剣狂い転生漫遊記   作:アキ山

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 二部第六章攻略完了

 ……あんなのってねえよぉぉぉぉっ!?

 これは異文帯のモル子を幸せにせねばなるまい!

 というワケで妙に長くなったうえに終わりませんでした。

 もうちょっとお付き合いくだされ


ネタ・もし剣キチが妖精國に生まれていたら(中)

家畜日記19年と260日

 

 女王サマに雇われたと思ったら死んで来いと命令を受けた剣キチです。

 

 騎士として栄えある最初の任務は、城のすぐ傍にある馬鹿デカい穴にダイブしろという物だった。

 

 それを聞いた瞬間、周りにいた宮廷スズメ達から上がる『薄汚い人間モドキが大穴に捨てられる』の大喝采。

 

 どういう事かと首をかしげていると、ランスロットが穴について教えてくれた。

 

 なんでもあの中には妖精國の中でもブッチギリでヤバい物が埋まっているそうで、今では国中の廃棄物が捨てられる夢の島ならぬ夢の穴となっているそうだ。

 

 雇用した瞬間に廃棄とは……さては俺と戦争がしたいんだな。

 

 とりあえず騒いでいるウザい妖精の首をポップコーンみたいに飛ばしてやろうかと思ったが、すぐにそれが早とちりと分かった。

 

 女王サマ曰く穴の底で眠っているのは古い神で、そこから漏れ出る呪詛がモースの原因となっているらしい。

 

 穴に潜るのはソイツを始末するためという事だった。

 

 そういう事なら断る理由はない。

 

 なんでも穴の底は神の影響で致死レベルの呪詛に塗れているらしいが、そんなの関係ねえ!

 

 神殺しの機会を逃すなんて阿呆のすることだろぉ?

 

 ウッドワスのおっさんが『貴様ごときにあの大穴の事を解決できるものか!』と騒いだり、ランスロットが『君は頭がおかしいのか!? 死ねと言われたのと同じなんだぞ!』とか言っていたが、全てブッチした俺は玉座の後ろにあるテラスから穴へダイブした。

 

 軽身功で宙を舞う塵を足場に穴へと降りていくと、たしかにヤバい気配がプンプンしてきた。

 

 これは骨々さまの瘴気に勝るとも劣らない陰の氣だ。

 

 そうして穴の底へとたどり着くと確かにいた。

 

 俺でも調息がキツくなるレベルの呪詛が渦巻く中、神の名に恥じない超存在は真紅の目でこちらをジッと見ていたのだ。

 

 今まで感じた事もないような強烈な威圧にちょっとビビってしまったが、ここで折れるようなら今生に価値はない。 

 

 体内、体外から取り込んだ氣を周天させて内勁を研ぎ澄まし、腰に下げた村正謹製の刀の鯉口を切る。

 

 因果を捉えれば、いや因果が見えなくても己が剣腕だけで断ってみせようではないか!

 

 その決意を込めて振るった一刀は、ヤツの首の七割を断ったところで刃が止まってしまった。

 

 悔しい事にこれが今の俺の限界らしい。

 

 自身の至らなさを噛み締めた俺は、刃を入れた証拠として斬った時の反動で飛び出た片方の目玉を持って地上に戻った。

 

 しかし大穴を出ようとしたら、竜の姿に変身したランスロットの放ったビームによって俺の戦利品が燃やされてしまったではないか。

 

 『なにすんねん!』と怒ったら、『君はキャメロットを滅ぼすつもりか!?』と逆ギレされる始末。

 

 たしかにあの目玉は陰の氣がプンプンだったけど、証拠が無かったら実は行ってなかったとかウザい難癖をつけられるだろうが!

