「新しいベッドですか?」
パチュリーは頷いて六人の妖精に運ばれる棺桶を指さした。
「棺桶の中に冷暖房完備よ。我ながら訳の分からない魔法を使い方をした気がするわ」
「冷暖房完備!? ホントですか! とってもありがたいです!」
「喜んでくれたがんばった甲斐があるわ。それと、冷暖房以外にも色々機能が付いているわ」
「本当ですか! ありがとうございます!」
「えぇ、あなたはなにがあっても起きないからってレミィが防衛機構を恐ろしいほど望んでしまって、TNT爆薬くらいなら耐えきって傷一つ見せないシェルターが生まれたわ。それも中に誰かはいるとあなたの意志でしかあけられないという呪いに近い何かも装備しているわ」
「バカなんですか? 妹バカなんですかお姉さま」
「私にいわないでちょうだい」
それもそうですねと言って会話を打ち切り、ベッドの方へ向き直る。運んできた妖精は、なぜかサングラスをつけているが、気にしないことにする。
棺桶は色が白く、白亜で作られているのかと思うほどの白さだが、触れてみると、木製の肌触りがする。
蓋を開けると、中はそこそこに広く、壁面と床の部分には綿か何かが詰めてあり、硬さは感じない。そして棺桶の中程のあたりに風を送り込むための通風口があいていた。
「寝心地とかも良さそうですね。本当にありがとうございますパチュリー」
「いいのよ。気にしないでちょうだい」
「ネーヴェは気に入ったの?」
「えぇ、空調設備ってそんなに大事なの?」
「あなたはあの蒸し暑さを知らないのね」
知りたくないわと断って、紅茶を飲む。今日はストレート。味は悪かったことはない。
「で、データは?」
「順調よ。就寝時のデータをスキャンするために棺桶なんて、よく思いつくわ。防衛装備とか言うもののために、数週間延びたけどね」
我が友人は謝る気がないらしく、澄まし顔でお茶請けを口にする。
「付けたのは、防御機構、スキャナー、空調設備・・・・・・あとは魔力吸収機能と供給機能。我ながらあそこまでコンパクトにできたことは、天才的と言うほかないわ」
対象が起きている間は魔力を吸収し保存。睡眠状態に対象がなれば、棺桶内に魔力を放出し、吸収させる。これによって急速に覚醒が速まる。睡眠状態時も、外の魔力を吸い込み続けているので、効率はこれまでよりもよいものになっているはずだ。まぁ、吸い込む魔力の濃度が薄ければ薄いほど効果は減るが、それは棺桶があろうとなかろうと同じことなので、気にしない。
「補助はできるわ。けれど、この世界から魔力というものがほとんど感じられないほど薄くなればこれはただの棺桶よ。神秘は消えゆくものなの。だから、これはただの延命措置、何とかしなければどっちみち結果は変わらないわ」
「だったら早く見つけないといけないわね。ネーヴェが安心できる場所を」