ピックアップでジャンヌが来てくれました。
あと先ほど諦めていたインフェルノちゃんも来てくれ、気分上々です。そんな訳で第三話どうぞ。
「カルデアの連中が来たようだ」
黒に染まった空間の中で、男は告げる。
「とうとう来たのね」
その場には3人の男女がいた。彼らは、言ってしまえば、この聖杯戦争を正しく理解している側の人間だ。
「おいおいどうすんだよ。まだサーヴァントも出揃ってないだろ?そのカルデアとかいうのが此処に来ないうちに始める手筈だっただろうに」
「あぁ。だが、やはり集め方に問題があったかもしれないな」
学園都市に流れている一つの動画。
あれは元々彼らが学園都市の人間にサーヴァントを召喚するのに使った説明書のようなものだった。機械類に強い科学側の人間に見せ、物見遊山でも構わないから人数を揃える。魔術側にはこのような文明の機器を使う人間が限られているので、目を盗んでするには良かったのだが。
「やはり動画一つ使ってサーヴァントを召喚したところで、その凄まじさはわからんか」
「仕方ないんじゃない?魔術サイドと違って科学サイドはそっち方面が疎いんだし。そもそも誰が見るかわかんない動画サイト使っての宣伝てのが不味かったんでしょ」
「なっ!お前も良い案がないからって僕が捻り出した案に乗っかっただろ!後から文句ばかり…!」
「まぁまぁ、その辺にして起きたまえ。…それより◾︎◾︎◾︎、ライダーの調子はどうだい?」
参謀役と思わしき男が尋ねる。
「あっ?…問題ないよ、勿体無いとはいえ令呪一画使って回復したんだ。怪我ももう癒えてる」
軽く手の甲をみせる形で振る。するとそこには、ニ画まで減った令呪があった。
「ふむ…●●●、ランサーの調子は?」
「こっちも概ね一緒。魔力消費もようやく慣れてきたわ」
少女も同様に、令呪を見せる。
「ところでどうするの?第2プランも早速雲行きがあやしくなってきたけど。あの白いの、結局どっか行っちゃったんでしょ?」
「そちらに関しては予想外の結果もあったが…まぁ、概ね問題はないだろう。転がしておく分には支障もない」
「じゃあこれからだな」
男…ライダーのマスターは楽しそうに笑う。待ち焦がれた日がついに始まる、そう言いたげに。
「いよいよ、僕たちの聖杯戦争のスタートだ」
◇◆◇◆◇◆
学園都市に入った立香達はまず、その街の『中身』に目を奪われた。
「凄いです!見たこともないほどの高い建物がたくさん!」
『たしかに中の技術がこれほどとは…』
「学園都市の中と外じゃ技術が20年違うと言われているからね。此処ほど進歩した場所はないだろう」
ようやく外に出たからか、煙草を吸いながら説明するステイル。エミヤはその姿を横目に見ながら、
「さて、ではまず何をするべきか。情報が少ない以上、出来ることは限られているが…まずは寝床だな」
「あっ」
すっかり失念していたとばかりに声を上げる立香。そもそも近未来的な街に目を光らせていたが、ここは大都会。フランスの時のように野宿もできず、かと言ってホテルを取れるような賃金もあまりない。そもそも不法侵入の為、ホテルなんかでも不味いかもしれない。
『あの〜、ステイルさんはいったいどちらにお泊りになるご予定でしょうか?』
「僕は
『そ、そんなぁ!君にはこんな見知らぬ場所にいたいけな少年少女達を放り出す気かい!鬼!悪魔!』
「ロン毛!」
ついノリで言ってしまう立香であった。
「そもそもその辺の準備はそちらでなんとかしなよ。僕はそこまで面倒見る気は…ん?」
ふと、懐から鳴り出したスマホを取り出し、画面を見たステイル。するとものすごく複雑そうな顔をした後、その着信を拒否った。しかし、すぐに再び鳴り出す携帯を見て、ため息をすると、観念したように携帯に出た。
「何の用だ土御門」
『や〜っと出たぜいステイル。こっちだって忙しい合間にかけてるんだから、ちゃんと出ろっての』
「そうか、こっちも暇じゃない切るぞ」
『待て待てって!学園都市にはもう入ったのかにゃー?というか、隣のカルデアさん御一行に変わって欲しいぜい』
「どこから見てるんだお前は?」
面倒くさそうに、取り敢えず手元のスマホを立香に投げつけるステイル。落としそうになり慌てる立香だったが、どうにか受け取ると電話に出る。
「あのー…?」
『はじめましてだぜい。俺はステイルの同僚の土御門ってもんだが、軽い取引をしないかにゃー?』