 

 『大丈夫だって、キャメロットにいるのは上級妖精様だからこの程度の呪詛くらいヘーキヘーキ』と説得したのだが受け入れてもらえなかった

 

 ぐうの字も出せない証拠を取って来たのに解せぬ。

 

 さらに『お前、呪詛塗れだから入ってくんな!』という言葉と共に城と反対側の大穴の淵へポイされた俺は、水鏡の魔術越しに女王サマに報告を行うことに。

 

 『すまぬ、失敗じゃあ。七割しか首を断てんかった』と告げれば、女王サマはヴェールの奥で変な笑いを浮かべていた。

 

 個人的には奴を斬れるまで特訓をしたいところだが、雇用初日で退職しますとはさすがの俺も言い難い。

 

 とりあえずは身に沁み込んだ呪詛を何とかする必要があるので、禊の為に骨々サマの湖にいったん帰りますとだけ伝えておいた。

 

 よし! この呪詛を落とすついでに寝ずの鍛錬だ!!

 

 

女王日記 ●月×日

 

 黒騎士が解呪の為にキャメロットを離れて二日が経った。

 

 登用してすぐに大穴に放り込んだのは我ながら無茶だと思ったが、あれはこの先のために為さねばならない試しだった。

 

 汎人類史ではない異なる流れを生きたモルガンの記憶、それが真実であれば彼は生きて戻ってくる。

 

 私にはその確信があった。

 

 彼が至った神仙というモノは如何なる環境にも短期間で適応しうる存在だ。

  

 モルガンの記憶にある彼は、この星に飛来した水星最強の生物が展開した地球の如何なるモノも踏み入る事ができない水晶の渓谷の中で戦っていた。

 

 そして黒騎士もアルビオンの瘴気とアレの呪詛が色濃く残る北部の湖水地帯で生き抜いた。

 

 ならば妖精騎士であろうと一分も耐えられない大穴の深淵に適応する可能性は十分にある。

 

 果たして私の予測は的中した。

 

 彼はあの忌まわしい神の躯の首へ刃を通してみせたのだ。

 

 今の妖精國において、このような真似ができる者は黒騎士のほかにいない。

 

 武器であれ能力であれ、射程に捉える前に奴の放つ呪詛で命を落とすからだ。

 

 この時点で彼はこの國に不可欠な存在となった。

 

 モースと災厄の根本的解決は彼の力無しでは成しえないのだから。

 

 そして私にとっても彼は特別な意味を持つ存在でもある。

 

 私が知り得た汎人類史のモルガン。

 

 ブリテンという地に固執し、自分の居場所を得る事が出来ぬまま消えていった哀れな女。

 

 そんな女が一つだけブリテン以外に自分の居場所を見つけた可能性があった。

 

 それこそが並行世界の黒騎士であるアルガの妻という地位だった。

 

 あの世界のモルガンは王位を忌避し、ただの女である事を妻である事を望んでいた。

 

 色々と眉を顰めるような事を仕出かしてはいたが、あの世界の彼女は本当に幸せそうだった。

 

 女王となって2000年、いや妖精歴を生きていた時からずっと私は孤独だった。

 

 もし私が汎人類史のモルガンの記憶だけ知ったのなら、それにも耐えられただろう。

 

 所詮、どの世界でも私は孤独なのだと。

 

 けれど私は知ってしまった。

 

 受け入れられる喜びを、当たり前の日常を只人として暮らす幸福を。

 

 それが私にも与えられる可能性がある事を。

 

 だからこそ、心のどこかで私にも彼のような存在がいればと何度も思った。

 

 救世主でも女王でも楽園の妖精でもない、私を私と見て愛してくれる人を。

 

 けれど、今まで彼が現れる事はなかった。

 

 だからせめて自分の居場所だけはと、使命に逆らい世の理に歯向かってこの國を作ったのだ。

 

 私は『ブリテン』を愛していたから、私には『ブリテン』しかなかったから。

 

 けれど彼は今になって現れた。

 

 正直に言えば私は疲れている。

 

 幾度もなく裏切り私を傷つけた妖精どもを治め守り続ける事に。

 

