白い空白があった。
上も下も、右も左も、どこもかも全て真っ白。
感じるのは自らの肉体に、魔力が足らないけだるさと空腹感・・・いや、空腹感は魔力を補充するために引き起こされた物か。
「魔力で解析・・・いえ、まずその魔力が足りませんね」
感覚で分かるのは、この空間は魔力で構成されているという位だ。空間を構成する魔力を吸収すれば、どうにかできるかもしれないが、この空間を壊して良いものか分からないから手の打ちようがない。
「汝、妾を呼びながらこのような空間に閉じこめるとは、何様のつもりか」
怒気を含んだ声に辺りを見渡すが、姿は見えない。
「まず、妾が見えぬか・・・では無意識で呼び出したのか」
私の行動に、声から怒りの感情が消え去り、憐憫が姿を見せる。
「ふむ、その存在、可哀想ではある・・・こちらにかしずかぬのも、姿が見えぬとあれば赦しを与えねばならぬ。だが、呼び出しておきながら礼節を欠く事に対する罰は与えねばならん」
一体全体どうしたのか分からないが、あちら側は一方的に理解したようだ。できれば教えてほしい。と尋ねようと口を開いた瞬間、怒号が再び飛んできた。
「痴れ者、分を弁えよ」
反射的に膝をついて謝る。
礼儀作法を教えてくれたお父様には感謝しかない。
「・・・面を上げよ。汝が頭を下げた方に妾はおらぬ。それでも続けるというのであれば、それはより不敬となるぞ」
どうやら全く別の方に向けて謝ったらしい。端から見ればコントだが、当事者からすると、そろそろ命の危機を感じるべき不作法になってくる。
声の主はだいぶ優しい方だと思うのだが、さすがに堪忍袋がはちきれないかどきどきしてくる。
「・・・ふむ、汝の裁定を下す」
声はしばらくの思案の後、重々しい声で告げた。
「汝が罪の重さと哀れさを鑑み、汝の身を縛ることにする」
声の主はそう告げた。
「汝、なにか言うことは?」
「・・・いえ、この世全てを裁く裁定者である貴方様が言うならば、我が罪はその罰が正しいのでしょう」
私の言葉を聞いた声の主は、満足そうにふむと大きく頷いた。
「では、汝の意識を戻してやろう。その罪は生きておらねば、果たせぬからな」
何か可笑しそうにクスクス笑いながら、声の主は私を送り返した。
ギィと重々しい悲鳴を蓋があげる。
射し込む光は少ないが、暖かみのある色合いが差し込んだのを見て、誰かがいる事が分かる。
だが、誰だろうなと予想する暇もなく、棺桶の蓋は開けられた。
蓋の向こう側にいたのは、お姉様だった。
「おはようございます」
ぱっちり眼を開いた私がそういうと、お姉様は目尻に涙を溜めながら、遅すぎるわよ寝坊助と言って、私の頭を思い切り引っ叩いた。