今や致命傷としか思えない程の大きな傷があちこちに刻まれているのだ。

 

 極道を率いている雷画爺ちゃんなら、これらが刃傷沙汰の物だとすぐに気が付いただろう。

 

 ここまで話したところで、爺ちゃんからこれからの事について尋ねられた。

 

 俺の答えは一つ、聖杯戦争を終わらせて娘を助ける事だ。  

 

 士郎の友人だという魔術師達は会ってから決めるとしても、サーヴァント共は星華のエサになってもらう。

 

 そんなワケで血生臭いことになるのは避けられないが、そこまで言う必要はないだろう。

 

 最後に社会復帰の事を切り出すと、爺ちゃんは条件付きで後見人になる事を承諾してくれた。

 

 その条件とは、魔術云々といった裏社会から足を洗って真っ当に生きるという事。

 

 星華がいる以上は無茶をする気も無いので、俺は快くその条件を飲む事にした。

 

 カタギになるなんて国籍不明の外国人をコンクリ詰めで冬木湾に沈めた時点でアウト、なんて無粋なツッコミは無しで願いたい。

 

 

 二度目人生記17年9か月30日

 

 

 寺居候生活3日目

 

 

 今日の昼過ぎ、アーチャーを排除する事に成功した。

 

 その方法だが、何も特別な事をしたわけじゃない。

 

 休日で賑わう新都のスクランブル交差点。

 

 その人混みに紛れて、すれ違い様に奴の心臓部の霊核に夫人自慢の品である暗器を打ち込んだだけだ。

 

 内家拳の秘奥たる因果の破断、それは刃物だけに通ずるものではない。

 

 鉄針に練り上げた内勁を込めれば、如何なるモノも撃ち貫く必滅の穿撃となるのだ。

 

 身も蓋もない言い方をすれば、刀剣の突きによって因果断ちの応用である。

 

 アーチャーの奴もマスターの警護には気を張っていたようだが、まさか自分が狙われるとは思っていなかったのだろう。

 

 暗器の先端が霊核を穿つまで反応すら出来ていなかったからな。

 

 人体の急所にしてサーヴァントの中枢を穿たれた上に、内勁に含まれるのは星華と繋がった事で氣に混じった大聖杯を犯す物と同一の呪詛。

 

 そんな物を食らっては、さしもの英霊と言えど一溜りもない。

 

 これにて作戦は終了。

 

 後はアーチャーの気配が消えたのを確認して、人混みに紛れて撤収すればいい。

 

 ターゲットとの接触はほんの一瞬。

 

 しかも内家拳の極意によって一連の動きは『意』よりも早い。

 

 さらには夫人の薬で髪の色を茶色に染め、軽いメイクで顔も変えてある。

 

 星華と俺の気配だって、夫人からのアイテムで常人のモノへと偽装済みだ。

 

 ここまで手が込んでいれば足が付く事はないだろう。

 

 人混みの中であろうと誰にも気づかれる事なく、さらには害されたという痕跡は極力小さくする。

 

 これが真の暗殺、密室に忍び込んで刃物でブスリなど時代遅れということだ。 

 

 交差点から離れたところで星華が『まんま、あーと』と満面な笑みを浮かべていた事で、アーチャー撃破の裏付けは取れた。

 

 娘も俺の言う通り静かにしてくれていたから、これがご褒美になればいいのだが。

 

 柳洞寺に帰ると、夫人から『貴方、本当に何者なの? あの似非ザムライよりよっぽどアサシンしてるじゃない』と呆れられてしまった。

 

 山門の侍と違ってこっちは本業だったのだから、当たり前と言えば当たり前である。

 

 昨今ポコジャカ生まれている『なんちゃってアサシン』と一緒にされては困るのだ。

 

 とはいえ、俺だって英霊相手に暗殺が成功するなんて思うほど己惚れているわけじゃない。

 