 たやすく命を落とす人間達の悲劇を見聞きする事に。

 

 この世界で唯一私に本心から感謝をくれた子を看取り続ける事に。

 

 もし彼が亜流のアルガのように私を受け入れてくれるなら。

 

 私の居場所になってくれるのなら……

 

 黒騎士よ、貴方は私とあの子を『牢獄のような玉座』から連れ出してくれるのだろうか……

 

 

家畜日記19年と265日

 

 ようやく神の呪詛を片付ける事が出来た。

 

 不眠不休で延々と戴天流の套路を行い、その中で内勁を周天させ続ければ巡る氣は天地合一の理へと至る。

 

 この世は天地より万物に至るまで氣を待ちて以て生ぜざる物無き也。

 

 それは骨々さまの瘴気も穴倉にいるデカ物の呪いも例外ではない。

 

 通常の生物が宿すのが陽の氣であるなら、これらが内包するのは陰の氣だ。

 

 陰と陽とは互いに対立する属性を持っており、万物の生成消滅と言った変化はこの二氣によって起こるとされる。

 

 陽は善ではなく、また陰は悪ではない。

 

 陽は陰が、陰は陽があってはじめて一つの要素となりえる。

 

 そしてそれもまた神羅万象を司る一因にすぎない。

 

 ならば今の俺が陰氣である呪詛を糧とできるのは必然だ。

 

 ちなみに湖に降り立ってこの作業を見ていたランスロットは、『君はやっぱり頭がおかしいね』と失礼なセリフを吐いた。

 

 いい加減、この毒舌ロリっ子をキャンと言わせるべきだろうか。

 

 暴言の報復としてほっぺたを引っ張ったら、ランスロットは『子供扱いするな! 僕のほうがお姉さんなんだぞ!』と襲い掛かってきた。

 

 あまりに可笑しな事を言うので『御冗談を。そういうセリフはせめて身長を1.5倍にしてから言いたまえ』と返せば、宝具とかいう必殺技を使ってガチで殺しに来やがった。

 

 どうやら身長が低い件はあのロリっ子にとってはタブーのようだ。

 

 咄嗟に切り返さなかったらドテッ腹に大穴が空いているところである。

 

 しかし未完成の六塵散魂無縫剣では、ヤツの奥の手を斬り払うのが精一杯か。

 

 未だ超音速に至る刺突は6段まで、俺もまだまだ修行が足りん。

 

 次は払ったうえで、最後の二発を奴の首と心臓にブチ込むようにしなければ。

 

 『暴れんな』という亡霊ちゃんからのクレームで剣を収めた後、何の用かと聞いてみれば女王サマが呼んでいると言われた。

 

 要件は分からんが、何故か夜中に人目を忍んで私室へ来るようにとの言いつけだ。

 

 まったく意味が分からん。

 

 これは俺の隠密能力を試しているのか?

 

 それとも騙し討ちの為の罠?

 

 いくら首をひねってみても梅干し大の脳みそからは黒い粉しか出ん。

 

 こうなったら下手の考え休むに似たり、行ってみるしかあるまい!

 

 

家畜日記19年と267日

 

 どうも、男として一皮むけた剣キチです。

 

 えー、指示通り夜中に女王サマの部屋へ潜入したらベッドに誘われたでござる。

 

 部屋に入ってスケスケのネグリジェを着た女王サマを見た時は、一瞬祓い損ねた呪詛が目に来たのかと思ったわ。

 

 そんな女王サマは俺を見るなり『よくぞ来た。先の働きの褒美として、私の新たな王配として迎え入れよう』とか言ってきた。 

 

 あれって多分、本人的には尊大な夜の女を演じてたつもりだったんだろう。

 

 けどあの時の女王サマってさ、顔は真っ赤で目は泳ぎまくってるうえに足を組む動きはブリキ人形みたいにガッタガタ。

 

