幻想郷
「ではこれから、紅魔館と名乗る、侵略者への対応会議を始めます」
藍が、そう言うと騒がしかった議場は、しんと静まりかえる。
「・・・・・・叩き出せば良いではないか」
張りつめた空気の中、大天狗がそう言った。同意の声は挙がらないが、何人もの有力な妖怪が、同じ意志であることを思わせた。
「確かに、略奪行為など目に余る物はありますわ。しかし、幻想郷の結界が迎え入れたところを見るに、彼らもまた、現実に追われてやってきた同胞でしょう。少しの教育ですませるべきでは?」
幻想郷は、幻想の最後の受け皿。それが、受け皿にのるべき物を叩き出せば、風聞が本来幻想郷を必要としている妖怪たちを恐れさせ、受け皿としての役目が果たせなくなる。それだけは阻止するべきだ。
「私も紫と同意見さ、あいつらは居着く方法を侵略しか知らないんだ。喧嘩っ早い奴らは、高い鼻っ柱を叩き折ればおとなしくなるさ」
ケタケタと笑いながら、隠岐奈は天狗の方を見る。
大天狗は、居心地悪そうに、赤い鼻を一撫でしてから、矛先を変えるように、妖精の一団の方を向いた。
「おい、妖精ども、貴様等がなぜここにおる。向こう側についたのではなかったのか」
「えっと・・・・・・妖精は誰かがまとめられる物じゃないですし、みんな勝手にしていて・・・・・・」
大妖精と周りから呼ばれる、妖精が、視線に怯えながら話す。
大天狗の言うように、一部の妖精は、何を思ったか、紅魔館の一味に混じって略奪行為や悪戯を行っている。
「私が呼びましたわ。霧の湖は妖精側のテリトリー。あの場所を一番知るものたちです」
私が、視線を向けると、大妖精はがんばりますと言った。
「この幻想郷から奴らを叩き出す・・・・・・というのは諦めよう。だが、このまま侵略されて降伏というわけでもないのだろう?」
「えぇ、多少はお灸を据える必要があります。その上で、彼らが私たちとともにこの地に根付くのか、去るのか。選択させようと思います」
少なくとも、人里に手を出されては困る。彼らがルールを守れるのなら、迎え入れよう。
「で、どうするんだ紫。まさか話し合いで済むとか思ってないよな」
「実力を示す必要はあるでしょう。だからといって、こちらが損害を出すわけにはいかないので、我々で少し痛めつけましょう」
霧の湖上空、赤い館を見下ろす位置に、私・大天狗・萃香・幽々子が揃い、後ろに天狗の護衛集団が控える。
隠岐奈は、めんどくさいし、あんたらだけで十分だと言って後戸の国へ帰った。
できれば暴力装置として幽香も呼びたかったが、あのフラワーマスターは、植物が危機に瀕したときにしか来ない感じのヒーローなのであてにならない。
「楽園の新たなる住人よ。我々は、彼方からの来訪者を迎え入れる気がある。ただし、それは領主と奴隷ではなく、友好な同胞としてである」
大天狗の口上は、辺りに響きわたる。いつもやかましいと思う、この声もこう言うときには使える。
「我々は話し合いに来た。だが、この平和の使者を切ろうというのであれば、それは死を意味するぞ」
大天狗は平和の使者とのたまうが、その実この天狗切られたがっているのだからとんだマゾなのだ。
そんなことを考えていると、門が開いた。
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