特異点α 『超常科学舞台・学園都市』   作:チラシ寿司

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更新ペースがだんだん遅くなってきました。そして投稿できてもあまり話が進んでなく…これからも精進します。
PS.今年の正月ガチャはどちらにしようか、皆さんはどちらにしますか?


第七話・戦いの後

「所、長手を…!」

 

 嫌な記憶がフラッシュバックする。

 

 年齢の割には大人びていて、けどどこか暖かな部分もあった彼女。厳しさもあったし取り乱す所も見たけど、自分よりもしっかりしていた彼女には尊敬の念を抱いた。

 

 彼女は俺が最初に救えなかった人間だ。

 

 凛々しい顔を涙でぐちゃぐちゃにして、遠く離れていく彼女の手を俺は掴むことすら出来なかった。

 

「いやぁ、いやぁあああ‼︎」

 

 彼女の叫びが耳にこびりついて離れない。

 

 諦めろ、どうあがいても彼女は救えなかった、お前のせいじゃない。

 心が罪の意識を正当化しようと、甘い誘惑をしてくる。

 

 

 

 あれは地獄の入り口に過ぎなかったのだと、フランスの特異点に降り立ってから思い知らされた。

 

 竜の魔女、ジャンヌ・ダルク・オルタ。

 煉獄の炎を燃やす彼女の憎悪に沢山の人が倒れていった。

 竜が蹂躙し、狂った英霊達が血に染め上げる。

 

 ここでもまた救えない人達がいた。それどころか、俺自身何回も死に目にあった。

 たくさんの助けがあったけど、たくさんの犠牲も出たのだ。

 

 

「カルデアのマスター」

 

 そして俺は竜の魔女と相対した。

 

 

「あなたはいったい何のために戦うのですか?」

 

 

 

 

 …あれ?

 あの時俺は、なんて答えたんだっけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 学園都市に来て2日目の朝。

 藤丸立香は学生寮の一室で目を覚ました。

 

 

「おはようございます先輩」

 

 ベッドから起き上がると、聞き慣れた後輩の声が耳に届く。それと同時に、朝の味噌汁と焼いた鮭のいい匂いが鼻をくすぐる。意識を覚醒させた立香はキョロキョロと辺りを見渡す。

 

「おはようマシュ。エミヤはどこ行ったんだ?」

 

「エミヤさんは上条さんとインデックスさんの部屋に。どうやら上条さんが朝早くから補習…?というもので出かけているらしく、代わりに朝食を作りに行ってます」

 

「ああそれで。マシュが朝ごはんを?」

 

「はい。エミヤさんはもちろん、ブーディカさんやキャットさんから学んだ料理スキルを今こそ見せる時だと思いまして」

 

 白いエプロンが眩しいくらいに似合う後輩のそんな言葉に自然とこちらも頬が緩む。

 

(新婚みたいだなーこの光景)

 

「ですので先輩、もう少々お待ちください。あと…先ほど少しうなされてたような…大丈夫ですか?」

 

「ん?…なんでもないよ、マシュ」

 

 心配かけまいと笑みを浮かべながら、立香は昨日の出来事を思い出す。

 

 あの激闘のその後を。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「ここまで来れば平気だろう」

 

 バーサーカーを退けた一同は、上条当麻が住む第七学区の学生寮付近にまで来ていた。

 

「ランサーとそのマスターも追ってくる様子はない。バーサーカーは…無力化はできなかったが暫くは大人しくせざるを得ないだろう」

 

 苦虫を噛み潰したような上条を見て、セイバーは申し訳そうに言う。

 

 実際問題、バーサーカーやランサーといった脅威を退けるのにセイバーの行動は間違っていなかった。だがそれでも上条にとって見知った彼は見捨てられるような存在でもない。

 

「……」

 

 しかし、それで全滅に繋がるようなら上条の判断はやはり甘いのだろう。それが分かっているからこそ、彼自身も何も言わずに黙っている。

 

「…で、今日の所はお開きかい?ひとまずの脅威は去ったんだ。僕はそれでも構わないが」

 

「そうもいかんな」

 

 横合いから声が聞こえ視線を向けると、闇に映える赤の外套を身に纏った人物、別行動中だったエミヤがそこにいた。

 

「今回は利害の一致だから共闘もしたが、そこのセイバーは未だ素性が知れぬ身。このまま帰す訳にもいくまい」

 

「エミヤさん、でも…」

 

「今回の特異点でこれまでと違う点が分かるかマシュ?平行世界やら超能力者やらも気になるが、そもそも大前提に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。いくらセイバーが好意的でもマスターが令呪で強制すれば危機的な場面で寝首を掻かれるかもしれん」