「取引?」
語尾や方言といった特徴な口癖で喋る電話越しの人物に眉をひそめつつ、話を聞く。
『俺たち『必要悪の教会』がアンタ達の学園都市での衣食住をバックアップしよう。その代わり対サーヴァントのプロフェッショナルのアンタ達の情報、戦力を借りたい。悪い話じゃないだろう?』
交渉と呼ぶには、破格の条件だった。もとよりこちら側にはほとんどデメリットはないに関わらず、向こうは無償でサポートしてくれるという。
「どうして、そこまでしてくれるんですか?」
『何、簡単な話だよ』
突然、電話越しの土御門の口調が変わった。少し背筋がひやりとする程の威圧感が伝わってくる。
『『必要悪の教会』としては、突然現れた奴に何人かやられた上、こちらの情報をいくつか持っていかれた。人様の家を土足で荒らされる様な真似をされて、何もできませんでしたじゃこっちの沽券に関わるってだけの話さ』
「……」
『こちらの事情に巻き込む以上、対価としてはむしろ当然だにゃー』
「…分かりました、ありがとうございます」
ステイルに電話を返し、立香はこれからを考える。聖杯戦争、ということは多くて7人のサーヴァントと倒す羽目になる。いつも通りなら、現地のサーヴァントと協力して戦うのだが。
(何でだろう。今回は誰も
何故そう思ったかはわからない。だが、立香はそんな予感めいたものが胸の中で湧くのを感じた。
ロマンは話が一区切りついたのを見計らって、ステイルに質問する。
『ステイル君。君や土御門君のほかにこの学園都市に来ている人員はいないのかい?』
「一応後続の増援がくることにはなっているが、あまり大した人数ではないだろう。だが、折角だ。こちらの人間に迷惑をかけても問題のない奴がいる。そいつも使おう」
随分勝手な言いようだが、ステイル曰く、奴の場合はこちらから呼ばなくても、巻き込まれるレベルで『不幸』だから問題ない らしい。
「誰なんだね、その人物とは?」
「ただの学生だよ。もっとも成し遂げたことはその範疇を超えているが」
「上条当麻。第三次世界大戦や魔術結社『グレムリン』との抗争を終わらせたくそったれさ」
◇◆◇◆◇◆
「お腹が空いたんだよ」
銀髪碧眼のシスター、インデックスのそんな言葉を聞き、自身の体躯以上に大きな新聞を読んでいたお人形サイズの少女、オティヌスは顔を上げる。
「今は昼の2時だと思うが。つい先ほど食べたばかり、というか朝も大量に食ってなかったかお前?」
「あんなしっそな料理で私のお腹は満たされないんだよ!」
家主のいない昼の学生マンションの一室。
テレビから流れる『第7学区の王子様!?噂のストリートミュージシャンに電撃インタビュー!!』というニュースをBGMに、インデックスは不満を募らせていく。
「そもそもとうまは年頃の女の子の食欲を舐めすぎなんだよ!」
「いや、お前が食い過ぎなだけだろう。炊飯器とやらの中身が10分で完食された時のあいつの顔を見たか?顔面蒼白だったぞ」
「あれくらい、あと三回はいけるんだよ!」
「太るという概念がないのかお前には」
よよよと泣き崩れる真似をするインデックスを呆れた目で見るオティヌス。
かたや『魔神』になる為に必要な10万3000冊の魔道書を記憶する者、かたや『魔神』の領域に到達した者と、2人揃えば世界の一つや二つ滅ぼせそうな彼女たちが織りなす日常は、非常にゆるりとしたものだった。
「うぅ〜、今ならとうまのウニ頭でさえ美味しくいただける気がするんだよ」
「いつも噛り付いているだろうお前は…仕方ない」
「?」
「そこのタンスを開けて、その下の所を見てみろ」
言われた通りにしてタンスの段の下を覗き込むインデックス。するとそこにはテープで止められた白い封筒があり、中身は折りたたまれた千円札だった。
「こ、これはっ!」
「あの人間がお前が駄々をこねた時用に用意していた緊急装置…即ち、ジャパニーズへそくり!それで何か買ってくるといい、土産はいらん」
「わーい!ありがとうなんだよおてぃぬす!」
満面の笑みで忙しなく出て行くインデックス。一つ懸念があるとすれば、あの世間知らずが果たして一人で買い物が出来るかということだが、流石にそこまでは知らない。いそいそと新聞を読む作業に戻ろうとしていたオティネスだったが。
「にゃ〜お」
「!?」
天敵が目を覚ました。
