「・・・・・・ん? ここはどこです?」
ふと気づくと私は、彼岸花の咲き誇る場所に立っていた。
「確か彼岸花って秋ぐらいに咲くものじゃ・・・・・・」
辺りを見渡しても遠くは靄に包まれよく分からない。
少し歩いてはみるが、歩いても歩いても先に進んでいる感覚がない。
そろそろ夢ではないかと頬をつねるか悩んでいると、足音が近づいてくるのが聞こえた。
「どちらに行かれるのですか。賽の河原は逆方向ですよ?」
私が振り向くと、そこには仰々しい衣服を身につけ、緑の短く切った髪の毛を揺らす少女が立っていた。
「貴方、誰ですか?」
「四季映姫・ヤマザナドゥと申します」
ヤマザナドゥと私が繰り返すと、四季映姫と名乗った女性は、地獄の裁定者、閻魔ですと言った。
「それでは、私の質問に答えてください。貴方はどちらに行かれるのですか?」
「・・・・・・そもそも、どこなんですここ?」
ピキッと映姫さんの白い額に青筋が浮かぶ。
「質問に質問で返さないで。寺子屋の試験では零点ですよ。いいから答えてください」
「とりあえず、家に戻りたいんですが」
私がそう答えると、映姫さんはいぶかしみながら首をひねる。
「ここは彼岸です。お帰りはお諦めなさい。どうしても帰りたいなら、一年以上あの世で過ごした後で、お盆里帰り休暇を請求してください」
「役所感が、役所感が凄い・・・・・・!」
だって役所ですからと返され、脳裏に全てにおいて適当な女王が思い浮かぶ。
「とりあえず、私まだ死んだつもりないんですけど」
映姫さんは溜め息をついて、私を見下ろす。
「死んだことを理解もさせてない・・・・・・幻想郷から来た魂ですよね?」
私がとりあえず、頷くと映姫さんは私の手を取って、歩き始めた。
「ちょ、ちょっと、どこ行くんですか!?」
「貴方の担当の船頭です。あのバカまたサボってるんだから!」
まずい、このままでは本当にあの世に連れて行かれてしまう。踏ん張って耐えようとするがずるずると引っ張られる。なんだこの人、日本の鬼程度には力を張ってるはずなのに、なんで引きずる速度変わらないの!?
「ほら、抵抗しないで、死者が死から遠ざかろうとすれば、地獄の距離が近くなるんですよ」
そもそも死んでないと叫ぶが、聞き入れてもらえない。
あぁ、こんな死に方ギャグだよと思い始めたとき、横からスッと見覚えのある白い手が映姫さんの手をつかむ。
「すまんが、この娘は妾のじゃ、返してもらおう」
振り返って女王を見た映姫さんは固まり、口をぱくぱくさせる。
「そう、貴方は何々なりすぎている・・・・・・とかじゃったか? 汝の口癖」
映姫さんはコクリと頷く。
「なら、今の汝は頭が固くなりすぎている。というやつじゃな。優等生の失敗は見てて楽しいのう」
女王はニマニマしながら、映姫さんの頭をポンポンと軽く叩く。映姫さんの顔は羞恥の赤に染まる。
「それくらいにしといた方がいいんじゃないですか女王?」
「いやぁ、もうちょっとだけ煽らせて欲しいんじゃが」
「何か恨みでもあるんですか?」
「ちと、昔貴女は頭が柔らかすぎると言われて事があっての」
映姫さんが若干かわいそうに思えてきたが、これは止まるところを知らない感じのあれだと気づく。
「・・・て・・・い・・・」
羞恥の顔を伏せて防御する映姫さん(私は身長的な理由で普通に見える)は小さくつぶやく。
「聞こえんのう。法廷での声はどうしたんじゃ~?」
「あっ、まず」
マジメちゃんはぷっつんしたときがいっちばん不味いのだ!
私は即座に耳をふさぎ、サタン様、リリス様、デビルマン様と心で祈る。
「出て行ってって言ってるんです、この馬鹿!!」
閻魔の咆哮を受けた! 防御しなかった女王の鼓膜は四十パーセントのダメージを負った!
ともあれ、冥府の出国許可を手に入れた私(魂)は、また気を失った。