 

 厳しい意見をぶつけるエミヤにマシュは黙る。

 

 エミヤも決して嫌味を言っているわけではない。ただマスターやサーヴァントとしてはまだ発展途上の二人に代わり冷静な視点で忠告をしているのだ。その辺に関しては幾多の経験があるステイルや上条も思うところがあるのか口には出さない。

 

「俺のマスターに関してはその心配はない…と言っても信じないだろうな。なら俺の真名を教えよう」

 

 だが、よりによってセイバーからなんのためらいもなくそんなことを申し出てきた。

 

『は、えっ、はぁあ⁉︎真名だって⁉︎そんな大事なことあっさり教えていいものじゃないだろう!』

 

「そこまで驚くことか?そこのアーチャーの言うことはもっともだし、俺も君達に助けられた。見返り、というか礼としては当然のことだ」

 

 ロマンの驚く声にもなんのその。セイバー自身はあっけらかんとした様子で意見を曲げることもない。そうするよう仕向けたのはエミヤだが、思った以上にあっさりと話が進んでいることに内心驚いている。

 

「なぁ、真名ってなんだ?」

 

「えっ」

 

 唯一こちら側の事情を知らない上条が立香に問う。確かに巻き込んでしまった以上、ある程度の事情は伝えなければならないのだが、いかんせん同年代の男子と話すのはカルデアに来る以前だ。サーヴァントでいうと風魔小太郎等が年が近いが、サーヴァントとマスターという立場の違いもある。少々緊張気味になりながらも教える。

 

「えっと、サーヴァントっていうのは過去に偉業を成した人、つまりは英雄が魔術師によって召喚された者なんだ。真名ってのはそのサーヴァントの名前、クラス名とは違う英雄本来の名のことだよ」

 

 拙い説明だが、なんとか伝わっただろうか。噛み砕き過ぎてないか不安になるが、上条はひとまず納得したようだ。

 

「英雄…セイバーは外人ぽいし、海外の英雄ってことか?」

 

「はい、おそらくそうでしょうね。地域や神話、伝承等様々な条件下で召喚されるサーヴァントですが、セイバーさんは比較的ポピュラーなところかと」

 

「神話…なぁもしかしてそれオーディンとかトールとかもいたりする?だとしたらちょっと笑えねぇんだけど」

 

「?いえ、そういった神霊クラスの顕現は難しくあまり例を見ないかと」

 

「そ、そっか。安心した」

 

「?」

 

 そんな会話が傍で繰り広げられてるが、立香達もセイバーを注視する。ランサーと渡り合った英雄、その真名を聞くために。

 

 

「我が名はリチャード!ノルマンディーの君主にしてイングランドの王、『獅子心王』の呼び名でも知られている英霊だ」

 

 

『獅子心王…!ライオンハートのリチャードか!そりゃ凄い訳だ!』

 

 サーヴァントの知識が豊富なロマン、マシュはもちろん立香や上条も授業で聞き覚えのあるその名に驚愕する。

 

「とはいえ今回の俺は王しての立場は少し控えさせてもらうつもりでね。ただのしがないサーヴァント一匹と思ってもらっていい」

 

 両肩を竦めるような動きをするセイバーだが、立香はその両手に持つ荷物に気づいた。やけにボロボロだが、袋が機能しているところを見ると中身もおそらく無事だろう。

 

「あぁ、これか?戦闘の余波で何着か使い物にならなくなったがそれでも無事なのもあるからな。決して裕福とは言えないマスターの元に召喚されたからには、使えるものはなんでもだ」

 

「…ん?マスターってのがセイバー達の雇い主みたいなもんなら、つまりセイバーの言ってた妹は…」

 

「あぁ、俺のマスターだ。トウマを巻き込むまいと隠していたが、それも無駄になってしまったな」

 

 頬をかき苦笑いを浮かべながらそのように話すセイバー。しかし、マスターのことを話す彼はどこか楽しげで、既に幾らかの信頼関係を築いていることがうかがえた。

 

「共に行動するということはできないが、俺のマスターは信頼における人物だ。それはこのセイバーが身を持って保証しよう」

 

 セイバーは凛々しい瞳でこちらを見ながら、宣言する。紛れもなく王としてのカリスマを放ちながら。

 

 

「そして俺のマスターを勝たせる。それが俺の今回の聖杯戦争にかける願いだ」

 

 

 

 

 

 

「やー、初知り顔が多いにゃー。遅かったじゃないか、皆の衆」

 

 語尾がにゃーの怪しい金髪サングラス男に遭遇。カルデアの警戒度MAX!

