大図書館にもテラスにも姉妹の姿が見あたらず、館中をふらふらと探索する。うちの館ってこんなに広かったかしらと思ったが、少ししてからメイド長の能力を活用した、館拡充計画を開始していたことを思い出す。
「こんなに複雑に入り組んでいると、そのうち、ミノタウロスがそこらへんを歩き回るんじゃないでしょうか?」
空間を延ばしているせいか同じ景色が続き、二つ返事で了承したこの計画も少し修正を加えなければならないと思えてくる。うん、最低でも地図くらいは用意しなくては・・・・・・
しばらく赤の迷宮を迷っていると、一室から笑い声が漏れているのに気づく。私は誰かいるという安心感に引かれそちらへ向かっていく。
「あら、こんにちは」
扉を開けて目があった相手はこの間お姉さまと部屋に飛び込んできた金髪の紫なお姉さんだった。
「・・・・・・なにしにきたんです?」
「ちょっとした取引よ」
相手はにっこりほほえんだ。
「大丈夫よネーヴェ。本当にただの取引よ」
和紙を鋏で切りながらお姉さまが言う。その姿はなんだかとてもマッチしていて、犯罪臭がする。
「我々の住む幻想郷は人間と妖怪の絶妙なバランスで成り立っています。現状、一人二人の妖怪が起こす騒ぎなら人間側の博麗の巫女が武力で制圧できます。しかし貴方達のような人数や規模であれば、人間側は圧倒的不利、それではこのバランスは保たれない。いつかは崩壊します」
そうでしょうと目線で問いかける相手に私はコクリと頷く。
「だからこそ、人間と妖怪がよりよくこの関係を続けるために必要とされるのが対等な決闘方式の策定です」
「それで、その方式を取り入れて騒ぎを起こすのが私たちの役目。理由は程良く人間に不安視されていて、ある程度は統率が取れているから・・・・・・まぁ、断る理由もないし、おもしろそうだしね」
お姉さまは笑いながら、切り取った紙に絵筆を走らせる。もう幼女の工作にしか見えない。
「・・・・・・話はわかりましたが、お姉さまはさっきからなにを?」
「これはね、弾丸みたいなものよ。詳しい説明は紫がしなさい」
紫と呼ばれた女性は、空間を裂いて、別の空間から紙の束を取り出す。
「はいはい、任されました。今制作中の物は、私が考えた決闘の方式、弾幕式決闘に必要な物。弾幕式決闘は、お互いに魔力弾、妖力弾・・・・・・何でもいいから弾幕を作るの。ただし、それには条件があって、まず、避けることができること。もちろん当たっても全治一週間くらいの威力でお願いします。そして最後に、弾幕が周りから見て美しいこと」
「馬上試合を思い出すわね。まぁ、あれは最悪死ぬけど」
「華々しさもありますし、そっくりですね。魑魅魍魎が馬に乗って試合とかシュールですけど」
それで、お姉さまが工作しているカードはなんですか、と問う。
「それは、弾幕を記録したカードです。事前に何枚使うかを決め、そして先にその数を使い切った方の負けです。確かに弾丸とは的を射た言葉ですわね」
そうだろうとお姉さまはいいながら、私にも紫が出した和紙を渡してくる。
「以外とセンスが必要よ。ほら、作ってみて」
受け取ってから、いくつか考えてみるが、確かに難しい。
「いかに相手を生かしつつ、誘導するか・・・・・・性格が悪いと作りやすそうですね」
そう、私が言うと、紫が少しひきつった笑みを浮かべた。