 あげくにセリフは嚙みまくりと、無理スンナと言いそうになるくらいアカンかった。

 

 そこを指摘したら目に涙を溜めて真っ赤な顔で黙り込んだし。

 

 実はこの女王サマ、割とポンコツなのかもしれん。

 

 そうしてマジで何の用なのか思いながら見ていたら、彼女はいきなりガーッて怒り出すと『この甲斐性ナシ! 童貞! 据え膳を食う度胸もないのか、ざ~こざ~こ』とかやけくそ気味に煽って来たのだ。

 

 前世も今生でも経験がない俺に童貞は禁句である。

 

 少なくとも見るからにドン臭い女に雑魚呼ばわりされるほど、前世で強制的に鍛えさせられたテクは甘くない。

 

 そんなワケでイラッと来た俺は、女王サマを思う存分わからせてしまったのだ。

 

 なに、この國で生まれた人間には生殖能力がないはずだろうって?

 

 そんなもん、氣の周天と房中術で何とでもなるわ!

 

 それで行為が終わったあとで気付いたんだけど、女王サマ初めてだったんだよ。

 

 あの時は本当にタマゲたわ。

 

 2000歳を超えてる不老の女王が処女だなんて普通考えるか?

 

 チンピラっていう王配もいたんだぞ。

 

 新手の幻覚かと目をこすった俺は悪くない。

 

 それは置いとくとして、何度も言うようだが俺は女性経験がない。

 

 前世ではロミトラの訓練として使い物にならなくなった娼婦相手に房中術を応用した手業を鍛えさせられたが、最後までやるのはこれが初めてなんだよ。

 

 だからなんつーか、相手も初めてだったりすると罪悪感とか責任感がね……

 

 実際、呪詛や瘴気とか身の内にあるヤバい物が影響しないようにメッチャ気もつかったし。

 

 しかも割とメチャクチャした自覚があるから『こんな辱めを受けるなんて……初めてだったのに何度も出すとか……責任取って』とか泣きながら言われたら、その手の感情は倍率ドンである。

 

 いくら道外れな俺でもさ、これで『そんなんシラネ』って言えるほどクズじゃないです。

 

 結局、なだめる為に女王サマ……モルガンの話を延々と聞く羽目になった。

 

 一から十まで全部話されたんだけど、あの人の過去めっさ重いわ。

 

 というか、この国の妖精どもが輪をかけて嫌いになりました。

 

 個人的にはなんちゅう面倒くさい生き方してんだとも思ったし、玉座なんか適当な氏族に譲ってあの子を連れて逃げたらええやんとも思った。

 

 けど、動機や理由はどうあれ彼女のやった事が凄いのは間違いない。

 

 俺だったら開始一時間で『こんな面倒な国など原子分解してくれるわ!!』って自爆する自信あるし。

 

 ぶっちゃけ、これだけの事をしてきた彼女は尊敬する。

 

 だから、話の終わりに『国や玉座を失った時、私の居場所になってくれますか?』って言われた時も頷いちまったしな。

 

 いやはや、最初は契約だけの関係で何かあったらすぐに切るつもりだったのに……男は初めての相手に弱いってのは本当だったんだなぁ。

 

 なんにせよ、女の純潔を奪ったケジメはしっかりつけなきゃならん。

 

 柄じゃないけど一つ騎士ってのを最後まで演じてみるか。

 

 

女王日記 ●月◆日

 

 失敗した。

 

 色々と失敗した。

 

 正直言ってあの事を思い出すと顔から火が出そうになる。

 

 昨夜ランスロットに言伝した通り、黒騎士は現れた。

 

 汎人類史の私に倣って妖艶な女として迎えようとしたのだが……白状しよう、あの時の私は煽情的な服を着た時点でイッパイイッパイだった。

 

 だって仕方ないじゃないか、私は男性経験なんてゼロなんだ!

