だからこのあと数日、毎日投稿します
「蒸し暑いです・・・・・・」
棺桶のベッドはそろそろやめて、普通のベッドを使う時期かと思う目覚め。
冬はちょうど良い暖かさで悪くないのだが、やはり夏場だと蒸してしまう。
「氷を蒸し暑さ対策にと思いましたけど、よけい蒸気が増えて地獄でしたね・・・・・・次は氷枕にしますか」
後に、氷枕が破けて流水が流れ出す大惨事が起きて、ネーヴェがひどい目に遭うのだが、それはまた次の夏のお楽しみ。
閑話休題
べとべとするパジャマを着たまま、着替えを持って浴場に向かう。
先に使いを出したので、浴場は準備ができてるはず。
いやー新しい住人が来てから、この館にとっても充実した自動化設備が増えてきて喜ばしいですね。前はお風呂も十分以上待ちましたし、やっぱり魔術の力ってすげーです。
「あら、ネーヴェ。そんな格好して・・・・・・あぁ、湯殿にいくのね」
私がそんなこと考えながら歩いていると、前から歩いてきたお姉さまが、声をかけてきた。
「えぇ、少し蒸し暑かったので、この気持ち悪さをどうにかしたくて」
汗で肌にひっついたパジャマを見てなにか言いたげだったけど、手元の着替えを見て、どこへ行くかわかったらしく、お説教は回避された。
「あぁそうそう、どうにかしたいで思い出したのだけれど、フランを湯殿に封印する方法をどうにか思いついてちょうだい。地下は湿気がたまりすぎてキノコが生えるっていうから換気装置をつけたけれど、あの子はそれで涼しいって言って出てこないのよ。ネーヴェは眠ってて知らなかったでしょうけど、数日前に妖精メイドがあの子のところに行ってキノコを生やして帰ってきたわ」
「妖精はその場所の環境に合わせて姿変えますけど、キノコ生やしたんですか? 換気装置動いてるんですよね?」
「えぇ、私も気になってフランの部屋に行ったら、あの子、棺桶の蓋を開けっ放しで寝てたのよ。それで、棺桶の縁がカビてたわ」
「あぁ・・・・・・寝汗でそこだけいつもしけってるんじゃないですか?」
苦い顔というより、もう泣きそうな感じの顔になっているお姉さまは、深いため息をついた後に、言葉を発する。
「だから、貴方にフランを湯殿に連れて行ってから、地下に近寄らせずに三時間ほど連れ回しておいて欲しいの。大掃除計画を開始するわ」
「わかりました。さすがに頭にキノコを生やしたフランなんて見たくないですからね。ご協力します」
お姉さまは助かるわといって書斎のほうに向かって歩いていった。
浴場にたどり着き、脱衣場に着替えをおいて、パジャマは洗濯待ちのカゴに入れておく。
「少し風に当たりすぎました。いくら風通しが悪くても着替えるべきだったかもしれませんね」
独り言をこぼしつつ、浴場に入る。
むわっとした蒸気が全身を撫でる。
「このしっとり感がいいんですよね」
目の小さい簀の子を歩き、椅子に座って、蒸気を堪能する。
吸血鬼は流水にダメージを受ける、または流水を越えることができない。それは本当のことで、私たちは雨の日に出歩きたくはない。確かに微弱なダメージでしかないが、ゆっくりするためにダメージというのはいかがなものかという事で、館の浴場は蒸気風呂となっている。
「美の探求を目指す魔女の一族の方のおかげですね」
蒸気が水滴となって肌に浮く、そこに薬草などを包んだ布で流すように拭くと、中和され、極々わずかなダメージが古い角質を取り除くという・・・・・・ご都合臭い気もするが、私も乙女、肌が綺麗になるなら続けると言うものです。
「フランとくるなら、一緒に洗い合うくらいじゃないと逃げられちゃいますかね・・・・・・?」
ひとしきり体を洗って、私は席を立つ。
たぶんもう少ししたら、また来ることになるので、準備をしてから私は浴場を出た。