雪風と狩人様   作:照喜名 是空

5 / 14
狩人様と盗賊

ほう、君は・・・・・・たしかタバサの友人だったかね。

そうだ、雪を暖める火の如き娘だったな。して、華麗なる炎の令嬢がこんな使い魔小屋に何用かね?

 

ふふふ、そうだろうとも。なに、取り繕わなくても良い。

大切な友人が悪い大人にたぶらかされそうだったから心配になったのだろう?

釘を刺しに来たか、見極めようと思ったか・・・・・・まあ、どちらでも良い。

 

ああ、もちろん。私はあくまで彼女の助言者だ。害をなす気はない。

まあ立ってないでこちらで一杯どうかね?私は酒は嗜む程度だが、この地のワインはなかなかだ。

存分に見極めるが良いさ。

 

そうさね、駆け引きも良いが誤解があっては困るので先にざっくり言ってしまおうか。

回りくどいのは苦手だろう?

 

私が彼女に協力するのは境遇が似てたからさ。私も没落貴族の出で、忌み子あつかいだったからね。

そして彼女も私も狩人の技を生きるために学んだ。だから先達としてほっておけなかったのさ。

私のようにいろいろ手遅れになるのを見るのは心苦しいからね。

 

正直に言えば、彼女を救うことで少しでも心の慰めにしたかったのだ。

そうすれば、何か私も救われたような気がするだろうから。

 

ふふふ、そんなに哀れむな。それは君の良いところだがね。

なにしろ君の炎は戦いではなく、おそらく人を暖めることで真価を発揮するモノだからだ。

 

どこまでも恵まれ、光の中にいるが故に闇に堕ちた者を憐れみ、手を差し伸べる。

だがその手は届かない。彼らは闇にいて、君は光から出れないからだ。

 

裏切りの魔女と同じ名を持っていても、君は闇に堕ちない。

呪いの首飾りを手に入れたとしても、それは君に触れたとたん崩れ落ちるだろう。

 

たぐいまれなる豪運だよ。君にはあらゆる災難が避けて通る。

そうでもない?そうかな?まあよく思い返してみたまえよ。

 

まあ、それはそういうものだ。だから手を差し伸べるのは辞めて、彼らの帰るべき場所になってやりたまえ。

過酷な運命にいる者は安心して傷を癒やせる場所を必要とするのだから。

それが結局は彼らにとってもっとも役立つのさ。

 

ま、これが私のスタンスだ。だいたい解っただろう?

完全には信用していない?そうだろうな。まあ、よく私を見張るが良いさ。

 

■

 

おや、これはミス・ロングビル。こんな夜更けに何の用かな?

おやおや、そんなに驚かなくてもいいだろう。狩人が猟師小屋にいるのがおかしいかね?

 

ほう、それは・・・・・・珍しいモノを持っているね。いい武器だ。

ん?知ってるのかって?ああ、なにせそれは見た目こそ妙だがただの大砲だ。最新式の。

そこの先端の尖った部分が砲弾でね、中に爆弾が仕込んである。良い武器だ。

 

詳しく教えてくれ?いいとも。

そうさね、それの運用法は堅牢な移動砲台や城塞・・・・・・こっちで言う空を飛ぶ方のフネや竜、砲亀だったか?

まああんなものに人が生身で対抗するために生まれたものさ。いかれてるだろ?

数百メイルくらいかな、まあ距離を取ってそいつらに砲弾をブチこむ。

突き刺さった砲弾内部の爆弾が作動して木っ端みじんになる。素敵だろ。

 

使い方?よくは知らないがまあ解るさ。だがまあ焦ることもあるまいよ。

異国の没落貴族同士だ。遠慮することもあるまい。多少備品をちょろまかしたところでとがめ立てはしないよ。

いやだってそうだろ?どうせ故郷の家族が病気だの食べ盛りの子がまだたくさんいるだの。急に大金が入り用になることもあるだろうさ。

 

やれやれそれが素か。まあ、その方が好みではある。

ま、そういう事だ。口を塞ぐなど考えないことだね。暇つぶしにはなろうが、君にとっては面倒にしかならん。

私にだって見ぬ振りをするくらいの度量はある。こういうのはお互い様というものさ。

 

そうさな、怪盗フーケ参上!とでも書いておけば万事そいつのせいになる。

君自身はあまり気にしてないだろうが、君は学園でずいぶんな信用があるからね。

あのおめでたい方々は君を疑うという発想すら出てこないだろう。

 

まあ、一月は騒ぐだろうがそれだけさ。かくして世は事もなし、という具合だ。

というかそんな珍品売ったら足がつくぞ。

金が入り用なら私に売るか、もっとわかりやすく換金できるものと交換しないか?

