「おはようございますネーヴェお嬢様」
「これもうパターン化してますね!?」
棺桶を開ければ、また見知らぬ顔。
今日も私の部屋に華麗なツッコミが決まってしまう。
「・・・・・・新しいメイド長?」
「えぇ、なかなか骨のある娘だったわ」
お姉さまはそう言ってティーカップに口をつけ、そしてすぐにカップを机の上に戻す。
「咲夜、今度はなにをお茶に混ぜ込んだの? なんだか舌がピリピリと痺れるんだけど」
「あら、レミリアお嬢様? 私は気高いバラのようにまっすぐな女性とこのあいだは言ってくださったのに・・・・・・あんまりです」
「いや、私は紅茶になにを混ぜ込んだか聞いてるの」
もちろん毒ですわと咲夜はにっこりと答えた。
私はゆっくりとカップを机に置き、ニコニコしたまま、あっ、この子は大物だと確信した。
「うぅ・・・・・・まだ舌がピリピリするわ」
べーっと舌を出したお姉さまにクスリと笑いながら、主治医(パチュリー)を呼び出す。
「研究用の麻痺毒が盗まれていたことが判明したわ。凶器はその毒ね」
差し出された瓶は半分ほど液体が残っており、中に花が漬けられていた。
「それで、元々どのくらい入っていたんですか?」
「瓶一杯まるまるね」
「「ぱーどぅん?」」
お姉さまと声が重なる。
「瓶丸ごと一杯に入っていたわ」
私が正気かという目で咲夜を見ると、なぜか頬を染めながら、暖めた毒で紅茶を作りましたと白状した。
「当たり前のように暗殺されかかってるじゃないですか!」
「驚くことなかれ。これが初めてではないのよ」
お前ほんとに正気かという目で咲夜を見ると、さらに頬を染めた。もう訳が分からない。
「まぁ、こんな感じで破天荒な子なの。ぶっちゃけこの子がメイドとして有能なのが唯一の救いであり、一番の絶望ポイントよ」
「・・・・・・頭の理解が追いつきませんが、何で咲夜は紅魔館に?」
半分理解をあきらめかけてきたが、一番の謎はなぜやってきたかだ。
「私を殺そうとして来たの」
は? と私は頭が真っ白になる。
「悪の吸血鬼を灰燼に帰す、美少女戦士咲夜ちゃんですわ」
ばっちりと決めポーズを決める咲夜に頭が痛くなってくる。
「・・・・・・それでなぜお姉さまは雇おうと?」
「一つはおもしろかったから」
お姉さまは三本たてた指の一つを折り曲げる。
「一つはとても強かったから」
本当かという視線をパチェに送るとコクリと頷く。
「そして、とてもかわいかったから」
「謎の美女吸血鬼ハンターの面目躍如ですわ」
ぺこりとお辞儀した咲夜は、紅茶を持ってきますというとその場から消えた。
「良かったわねネーヴェ、咲夜のお茶目なサービスよ」
「瞬間移動ですか?」
私がそう尋ねると、お姉さまは首を横に振る。
「カップを見てみなさいネーヴェ」
なんのことかとカップを見ると、冷え切っていた紅茶が湯気を立てている。
訳が分からないという顔をしていると、お姉さまは湯気を立てる紅茶を飲んで言った。
「時間を操る能力よ。主に使ってるのは停止だけど、空間拡張もできる辺り、加速や減速もできるんじゃないかしら」
へーと私が呆れたような驚いたような声を上げる。
「あら、何ともないわ今回は当たりらしいわ」
「むしろはずれじゃないの?」
「耐毒性の訓練かなんかですか・・・・・・?」
十六夜咲夜、不思議なメイドがやってきた。