音もせずに暖炉の灯がともっているのを、不思議そうに眺めていると、家主の少女はめんどくさそうに説明した。
「私は、火が嫌いなの。音がするのも嫌」
「だから、外に出ないのね。私も日が嫌いよ」
ニコニコと皮肉ってみるが、少女は眉根にしわを寄せてから、視線を本に戻した。
「ねぇ、パチェ?こんなカビ臭い場所なんかに住まずに、うちにきて一緒に住みましょ?」
この場所に通うようになってから、通算17回目のお誘い。だが、今回も彼女は首を縦に振る様子はなかった。
私、お友達とお泊まりするのが夢だったのと、少女然とした願いを言ってみるが、パチェは視線を本から移すことなく、居候と友人とのお泊まり会は違うものだと言われてしまう。
「少しは口にチャックを縫いつけようと思ったことはないの?」
それからも、幾つか質問や雑談をふってみたが、返ってきたのは辛辣な一言だった。
これ以上の会話は望めない事を察して、身近に積み上げられた本の山から、一冊の本を抜き出す。
タイトルは小難しい文字が並べられていたが、パラパラとページをめくれば、その内容が魔女狩りのハンドブックだということがよくわかった。
拷問法や、誘導尋問、刑の方法、どれも悲惨な方法しか書かれていない。
魔女が魔女狩りの本を持つなんて、おかしな話だわ。と何気なく筆者の名前をみようとする。だが、その試みは、魔女によって阻まれた。
「魔女の目の前で魔女狩りの本を開くなんていい度胸してんじゃないの。これはもらってしまった一冊よ」
パチェはそのまま、本を手にとって家のどこかに行ってしまった。
どうあっても教えてくれないのなら、自分で探そうか・・・
「はい?ここ数十年の魔女狩りにされた近辺の妖魔の記録ですか?」
蔵書を本棚に差し戻しているネーヴェが、不思議そうに聞き返してくる。
私は肯定を返して、情報はないか訊ねる。
「んー、私もここの本を読んではいますが、この図書館いつの間にか蔵書が増えてるので、あるかも知れませんね。この間よくわからない魔術論文や民族研究書みたいなのが紛れこんでたので」
ネーヴェは私より本を読んでる相手がいるとフランを紹介してきたが、あの引きこもりを働かせるのは少し面倒くさい。
「いいわ、別の方向を当たってみるから」
あてなど本当はないが、パチェから聞き出すのは、きっと骨が折れるだろう。
友人の過去を探るのは悪いことだとわかってはいる。だが、それ以上に何か気になることがあるのだ。
私は、新たなる糸口を探しに、地下図書館を後にした。