私が目覚めたのは、あの戦いから三日後だったとお姉様から伝えられた。
引っ叩かれた頭をさすりつつ、あの声が笑っていたのは、このことが分かっていたからなのかと少し怒りを覚える。
「ネーヴェ?着替え終わったの?」
部屋の外で待っているお姉様に呼ばれ、はーいと答えて部屋を出た。
私が部屋の外にでると、私たちがいたのが紅魔館の地下階だと言うことが分かる。
地上はまだ陽がある時間だと言ってお姉様は、私の手を引き、幾つかの部屋を訪ねていく。
最初は獣人の夫婦。次に魔女、その次は下級悪魔、そのまた次は幼い獣人の兄弟とその世話をする魔女。他にもまだ色々な種族の誰もが傷つきながら生活を送っていた。だが、訪ねていくとその誰もが私の復活を喜び、涙を流す者もいた。
毎日見回っていたらしいお姉様が言うには、皆が私を心配していたのだとか。
「さて、それじゃあ起きたネーヴェにとびきりの朗報を見せに行きましょうか」
「とびきりの朗報?いったいなんですか」
お姉様はついてくれば分かると手を引いて行く。
そして着いた扉の前でノックをしてから、返事を待たずにお姉様は突入していく。私をほうっておいて・・・
「お嬢様、私が着替えてたらどうするつもr・・・」
置いて置かれたので、お姉様の後に続いて入室すると、そこにはとびきりの朗報が私を見て固まる姿があった。
「美鈴!」
私は驚きの声を上げて美鈴に抱きつく。
「死んだんじゃなかったんですか!?」
私がそう訊ねると美鈴は困ったように頬を掻きながら言った。
「いえ、私も自滅覚悟でつっこんだんですけどね・・・?私の生命力は予想以上に強かったらしく、右肺と腸に穴があいて、腕の腱を切られて、後は右心室をうがたれましたね」
「どうしてそんなになっても生きてるんですか・・・?」
元から強靱な肉体というのは分かっていたがここまでだとさすがに、引く。
「分かってるわネーヴェ、私でもどん引きよ。ゴキブリの方がまだ死にやすいってものでしょこれ」
さすがにそこまで思ってませんと言っておくが、どん引きとは言わないが少々引いている。
「何故!?」
ゴキブリよりも生命力が高いと言われた美鈴はとても不服そうにしていたが、そんなになっても生きてるのは妖魔でも難しいので、しょうがない。
その後しばらく美鈴と話していたが、お姉様が次に行きましょうと立ち上がったので、私もその後に続く。
美鈴がいってらっしゃいませと送り出してくれた。
「分かってるでしょネーヴェ」
部屋を出た後お姉様はそう言ってきた。
「ええ、美鈴は生きてるだけで激痛にさいなまれてるような、ほとんど死に体ですね」
話している間、激痛にその笑顔がひきつっているところを何度も見た。何気ない動作が全て痛みに変換されるのはそれはもう地獄だろう。しかし、私を会わせる判断をお姉様が下したのなら、何か理由があったのだろう。
「まぁ、そう言う事よ。あの我慢屋に少しは報いなきゃいけないもの。話すときの激痛は・・・ちょっとした代償よね?」
死ぬ前に会わせたい相手みたいになってる気がしたんですけどという質問をお姉様は無視した。