宝石の捌式   作:ガムラピッド

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 ・・・・はい、皆様お久しぶりです。ホントにお久しぶりです。
 ようやく最新話を更新するクズです。
 待ってくれる人がいたらホントに申し訳ございません。
 では最新話どうぞ


目覚めと浜(上)

(シング) 夕日は完全に地平線に隠れ、この国に夜が来た。なりそこない達は太陽の光を体に取り込み視覚を得ている。しかし、夜になると取り込む光も断然に少なくなるので周囲が全く見えなくなってしまう。なので大体のなりそこない達は夜は外には出ず、学校で夜を過ごすのだ。

 

 場所は変わり、ここは学校の医務室、つまりは壊れたなりそこない達の修復する場所だ。そして、その近くの柱の下に蹲る人影、顔を伏せ、体を小さく丸め一切動く様子がない。そこへコツコツと足音を立て、奥からやってくる一人の姿、この学校の医務担当であるルチルだ。ルチルは蹲る彼へ近付いた。

 

 「シング、あなたまだここに居たのですか。まさかイエローが目を覚ますまでここで待っているつもりですか?」

 

 「…………」

 

 彼は、シングはゆっくりと顔を上に上げた。しかし、その表情を何もなかった。その瞳は黒く澱み前にみた生気が感じられない。

 

 さらに

 

 「…………」

 

 シングの表情から何も見いだせないのだ。悲しみや後悔などの感情が見られない。まさに無なのだ。

 

 「……ルチル」

 

 「はい、なんです?」

 

 そんな無表情のままシングはルチルを見つめゆっくりと口を開いた。

 

 「イエローは……」

 

 「はい、イエローの体の修復自体は完全に終わりました。後は彼が目を覚ますだけですね」

 

 「そうか」

 

 シングはそんな一言、たった一言だけ呟いただけだった。

 

 「…………」

 

 「…………」

 

 喋ることのない二人、静かな風が外の草むらを揺らす音が聞こえてきた。今はただただ沈黙が二人を通んでいた。

 

 しかし、そんな沈黙はルチルの方からしてみれば

 

 (お……重い)

 

 思わず顔をしかめそうになるくらいだ。

 

 ルチルにとってこういった沈黙は好きではない。むしろ業務時以外は少し騒がしぐらいが好きなのだ。ルチルだってよく喋るくらいだ。だが、問題はシングとのコミュニケーションの取り方だ。ルチル自身、まだシングとそれほど会話をしていないのだ。だが、これはシングがルチルを避けているわけでなく、シングは言葉数が少なく、続けようとしてもすぐに切り上げてしまうのだ。故にルチルはシングとあまり会話をしていない。というか、シングが皆とのコミュニケーションを取っていないのだ。

 

(しかし……)

 

ルチルは考える。

 

(今回の件、先生が駆け付けた頃には月人は倒されていた。現状について聞いてみると月人に遭遇したイエローは時間稼ぎの中で壊されてしまった。そこへ通りかかったシングがイエローを助けた。聞いた限りでは十分に考えられる。しかし……)

 

ルチルは横にいるシングに目を傾ける。彼は未だにうずくまっているままだ。動かない姿はあの浜にある宝石(なりそこない)のようであった。

 

(いえ、彼の場合は金属ですかね)

 

などと考えながらイエローを修復を行っていた時を思い出す。

 

(イエロー)の断面、あれは明らかに()()()()()()()()()()()あれは……)「ルチル、シング!」

 

自分達に掛けられた声により、思考の海を漂う中で引き上げられたルチルは声の主を見る。

 

「おやジェード、貴方がこちらに来たと言う事は」

 

「ああ、そうだ」

 

ジェードは来た方向を向くと

 

「イエローが目を覚ました」

 

「!!」

 

それを聞いた途端にシングは

 

「あっ!おいシング!!」

 

シングは顔を上げ、駆け出した。

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

イエローが目を覚ました。

 

そう聞いた途端、私は走り出した。

 

廊下を駆けていく中である考えが浮かんでいた。

 

(何故私は走っているのだろうか)

 

イエローが目を覚ましたと聞いた時、私は何も考えで走り出した。

 

自分自身にも分からない。体が勝手に動いたとしか言えなかった。何も考えないままイエローのいる場所へと向かった。しかし

 

(私が会う資格などないだろうに……)

 

あの時、私はイエローを壊してしまった。そのことは変えようのない事実だ。例え修復ができる体だとしても、直る体と知っていてもだ。

 

(そんな私が、一体どんな顔で会えばいいと言うのだ)

 

なのに自分の足は止まる事はない。

 

イエローに謝る為?それとも状態を見て自分が安心したい為なのか、そんな考えが尽きぬがその答えはまとまらず、ただただ歩くのみであった。

 

そして、

 

「あ・・・シング」

 

寝台から上半身を起き上がらせ、こちらに気づいたイエローの前に立っていた

 

「・・・・・・イエロー」

 

シングはイエローの次の言葉を待っていた。シングの顔は怒られている時の子供の様な顔であった。

 

この時シングはイエローからは怒りの声が飛んで来ると考えていた。何故自分を壊したりしたのか、自分に気づいていなかったのかと、それらに対しシングは何も言わないつもりでいた。

 

そのとうりなのだから何も言える事はなく、罵倒も何もかもを受け止めるつもりでいた。

 

だが、イエローを発した最初の言葉は

 

「いや~・・・ごめんねぇ」

 

 「・・・・・・は?」

 

謝罪であった。

 

「まさか、自分がバラバラになるなんて思わなくって、何されたか覚えてないけど」

 

「わ、私は」

 

「シングが追っ払てくれたんでしょ?ありがと」

 

シングは何も言えなかった。本人は何も覚えてないと言っている。黙っていれば指摘されないかもしれない。だが、本当にそれでいいのか?

