雪風と狩人様   作:照喜名 是空

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ヤーナムの狩人とハルキゲニアの小さな狩人

こんにちわ、乙女よ。

 

「あなたは・・・・・・何?」

 

何、か・・・・・・ただ狩人と呼んでくれ。わかりにくいならば「カインの」とか「月の香りの」とか近しい者は呼ぶよ。

そうさな、ここでの言い方をするならパルファン・ド・リュンヌ・ラ・シャスイーズ・ド・カインハーストになるのかな?

 

「・・・・・・貴族?」

 

まあね、没落貴族で本家を頼りに都会に行ったらなんと本家は本家でお取りつぶしにあってね。

女当主と召使いが十人そこら。でっかいお城にそれだけだ。泣けてくるね、実際。

まあ、そんなわけでそこの騎士として働いていた事もある。だが今はただの狩人の助言者に過ぎないさ。

 

「そういうことを聞いてるんじゃない。あなたは知らないはずのことを言った。

そしてあの黒髪の狩人の師匠だとも。只者じゃない。一体、何?」

 

貴族なら魔法くらい使えるんだろう?ここでは。まあ、私の国でも似たようなものはあるのさ。

だからいろいろ見える。知りたいことも知りたくもないこともね。

ただ狩りの中で折れずに屍を積み上げ続けただけだよ。だから戦い方なら教授できる。

ああ、薬かね?魔法を使い、没落したとはいえ貴族ならそのくらいは宝箱の奥にしまってあるものさ。

 

「・・・・・・信用できない」

 

何が?教師が帰った後に君にだけ囁いたこと?戦いの腕前?薬の効果?

 

「あなたは多分強い。そうしていてまるで隙がない。でも、うさんくさい」

 

ははは!これは私の故郷では皆こんなものさ。陰気な土地なんだよ。お国柄と思いたまえ。

そうさね、売り込みといこうか。手っ取り早く行こう。かかってきなさい。

 

「手加減できない」

 

そうかね、まあ私は頑丈だから気にするな。思い切りやりたまえ。

君も国は違えど狩人に師事したのだろう?こちらの狩人の力、みせてくれよ。

 

「ただというわけにはいかない。私に何も利益がない戦いはしたくない」

 

ふむ、やる気が出ないかね?ああ、では君が勝ったら薬をやろう。

私自身でその薬を試してもいい。あるいは、こんなのはどうかね?

ただの金貨だ。ついつい百枚ほどため込んでしまってね。引退した身で田舎にいて使い道がない。勝ったらくれてやろう。どうかな?

 

「つまりこれは賭け。それならやってもいい」

 

やる気が出たかね?ああ、そこの竜も使うと良い。

私はそうだな・・・・・・ああ、これでいいか。何も持たないとそれはそれで気を遣うだろう君?

 

「それは・・・・・・木の棒?」

 

ああ、本来はこの先に刃をつけて大鎌として戦う。弟子と訓練するときに考え出した鍛錬用の使い方だ。

私の元々の武器は3つ。鉈と戦斧(ハルバード)と杖だ。

なので今回は私のもっとも得意かつ狩人の基本と言える戦斧の振り方で行くよ。

 

「とても長い。背の高いあなたの背丈と同じくらいある」

 

そうだよ?我が故郷で戦斧といえばこの長さだ。怖じ気づいたかね?

ああ、怪我を厭うならば互いに一撃、もしくは相手の体に武器か手か魔法が触れたら勝ちでも良い。

君に参加料はいただかないし、何度挑んでも良い。さあどうする。

 

「やる。お互い怪我がないなら問題ない。それに、断ったらあなたはしつこそう」

 

そりゃあ、狩りの中では折れないのが狩人というものさ。

さ、来たまえ。ヤーナムの狩りを知るが良い。

 

「ウィンディ・アイシクル」

 

ふむ、モーションが長すぎる。パリィ取り放題だぞ。

だが直進する氷の弾丸か。連射もそれなりに効くようだ。

ガドリング的な運用ができそうだな・・・・・・

はい、君に触れた。詠唱はもう少し距離を取ってやりたまえ。どうしても隙が出るだろうからな。

 

「何をされたのかまったくわからなかった・・・・・・」

 

何って、ただ歩いて走って転がり回って、君の横を通り抜けて背後から触れた。それだけだよ。

 

「もう一戦」

 

いいよ。好きな距離、好きなタイミングでやりたまえ。

君が攻撃してきたら私も動く。

 

「ラナ・デル・ウィンデ」

 