 

 2000年以上も処女を拗らせた奴が、汎人類史の記憶があっても殿方なんて誘えるか!?

 

 とはいえ、賽は投げられてしまったのだから後悔したってもう遅い。

 

 なんとか演技をしてみたものの、緊張で身体も舌もロクに回らない。

 

 それを彼に指摘された時は、赤面してなんとも言えない表情を浮かべてしまった。

 

 あんな顔、トネリコとして旅をしていた序盤くらいにしかしたことなかったのに……

 

 私の情けない様に黒騎士は完全に呆れてしまったようだったが、彼をこのまま帰すわけにはいかなかった。

 

 打算的と言われようと妖精國には……私には彼が必要だ。

 

 何を以ってでも彼を私達側につなぎ留めなければならない。

 

 しかしあの時の私は色々と混乱していた。

 

 その所為か、口から出たのははしたない単語と子供のような煽りだけだった。

 

 これはもうダメだと半ば諦めて俯いた私だったが、何故か彼は私を押し倒してきた。

 

 どうやら先ほどの暴言の中に彼にとって聞き捨てならない言葉があったのだろう。

 

 驚いたし正直なところ怖かったけど、おおよそ私の思い通りの展開になった。

 

 ただ、そこから先の事は思い出したくはない。

 

 亜流のモルガンの記録から知識としては知っていたけど、実際に体験するとあんなに凄いとは思わなかった。

 

 しかも彼は淡白そうに見えて天然の嗜虐趣味者だったのだ。

 

 異様に慣れた手管で私の身体を屈服させて、攻め立てながらこちらの痴態を楽しんでいたみたい。

 

 おかげで今まで出した事もないような声をあげさせられて、お…おもらしまで……

 

 汎人類史の知識にベッドヤクザなる言葉があるそうだけど、彼はそんな物じゃ収まらない。

 

 あの鬼畜っぷりはベッドテロリストだ!

 

 あんなの毎日されたら絶対馬鹿になる!

 

 亜流のモルガンが疫病魔術とかいうアホな術式を作ったのも、快楽で頭がふやけたからに違いないわ!

 

 とはいえ、何も収穫がなかったわけじゃない。

 

 うれしい事に彼は私に心を開いてくれた。

 

 私の過去という寝物語にしてはひどく重い話をしてしまったけど、彼は全てを聞いた後こう言ってくれた。

 

『アンタのやった事はすげえよ。俺だったら絶対途中で投げ出してる。この國も妖精も好きじゃないが、アンタの為なら剣を振るってもいい』

 

 そして、もし国の運営に失敗しても私とあの子を受け入れてくれるとも。

 

 この胸にある想いが亜流のモルガンに引かれたものか、それとも私自身が得たものかは分からない。

 

 それを確かめる為にも彼と共に歩んでみるとしよう。

 

 

家畜日記19年と275日

 

 どうも騎士業に勤しんでいる剣キチです。

 

 第四の妖精騎士としてブリテン島の方々を駆け回ってモースに不良妖精、テロリスト達から妖精國を守っているのに俺の評判がイマイチよろしくない。

 

 異名だって他は炎を操る忠節の騎士ガウェイン。

 

 空を掛ける音速の騎士ランスロット。

 

 妖弦を以て敵を切り裂く嗜虐の騎士トリスタン。

 

 なんて具合に他の奴等は普通なのに、俺だけは『頭のおかしい黒騎士』に『謎の秘密結社が作ったモース人間』、果ては『汚物ヤロウ』なんて言われているのだ。

 

 これって差別じゃね?

 

 この辺の事をランスロットに相談したところ、『モースの放った呪弾をキャッチして投げ返したり、捕まえたモースでモースを殴ったり、果ては罪人の妖精にモースを投げつけてるんだ。そう呼ばれても仕方ないよ』と言われた。

 

 なんでやねん! 敵の武器を使用するとか乱戦の基本中の基本やんけ!!

