拙い文章です
内容についての批判やアドバイスをください
これはある魔術師のありふれた日常
12月中頃の良く晴れた日
寒さから逃れるため素早く喫茶店の扉を開け中に入る。
カラン
扉を開けると聞き慣れた鐘の音が鳴った。
「いらっしゃいませ。好きなところにお掛けください。」
カウンターから良く通る声が聞こえてきた。
俺はその声にしたがって一番ドアから遠く、窓際の二人がけ用の席についた。
すぐ後にウェイターが水を持ってきたので紅茶を一杯頼み、約束の時間が来るのを待つことにした。
店はどこにでもありそうな喫茶店だが、派手さを極力廃した内装と町を見渡すのに適した大きな窓を備えたこの店が俺のお気に入りだった。
店はここ冬木市の中心に位置している。
時刻は午前11時前だが、外の人の往来は激しい。
(まあ、日曜日でこんな天気が良いんだから当然か。)
そんなことを考えながらどうしてここで人を待っているのかを思い出す。
2日前、俺こと衛宮士郎は遠坂凛と喧嘩をした。
あれは何が原因で喧嘩したんだっけか。
確かうちにご飯を食べに来ていた遠坂に、密かに集めていた正義の味方カード(5枚入り1パック150円)を見られただけでなく、それをこっぴどく馬鹿にされたことが始まりだった。
そこで終わればよかったのだが、今までイジメられていた腹いせもあって遠坂の機械音痴について少し(?)馬鹿にしたら
「へ~、あーそう。」
と低く呟いて表情を一切消し去り、泣く子も黙るであろう雰囲気を身に纏い、さっさと家に帰ってしまった。
「さすがに言い過ぎたかな。」
少し後悔する。でも正義の味方ってカッコいいだもん。
そして今朝、遠坂から急に電話がかかってきた。
「おはよう士郎。今日デートだから。11時にいつもの喫茶店、いいわね?」
いつも通りの遠坂の声。だが最後の言葉は確認ではなく断定であることが言葉の圧で伝わってきた。
変に怒りを増幅せないように「はい。」とだけ答えて受話器を下ろした。嫌な予感しかない。
「もう起こってしまったことは仕方ないか…」
今さら後悔しても後の祭り。
今日はあかいあくまの言われるがままになって、機嫌が直るのを待つしかない。
俺の命の灯火が消えるのが先か、あくまの機嫌が直るのが先か。
そんなことを考えながらぼんやりと未来の自分に安全祈願をしていると、窓の外で赤いコートを着た女性が俺の前を通りすぎるのが視界に入った。
「ああ、遠坂が来たのか。」
妙な緊張と共にその女性を見る。だがその異様な姿に思わず席を立ってしまった。
カランカラーン
「それ」は一切の迷いなく俺のいる席に歩いてくる。
赤いコートに黒のミニスカート、見慣れたその姿に違和感を与えているのは耳に差し込まれた白いイヤホン。
そのイヤホンのコードはコートのポケットに続いている。
「おはよう士郎。」
遠坂は俺の狼狽具合を見て満足そうに挨拶をする。
「え、ああ…おはよう、ございます。」
まだ混乱から戻ることのできない脳はそんな呆けた挨拶を口にさせた。
「あら、そんなにこの眼鏡が似合うのかしら。」
俺の困惑具合を楽しみながら遠坂はそんなことを言う。
眼鏡?ああ、確かに赤い眼鏡が鼻の上にのっている。
いやそんなことよりも、あの遠坂がイヤホン!?
こいつは本当に遠坂なのか?
