雪銀の吸血鬼   作:ぱる@鏡崎琴春夜

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はるうらら

 ぽかぽかとした午後、テラスでのんびりしていると悲鳴が轟いた。

 マンドラゴラ、不法侵入の馬鹿、そして不幸な事故・・・・・・いくつか候補があるが、たぶん今日はそのどれでもない。

「いやぁ、咲夜が来てくれてフランのお風呂作戦は大助かりですねぇ」

「機嫌が悪くなることは元々だし、被害が出ないのはありがたいわ」

 ふふふとお姉さまと笑いあう。

 ただし、この5秒後、私は左腕、お姉さまは頭が吹っ飛ぶことになる。まぁ、アレです。不幸な事故でした。

 

 

 

「めーりん。ちょっと整えていただきたいんですけど」

 雨が降って門番ができず、自室で太極拳をしていると、ネーヴェお嬢様が尋ねてきた。

「いいですよ。どっちですか?」

「こないだ右腕だけ吹っ飛んだせいで少しバランスが悪くなっちゃったんで両方お願いします」

 はーいと返して、ネーヴェお嬢様をベッドの上に寝かせる。

 能力と昔に習った按摩の技能は今も絶賛され、今では主治医的ポジションにある。

 薄手のネグリジェを畳んで横に置いたネーヴェお嬢様は腕を枕に力を抜く。

「それじゃあ、まず把握のために軽く行きますよ」

 どうぞという声を聞いてから、私はネーヴェお嬢様の白い背中に指を這わせる。

「んぅ!」

「冷たかったですか?」

「いえ、こそばゆかっただけです」

 我慢してくださいと笑いながら、作業を続行する。

 背中に触れる指先から魔力を広がるように流し込み、こりの把握とともにわだかまった魔力をほぐしていく。

「あらかたわかったので腕伸ばしてもらえますか?」

 ネーヴェお嬢様は冗談めかしてハーイ先生といいながら腕を伸ばした。

 

 まずは流れが悪い右腕に体の魔力がうまく流れ込むように、手で押しのばしていく。

 腰の辺りは体の中心、ここから押し込んで、砂山を平らにするように、魔力を引き延ばす。

 グッと力を込め背中を腰から首へ、皮を押し上げるように手を移動させる。これを数度繰り返し、次に右腕に移る。まずは軽く揉んで柔らかくし、魔力の通りをよくする。ここは力を込めて押すわけにもいかないので、魔力を押し込むように能力で操作する。

 ネーヴェお嬢様は脱力しきって、腕枕のかわりに私の枕に顔を埋めている。

「魔力はこんな感じですけどどうですか?」

「ん・・・・・・? あぁ、良い具合じゃ」

「じゃ?」

 ネーヴェお嬢様は少し慌てた風になんでもないと言った。

 

 

 

「あれ? Bの棚にあった素材どこに行きました?」

 研究のために必要だった薬草が見あたらず、後ろで本を読んでいたパチェに声をかける。

「大方今頃ハーブティにでもなってるんじゃない?」

 私はその返答に、呆れ顔をしながら振り返った。

「またですか? あれ単品でも毒性はあんまりないと思うんですけど」

 またというのは、最近こういうことがよく起きているからだった。

「えぇ、そうですわ。単品自体では意味がありませんの」

 振り返るとにこにことしながらティーポットとカップをお盆に乗せた咲夜が立っていた。

「急に話しかけるのは心臓に悪いです」

「新しい吸血鬼の退治方です」

「心臓発作で灰になる吸血鬼一号にはなりたくありませんよ。それより咲夜、薬草を返してください」

 こちらですよといつの間にかお盆に乗っていた小瓶を渡してくる。

「咲夜、私にその薬草を使った毒薬の作り方を教えなさい。発見した方法は何となくの思いつき以外だった場合に話しなさい」

 咲夜はティーカップにハーブティーを注いだ後、かしこまりましたと言った。

 

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