 

 まあ、こんな事を愚痴ったところで俺の悪評は消えないし、戦い方だって変えるつもりはない。

 

 ついでに言えば、伊達や酔狂でモース共と戯れてるワケでもないんだ。

 

 妖精共の評価なんて今更だし、そんな物を気にする価値もない。 

 

 コイツ等に関しては最悪全滅してもいいって女王サマも言ってたしな。

 

 そろそろ裏の仕事も手を付けんといかんし、とりあえずは軍部のトップであるウッドワスのおっさんと話でもするかね。

 

 

女王日記 ●月×▽日

 

 ……今日、キャメロットが半壊した。

 

 原因は黒騎士とウッドワスが殺しあった事だ。

 

 聞けば黒騎士が仕事の打ち合わせをしようとウッドワスに声を掛けたのが事の発端らしい。

 

 成り上がり者を嫌うウッドワスだから黒騎士とは相性が悪いと思っていたが、まさかいきなり殺し合いに発展するとは。

 

 駆け付けた時には切断された両手足から呪いの浸食をうけたウッドワスがうつ伏せに床に転がり、それを手や胸にひっかき傷を作った黒騎士が見下ろしていた。

 

 今の彼は妖精の天敵というべき存在だ。

 

 彼が振るう理合の極致というべき剣には、妖精にとっては致死性の呪詛と祖竜の瘴気が籠っている。

 

 それを前にしては亜鈴百種とはいえ、分が悪いと言わざるを得ないだろう。

 

 『まだやるかい?』『……元気いっぱいだぜ』と、こんな有様になっても殺る気満々の二人をなんとか引き離したものの、黒騎士はもちろんウッドワスの評価もがた落ちだ。

 

 今回の騒動に巻き込まれて命を落とした宮廷スズメ共もかなりの数に上るしな。

 

 個人的には奴等の命など彼等二人と比べるべくもないんだが、女王としてケジメは付けねばならん。

 

 とりあえずウッドワスは領地で静養、黒騎士はキャメロット内で謹慎を言い渡しておいた。

 

 彼には戦場に行くよりも後方で大人しくしている方が罰になるだろう。

 

 まったく……あとでどんな会話をしていたかを聞き出さねば。

 

 軍のトップと近衛にして対モースの切り札である妖精騎士が殺し合いなど笑い話にもならないだろうに。

 

 

家畜日記19年と282日

 

 只今謹慎という名の女王サマの専属護衛をしている剣キチです。

 

 モルガンが言うにはこうしてジッとしている方が罰になるだろうとのこと。

 

 なんてこった、一回ヤッただけなのにこっちの性格を把握してやがる!?

 

 今日の夜にでも、この措置を後悔させてやろうと思います。

 

 それはさておき、ウッドワスのおっさんとの話し合いが殺し合いに化けたのは大誤算だった。

 

 現政権で邪魔になりそうなヤツとか、クーデターを画策してそうなヤツはいるかと聞きに行っただけなのに……

 

 やはりポロリとモルガンを抱いた事を口にしたのが悪かったのかなぁ。

 

 まあ牙の氏族最強の力がどんなもんか知れたし、腕試しにもなったから良しとしよう。

 

 そんなワケで今日も今日とて女王サマの横で置物をしていたのだが、そんな謁見の間に何故か刀鍛冶の村正が乗り込んできやがった。

 

 どうやら目当てはウチの女王サマの首だったようだが、ソイツはいろんな意味でくれてやる訳にはいかない。

 

 以前のように虚空から刀を取り出して斬りかかる村正の前に立ちはだかると、奴は剣呑な視線をこちらへ向けてきた。

 

『イカレた野郎が妖精騎士になったって噂を耳にしたが、まさかテメエだったとはなぁ』

 

 アレな噂は奴の耳にも入っていたようだが、それに関してはだいたい事実なので否定する気はない。

 