 だからこそ、ランサーや今回の様に相手の裏を掻く方法を選んでいるのだ。

 

 勝負ごとに於いて相手の裏を掻く方法、その代表的なモノにイカサマがある。

 

 今回俺が使用したペテンは二つ。

 

 一つは停戦時間である昼間に襲撃を掛ける事、そしてもう一つは霊体化していたサーヴァントを打倒する札を切るというものだった。

 

 この数年間、影法師を間引く傍らで俺はアンリから聖杯戦争とサーヴァントの情報を聞き出していた。

 

 第三、第四次の生き証人である奴の話では、サーヴァント・マスター共に物理攻撃が透過する霊体化をしている間は狙われないと思っている節があったらしい。

 

 ならば、その思考の空白を突かない手はないだろう。

 

 どんな存在だろうと想定外の事態には対処が遅れるモノ、それが元とはいえ人間ならば猶更なのだから。

 

 次に肉眼で捉えられない霊体化したサーヴァントを認識する方法だが、これは気配を辿れば簡単に割り出せる。

 

 相手は人霊の最高峰と言われる英霊。

 

 ドデカい看板を背負っているだけあって、その気配も独特かつ強大だ。

 

 不可視化してるのに力の流れまで見える程なので、少し氣功術を齧った奴なら群衆に紛れていようと簡単に割り出せる。

 

 まあ、あれだな。

 

 奴等は完全な隠形気取りだったようだが、俺からしてみれば『頭隠して尻隠さず』だったって事だ。

 

 最後の課題だった因果の破断が霊体化したサーヴァントに届くかどうかについてはぶっつけ本番だったが、12の時点で身体を蝕んでいた呪いを切り捨てられた事を思えば勝算は十二分にあった。

 

 そうして臨んだ賭けは、アーチャーの敗退という結果で幕を閉じたワケだ。

 

 一剣士としての本音を言えば、強者と刃を交える事が出来る今回の機会を無為にするのは惜しいと思う。

 

 しかし娘の命が掛かっているのだから、そんなワガママなど封印すべきだろう。

 

 自分の事より子供を優先するのが親ってもんだしな。

 

 

 

 

 冬の太陽が早々に姿を消した夕暮れ時。

 

 周囲に闇のヴェールが降りる中、煌々と照明の光に照らされた衛宮家の居間は重苦しい雰囲気に包まれていた。

 

「桜。遠坂の様子はどうだ?」 

 

「姉さんは遠坂の家に帰って自室に籠っています。アーチャーさんを失った事がショックみたいで……」

 

「仕方ないわ、私もバーサーカーを失った時はそうだったし。それにリンの場合は、何が何だか分からない内にアーチャーを死なせてしまったんだもの」

 

 士郎の問いかけに憂いの表情を浮かべた桜が返し、それを聞いたイリヤスフィールは深々とため息を吐く。

 

 白昼堂々の襲撃によるアーチャー撃破。

 

 その影響は初期より同盟を組んでいた士郎たちにも重く圧し掛かっていた。

 

「ですが、アーチャーを葬ったのは何者なのでしょうか?」

 

「やっぱりアサシンじゃないのかな。姉さんは兎も角アーチャーさんまで気づけなかったって事は、高い気配遮断を持つあのクラス以外は思いつかないもの」

 

「いいえ、それはないでしょう」

 

 聖杯戦争の常道というべきライダー主従の言葉を、セイバーはキッパリと否定した。

 

「どうしてそう言えるのですか、セイバー?」

 

「私は柳洞寺でアサシンと刃を交えた事があります。あのサムライにこのようなマネが出来るとは思えない」

 

「そうだよな。アイツの武器って身の丈ほどある長さの日本刀だったし。それにアーチャーは霊体化しているところをやられたんだろ?」

 

「姉さんはそう言ってました」

 

「なあ、イリヤ。霊体化しているサーヴァントを倒す方法ってあるのか?」

 