私も実は武器コレクターでね。そういうのを見ると金に糸目はつけないんだ。

 

ふふふ、いいとも。私のコレクションをみせようか。

そうだな、銃には銃と言うことでこれなどどうだろう。エヴェリンと教会砲。

どちらも貴族好みの美しい装飾だろう?ちなみに強いぞ。

 

もう一声?困ったご婦人だな!まあいいさ。これなどどうかね?

クズ血晶石二〇〇個セットだ。多分。だいたい。

なかなかに美しい石だろう?我が故郷の名産品だ。

 

ちなみにこれもなかなか面白い使い道があってだね。武器にはめ込むとこれがまた恐ろしく強くなるのさ。

なんでって言われてもね。まあそうさね。これは古い血が固まった一種の化石だ。樹液が年を経て琥珀になるようにね。

だからかもしれないな、流れる血はその生き物の性質をある程度決めてしまうものだ。

 

まあ、そこまで難しく考えなくてもいい。マジックアイテムのエンチャント用に宝石をはめ込むなんてざらだろ?

これもそういうものさ。単純に装飾用の宝石としても使われていた。

さ、売るのか?売らないのかね?金が入り用なんだろ。

 

ふふふ、良いとも。交渉成立だ。

ああ、教会砲の使い方?いいよ、ただ見ての通りの大砲だからうるさいよ?

だから昼間にしよう。口裏合わせの意味もある。ちょっとした金儲けを考えてね。

 

まあ夜は長い、だが時は短い。ばれないうちにつじつま合わせしておこうじゃないか。

 

■

 

ん?なんで宝物庫に破壊の杖が戻ってたのかって?あれだけ払って手放したのかと?

いいや、あれならまだここにあるさ。何、ちょっとした魔法を使ったのさ。

実は私も使い魔がいてね。これがなかなか面白い奴らなんだ。

 

まあ醜い小人たちなんだが、働き者でね。武器なぞ渡せば一晩かからずに複製してくれるのさ。

ただあいつらけっこう金にがめついから、ふんだくれると思ったときは値段を上げてくるのが困りものだ。

だがまあ、払えない額は言わないからね。まあ、対価を渡せばがんばってくれる便利な奴らさ。

 

赤字だろって?いや、これから赤字分を取り戻すのさ。

 

■

 

やあ、おつかれのご様子だね。すごいだろ今の学園。工事の手伝いお疲れ様。

戦艦が来ても多分撃ち落とせるぞ。トリスティン学園要塞といったところか。

え?ガトリングの方がよかった?あんなにたくさん壁に教会砲があるとやる気がそがれる?

 

ははは、それは災難だったね。だが取引は取引だとも。

君は間違いなくもうけられたし、臨時手当も出ただろう?

私も銃や砲を売りまくれて、学園も学生の親から金が出て。

ほら、誰も損してない。ノーカウントというものだよ。

 

え?なんか赤いフードの魔女っぽいのが来て?鐘を鳴らしたと思ったらデカくてキモい死体のキメラが出た?

あー、あいつらか。まだ沸いて出てくるんだな。暇なときはいいんだが、立て込み中に来られると本気で殺意がわく奴らだ。

 

何って・・・・・・何だろうな。私の故郷の先住民族があんな格好とマジックアイテムを使うんだ。

あとはそれを真似てる奴らとか。だいたいにおいてろくでもない連中だよ。

 

まあ、あれは馬鹿弟子とかがなんとかしただろう。さっそくつけた砲台も大活躍だったろ?

 

ほう?例のヴァリエールのご令嬢が背中をみせないのが貴族だと啖呵を切って?

教会砲ぶっぱなして肩を脱臼しつつも馬鹿弟子がその隙にキメラの心臓をえぐり出してなんとか撃退?

ほーう・・・・・・ブリミルめなかなか粋なことをする。

 

ん?わたしも弟子みたいな動きとかできるのかって?当たり前だよ。あいつに狩人の技を教えたのは私だよ?

まああれも一人前と呼べるくらいには上達したから、戦ったら五分五分だろう。

私も現役を退いてだいぶ勘がなまったしね。だが魔力とか腕力は現役より鍛えたからごり押しできるなら私が勝つだろう。

ただ火力が上がった分大雑把になったからそこを突ければあいつが勝つさ。

 

な?口を塞ごうなんて考えずによかっただろう?

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。