 

イエローの体を破壊してしまったのは事実なのだ。それを咎められないなどと、それでいいのか?

 

「本当に助かったよ。またこれかもよろしくね」

 

「・・・っ!!」

 

罵倒されるどころか感謝されている。シングの心の中には困惑しかなかった。

 

「私は、私は!!」

 

何も言い出せなかった。あなたを壊してしまったと素直に謝罪したい。なのにそれが出来ない。

 

そんな心の内をシングが一番困惑していた。

 

(どうしたと言うのだ、私は!?)

 

何も言い出せない現状、立ちつくしてしいたままのシングは

 

「あっ!ちょっと、シング!?」

 

そこから走り出して(逃げ出して)しまった。

 

◆◆◆◆◆◆

 

「こちらからシングが走ってきましたがどうかしましたか?」

 

しばらくして、ルチルがイエローの状態を確認する為に戻ってきた。

 

「お、ルチルおはよー」

 

「はい、おはようございます。どうですか、体の状態は」

 

「うん?そうだね・・・特に問題はないかな」

 

「そうですか、それは良かったです」

 

等と言いながらルチルは持っていたカルテにカリカリと書き加えていた。

 

「それで、先程の質問なのですが・・・何かあったんですかあの子と」

 

「え?あ〜実は覚えてないんだよね、ゴメ「嘘ですね」・・・」

 

「私がどれだけの体を診てきたと思っているんです?断面を見れば何で割れたか分かります」

 

ルチルはそう言いつつ、カルテから目を離さなかった。イエローを口を挟む事なくじっと見ていた。

 

「月人の矢に当たったのなら、散らばり破片が出ます。しかし、運ばれて来たあなたの状態は破片も少なく、綺麗に割れていました。何か特別な物を持っている月人かと思いましたが、先生について行った者に聞いてみると、特別、宝石を付けてはいないと聞きました」

 

などと話ながら近くにあった椅子に座り、再び話を続ける

 

「では一体誰があなたの体を割ったのか?」

 

「・・・・」

 

「あそこにいたのはあなた(イエロー)と月人、そしてシング、月人でないのなら残りはシングだけ、普通ではあり得ないでしょう。仲間が仲間を襲うのも、生まれたばかりの子があそこまで綺麗に割るのも、ですが・・・」

 

ルチルはイエローに視線を合わせ、イエローもそれを見つめ返す。何を問われるかわかっている様だった

 

「私達は知っている。覚えている。あの子が生まれたばかりの時にしようとしていた事、シンシャが止めなければ、浜にいた全員あなたの様になっていたのでしょうね、イエロー」

 

「・・・この事みんなには?」

 

「いえ、話すつもりはありません。面倒な事になるだけでしょうから」

 

その答えにハァと息を吐きながら胸を撫で下ろしていた。

 

「本当に?よかったー」

 

「何故嘘を?シングや私にはバレる事でしょうに」

 

「うん。本当は聞こうと思ってたんだけど、」

 

「けど?」

 

「あんな顔されたら聞く事聞かないよ」

 

「?」

 

ルチルは首を傾げるだけであったが、イエローの頭の中にはあの時、目覚めた時に走って来たシングの顔が浮かんでいた。

 

((シング)本当に真面目なんだろうね。)

 

あの時の彼は罪悪感、自分の行った事に対しての重さを感じ、怒られる事を望んでいるいるようであった。

 

◆◆◆◆◆◆

 

場所は変わり、ここは浜、波の音が聞こえる中、砂浜に光る物が一つ、シングだ。彼はイエローから逃げ出した後、学校を出て、ただ走った。何故、イエローに何も言えなかったのか、そのイエローが何故、何も言わなかったのか、わからない事だらけだ。ただあそこにから離れたかっただけであり、走っていた末、気づいたらこの浜にいたのであった。

 

「・・・・」

 

シングはここでも座り、ただ波を見ていた。周囲はもう暗く、砂浜で光る彼はとても目立っていた。しかし、彼はある事に気がついた。

 

(確か夜では・・・)

 

そう。本来宝石達は、日中は光を体内に吸収して、活動している。しかし、光を取り込む事ができない夜は皆学校に帰り、眠りに付く。

 

しかし、シングはそんな事はなかった。前々から気付いていた。自分に他の皆と同じ様に眠気を感じる事がない。皆を真似して横にはなったが、寝付く事はなかった。

 

(・・・・)

 

その事に気が付いたとしても、シングはただ自虐的に笑うのみであった。

 

他の者とは異なる金属の体、それによる睡眠要らずであり、自身の腕から出した謎の攻撃、自身の体でありながら多くの疑問、そして何よりも

 

「私は・・・」

 

頭から離れない誰かの記憶、これは自分ではない。記憶に映る奇妙な人物も全く知らない。なのにそう言い切れない。こびりつく様に頭から離れない。シングに記憶にない何か、シング誰よりも

 

「私は、一体何なのだ・・・!」

 

一番自分が怖かった。

 

 

 

 

 

ザク・・・ザク・・・ザク

 

 

 

 

 

そんな時、砂を踏む音が聞こえる。音はこちらに、シングに近づいていく

 

「・・・おい」

 

そんな声が聞こえた。

 

呼びかけ声に気が付き、シングが声の方を向くと

 

「お前、こんな所で何やってる」

 

赤い髪をし、周りに銀色の球体を浮かばしている宝石がそこにいた。

 




以上です。
次はどれだけかかるからわかりませんがよろしくお願いいたします。
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