 士郎が水を向けると、イリヤスフィールは難しい顔で首を横に振る。

 

「普通はあり得ない。サーヴァントが戦闘時に現界するのは、霊体だと現世に干渉できないからなの。転じてそれは現世の技術では霊体となったサーヴァントに干渉できないという事なの」

 

「じゃあ、同じく霊体化したサーヴァント同士ならアーチャーを倒せたってことか?」

 

「それは無理ですシロウ。我々は霊体化している時は身体が存在しない、いわば魂のみ状態なのです。武器はもちろん、手も足もない状態では攻撃など出来ようはずもありません」

 

 自分の意見をライダーにバッサリと切り捨てられて再び頭を抱える士郎。

 

「だったら誰がやったんだよ。ランサーか? それとも幽霊をぶった切れる高野山の裏に住んでる孔雀さんか?」 

 

「真面目に考えなさい、シロウ」

 

 投げやり気味にそう言い放つ士郎を呆れながらも窘めるイリヤスフィール。

 

 そんなマスターの言葉を受けて、今度はセイバーが声を上げる。

 

「シロウ。もしかしたら今回の一件、ジンがやったのではないでしょうか?」

 

「陣が? どうしてそう思うんだよ」

 

「まず第一に昨日の会話で彼は自身を蝕む『この世全ての悪』の呪いを斬り捨てたと言っていました。あれだけの呪いを断てるのなら、その刃は霊体化したサーヴァントにも通用するかもしれません」

 

「ちょっと待ちなさい。貴方達、ジンと接触したの?」

 

「ああ。昨日、柳洞寺に攻め入ったセイバーを迎えに行った時、そこに陣がいたんだよ。それで少し話をしたんだ」

 

「シロウのバカッ! どうしてそんな大事な事を言わないのよ!!」

 

「ごめん! 昨日も今日も色んな事があり過ぎて言うのを忘れてたんだ!!」

 

「むこうは放っておくとして、続きをお願いします、セイバー」

 

 イリヤスフィールの剣幕に土下座で謝罪をする士郎。

 

 そんな姉弟のやり取りを横目に、ライダーはセイバーに話の続きを促す。

 

「はい。2つ目ですが、彼は己が目的はこの冬木を護る事と言ってました」

 

「冬木の街を護る、ですか?」 

 

「はい。それ故に10年前の大災害を引き起こす聖杯戦争や、参加者であるサーヴァントと魔術師を敵だと認識しています。彼ならばアーチャーを手に掛けても不思議ではありません」

 

「ふぅん。じゃあ、なんでリンは無傷だったの?」

 

「シロウから友人と聞かされていたからではないでしょうか。彼はシロウの事を気に掛けていましたから」

 

「なるほどね。───それでどうするの、シロウ?」

 

「陣ともう一度話をしに行くよ。あの時に聞きそびれた事は幾つかあるし」

 

「先輩、私達も一緒に……」

 

「いや、一人で行くよ。サーヴァントを連れて行っても、相手を刺激させるだけだし」

 

「何を言うのです、シロウ! 敵陣に護衛も無しに行くなど───」

 

「けど、お前を連れて行ったら話どころじゃなくなるだろ。話を拗れさせない為にも、俺だけの方がいいって」

 

「いいえ、今回は私も同席させてもらうわ」

 

「イリヤ?」

 

「ジンは貴方と同じ義理の弟よ。あの時は殺されかけたけど、リンが助かったのなら手を出される可能性は低いはずだわ。だったら、話の一つくらいしてもいいでしょう」

 

(それに、小聖杯に溜まるはずのサーヴァントの魂が一つも入ってきてないのも気になるし)

 

「分かった。それじゃあ、桜とライダーはセイバーと一緒に留守番頼むな」

 

 三人の少女が浮かべた不満げな表情などどこ吹く風と、家主である士郎は気楽に留守番を申し付けるのだった。

 

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