 そこから村正と刃を交えたが、ウッドワスに比べればやはり弱い。

 

 多分奥の手だったんだろう、周りに呼び出した剣を一つにしようとした隙を突いて貫光迅雷で心臓を穿つと、その衝撃で奴さんは例の大穴に落ちてしまった。

 

 女王サマからはやったかと聞かれたが、まず生きているだろう。

 

 野郎の因果は何者かの手によって妙な形に歪められていた。

 

 あれでは心臓一つ潰した程度じゃあくたばらない。

 

 とりあえず五体バラバラにすれば死ぬかと思って追おうとしたんだが、謹慎を理由にランスロットへバトンタッチする事になった。

 

 しかし大丈夫かね。

 

 あのロリっ子は素で強いからか、慢心とか油断とかポカミスとかやりがちなんだよなぁ。

 

 一応釘は刺しておいたが、どこまで効果があるやら……

 

 

女王日記 ●月×◎日

 

 バーヴァン・シーの容体がよくならない。

 

 原因は目の前で淡い思いを抱いていたベリル・ガットを殺されたことか、はたまた黒騎士に刻み付けられた恐怖故か。

 

 妖精騎士トリスタンであった頃の悪逆さは完全に砕け散り、ショックで精神年齢が大きく退行した今では幼女のようになってしまった。

 

 バーヴァン・シーをこんな風にした黒騎士に思うところが無いわけではない。

 

 しかし状況を聞けばどう考えても非はバーヴァン・シーにある。

 

 生きて五体満足だったのは幸運と言えるだろう。

 

 だが、今のままでは彼女を妖精騎士から除名せざるを得ない。

 

 騎士の仕事は黒騎士がやってくれるとして、そうなれば問題となるのは領地の方だ。

 

 こんな有様ではニューダーリントンの領主など務まるわけがない。

 

 まあ、以前も上手く運営していたとはお世辞にも言えないが。

 

 ともかく、こうなってはキャメロットで世話をするしかあるまい。

 

 この部屋には私以外の誰も近寄らせないように厳命せねば。

 

 しかし異星の神とやらが刺客を送ってきたが、あの程度の輩なら脅威にはなり得ないだろう。

 

 黒騎士曰く神の手によって通常の手段で死ねぬようになっているそうだが、それが分かればどうとでも手は打てる。

 

 現状で警戒すべきはついに現れたカルデアと我が同胞たる予言の子だ。

 

 巡礼の鐘を鳴らさぬ内はあの娘はそこらの下級妖精と変わらない。

 

 しかし儀式をこなしていけば、例の予言と相まって少々面倒な存在となるだろう。

 

 黒騎士に頼めば、すぐにでも全員分の首は取れるだろう。

 

 彼は剣腕も然ることながら暗殺者としての能力もズバ抜けている。

 

 その気になれば目障りなノクナレアや腹に一物を抱えたスプリガン、それにあのオーロラを排除する事も不可能ではない。

 

 しかし今それを行うのは得策ではない。

 

 平時に氏族の長が暗殺されれば疑いは間違いなく私に向くからだ。

 

 それで氏族共が激発すれば鎮圧も面倒なことになる。

 

 それに黒騎士を危険に晒すのも気が進まない。

 

 万が一彼を失えば、私の前に現れた新たな選択肢が途絶える事になる。

 

 彼を戦いから引き離せないのは仕方ないとしても、できれば危険が無いようにしたいと思う。

 

 まったく、厄介事が次から次へと……

 

 ノクナレアに玉座を譲って退位する事も視野に入れておこうか……

 

 

家畜日記19年と309日

 

 今日、モース狩りをしていると不思議な連中と出会った。

 

 一人はどこかモルガンに似た下級妖精、その他は妙な気配を持つ赤毛の琴弾きとローラーブーツを履いた少女、そして人間である黒髪の男。

 

 モースに絡まれていたのを助けてやると、下級妖精が『頭がおかしい黒騎士!?』とご丁寧に俺の事を紹介してくれた。

 