 

 

 マスターの元に帰るセイバーや学園都市滞在用のアジトへ移ると言うステイルと別れた後、残ったカルデアの3人は上条とインデックス案内の元、ひとまず彼らが住む学生寮まで同行した。サーヴァントと再び遭遇しないとも限らないので、2人の護衛も兼ねての同行だったのだが。

 

「土御門?何してんだよこんな時間に」

 

「仕事相手の出迎えのつもりだったんだけどな。ていうか、カミやんはこっちから巻き込む前にもう関わってるとは、相変わらずの『不幸体質』だにゃー」

 

「…土御門?」

 

 最近聞いた名前に反応見せる立香。というか数時間前に電話で話した2人目の協力者、土御門元春その人だった。

 

「改めてよろしくだぜい『カルデア』のマスターさん。とりあえずあんた達の寝床は此処の寮母に話をつけて、空き部屋を2つほど貸してもらえることになった。好きに使ってくれ」

 

「あっ、ありがとうございます!」

 

「気にしないでくれにゃー。俺としても『必要悪の協会』としても、これから頼りにする協力者に恩を売っといて損はないからな」

 

 当面の住居が確保できただけでも、これからの生活は楽になるだろう。土御門に礼を言い、上条にも改めて頭を下げる。

 

「今日はありがとう、上条さん。俺達だけじゃ危ない場面はいくらでもあった、助かったのはセイバーやステイルさん、それに貴方のおかげだ」

 

「いいっていいって、俺は俺のやりたいようにやっただけだしな。あと、さん付けってのもむず痒いし呼び捨てでいいよ」

 

「じゃあ改めて。俺は藤丸立香、よろしく上条」

 

「おう、よろしくな藤丸」

 

 親しげにお互いを呼び合う2人を見て、マシュはこう思う。普通の、年相応のやりとりや友人。カルデアに来る前は当たり前だった藤丸立香の日常はこのようなものだったのだと実感する。

 

(その日常が少しでも早く取り戻せるように私は…)

 

  藤丸立香の盾になる。

 強い決意を胸に抱き、マシュはそう自分に言い聞かせた。

 

「とりあえずもう遅いし俺は自分の部屋に帰るとするかにゃー、舞夏お手製の特別カレーが俺を待ってるんだぜい!」

 

「ご飯…!」

 

 土御門のその言葉に、これまで静かだったインデックスがピョン!と跳ね、上条の肩がビクッ‼︎と震える。

 

「そうなんだよとうま!ご飯だよご飯お腹ぺこぺこなんだよ私は!」

 

「えーと…そのインデックスさん?実はですね、上条さんも気をつけてはいたんですけどね?」

 

「?」

 

 引きつった笑みを浮かべる上条に疑問の眼差しを向けるインデックス。そして気づいた。ここまで誰も指摘しなかったが、上条の持つ買い物袋らしきものの中身の何かが潰れたような染みが付いていることに。

 

「いやあの、セイバーの服なんかが無事だったからこっちも大丈夫かなぁって思ったんですけどね、どうやら向こうほど頑丈な中身じゃなかったぽくて」

 

「……」

 

「中の卵やら牛乳やらが潰れてほかの食材も浸されて使える状態じゃなくてですねその」

 

「……」

 

「で、でも非常用に買った缶詰が2つくらいあるから全くダメって訳じゃなくてだな!それも穴空いたやつとかあったけど大丈夫食べれる食べれる!」

 

「…とうま」

 

 

 

「遺言はそれだけ?」

 

「優しくしてほしいでごんす」

 

 

 

 ガッブゥウウッ‼︎という鋭い音と共に。

 夜の学生寮に絶叫が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「痛そうだったなぁあれ」

 

 あの後は確か、上条の部屋に行ったら猫に咥えられた女の子の人形に上条が絶叫したり、冷蔵庫の余り物と缶詰だけで作った絶品料理をインデックスに振る舞うエミヤだったりといろいろ見た気がする。

 

「上条さん達への事情説明は昨日済ませましたが、先輩はどう思っていますか?」

 

「うん…やっぱり上条にはこれ以上迷惑はかけられない」

 

 会ってそれほど経っていないが、立香もマシュも彼の人となりを理解したつもりだった。上条当麻は良い人だ。そんな彼をいくら何でもこちらの事情に積極的に巻き込ませようとは思っていない。サーヴァントとの戦いはいくら凄腕の魔術師でも命を落としかけない危険があるのだ。ただの高校生の彼にそれを強いるのはやはり酷なことだ。

 

