今日も性懲りもなく私は、友人の家へ向かう。
埃っぽくて日のあたりが悪い、じめじめした家。けれど、そこに少し愛着がわいてきた気がする。
「パチェ~?いるんでしょー?」
呼び鈴を鳴らして、十数秒後に扉が開く。あの魔女にしては早い。
本と本のアーチが、いつ崩れるかもわからない廊下を通り抜け、居間兼書斎の部屋に入る。
「・・・最近、貴方なにを嗅ぎ回ってるの」
早速の詰問。さすがに町役場での公文書漁りはまずかったかもしれない。
とりあえず、ごまかすか。
「なにもないなんて嘘でしょう。さすがに戸籍謄本作りに行ったなんてジョークは通じないわよ?」
どうやらごまかしは通用しないらしい。正直に伝えるしかないようだ。
「貴方が隠したあの本、気になるの」
「あんな本、なんでもないわ。というか、貴方に隠した本は他にもあるのだけれど、何故あれだけ気になるの?」
「私の第六感よ」
私が言い切ると、パチェは大きくため息をついてから、本に視線を戻した。
「あら、珍しいわね。こんなとこで貴方と会うなんて」
「ネーヴェお姉さまが眠ってるから、当分ここを任されたの」
頬杖をついて、本をだらだらと読んでいるフランは、一向に視線を向けない。
しばらく、魔女狩りについての本を捜して、本棚をうろうろしていると、本棚の向こうからフランの「あっ」という声が聞こえた。
私がどうしたのかと見に行くと、フランはこちらへ手招きをする。
「これ、ネーヴェお姉さまに頼まれて捜しといたやつだから。ネーヴェお姉さまと手分けして捜したんだからお駄賃はずんでね」
フランが手をたたくと、十冊ほどの本を妖精メイドが運んでくる。
私は、妖精メイドに自室へ運んでおくように言うと、ふわふわと飛んでいった。
「ネーヴェお姉さまからの伝言は、これでご友人さまの哀しみの原因が、わかるといいのですが。だってさ」
なにがもらえるかな、なんて考えている目がこちらへ向けられ、仕方なく人形や本を手に入れてくることを約束することになった。
「やったぁ。新しい玩具だ!」
ネーヴェが少し疲れた顔で、サプライズはしないほうがいいと言っていたことを今更思い出し、助かったと内心思う。
コンコンコンと扉がノックされ、お姉さまの声が聞こえる。入室の許可を与えると、お姉さまが入ってくる。
「本のこと、助かったわ。ついでにフランの御し方も・・・」
「いえ、役立てていただければ十分です」
サプライズで渡さなくてよかったわ。という呟きに、私はアハハと乾いた笑いを返すしかない。
「フランから聞いたのだけれど、ネーヴェも捜してくれたんでしょう?お礼がフラン一人だけなのはずるいわ」
といわれても、お小遣いは足りてるし、本はまだ十分読むものがある。調度品に欲しいものはないし、服も特に必要ではない。
少し悩んで、私は一つ、欲しいものを思いついた。
「それじゃあ、私にもお友達をください。本のことや魔法のことがわかる素敵な方をご紹介くださいね?」
お姉さまは、にっこりと笑って、勿論と言ってくれた。