 なので感謝の意味も込めて両拳でコメカミをグリグリと抉ってやった。

 

 下級妖精はヘルメット越しなのにガチ泣きしていたが、その辺は気にしてはいけない。

 

 初対面の者に頭がおかしいなどと暴言を吐いてはいけないと、彼女の頭にもインプットできた事だろう。

 

 軽いスキンシップはともかくとして、まじめな話をするとこの下級妖精が女王サマが言っていた『予言の子』だとこの時点で気づいていた。

 

 だって、存在感の強弱はあれ気配がモルガンとそっくりなんだもの。 

 

 となれば一行唯一の人間が『異邦の魔術師』、他のメンツが汎人類史とやらの英霊という事になる。

 

 一瞬ここで全員の首を取って後顧の憂いを断ってやろうかとも考えたのだが、もしかしたらモルガンが『予言の子』を生贄に女王職からエスケープを狙っているかもしれないと思いとどまった。

 

 この辺に関しては後で確認しておこう。

 

 となれば俺もブリテン中を駆け回る多忙な身、こんなところで油を売っているわけにはいかない。

 

 そんなワケで軽身功の練習がてら、『さらば、皆の衆! 良い旅路を!』と空を走っていった訳だ。

 

 全員空を渡る俺をポカンと見ていたが、妖精國では空中戦は必須科目ですことよ?

 

 少なくともこれが無かったらランスロットと戦えませんので。

 

 それから適当にモースを間引きながらキャメロットに帰り、女王サマに『予言の子』を見つけた事を知らせたのだが、彼女から帰って来たのは『巡礼の鐘が鳴るまでは放っておけ』という指示だった。

 

 巡礼云々は分からんが、ようするに鐘が鳴ったら首を刈りに行けという事だな。

 

 よし、だいたい分かった。

 

 ならば予言の子が苦しまないように剣腕に磨きをかけておくか!

 

 目標は秘剣の再開眼という事で北の領土に喧嘩を売ってきます!

 

 ギブミーチョコレート!!

 




黒騎士(頭がおかしい)

 妖精國に生まれたアルガ。

 パーシヴァルに少し遅れて養成所に入れられた子供の一人。

 本来なら兵士となる前に死ぬはずだったが、運命の悪戯によって前世の記憶に開眼。

 養成所の死体置き場に遺棄されていた所で目を覚まし、そのまま逃亡する。

 その後は妖精國を漫遊しながら剣腕を高め、呪詛に塗れた湖水地帯を根城としたことでアルビオンの瘴気とモースの呪詛を糧に邪仙へと覚醒。

 紆余曲折の末に妖精國第4の騎士に任命される。

 この世界唯一の仙人という事で、ブリテンの妖精にとっては完全な余所者。

 当然ながら身に纏った穢れから人間にも受け入れられることもない。

 女王に付いていなければ、些細な事を切っ掛けに妖精全てを敵に回して死ぬまで殺戮を撒き散らす災厄となっていた。

 割と考えなしの行動が多いのは、認識や思考が前世の末期に拠っている為。

 女王サマが首輪になれば、数十年ほどで落ち着きを取り戻す。

 異世界剣キチランキングでは潜在能力的には本編剣キチに次いで第2位。

 剣の腕は現状だと若様以下の最下位である。

 ロリスロットといい勝負をしたり、ウッドワスを圧倒したのは竜氣を取り込んだ邪仙のスペックと呪詛のお陰。

 まだ秘剣に開眼してないから仕方ないね。

 実は末の末の出涸らしレベルではあるがアルビオンの眷属になっている。

 その為、本人も知らないうちに心臓も竜の炉心となり始めている。

 ロリスロットが気にかけているのはこの為。

 カルデア一行に剣キチ(真)がいた場合は、ヒャッハーした挙句にあっさり殺される模様。
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