「けど、そもそも現状こちらの戦力が不足しているのは事実です。今回はまだ聖杯戦争に参加しているサーヴァントとしか遭遇していませんが、どの方も凄まじい強さです」

 

 昨日出会った3人のサーヴァントを頭に思い浮かべる。セイバー、ランサー、そしてバーサーカー。どのサーヴァントも一騎当千と評してもおかしくない実力者ばかりだった。守りの要のマシュとアーチャーのエミヤだけでは1人相手ならともかく、昨日のような多人数を相手にすると厳しいだろう。

 

「結局リチャードさんも協力体制に首を振ってはくれませんでした。今までの特異点のように現地に召喚されたサーヴァントの方達を頼る、という選択肢もありますが」

 

「まだ誰とも会えてない現状、そっちばかりをあてには出来ないよな…」

 

 それに昨日感じた予感、前兆めいたものも気になる。確信はないし杞憂だと思うが、どうも後ろ髪を引かれる感じだ。

 

「なら取る策は1つかと」

 

「?」

 

「聖杯戦争に参加している残りのサーヴァント、ライダー、アサシン、アーチャー、キャスターの誰かと手を結ぶんです」

 

 マシュからされた提案は確かに現実的なものだった。レイシフトをそう何度も繰り返しは出来ないのでカルデアからの戦力補強も難しいだろうと考えていたそれはここからの戦いを切り抜ける上でも必要なものだ。

 

「協力の候補は搦め手が得意なアサシンやキャスターではなく、機動力に長けたライダーか三騎士で能力ランクの高いアーチャーが妥当かと」

 

「エミヤがうちにいるのも考えると、やっぱり一番はライダーかな」

 

 方針をマシュと2人で決めていると、ドンドンドン!と部屋のドアを叩く音が聞こえてきた。そしてドアを開けるとそこには何やら焦った様子の土御門元春がいた。

 

「おい、カミやんが何処へ行ったか知らないか?」

 

「?上条さんなら朝から補習に行くと」

 

「ちくしょう、やっぱりか!」

 

「あのどうかし…」

 

「ないんだよ」

 

 この時、立香とマシュは自分達はとんでもない思い違いをしていたのだと気付かされる。

 

「今日は休校だ、補習なんてないんだよ」

 

 上条当麻はどれだけ危険でも、人のために動くのに何の躊躇もない善人だということに。

 

 

「あの馬鹿、1人で一方通行の奴を探しに行きやがった!」

 

 

 

 

そして。

 

 

「滝壺ー、ちょっと出かけてくるわ」

 

「?どうしたのはまづら。さっきの電話?」

 

「あぁ、ちょっとな。スキルアウト時代のツレと会ってくるだけだから心配すんな。帰ったら今日の埋め合わせはするからさ」

 

「うーん、わかった」

 

「悪りぃな、そんじゃ出るわ」

 

「はまづら」

 

「?どした?」

 

「いってらっしゃい」

 

「…おう、行ってくる」

 

 

 動く。

 

 

 

「ではしばらくランサーを借りるよクロエ」

 

「言っとくけど、こっちが困ったら容赦なく令呪使って呼ぶからね」

 

「ああ、そこまでの事態になれば、こちらも困るからね。好きにするといい」

 

「心配ない、すぐ駆けつけるマスター」

 

「…まぁ、それならいいけど。じゃあ私はしばらく留守にするから」

 

「ていうかお前はどこ行く気だよ」

 

「観光よ観光、まだこの街をゆっくり見れてないからね。まぁ、退屈じゃないといいけど」

 

 

 動く。

 

 

 

「いかがでしょうか、介旅様。こちらの商品は」

 

「ははっ、いいじゃないか!これで僕のアサシンはより強くなるってことだろ」

 

「はい、それはもちろん。こちらのカード数枚はサービスとしてプレゼントさせていただきます」

 

「気が利くじゃないか。でもどうして僕だけにこんなことを?」

 

「簡単なことです。この聖杯戦争の勝者の資質をもつ貴方ならばきっとこのカードを有用に使っていただけるだろうという私の考えでして」

 

「へぇ見る目あるじゃないか!当然だろ、この僕が優勝に決まってる!」

 

「その自信、大いに結構!私も投資した甲斐があるというもの」

 

 

 

「是非ともこのエインズワースをご贔屓に」

 

 

 

 それぞれの思惑を胸に。

 彼らもまた動き出す。




学園都市の聖杯戦争
セイバー:リチャード
アーチャー:未召喚
ランサー:カルナ
ライダー:不明
キャスター:不明
アサシン:不明
バーサーカー :不明
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