心の混乱は増すばかり。
たかがイヤホンごときでと思うかもしれないが、俺にとっては一大事。
「なに?無反応?まあいいわ、取り敢えず座りなさいよ。」
先に席についた遠坂が俺の着席を促す。
俺は一旦考えるのをやめて座る。
こういうときこそ冷静にならなければ。
「今回のデートは私がリードするからそこは安心なさい。」
遠坂はそう言い、あろうことかイヤホンのコードがつながれているスマートフォンをコートのポケットから取り出した。
俺はまたしても席を立つ羽目になった。
きっと俺はすごい顔をしていただろ。
遠坂のオーダーを取りに来た店員を驚かしてしまった。
「どうしたの士郎?今日は一段と変ね。」
そう言う遠坂の顔はニヤニヤしている。
まさしく、「あかいあくま」だ。
しかし、あの機械音痴の遠坂がスマートフォンを持っているのだ。俺もまだ持ってないのに。
「私も紅茶1つ。」
「かしこまりました。」
注文を終えた遠坂はスマートフォンを見ながら今日のデートの予定を読み上げていく。
だがそこで俺は違和感に気づいた。
スマートフォンの触り方がどこが不自然というか…
親指と人差し指で摘まんでいるあたりやはり変だ。
俺はさりげなく遠坂のスマートフォンを掴もうと手を伸ばす。
だが、俺の手は空を切る。
「なに、士郎。人の携帯電話を見ようなんて品がないわよ。」
しかし、スマートフォンを奪えないのは想定内。
「遠坂、それ電源ついてないぞ。」
適当なことを言って隙を作る。
「え!、そんなはずは…」
思惑通り動揺して遠坂がスマホを様々な角度から見ている内に、俺は遠坂が耳に付けていたイヤホンを拝借した。
奪い取ったイヤホンを素早く耳に当てると案の定、何の音も聞こえてこない。
「な、ちょっと!」
慌ててイヤホンを取り返そうとする遠坂にぽんと用済みのイヤホンを渡し、その隙に今度はスマートフォンを拝借する。
こちらは電源がついていない。
「はあ。」
思わずため息が出る。
当の遠坂は口を開け顔を赤くし 、片手を俺の持つスマートフォンに向けたまま固まっている。
さて、形勢は逆転した。
疑問を解決しなければ。
「遠坂いくつか質問がある。まず、そのスマートフォンはどこでてにいれた?
まさか…誰かから奪ったのか?」
「失礼ね!綾子から使わなくなったものを譲ってもらったのよ。この耳につけるやつも一緒にね。」
遠坂は顔を赤くしたままそっぽを向いて言う。
「こんなことをした理由は?」
2つ目で一番重要な疑問を口にする
「だって、あんなに馬鹿にされてだまっていられるかっての!」
大きな声に店員はおろか店内にいる他の客までこちらに目を向ける
「お、落ち着け遠坂」
-まずい。完全怒らせてしまった。
いやまあ、自業自得という気がしなくもないが…
「私だって携帯くらい使ってみたかったのよ…」
遠坂は両腕に顔を埋め机に突っ伏しながらボソッと呟いた。
「なら今日は携帯でも買いに行くか。」
「本当に!?」
冗談のつもりで言ったのだが、予想以上の食いつきである。
「もちろん士郎の奢りよね。」
なんでさ!
奢るって…食べ物じゃないんだぞ。いくらするのか知らないのか?
ただここで言う通りにしなければ遠坂の機嫌が直りそうにない。
確か、今時は格安スマホとか言うものがあったはず。
「ただ遠坂、機械さわるの苦手なんじゃないのか?」
「それは…士郎に使い方教えてもらうからいいもん」
…さて、貯金はいくらあっただろうか。
これからの生活上の経済的問題が頭を掠めるが、最悪俺だけ三食お茶漬けでどうにか…
「で、どうなの?買ってくれるの?」
もう答えは決まったいるかのように言う彼女は、嬉しそうにちょうど運ばれてきた紅茶を口にする。
そんな顔されたんじゃ断れるはずがないだろ、バカ。
「わかった、買うよ。」
「よし!じゃ決まりね。早速買いにいきましょうか。」
そう言って嬉しそうに微笑むあかいあくまと近い未来の財政難に頭を悩ませる魔術師の不思議なコンビ。
彼らは魔術に不似合いな文明の利器を求め昼下がりの街へ出て行った。