おい待てインデックス!せめてこの猫連れて…っ!ぎゃあぁぁああ!? という悲痛な叫びは残念ながら届かず。
こうして、家主と居候が帰ってくるまでの間、オティヌスの命がけのサバイバルがスタートした。
◇◆◇◆◇◆
上条当麻は、第7学区の街を歩いていた。
小萌先生からのありがたい臨時補習を言い渡され、つい4時間前に同居人達に昼飯を作って出てから、もう2時になろうとしていた。
(インデックスのやつ、また駄々こねてねぇだろうな。その辺はオティヌスに任せたから大丈夫と信じたいが…)
ちなみに今日の昼の献立は、特売のもやしで作った炒め物、これまた特売で獲得した豆腐の味噌汁、家で作っていた大根の漬物と真っ白なワンプレートだった。
「急いで帰らね…ぇと…?」
何やら騒がしい声が聞こえ、視線を向けるとそこには女学生の集団がいた。しかし、その女学生達が見つめる先にその男はいた。
「___♪」
透き通った歌声に、目を見張るギター技術。更に、王子様の様な甘いルックスと、女性達が姦しくするのもわかる。しかし、その実力は素人目に見ても上手く、他にも数人聞き入っている人がいる。
(凄ぇな…)
ストリートミュージシャンというものを初めて見た上条は、最初は物珍しく眺めていたが、次第に聞き入っていた。
「__!ご清聴ありがとう!」
歌が終わり、自然と拍手が鳴り響く。上条も釣られて拍手をするが、男は恭しく頭を下げている。演奏を聞いていた野次馬がギターケースに沢山のお金を入れているのを見て、眩しい笑顔を向けている。そして、聴衆が散り散りにその場を離れて行く中で柄の悪い3人組が近づいていった。
「おうおうお兄さん最高だったぜ!」
「あぁ、ありがとう。そう言ってもらえると俺も嬉しいよ」
「いやいや。…だがよ、てめーの自己満の演奏で金を取るなんてのは、ちと虫が良すぎねぇか?」
「…それは、そうだな」
「だから、その金。俺らが代わりに募金しといてやるよ」
「そうそう社会貢献ってやつ?」
下卑た笑みを浮かべながらそういう3人に、上条は珍しく苛立ちを覚えた。余韻をぶち壊された気分でその3人に近づこうとすると。
「悪いが、それは出来ない」
「あァ?」
「これは俺の演奏を聴いてくれた彼らが、俺自身の価値を認めてくれた証でもある。そんな大事なものをおいそれと渡すわけにはいかない」
男のその貫禄に思わず一歩退がる男達。しかし、それでも喰ってかかろうとする様子を見て上条は。
「おーい
「「「!!?」」」
したり顔でそちらを見ると男達は「覚えてろよ!」とテンプレートな叫びを上げて、去って行く。
警備員なんかいねーよと呟きながら、急なことで呆然とした男の側に近づき、話しかける上条。
「悪い、余計なことしたか?」
「あぁ、あれは君が…そんなことないよ、ありがとう。助かったよ」
「いやいや上条さんは大したことはしてないですよ。アンタの演奏へのほんの礼代わりだ」
話しかけて分かったが、意外と気さくな人となりだ。しかし、気品溢れる其の姿はやはり現実味がない。絵本の中からでも出てきた様だった。
「そうだ。不躾で悪いが、この辺で小さな女の子の服を買える場所はないか?」
「?近くにショッピングモールがあるけど…どうしてまた?」
「家にいるマス…妹の為にね。このお金もそのために集めていたようなものなんだが」
ジャラリと瓶に集めた金銭を見せる。路上演奏で集めたにしては凄い額だ。
「うぉ、凄いな。バイトとかじゃなくて全部ストリートでか?」
「早めにまとまったお金が欲しくてね。この短期間でこれだけ集めるとは予想外だったが」
たしかに人気の出そうなルックスなので、下手なバイトよりは稼げそうである。
「それで、よければそこまで案内してくれないか?無理ならいいんだが…」
「あー…いいぜ、お節介の延長だと思ってくれ」
「本当か!助かるよ!」
一瞬家に残したインデックス達が頭をよぎったが、昼飯もたくさん作ってきたし、保険の金の隠し場所もオティヌスに教えているので大丈夫だろう。
「上条当麻だ。よろしくな」
「とうま…トウマか、よろしく。俺のことは…故あって本名は明かせないが、セイバーと呼んでくれ」
知らず知らずの内に。
やはり、上条当麻はこれから起こる『不幸』への第一歩を踏み出した。
本筋と関係ないインデックス&オティヌスパートが一番書きやすかったです。
感想、評価など待ってます。