風の一撃か。だからタイミングがわかりやすいよ。

小手調べはやめにしないか?見に徹するのは良い。

だがやるならばもう少し逃れようがないくらい激しく追撃するか、完全に逃げに徹するべきだ。

 

「ラグーズ・ウォータル・デル・ウィンデ」

 

ふむ、迎撃として全方位の竜巻を選んだか。悪くないな。そういうのは良い。

ローゲリウスを思い出すな。あれも良い狩りだった。本気を引き出すまで本当に面倒だったが。

だからよく知ってるんだよ。それは長く続くものじゃないし、そういうのはだいたい術者の精神的な視界をさえぎる。

要は棒立ちにならざるを得ないのさ。だからこうして回り込まれて後ろから足を引っかけられたりするんだ。

はい、次行こうか。

 

「・・・・・・あなたは見に徹するのは良いと言った。そして売り込みがしたいとも。

なら、あなたの攻め方をみせて。何ならルールや武器を変えてもいい」

 

ほう、いいね。多分後三回くらいで私が飽きると思ったんだ。

そうさね、私の素手の攻めを一分避けたまえよ。それで駄目なら三手避けたまえ。

もちろん、君が私に一撃入れても勝ち。

それ以上はおそらく無駄だ。他の売り込みを考えるさ。それこそ私の魔法なり技なりを演舞するとかね。

 

「あと二回・・・・・・わかった。たしかにそれでも駄目なら無駄」

 

合理的だね、良いことだ。だがそれだけでは勝てんよ。

では一分ルールからだ。少し待ちたまえ。

 

「その格好は・・・・・・?」

 

ああこれかね。激しい攻め方が得意な先輩狩人がいたのさ。その物まねだ。形から入ろうと思ってね。

たまらぬ血で誘うものだ。えずくじゃあないか・・・・・・ってね。

さ、行こうか。

 

「速い!?」

 

おっ、飛んで逃げるかね?なるほどこのルールならばすごくとても有効だ。

だが残念。ガスコインといえば奴のロケットキックはもっとも注意すべきものなんだよ。

まあ、人の形を残した身では少々高く飛べるジャンプパンチに過ぎんがね。

だが古狩人とは基本的に飛ぶものと思いたまえ。

 

「次で、最後・・・・・・」

 

ああ、そうだね。ならこれで行こうか。

 

「また服が変わった・・・・・・」

 

これは大鎌の柄として使う棒なんだが、さっきまでは戦斧として振っていた。

だが、刃こそないが本来の使い方、かつての持ち主のやり方で振るおう。

先ほどまでとは次元の違う速さと間合いと思いたまえ。三回連続で進みながら振る。

その後一〇秒の猶予をもうけよう。全力で避けたまえ。

 

「解った」

 

一手。

 

「やっぱり、とんでもなく速い・・・・・・!でも、見えてきた」

 

二手。

 

「全力で、相手を見ながら、下がる・・・・・・!」

 

三手。

 

「横に回り込んで、薙ぐ!」

 

ほう、やるじゃないか・・・・・・だがそれでこそだ。

帽子を飛ばされるとはね。君が初めてなんじゃないか。これは。

すばらしい。称えよう。さあこの薬と金貨は君のものだ。

 

「危なかった・・・・・・!だけど、これがきっと正解。あなたはずっと距離を測りながら側面に回り込んでいた。

ステップの速さこそ異常だけど、歩幅自体は誰でも跳べるくらいの距離しか出してない。

ならそれがヒント。見て真似してみろと言うこと」

 

賞賛しよう。さあ、これは後輩への餞別だよ。

で、どうするね?契約自体はいつでもできる。しばらくこの辺で遊ばせてもらうから、適当に遊びに来たまえ。

そうさね、私を呼びたければこの鐘を使うと良い。特別な古人呼びの鐘だ。私にしか聞こえないだろう。啓蒙も使わない親切設計だし。

そして、どこにいようが、どれだけ離れていようが、ちゃんと聞こえる。すぐに駆けつけよう。

 

「わかった・・・・・・あなたは、学園に来ないの?」

 

弟子のような小柄な少年ならともかく、私のような者が行っても怪しまれるだけさ。

さ、いきたまえ。ぐずぐずしてる暇などないのだろう?

 

「・・・・・・ありがとう。あなたの強さと優しさを認める。すべて信用できるわけじゃないけど」

 

ふふ、狩人とはそういうものさね。

ああ、手土産を持ってくるときは果物か、帽子で頼む。

帽子コレクターなんだよ。それで何度も決闘した。

 

「・・・・・・やっぱり、少しヘンな人」

 

よく言われるよ。良き狩りを、小さな狩人。

 

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